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終章 夢実裁判、閉廷

無理矢理纏めた感が否めないですが許してください。限界でした

 次に葵が目覚めたのは眠りに落ちる前の職場だった。

 窓から眩しいほど明るい太陽の光が差し込んでおり、晴れ空と言うことを不意に感じさせる

 葵は雨ではなく晴れになっていた事に少し寂しさを覚えていた。雨であれば沈んだ心と近しく、親近感の得れたのに、空は全く逆だったからだ

 

 「…また変わってる」

 

 PCの画面に貼り付けられた紙はまた文字を変えていた

― 性格と人格は似て非なる物。

 葵は意味が解らなかった、いや解りたくなかった。

理解する、思考すると言う意識は失われていた。

 

 「逃げずに全て見るべきなんて、何を見ろと言うのだろう。私は本当に何も―」

 

 葵は一人むなしく空っぽの部屋で呟くが、先の言葉が出てこなかった。

 ― 知らないはずが無い。

葵は酷い頭痛に見舞われ、汗を滝のように流しつつその場にかがむ


 「あの部屋に…」

 

 ズキズキと痛む頭を抱え、フラフラと千鳥足になりながら葵は部屋を出て神田春樹の死体があった部屋へ赴く。

 

 「…あ、ははは…嘘…でしょ…」

 

 葵は最早笑うしかなかった。

 さっきまで見えなかったモノ―神田春樹の死体がその場にポツリと存在していた。

 

 「…まさか」

 

 葵がつまずいたのも、相沢がその場に目をやったのも、彼の死体があったからと仮定すれば筋が通っていた。

 葵はその場で少しだけ嘔吐し、泣き崩れる。

 

 「だれ、誰が…」

 

 その真実を知るのに時間はかからなかった。

 神田の死体の手には丸められた紙が握られており、葵はそれを広げた。

 

 「解離性…同一性、障害?………私?」

 

 それは診断書のようなもので、名には神崎 葵と確かにそう書かれていた。

 解離性同一性障害とは一般的に多重人格の名で知られており、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。

 それはつまり、葵に別の人格が存在している事実を裏付けていた。

 

 「何…それ、そんなの…知らない…」

 

 この障害は基本的に主人格が気付くことは無い。そのため、知らなくても当然なのだ

 葵は理解する、最初の裁判のときに裁判長がずっと起きていたと言った意味を。理解したくなくとも、理解する他に道が無かった。

 真実とは、神崎葵が解離性同一性障害を患っていたことだった

 

 「いや、いや…知らない…私は…本当に知らない!何も!いや!」

 

 頭がおかしくなりそうだと、誰かに助けを懇願した。

 夢実裁判所の時のように助けなど存在しえないにも関わらず、同じように救いの手を求めた。

 葵はどうしても一つ、腑に落ちない事があった。

 もし、多重人格だと仮定して神田春樹を殺害したのが神崎葵ならば、その肉を食べたのは自分なのかと。

 先程から感じる妙な吐き気には食べたせいで体調を崩したのかとも絶望の中思う。

 

 「もう、もういや!誰か…タスケテ…」

 

 葵はついに事切れ、その場に寝そべるように倒れ、涙を流しながら動かなくなった。

 

 * * *

 

 「真実を知ったその絶望の味はいかがなものですか被告」

 

 冷たい女性の声で暗闇から目覚め、味方のいない狂宴で葵は目覚める。

 

 「…いや、嘘、私は…何も…そんな、知らない」

 

 葵は狂ってしまった。だが、眼光に光はまだ残っていた。

 あれが真実でも、彼を殺したのは自分ではなく、他の誰かだと裁判長を睨む。

 

 「あらあら、信じないのですか。では…」

 

 裁判長は宵闇のような黒いヴェールをまくり、その顔を晒けだす。

 その顔に葵は瞳孔を見開き、見つめることしか出来なくなった。

 

 「これでどうでしょう、私。」

 「え…あ…なんで…」

 

 葵は言葉が出なかった。

 法壇の上で不敵に笑う裁判長の神崎葵とその前で瞳孔と口を見開いたまま立ちすくんでいる神崎葵の顔は全く同じだった。

 

 「被告、神崎葵くん」

 

 左から憎らしかった男性の声が聞こえ、それに合わせて裁判長がニタリと笑う

 

 「僕は…美味しかった?」

 

 葵は腰を抜かし、その場に倒れただ涙を流し絶望していた。

 検事が髪を整えると、それはよく見知った顔―神田春樹の顔に似ていた、いや本人だった。

 検事は口を歪ませると検事の口から血が流れ、腹部がえぐられていた。

それに対して葵は恐怖で泣いていた。動くこともままならぬまま。

 

 「い、いや!さっきのは夢!絶対、絶対そうだ!」

 

 葵は目を瞑り、景色を傍観する事を拒絶する。

 

 「ではこれは夢じゃないの?ううん、これも夢。あっちも夢、でもどっちも現実。だって…私が見ている世界なのだから」

 

 裁判長が葵の側に寄って悪戯な笑みで囁くように話しかける。

 葵は耳を塞ぐがそれでも聞こえる、目を塞いでも見えてしまう、口をつぐんでも声が出る。

 それは、彼女が自分であるように自分も彼女であるから。

 

 「さて、どちらが本物かな?」

 

 検事が包丁を手に持ちながら言う。

 

 「どちらも本物、どちらを刑に処そうが結果は同じです」

 

 裁判長が検事に目を向けて言う。

 どうやら裁判長は自分が死ぬことに抵抗は無いようだった。

 葵の腹部に冷たい刃が潜り込む。

 

 ― 目には目を、歯には歯を

私は人を殺めた

 ― それは当然の報い

私は人を食べた

 ― それは過度でなく、同等の罰

私は同じことをされる

 ― それは貴女の罪

それが私の罪と罰

 ― それは貴女の夢幻であり現実

それが夢実裁判。そして私の行き着いた結末

という訳で話自体は完結です。

次の項は、まあ何かと呟いているので気になれば見てやってください。ちょっとした解説みたいなものです

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