七
このとき、ぼくはおにいさんからグーでかおをパンチされると思いました。ことばはていねいだったけど、なんだかやくざみたいなはくりょくでとてもこわいと思いました。手がブルブルふるえました。でも、ぼくはおにいさんの言うとおりだと思いました。ぼくは「すいません」とあやまりました。そうしたら、よこにいたおねえさんが、えがおでぼくにやさしく「てつじさんならできますよー。がんばってー」と言いました。このときぼくは、カフェにむかうとちゅうでおねえさんがびようしのせんもん学校のがくひのためにしごとをしていると話していたことを思いだしました。ぼくは、おねえさんもおにいさんもえらいなあって思いました。ふたりをそんけいしました。じぶんがなさけなくなってきました。これからはアルバイトもがんばらなきゃいけないと思いました。もうぼくも子どもじゃないのだから、アルバイトをしてお金をかせぐためのくろうしなければいけないと思いました。ぼくはおにいさんに「そうですね、ぼくもがんばろうと思います」と言いました。すると、おにいさんはえがおになって「まあ、今ちょっときびしいことを言ってしまいましたが、これもささはらさんを思ってのことなんですよ。なにごともけいけんですからね。わたしはとてもいいきかいだと思うんですよ。アルバイトをけいけんすれば、少ししゃかいのくうににもふれられるし、にんげんかんけいもひろがります。もちろん、がくせいのほんぶんはべんきょうだから、むりはしなくていいですよ。でも、2万くらいならほんとうにすぐにかせげるからしんぱいしなくてもだいじょうぶです」と、ぼくをはげますかんじで言いました。それからつづけて「かていきょうしといいんじゃないですか。わりがいいですしね。わたしもがくせいじだいはけっこうやりましたよ」と言いました。ぼくは「へえ、そうなんですか。すごいですね」と言いました。するとおにいさんは「いや、ぜんぜんすごくないですから。大学に行けるあたまがあればだれでもできますよ」と言いました。そのときおねえさんがよこから「あたしはむりですけどねー」とじょうだんぽく言いました。それをきいて、おにいさんとぼくはわらいました。
こうして、きづくと、ぼくがかていきょうしのアルバイトをして、しはらいのお金をかせぐという話になっていました。どんどん話が前にすすんで、なやんでいるひまはありませんでした。ぼくはけいやくしょにいろいろサインをしてハンコもおしました。かいひとDVDセットのお金のひきおとしのためのぎんこうのこうざをつくるてつづきもしました。DVDセットもかうことにしました。あたまきんとして、もっていった1万円をはらいました。1万円はこのためにひつようでした。
ぜんぶの手つづきがおわって少しせけん話をすると、おにいさんとおねえさんはこのあとまだだいじなようじがあると言っていっしょにカフェを出ていきました。おねえさんはさいごに「ほんとうにきょうはきてくれてありがとー。これからがんばっていきましょーね。やくそくだよー。わからないことがあったらいつでもけーたいにでんわしてきてね」と言って、りょう手でぼくの右手をギュッとにぎりました。このときおねえさんはぼくの右よこに立っていて、少しかがんでぼくの手をにぎったので、おねえさんのおっぱいがけっこう目のまえまでちかづきました。やっぱりこのときぼくのちんちんは、はれつするほどかたくなっていました。それから、おねえさんはお店のでいり口のドアから外に出るとき、えがおで手をふってくれました。ぼくもえがおで手をふりました。
そのあとぼくもすぐにかえることにしました。もう外はうすぐらくなっていました。ぼくはいえからでて一じかんくらいだと思っていましたが、二じかんくらいたっていました。ぼくはカフェに一人でのこされたので、じぶんがのんだアイスティとおねえさんがのんだアイスコーヒーのだいきんをはらいました。どちらも250円でした。おねえさんがのんだアイスコーヒーのだいきんをぼくがはらうのは、なんだかおかしいなあと少しだけ思いました。でも、おねえさんをわるく思うのはおねえさんをうらぎることだと思いました。それに、ぼくは男だから250円くらいおねえさんにおごらないといけないと思いました。ぐだぐだもんくを言うのはケチだと思いました。ぼくは、そんなことよりも、おねえさんとこれからまた会ったりできると思うとうれしかったです。べんきょうもアルバイトもがんばろうと思いました。ひと月16500円なら、なんとかがんばれると思いました。