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転移者を探す伯爵令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/08/29

「お嬢様、今出せる案内人は女冒険者ササキになります」


「F級の薬草探しです。お嬢様、よろしくお願いします」


「F級・・・」


 私はエミリア・グレイツ。

 伯爵家の娘だわ。


 大事な試練なのに・・・F級・・・



「お嬢様、有名な冒険者はザビーネ様が軒並み雇われました」

「そう、お姉様が先を越したのね・・・」



「ねえ?ねえ?私を雇って下さいよ」

「・・・グスン、お願いしますわ」



 私たち姉妹は試練を受けた。この転移者が良く現われる森で有益な転移者を探して客人になってもらう。

 有益な異世界人を迎えたら伯爵家の跡取りになれると長老が決めたの。



 異世界人の姿は黒髪に黒い瞳だわ。

 神話や昔話にも出てくる。


 月のない夜のような黒髪よ。ササキさんも黒髪だけど・・・・


「あの、その眼鏡のような物は・・・」

「ああ、これ、目が光に弱くて・・・」


 博物誌で読んだわ。

 まるで北国の民が雪の反射から目を守るように、木の板を眼鏡のようにかけ。

 見えるギリギリぐらいに水平に長い孔が開けられている。




「依頼は異世界人の捜索ですね」

「はい・・・そうです。有益な異世界人です」



 とりあえずササキさんを雇って森に向かう。




 ☆☆☆転移者の森



「「「魔獣狩り反対!魔獣狩り反対!」」」

「魔獣のいる森を守れ!」



 森の中を進むと、マダムとおじ様たちが横にスクラムを組んで何かをやっていた。

 あら、異世界人ですわ!


「冒険者ですね!魔獣狩りをするのですか?」

「ここから先は通しません!」


「そんな。違います。是非、私と一緒に屋敷に来て下さいませ!」


 ササキさんが服を掴んでツンツン引っ張りますわ。


「やめた方がいいですよ。確かに都会にいて電話で反対する奴らよりも立派ですが・・・」


「意味が分かりませんわ」


 その時、ササキさんが異世界人達の背後を指さし。


【魔獣だ!】

 と叫びましたの。


 確かにいましたわ。あれは三ツ目グリズリー。口から涎を流していますわ。



「フン、その手には乗らない!」

「帰れ!帰れ!」



「さあ、お嬢様、避難しましょう!」

「ええ、あの方々は?」

「本望でしょう」


 後ろから『ギャー』と悲鳴が聞こえますわ。

 異世界人の行動は理解不明ですわ。


 それからも森で捜索を続けましたの。



 そしたら、やっと異世界人を見つけましたの。一人ですわ。男性です。



「初めまして、エミリア・グレイツと申します。異世界の方ですね」


「ウ~ヒヒ、お姫様キター!僕のスキルは転売屋さ」


「テンバイヤー?」


 説明を受けると仲買人のようなことをするらしい。


 また、ササキさんが服をツンツン引っ張る。

「やめた方がいいですよ」

「どうしてかしら?」

「それは・・・・」


 その時、大勢の足音が聞こえましたわ。


「オ~ホホ、あら、妹に先をこされましたかしら?」

「お姉様」


 クラウ規模の冒険者を引き連れていますわ。


「そこの貴方、私の方に来なさい。お父様とお母様は私を溺愛しておりますの」

「うわ。悪役令嬢キター!行く!行く!」


「待って下さいませ!」




 先に声をかけたのに奪われましたわ。グスン。



「お嬢様、実は異世界人の家を知っていますよ」

「ええ、それは本当かしら?」


 ササキさんに案内されて行くと、泉のほとりに家があった。あれは瓦、貴族の家のようだけども小さい。上級平民、いえ、中級平民ぐらいの家の規模だわ。

 あまり期待出来ないわね・・・


 マダムが出てきたわ。



「こんにちは。吉田さん」

「あら、梓ちゃん」


 二人は顔見知りらしい。


 話を聞いたら、家が転移して玄関は異世界につながっているらしいわ。


「実は・・・有益な異世界人を探しておりますの」

「そう、おばちゃんだから役に立たないわね。私のスキルは『家』で過ごすみたいなものだから・・」


「そうですか・・・」

「お嬢様、おいくつ?」

「はい、16歳ですわ」


「あら、あら、あら、16歳なのに、お肌の手入れがなっていないわね」

「あの、化粧は良いです・・・」


「お嬢様、吉田さんの言う事を聞いた方が良いよ。吉田さん50歳だわ」


「ええー!」


 驚きを隠せない。50歳なら老婆だわ。だけど若々しい。三十代にしか見えないわ。



「そうね・・・化粧品はこの世界で再現出来ないし・・そうだわ。泥パックを教えてあげるわ。この世界の泥は何か違うのよねえ」


「吉田さん。汚染されてないしミネラル成分が沢山あるみたいだよ」



 顔に泥を塗った。これで本当にお肌が良くなるのかしら。



「おにぎりをあげるわ。サランラップで巻くからね」

「有難うございます」



 私達は森を後にした。


 結局、グレイツ家の跡継ぎはお姉様に決まったわ。

 私は屋敷を出て領内で家を借りた。



「グスン、民のための政治をしようと思ったのに・・・」


「お嬢様、まあ、気長に泥パックを普及させましょう。策はあります。まずはお嬢様から泥パックをやって下さい」



 ・・・孤児院の子に女神教会の敷地で泥団子を作ってもらい納品、それで美容した私を社交会で披露する。



「あら、エミリア様・・・・お肌が・・・何か化粧品を変えましたかしら?」

「泥を塗りましたわ」

「嘘!」

「ええ、本当です。女神教会から提供されました。女神教会の庭で採取したものですから安全ですわ」

「まあ、試してみますわねえ。分けて頂けないかしら」



 ボチボチ売れてきたわ。

 それから・・・



「泥パック頂戴!」

「泥パック欲しーの!欲しーの!」

「泥・・・泥・・!」


 老若男女泥を欲しがったわ。


「皆様、どうされたのかしら?」


「それが、グレイツ家が化粧品を買い占めた!だから家内に頼まれてこっちに来たのだ!家内が不機嫌だから何とかしたいのだ!」


「そうよ。しかもグレイツ家、値段をつり上げて売っているのよ。信じられない」


「そう・・・」



 王妃殿下や王女殿下の愛用の化粧品まで買い占められて陛下がカンカンだと聞くわ。

 お姉様が何故化粧品を買い占めたかは分からないわね。


 異世界人が外れだったのだろう。異世界人は外れ当たりの差が激しいと聞くわね。


 有益な異世界人はいないかしら。



「お嬢様、泥パックの偽物が出てきます。牛舎の泥を使う業者が出てきましたよ。ブランド化しましょう。お値段を上げます」


「それは・・・」

「実際に、聖魔法をかけたらその値段になります。鑑定書もつけましょう。消費者の安全のためです」


「あの、私の名はエミリアですわ」

「私はアズサ・ササキです」


 そう・・・・いつの間にかササキさんはいる。

 彼女も地味にすごいけど。

 どこかに有益な異世界人はいないかしらね。


 また、森に探しに行こうと思う日々だわ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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