第3話 得宝
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この大陸は、魚竜混雑の世界――仙と魔と妖が闊歩する天下であった。武を修める者は、凡人と同じく最も底辺に位置する存在でしかない。
武者の修为は、地盤・中盤・天盤の三段階に分けられる。
武雲は中盤の初期。彼が殺した二人の女性は、一人が中級道童、もう一人が高級道童。等級だけ見れば、武雲が高級道童を倒すことなど不可能なはずだ。
(いくら武者が強くとも、同格なら自衛できる程度。修道の者を殺すことなどできまい。あの者たちは空を飛べるのだから)
だが、至近距離での不意打ちなら話は別だった。
天盤――無数の武者が認める最高の境界。それは凡人たる肉体の極限。しかし仙や魔、鬼や妖には、さらに上位の存在がいるという。
森の奥へと駆け込んだ武雲は、振り返って遠ざかる女の姿を見やり、一抹の憂いを覚えた。
(仙家の連中が瀏陽城の者を見逃すかどうか……だが、俺に後悔はない)
荆棘をかき分け、進むべき道はただ一つ。前に進むことだ。どこへ向かうかについては、武雲にも見当がつかない。とにかく、瀏陽城には戻れない。
ここは妖獣の森の外縁部。さらに奥へ進めば、妖獣も次第に増えてくる。幸い、彼の身法は確かで、たまに出くわす一、二頭の野獣が彼を傷つけることはできなかった。
山鶏一羽を仕留め、火を起こして腹を満たした後、武雲は再び歩みを進めた。
やがて夜が訪れ、周囲から狼の遠吠えや虎の咆哮が聞こえてくる。前方にそびえる山を見上げ、武雲は足を速めた。山中で洞窟でも見つけ、休もうと考えたのだ。
その時、虚空に一筋の光が走った。
(流星……?)
暗夜を裂くように、長い尾を引いて天際から――彼のいる方向へと滑空してくる。
「まさか、また追ってきたのか!」
武雲は呟くと、周囲を見渡し、前方の密生した荆棘の茂みに目を留めた。衣服が裂け、肌に刺さる痛みをこらえ、彼はその中へもぐり込んだ。
驚いたことに、荆棘の奥には洞窟が口を開けていた。
好奇心に駆られ、武雲は中へと足を踏み入れた。武者の鋭い視覚を頼りに洞内を見渡すと、一つの石室があることに気づく。中に入った彼は、思わず飛び上がらんばかりに驚いた。まず目に入ったのは、無残な骸骨だったからだ。
(落ち着け……)
肝を据えて、武雲は一歩前に進んだ。骸骨は洞窟の地面に座禅を組むようにしており、その脇には桃木の箱が一つ。
箱を取り上げ、積もった塵を吹き飛ばす。錠はかかっておらず、きしむ音と共に蓋が開くと、中から眩い光がほとばしった。
光の源は、一枚の獣皮の手札の下からだった。
光に惹かれるように、武雲は手札を一瞥するだけにとどめ、懐にしまい込んだ。
その時初めて気づく――手札の下には、五つの螺紋を刻んだ丹珠が並んでいた。
(妖丹……!?)
武雲は胸の内で驚愕した。五つの妖丹、全てに螺紋が刻まれている。妖丹を孕むことができるのは、天妖だけだ。一道の螺紋は、一劫を経た天妖の証。
妖が仙となるには、必ず雷劫を渡らねばならない。一度の雷劫ごとに、丹珠に一道の紋が現れるという。
この五つの丹珠の中で、最も螺紋の多いものは、なんと五道。五劫を経た天妖――天妖の中でも極めて強力な存在に属する。
(知っている……一道の雷劫を経た天妖さえ、瀏陽城の全員を屠るには十分だ。だからこそ、あの街は毎年、数百もの生贄を捧げて妖獣の機嫌を取るのだ)
以前、武雲は書物で妖丹に関する記述を目にしたことがあるだけだった。現実で目にするのは初めて。胸が高鳴る。
(これは……宝物だ。こんな妖丹、仙家でさえ奪い合うだろう)
興奮に震えるその時、斜めから人影が襲いかかってきた。
「っ!」
武雲は慌てて身をかわし、禹歩を踏んで石室に残像を残す。同時に、妖丹を手に掴み、雷光の如く洞窟を飛び出して逃げ去った。
翌日の黎明――
「もうあなたの体に道術を刻んだわ。逃げられないのよ。今使っている身法を教えてくれたら、殺さないでいてあげる。洞窟で手に入れた妖丹も、一つだけ分けてくれればいい。どう?」
密生した山野の森の中で、白衣の少女が三尺の青鋒を手に、枝から枝へと軽やかに飛び移る。通り過ぎた草木は、無形の力によって散り散りになっていった。
「殺さない?ばかな。でなければ、一晩中俺を追いかけるか?仮に貴様が殺す気がなくとも、貴様の同門が俺を見逃すと思うか?」
前方を走る少年は振り返りもせず、軽やかに駆け抜ける。両足で地面を軽く蹴るたび、燕雀のように十数メートル先へと飛び移り、音もなく、変幻自在に動き回る。
少女はあの道童。少年は、武雲であった。
その時、武雲の手には、切り揃えられた獣皮を綴じた古書が握られていた。獣皮は黄ばみ、表紙には「不滅心経」の四文字。彫刻されたようなその文字は、淡い黒い気を放ち、万物を呑み込むような威圧を漂わせている。
この古書こそ、洞窟で手に入れた手札だった。
武雲は走りながら、すでに書の表紙を開いていた。まるで命の危険など気にしていないかのように。
「仙には仙訣があり、鬼には鬼術があり、魔には魔功があり、妖には妖法がある。天地に長く存する者は、その一を極めざる者なし。然り、仙は情無く、鬼は怨みを抱き、魔は殺戮を嗜み、妖は悪を為す。それらの無情、深怨、嗜殺、万悪――どうしてかくも強悍無比で、長生不滅なのか?唯、武者のみが百年に満たぬ命で、屈辱に耐え、蟻の如く零落するのか?」
書の冒頭は、そんな疑問で始まっていた。字体は蒼勁として力強く、龍の如く、鋒の如し。疑問の中に、千層の怨念と不滅の戦意が込められている。
その文字に触発されたか、武雲はわずかに眉をひそめ、読み進めた。
「我らが知る通り、天盤境界は武道の究極の境地。無数の武者が憧れる境である。萍を踏み水を渡り、一日にして山川大河を往復し、百歩の外より妖魔を斬り除き、心の欲するままに、為さざることなし。しかし、真になんでもできるというのか?ははは……天盤の巔に達したところで、どうというのか?結局、満天の飛仙、真如、妖魔鬼怪らに脚下に踏み躙られるだけ。地盤、中盤、天盤――これはいったい誰が定めた等級と道筋なのか?世の人々は愚かだ。ただあまりに蒙昧で、既存の武学の極限論に騙され、道を見失っているのみ!」
毎日2話ずつ更新します。次回もお楽しみに!




