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PSYCHIC -underworld-  作者: buutonton!!
第一章 白神 誠也
6/8

始発

竹田は暗い暗い森の中にいた。

さらにその中の小屋にはもう一人男がいる。

前大俵の秘書である真木である。

竹田は震える手で拳銃を持っていた。

銃口は真木に向けられている。

「お願いします、殺さないでくださいっ。」

真木は小屋の中で壁に寄りかかっている。

「上の命令は絶対だ!」

竹田はトリガーをひこうとした。

真木の悲願する声をなるべく聞かないようにして、竹田はトリガーを引ききった。

あんまり音は覚えていない。

その時の真木の様子は見ていない。

竹田はコインを動かなくなった真木に向けて投げ、走って逃げた。

どうして私は人の命を奪っていかなければならないのだろう。自分が死にたくないという恐怖から人を何人も殺してきた。

竹田はなぜか上からPSYを使用することを禁じられていた。コインを投げたのは、この事件がPSYと関係していることをわかってもらうためだ。

やがて警察が捜査に入ってくれることを願おう。

半泣きになりながら、拳銃を持って暗い暗い森の中を竹田は走り続ける。

しきりにこぼれてくる涙を拭きながら。

上の命令は絶対だ。

世界は一部の人間によって動かされてゆく。


☆★☆★☆


朝、再びスクランブル交差点を待ち合わせ場所として、白神と朴は変装して歩いていた。

そして、牛丼のチェーン店である牛丸に私たちはいた。

「いよいよ今日が勝負だ。力合わせて行くぞ。」

はい、と私は言い、お互い牛丼を頬張った。

そして、朴の車に乗車し厚生労働省まで向かった。車の中は良い香りがする。お互い、最期の晩餐かもしれないと思って牛丼を食して来たため、流石に緊張して、一言も話さずに向かった。私は知らないうちに手汗がびっしょりだった。

やがて厚生労働省のビルが見えてきた。

「ここだ。」

私は朴について奥の部屋に入っていった。

ここにこの事業のことを知っているのは押尾しかいない。私たちは堂々と地下に向かった。

やがて、私たちはボイラー室に入った。

朴は棚をよけようとした。

だが、重くてよけられない。

「手伝いますよ。」

二人で棚をどけるとパスワードロックのついた扉があった。

「こんなに普通の人間と協力しあったのははじめてだ。」

朴は言った。

「私も殺し屋と協力したのははじめてですよ。」

朴はそうだろうな、と答えてパスワードロックを解除した。

中に入るとパイプ椅子に座ったごつい警備員がいた。

こちらの様子を伺っている。

「奥の薬品資料をチェックしたい。」

そう言って警備員に近づいていく。

「だから…すまん!」

朴はその瞬間にポケットからスタンガンを取りだし、警備員を気絶させた。

「よし、これ持ってけ。」

朴は御守りをくれた。

「頑張ろうな。」

はい、と力強く私は返事した。

私は薬を2本飲み干しトランシーバーの電波を合わせた。

朴もヘッドホンをつけ、マイクテストをしたらお互い別れて走っていった。

一つ目のドアが立ちはだかる。

私は固唾を飲んだ。

『解除するぞ。行けるか?』

「はい、行けます。」

ロックの解除された電子音が鳴り、扉が開き始める。

開ききったところで、辺りに静寂が走る。

はぁ、ここで私は死ぬかもしれない。

銃弾を防げても毒薬を打たれたら死ぬ。

でも、もう引き返せないんだ。

覚悟して私は走り始めた。

あちこちに銃弾が飛んでくる。

止まれやら動くなやらの声が響く。

私はデスクを踏み台に飛び込み、一人の男につかみかかった。背後に回り、味方を打たせたあと、回し蹴りを喰らわせ、気絶させた。

『白神、大丈夫か。』

トランシーバーから朴の声が聞こえてくる。

「まだ余裕ですよ。」

『なら、解除するぞ。』

再びロックが解除された。部屋はとても巨大で吹き抜けである。真っ直ぐ走っていって階段を降りたら次のドアがある。

私はものすごい早さで通路を走った。

周りに銃弾が飛んでくる。

階段の前に大きな木箱がたくさんおいてある。私はジャンプして木箱に飛び込み、さらに床まで飛んで一人の男にドロップキックを喰らわせた。後ろから二人の男が走ってくる。私は前転をして銃弾をかわし、一人の男につかみかかった。その男の拳銃を掴むと、もう一人の男に肩を打たせ、男に殴りかかった。ドアに近づこうとすると、後ろから一人、男が走ってくる。

