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第10話

 5月末に行われる一学期中間テストまで残り1週間。


「一人じゃ絶対に勉強なんてできねえよ」


 という本郷の泣き言が発端となり、俺たち4人は今日の放課後、勉強会をすることになった。

 ちなみに富北高校では、テスト1週間前になると、全ての部活動が活動中止となるためサッカー部の本郷も放課後に勉強会ができるということになる。


「良かったら俺の家で勉強しない?ファミレスだとお金もかかるし周りの声もうるさそうだし」


 心優しき浜中が自宅を提供してくれた。


「浜中、ありがとう。お前はいいやつだなあ」

「浜中殿、感謝する」


 もちろん俺にも異論はない。勉強会が浜中家で行われることが決定した。




 学校から自転車に乗ること約20分、とある住宅街に着いた。

 住宅街に入って2つ目の十字路を左折し、すぐ右手に、白色の壁を基調とした2階建ての一軒家が見えた。


 どうやらここが浜中宅みたいだ。

 玄関前のスペースに自転車を置き、家の中に入れてもらうことに。

 玄関入ってすぐ正面に階段があり、俺たちは2階の浜中の部屋に行った。

 浜中の部屋は八帖程の広さで、見たところ掃除がしっかり行き届いていた。

 勉強机にベッド、本棚が2つと物が少なく、空間にゆとりがあった。


「このテーブルなら十分な大きさでしょ」


 そう言って家のどこかからか、長方形の大きなローテーブルを持ってきて、部屋の真ん中に設置した。

俺たちは浜中の用意してくれたローテーブルを囲み、各々勉強を始めた。

 本郷と浜中が数学Ⅰのワークを取り出し、細川は現代社会の教科書を取り出している。俺は物理基礎の教科書を取り出して眺めていた。

 ふむふむ、等加速度直線運動において、v = v0 + atという式が成り立ち、vは速度、v0は初速度、tは時刻、aは加速度であり・・・

 よく分からん。

 中学の理科と高校の理科はまるで別教科のように内容が全然違う気がする。

 高校の理科(物理)はどうしてこう、アルファベットが多く出てくるのだろう。

 中学の理科は実験も楽しく、比較的好きだったが、高校に入ってからは理科が嫌いになってしまった。同じような経験をしているやつは他のもいるはずだ。

 とりあえずは公式を暗記して、問題を解いていく。公式の意味は分からないが、ワークの練習問題は八割方解けているので少し安心した。


 勉強開始30分後

「コンコン」と、ノック音の後にドアが開かれた。


「みなさんいらっしゃい。よかったらどうぞ」


 ふくよかな体をした女性が、オレンジジュースとドーナツを部屋に持ってきてくれた。体形で誰なのか一発で分かる、浜中の母親だ。


「これはこれは浜中殿の母上殿!感謝申し上げる!」


 細川が真っ先にジュースとドーナツを受け取り、勉強は一時中断となった。


「ドーナツか」


 俺はドーナツを手に取り、それをまじまじと見てそうつぶやいた。


「どうした裕介、ドーナツ苦手なのか?」

「いや、そういうわけじゃないさ」


 ドーナツを見つめるのやめ一口、口の中に入れる。

 美味しい、が、やはりキングドーナツの方が美味いな。

 今日もあの店では。キングドーナツが今頃売り切れになっているのだろうか。いや、あの日と違って今日は平日だからなくならないか。


「改めて思うが、俺はお前たちと友達になれて良かったよ」


 オレンジジュースを飲みほして空になったコップを「トンッ」とテーブルに置いて本郷がそう言った。


「俺も同意である。我々は実に良い友人となりえた」

「しかし、こうやってお互いに仲良くなれたのも、佐々木君のおかげだね」


 3人とも、うんうんと頷きながらご機嫌な様子をしている。

 確かに俺たち4人がこうやって友達になったきっかけを作ったのは俺かもしれない。きっかけはそうかもしれないが、お互いのことを良いと思わなければ関係は長続きしない。

 有難いことにこの1か月間、俺たちは友好的な関係を続けることができている。

 

 とりあえずは一年間、ずっとこの関係を維持していきたいものだ。


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