五
おねえさんはせつめいが終わると「なんか、わかりずらかったこととかあるー」ときいてきました。ぼくは「だいじょうぶです。せつめいもわかりやすかったですよ」と言いました。おねえさんはえがおで「まじでー、よかったー」と言いました。
それから、おねえさんのけいたいでんわがふるえて、ブーッ、ブーッ、となりました。おねえさんはけいていでんわをもって「ごめんねー。ちょっとまっててー」と言ってから、立ち上がってテーブルをはなれていきました。おねえさんはお店のドアからでると、けいたいでんわでなにかを話しているようでした。
しばらくすると、おねえさんはぼくのところにもどってきました。それから、「これからさっき言ってた人がくるからー」とぼくに言いました。そのあとすぐに、わかいおにいさんが店に入ってきました。おにいさんはこん色のせびろをきて、少し大きくて黒いかばんをもっていました。かみがみじかくて、ごぶがりよりちょっとながいかんじでした。きっちりとしたまじめなサラリーマンみたいでした。ぼくはどんな人がくるのかふあんだったけど、そのおにいさんのすがたを見てあんしんしました。でも、これでたのしいデートがおわってしまったと思いました。ずっとかたくなっていたぼくのちんちんもいっきにやわらかくなりました。
おにいさんがテーブルまで来ると、おねえさんはおにいさんにせきをゆずりました。おにいさんはぼくに「どうも、はじめまして」と言っていすにすわりました。おねえさんは、おにいさんの左どなりのあいているテーブルのいすを少しずらしてきて、おにいさんの左どなりにすわりました。それから、おにいさんは、すぐにじこしょうかいをして、ぼくにめいしをわたしました。のみものはちゅうもんしませんでした。おにいさんはじこしょうかいがおわると、えがおで「せつめいはだいたいきいたと思いますが、わかりましたか」ときいてきました。ぼくは「はい。とてもよくわかりました」と言いました。すると、おにいさんは「では、くどいかもしれませんが、もう一どわたくしのほうからせつめいさせていただきますね」と言ってから、せつめいをはじめました。
せつめいのないようはおねえさんの話したことと同じでしたが、DVDセットのことについては、おねえさんよりもだいぶねっしんに話しました。おにいさんによれば、DVDにはおにいさんのつとめているかいしゃのしゃちょうのインタビューもしゅうろくされているそうです。おにいさんは「これがまたすばらしいんですよ。これを見れば、じんせいでせいこうできるひけつなんかも分かります。わたしなんか、にゅうしゃしたときにこれをみてしょうげきをうけましたからね」と言いました。そして、そのすぐあとに、「ところで、そのひけつってなんだと思いますか」ときいてきました。ぼくがこたえにこまっていると、おにいさんは「けつろんをさきに言っちゃうますとね、ひとつがことばなんです」と言いました。ぼくが「はあ」と首をかしげていると、「まあ、そう言われたところでピンとこないでしょうね。わたしが言っていることばというのは、とくにふだんなにげなくつかっていることばのことですね。じつはこれがその人のじんせいのほうこうせいをきめるんです。ことばってハンドルみたいなもので、そのハンドルさばきがけっかをきめるんです。しゃちょうのインタビューではそういうことについていろいろ語られているんですが、ほかにもおもしろい話がたくさんあります。くわしくはDVDをみていただきたいのですが、今からいしきをたかめておけば、しゅうしょうくかつどうがはじまるときには、かなりしゅういにもさをつけられますよ」と言いました。さらに、おにいさんは「われわれはただりえきをついきゅうするだけではなく、おきゃくさまのじんせいのおてつだいもさせていただいているんです。わたしはね、ささはらさんにはぜひいいじんせいをおくっていただきたいんです」と言いました。ぼくはおにいさんの言うことがよくわからなかったけど、そのDVDセットがなんとなくすごいものだと思いました。
そのあと、お金の話にもなりました。しはらいは、かいひとDVDセットのお金あわせてげっぷでするということでした。さいしょの2年は、月ごとにかいひとDVDセットのお金の分をたした16500円はらって、二年がすぎると、そのあとはかいひだけの3500円になるということでした。