「動くなぁぁ!」

私は慌てて手をパーにして差し出した。

力を込めると、冷風が手から発射され、

見る間に男は凍ってしまった。

『怪我してないか?』

「まだまだ大丈夫だ。」

私は微かな声で話した。

『最後は7人も警備員がいる。しかも、全員小型ライフルを持っているぞ。いけるか?』

「誰かの銃を奪って全員打ちます。」

『…なるべく足を狙え。殺すなよ。』

「わかってます。」

『あと、最後に…ここまで協力してくれてありがとな。』

急に朴がそんなお別れみたいなことを言い出し、つい涙がこぼれそうになった。

「お礼を言わなければならないのは私です。今まで本当にありがとうございました。」

『じゃあ、開けるぞ。』

私はポケットにトランシーバーを閉まって、ドアが開くのを待った。

随分時間が掛かるようだ。厳重なロックなのだろう。

しばらくして、解除音がホールに鳴り響いた。

ドアの目の前にタイヤ付きの木箱がおかれている。私はこれを盾にして横に進んだ。

ものすごい銃弾が私を襲ってくる。

いつ木箱が壊れないかとひやひやする。

横に移動し続けると、大きめなガラスの破片が落ちていた。おそらく誰かがうち損ねた際のものだろう。

ここから一番近い警備員は…いたいた。

しかもまだ弾は入っている。私はガラスの破片をその警備員に投げつけた。…ヒット!私は立ち上がって警備員のところまで走っていった。

「出てきたぞ!打て!」

私はその警備員にドロップキックを喰らわせ、投げ飛ばした銃をキャッチした。

誤って転んだが、仰向けのまま全員の足を見事に撃ち抜いた。警備員は全員うずくまっている。私はもう襲ってこないだろうと安心して立ち上がった。

「…なんとかいったぞ。」

『……あ……まず……い……』

電波が悪いのか?そう思ったが、その瞬間嫌な予感が押し寄せた。

もしかして、捕まった?

まさかとは思ったがそれっきり通信は途絶えてしまった。

私は自分のことより、いつも周りの人のことを考えてしまうという性格からか、地上に戻ろうと走り出そうとした。その時だった。

背中に寒気を感じた。とても冷たいものが背中から、やがて足へと流れていった。

手に持っていたトランシーバー、そして、今まさに接続をしようと思っていたUSBを、私は腕の力がなくなったかのように地面に落とした。

目の前にはものすごい形相の押尾がいた。


☆★☆★☆


竹田は未来開発のオフィスで新聞を読んでいた。

『謎の連続殺人。現場にコイン。』

号外が出た。全く見つからなかった筈の秘書3名の遺体がついに発見されたのだ。

その号外を見て、竹田はにやついていた。

「これ、うちの事業に絡んでんのか?」

後ろから大久保は話しかけた。竹田は少し挙動不審になった。

「さ、さぁ?もしこの事業が絡んでいたとしても、うちの会社は関係ないはずです。」

そうか、ならよかったと大久保はコーヒーカップを持ちながら自分のデスクに戻っていった。

やっと掲載された!最初は週刊誌にでも情報をリークしようかと思ったが、流石にそれはいけないだろうと思い、黙って待っていたが、やはり警察はこれを見つけてくれた!果報は寝て待てとはこういうことか。

しかし、これで仮にこの事件が解決したとしても私は死刑だ。この事件が解決しそうなところで、私は海外に逃亡しよう。国際手配されても文句は言えない。だが、少なくとも事件解決と同時に死刑だけは避けたい。これからも恐らく私は殺しを続けなければならないだろう。私はそのたびにコインをおいて行き、事件解決へと導くんだ!


