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山田浅右衛門 吉睦〜斬痕見立て帖〜  作者: やはぎ・エリンギ
第二章 影斬りの刀

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命あるだけで

しばらくして――


 薄明かりの差し込む町医者の一室。

 吉睦は、白い天井をぼんやりと見上げていた。

 肩と腹に巻かれた包帯の感触がじっとりと重い。


 しばらくして、襖がわずかに開き、誰かが入ってくる気配がした。


 「……生きてるか、吉睦」


 録之助だった。

 彼もまた、腕と脇腹に分厚い包帯を巻いている。

 やつれた顔で、無理に笑おうとしているのが分かった。



---


 「……なんとか、な」


 吉睦が苦笑する。

 しばしの沈黙の後、二人は同時にため息をついた。



---


 「――あいつ、逃げたな」


 録之助が、ぽつりと言う。


 「ああ……型に執着したまま、どこかへ消えた」


 「これで終わったのか?」


 「さあな。だが、俺たちは生き残った。それでいいじゃねぇか」


 不意に、二人の間に、安堵と虚しさが同時に満ちる。



---


 春の光が、薄く畳の上に差し込んでいた。

 町の外では、すでに新しい季節が始まろうとしている。



---


 「まったく……命があってよかったな」


 録之助が、ついに笑った。


 吉睦も、ようやく笑みを浮かべる。



---


 その笑い声だけが、しばらく病室に残っていた――


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