八
うちにかえると、お母さんがさきにかえってきていて、ばんごはんのよういをしていました。ぼくはお母さんに「どこ行ってたの」ときかれたので、「ちょっと人と会っていた」と言いました。すると、お母さんは「だれ」ときいてきたので「友だち」とうそをつきました。でも、うそはすぐにばれました。ぼくのかぞくは、ぼくが大学に入ってからいえをたてて今のうちにすむようになりました。今のうちはまえすんでいたところからだいぶはなれているので、ぼくはじっかのちかくに友だちがいませんでした。ぼくもうそをつくことはいけないと思いました。それでほんとうのことを言うことにしました。さいしょにおねえさんからでんわがあったことや、そのあとにおねえさんやおにいさんと会って、クラブのかいいんのけいやくをしたことを話しました。でも、おねえさんがとても色っぽくて、ぼくのちんちんがかたくなったことはぜったいに言いませんでした。
お母さんはぼくの話をきくと、あきれて「かんぜんにやられたわね」と言いました。そのあとすぐに、お金がいくらとられるのかもきいてきました。ぼくはひと月に16500円とられると言いました。するとお母さんはおどろいたようすで「16500円もとられるの」と言ってから、ためいきをつきました。それから、だいぶおこったかんじで「だいたいね、うちはいえもたてたばっかりだし、これからローンもはらっていかなきゃいけないの。てっちゃんにこれいじょうお金は出せないんだから。がくひだけでもいくらかかっていると思ってるの」と言いました。ぼくは「じぶんでなんとかする。かていきょうしをするから」と言いました。お母さんは「そんなことをしているひまないでしょう。べんきょうはどうするの」と言いました。ぼくは「かていきょうしはこうりつよくかせげるから、べんきょうのあいまにできるし、ぼくだってもう子どもじゃないから、こういうアルバイトみたいなしゃかいけいけんをしたほうがいいと思ったんだよ」と言いました。すると、お母さんは「もう、てっちゃん、いったいなにをふきこまれてきたのよ。少しくらいかていきょうしをするのはいいとしても、せっかくかせいだお金をだまされて2年もまいつき16500円も取られるのはバカバカしいでしょう」と言いました。ぼくは「だまされてないよ。ちゃんとせつめいもきいてなっとくしたし、かいいんになれば、いろいろとくをすることもあるんだから」と言いました。それから、ぼくはおねえさんからもらったパンフレットを見せて、いろいろなお店やレジャーしせつやホテルを安くつかえることや、電車やひこうきがやすくなることや、しゃかい人のビジネスマナーこうざの入っているDVDセットのことも話しました。
お母さんはDVDセットのことがだいぶ気になったようでした。ないようのことをしつこくきかれました。お金のこともきかれましたが、ほんとうのことを言ったらもっとたくさんおこられると思ったので、30万円なのに「10万円」と言ってうそをついてしまいました。でも、お母さんはそれをうたがったので、つぎに「20万」と言いました。それでもうたがったので、ぼくはとうとうDVDセットが30万かかることと、2年はかいひとはべつにそのお金をげっぷではらうので、かいひとのごうけいが16500円になることをせつめいしました。すると、お母さんはためいきをついて、あきれたかんじで「ありえないわ」と言いました。
そのあと、お母さんはぼくが会ってきたおねえさんがハスキーなこえをしていなかったかときいてきました。ぼくはなんでお母さんがそのことを知っているのかふしぎに思いました。ぼくはだまってしまいました。するとお母さんは「やっぱりそうなんだ」と言ってから、ぼくが家にいないあいだ、なんどもハスキーな声をしたわかい女の人からぼくにでんわがあったことをおしえてくれました。そして、「お母さん、このことてっちゃんに言っておくべきだった。なんかいやなかんじだったのよね」とくやしそうに言いました。ぼくはおねえさんがお母さんからわるものにされていて、少しかわいそうだと思ったので、ぼくも少しおこって「会ってきたのはその人じゃないよ。こえもハスキーじゃなかったし」とうそをついて、おねえさんをかばいました。このとき、ぼくはおねえさんがわるい人だと思うことはとてもいやだったです。でも、お母さんの言うことをきいていると、ぼくも少しうたがう気もちになってきて、なんだかとてもいやな気もちになりました。