☆★☆★☆


押尾はこちらに近づいてくる。

私は額に汗をびっしょりかいていた。

押尾は黙って右手にUSBを、左手にトランシーバーを取ると同時に握り潰し、粉々にした。

私が驚愕した顔で見つめていると押尾は口を開いた。

「今はこんなのもあるんだなぁ。超運動能力だってよ。」

私はいつの間にか尻もちをついていた。

押尾は私の目の前にしゃがむ。

「今は私を殺しても構いません。でも、朴さんをどうするつもりですか。」

「別に、危ない情報がバレそうだったから、ちょっと捕まえてやっただけだよ。

心配すんな。殺しはしねぇ。」

押尾は続ける。

「お前にはな、自力でこの一連の事件を解決してもらいたい。」

「どういう意味ですか。」

「そのうちわかる。」

押尾は立ち上がって出ていこうとしたが、再びこちらを向いて、口を開いた。

「この事業はな、お前の想像しているものよりもっと強大な力で動かされているんだ。俺にはどうすることもできない。」

押尾は立ち去っていった。最後のほうが少し涙声だったのが少し気になる。

そうか、押尾のさらに上の上がまだいるのか。

これからどうしたらいいのかわからないまま、私は地上に戻るため、ふらふらと歩き始めた。


☆★☆★☆


国原が自宅にいるとき、電話がかかってきた。

『白神が出ていったぞ。』

「本当か。」

またあの加工音声男から電話だ。

『国原、押尾の様子おかしくないか?』

「なぜだ?」

『この事件を解決してほしいとか白神に言ってたぞ。』

「…ほっとけ。あいつなりの自分の考えが芽生えてきたんだろう。」

『余裕だな。それより、大丈夫なのか?押尾の愛人取り上げるようなことして。』

国原は島崎と共にいた。ソファに二人で座り、国原は島崎に肩を組んでいる。

「もともと、こいつは俺の愛人なんだよ。心配すんな。それよりお前は大久保のことを心配しておけ。あいつは本気で都市開発を進めている。俺らの闇の計画がバレたらどうなることか。」

『闇の計画、か。俺たちにとっては幸福になるための計画だけどな。』

国原は少し笑った。

「そうだな。じゃあ、切るぞ。」

国原は電話を切った。すると、すぐさま、島崎は国原に抱きついた。

「押尾もバカな野郎だな。こんな簡単に騙せるなんて。」

「騙すだなんて、人聞きの悪い言い方しないで。あなたのことが好きだからやったまでよ。」

「お前はさすがだな。」

国原は島崎を強く抱き返した。


☆★☆★☆


「そうだったのか。」

大久保は大俵の見舞いに来ていた。

「大俵、心配するな。俺はお前の分も頑張ってこの事件をよい方向に導くよ。」

大俵は安心した表情をした。

「それにしても、大久保。もとの事業は進んでいるのか。」

「あぁ、もちろんだ。今度、総合病院と大学を新設する。それと、なるべく地域のバリアフリー化もする予定だ。…この病院も一部リフォームする予定だ。」

ここまでいうと、大俵は泣きそうなのか笑いそうなのかわからない顔をした。

「大久保、お前を見てるといつも勇気をもらえる。こんな泥まみれになっちまった日本の社会の中にまだこんなに輝いている人間がいるとは。俺はお前を誇りに思うよ。私も頑張らなくては。」

すると、逆に大久保が泣き始めた。

「どうしたんだよ。」

「俺の描いてきた父の夢を叶える筈の計画が、いろんなやつによって壊されちまって、でも、」

大久保は続ける。

「俺のことを励ましてくれてありがとう。」

大久保はその場にたち膝をついた。

大俵はたち膝をついた大久保の肩を優しく叩いた。

お互い頑張ろう。そう言って大久保は帰っていった。


☆★☆★☆


白神は橋を渡っている。

すると、向こうから人が歩いてくる。

迷彩服にヘルメット、美少女系のアニメキャラクターのお面。

どこかで見覚えのある。

まさか…まさかな。

あいつは今、押尾に捕まっているはずだ。

話しかけぬまますれ違っていった。

私は立ち止まって後ろを見た。

あいつらしき人間は私をお構い無しに歩き去っていく。

あいつが裏切るはずがない。

よし、振り出しには戻ってしまったが、

もう一度この事件について調べ直そう。

絶対にこの事業を正しい方向へ導くんだ!


To be continued

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