表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

十三

 ぼくは、もうどうしていいのかわからなくなってきていました。じぶんがうそをついているような気もしました。がんばれば、しゅうに二三かいくらいのかていきょうしはできる気がしました。ぼくはうそをつくのはいやでした。クーリングオフをすることがただしかったのかも少しわからなくなってきました。もし、あいてのしていることがサギじゃなかったら、ぼくのほうがわるいことをしているんじゃないかという気にもなってきて、なんだかこわくなってきました。

 ぼくはとうとう「あのー、きのうおやにもそうだんしたんですが、はんたいされまして。ほんとうはクーリングオフするつもりはなかったんです」と言ってしまいました。ぼくがこう言ったとき、お母さんはおどろいたかおで「ちょっと、なに言ってんのよー」と言っていました。おにいさんは少しあきれたように「あのさー、きみのじんせいなんでしょう。おやに少しくらいなにか言われたからってかんたんにかんがえをかえるのは、あまりにもいしがよわすぎるんじゃないんですか。きみにはじぶんのいしってものがないんですか。いったい今いくつなんですかきみは」と言いました。お母さんはものすごくみけんにしわをよせながら、耳もとで「しょうひしゃセンターのことを言っちゃいなさいよ」と言いました。ぼくは思いきって「あのー、じつはですね。きょう、しょうひしゃセンターにいちおうそうだんしてみたんです。そしたらクーリングオフをすすめられたんです」と言いました。

 おにいさんはこれには少しおどろいたようでした。いっしゅんだまっていました。それから、おにいさんは「しょうひしゃセンターにそうだんしたんですか」ときいてきました。「はい」とそれにぼくがこたえると、おにいさんは少しあいだをおいてから「そこでなに言われたかしりませんが、われわれは、べつにやましいことはしてないですからね。ほうりつのはんいないでやってますし。うったえてもらってもぜんぜんかまわないんですよ」と言いました。このとき、ぼくはおにいさんのこえが少しいきおいがなくなったと思いました。それでぼくはちょっとだけ気もちにいきおいがつきました。ぼくは「だからクーリングオフしようと思いました。これはしょうひしゃのだいじなけんりですから」と、しょうひしゃセンターのおばさんからおしえてもらったことを言いました。すると、おにいさんはまた少しおこったかんじのこえになって「いや、こっちだってそんなことくらいわかってますよ。でも、いくらけんりだからって、いきなりいっぽうてきにけいやくをかいじょするっていうのは、ちょっとみがってでらんぼうだと思いませんか」と言いました。ぼくが「それはもうしわけないと思っています」と言うと、おにいさんは「じゃあ、もういちどかんがえなおしてくれませんか。こっちだってね、じぜんじぎょうでやってるわけじゃないんですよ。だから、それなりにお金はもらいますよ。りえきをださないとかいしゃとしてなりたたないですからね。とうぜんのことですよ。でも、われわれはそのお金にみあったサービスはちゃんとていきょうしてますからね。これはじしんをもって言えることです。それをサギかなんかのようにあやしまれていっぽうてきにけいやくをかいじょされるのは、こっちとしてはずいぶんりふじんな話じゃないですか」と言いました。ぼくが「それはわるいと思っています」と言うと、おにいさんは「わかりました。じゃあ、もう、こうしませんか。クーリングオフのゆうこうきかんは8日でしたよね。今すぐけつろんをださなくてもいいでしょう。もう1日くらいよーくかんがえてみてください。けつろんはそれからでもいいんじゃないですか」と言いました。このとき、ぼくはクーリングオフのてつづきをもうしてしまっていることがちょっとあたまにあったけど、それよりもはやくおにいさんとの話をおわりにしたいと思いました。それで「じゃあ、分かりました。そうします」と言ってしまいました。すると、お母さんはあわてて耳もとで「ちょっとまって。てっちゃん、もうクーリングオフのしょるいをおくったんでしょ。そのことを言ったほうがいいんじゃないの」と言ったので、ぼくもやはりそうだと思って、いそいでそのことを言おうとしました。でも、ちょうどそのあいだにおにいさんは「じゃあ、またちょっとかわりますね」と言って、でんわをおねえさんにかわってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