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迷宮に飲まれるその日まで

作者: アリア

 迷宮の中に佇む一つの王国。

 そこには3人のランドメーカーと73人の民が暮らしていた。

 総人口が100人にも満たない王国を、はたして王国と言っていいのか。

 それでもそこでは、皆家族のように仲良く暮らしていた。

 国民が少ない分、国民一人ひとりの絆は強固なものだった。

 もちろん、ランドメーカーも民から愛され、民を愛していた。

 そんな、小さくも、豊かな国にも事件は起こる。

 毎日、毎日飽きることなく宮殿に問題が持ち込まれる。

 重大な事件から、くだらない事件まで、王女の「触らぬ神に祟りなしのキノコ」の元に持ち込まれていた。


「どっちでもいい、次」

 今日何人めかの民からの報告。

 目玉焼きのソースと醤油で彼氏と喧嘩したとか。

 そんな報告、いちいちしなくても良いし、こっちは独り身な故、少しだけ、少しだけ嫉妬を感じてしまう。

 民からそんな恋愛相談を受けるのは、民から本当に愛されてるからと考えると少しは嬉しいが。

 恋人の居ない私からすれば迷惑なものだ。

 そんなことを考えてるうちに次の民が入ってきた。

 今度は、どんなくだらない案件だろうか、今から頭が痛くなる。

「どんな、用事だ?」

「マーヨネーズキング・ピュアセレクトが花粉症です」

 別に、花粉症でもいいだろう。

 また、くだらない用事か次の民を呼ぼうかな。

「違うんです、被害者が出たんです。ピュアセレクトのくしゃみにかかった人間が肥満になってるんです」

 確かに大変な事件かもしれないが、そんな程度かって感じだった。

「で、誰が犠牲になったんだ」

「風に柳のラディッシュです」

 ため息が出る。またあのダメ忍者か。

 ラディッシュは同じランダメーカーの忍者だった。冒険に出れば頼りになるが、馬鹿で、変態でどうしようもない屑だった。

 おおかた今回も、目覚めのキスをして欲しいからわざと肥満になった。そんなオチの気もする。

 だから、私は迷うことなく宣言する。

「わかりました。ラディッシュは国外に追放します」

 今度という今度は許したくなかった。ただでさえ忙しいのに私の仕事を増やして。

「そんな事を言わずに目覚めのキスをしてください。ラディッシュは僕を守って犠牲になったんです」

 どうしたものか、正直な話、ラディッシュに目覚めのキスをするつもりはなかった。というか、したくない。

 ただ、ラディッシュはこの民を守ったのも事実、そのせいで犠牲になった。肥満になったと考えれば救ってやりたい気もする。

「お願いです。ラディッシュにキスしてください」

 私は、最後の確認を取るためにその民に質問した。

「本当の事を教えて欲しい。私は一度だけ目覚めのキスをする必要がある。もし君が嘘つきならそれを治すために使いたい。君は嘘つきか?」

「ラディッシュにお金をもらいました」

 私は、黙って彼の頬にキスをしてやった。

 もちろんこのは、後ラディッシュには罰を与える。

 どうせラディッシュは罰を与えても喜ぶんだろうな今から憂鬱だ。

 その前に休憩を取ろう、少し疲れた。

 

 今日も王国は騒がしかった。きっと明日も騒がしいんだろう。

 迷宮に飲まれてなくなるその日まで、私たちは楽しく暮らすんだ。

 そうだ言い忘れてた。次の日、私にもキスをしてくれと、王宮の前には列が出来ていた。 


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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 迷宮キングダムの小説はなろうでは珍しく、また面白く読ませていただきました。 アリアさんが迷宮キングダムを楽しくプレイされている様子が伝わってきました。 主にホラーを書かれて…
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