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十二

 ぼくはとうとう「あのー、ぼくクーリングオフすることにしまして」と言いました。すると、おねえさんはとてもびっくりしていたようでした。いっしゅんだまっていました。それから、大きなこえで「えー、なんでー」と言いました。ぼくはおねえさんをうらぎることがとてもつらいと思いました。でも、なんとかがんばって「やはり、お金をはらうのがたいへんだからです」と言いました。おねえさんはまた「えー、なんでー」と言ってから、「てつじさん、かていきょうしするんじゃないのー」と言ってきました。ぼくは「まあ、そのつもりだったんですけど」と言って、ことばに少しつまってしまいました。すると、お母さんが耳もとで小さなこえで「やっぱりべんきょうがたいへんだからって」と言ったので、ぼくは言われたとおりに「やっぱりべんきょうがたいへんだからです」と言いました。おねえさんは「そうなんだー。でも、きのうちゃんとがんばるってやくそくしたよねー」と言いました。ぼくは「やくそくやぶったのはわるいと思っています」と言いました。すると、おねえさんは「なんかすごいショックなんだけどー」と言ってから、少しあいだをおいてから、「ちょっとまっててねー。切らないでよー」言いました。それから、でんわをまえの日にとちゅうできたおにいさんにかわりました。

 おにいさんはでんわにかわるとすぐに「ささはらさん、どうしたんですか」ときいてきました。ぼくが「クーリングオフをすることにしました」とこたえると、おにいさんは「それはわかりましたけど、りゆうはなんなんですか」ときいてきました。ぼくは「やっぱりべんきょうがたいへんそうで、かていきょうしができそうにないからです」と言いました。すると、おにいさんは「いやー、少しかていきょうしをするくらいならできるんじゃないですか」と言ってきました。ここで、ぼくはまたことばに少しつまってしまいましたが、お母さんが耳もとで、「せんこうしているがっかが、とくべつたいへんなところって」と言うので、ぼくは言われたとおりに「ぼくのせんこうしているがっかは、べんきょうがとくべつたいへんなところなんです」と言いました。すると、おにいさんは「うーん」と言って少ししてから「いや、でもどうだろうね。いがくぶとかだったらまだわかるけど、ささはらさんはこうがくぶなんですよね。たしかにりけいはべんきょうがたいへんとはいうけど、しゅうに二三かていどのかていきょうしならできるんじゃないですか」ときいてきました。ぼくは「そうですねー。でも、やっぱりぼくにはたいへんそうだなーって思いまして」と言うと、おにいさんは「そうですかねー。がくせいじだい、わたしにもこうがくぶのともだちがけっこういて、まいにちアルバイトをやってるような人もいましたけど、そういう人でもちゃんとそつぎょうしていましたよ」と言いました。ぼくが「はあ、そうなんですか」と言うと、おにいさんはすぐに「いや、もうおねがいしますよ。せっかくけいやくしたんじゃないですか。もったいないですよ。ささはらさんならじゅうぶんにできます。もっとじぶんにじしんもってください」と言いました。ぼくは「そうですねー。じしんはもちたいですけど、こんかいはちょっと」と言いました。すると、おにいさんは「あのね。そうやってにげてばっかりいると、このさきなにもできないですよ。せっかくじぶんをかえるチャンスじゃないですか。ほんとうにもったいないですよ。きのうも話しましたけどね、こういうときにはっすることばがだいじなんです。ささはらさんはどうしてこういうときにできないときめつけるんですか。どうしてここでできるって言えないんですか。それはささはらさんのわるいくせだと思いますよ。なんだってやってみないと分からないじゃないですか」と言いました。ここでぼくが思わず「すいません」と言うと、おにいさんはきゅうにおこったこえになりました。おにいさんは「いやいや、すいませんじゃなくてさあ。きみじしんのもんだいでしょう。それにね、すいませんって言うくらいならさあ、こちらとしてはやくそくしたことをちゃんとじっこうしてくださいって話ですよ」と言いました。ぼくはおにいさんのおこったこえをきくと、手がブルブルふるえてきました。このとき、お母さんはとてもしぶいかおになって、ダメだダメだとくびをよこにふっていました。

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