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山田浅右衛門 吉睦〜斬痕見立て帖〜  作者: やはぎ・エリンギ
第二章 影斬りの刀

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鍛冶屋での聞き込み

本所・鍛冶町。

 町の一角に構える、古びた刀鍛冶の工房。


 吉睦と録之助は、雨に濡れた暖簾をくぐると、炉端で鋼を打つ音が聞こえた。


 「ごめんよ、仕事中でな……何か用かい?」


 鍛冶屋の親方が、額の汗を拭いながら振り返る。


 「伏見屋を通じて“景光写し”を仕立てたのは、あんたで間違いないか」


 吉睦が巻紙を見せると、親方はじっとそれを見つめた。


 「……間違いねえ。“景光写し”、あれはちょっと変わった注文だったよ」


 「変わった?」


 「普通は見た目の華やかさを気にするもんだが、あの客は“実用第一”“斬れることだけ考えてくれ”と何度も念を押した。  刃文も波のように荒く、厚みも攻めに攻めてある。おかげで鍛えるのに骨が折れたよ」


 録之助が割って入る。


 「その客――“小森彦次郎”はどんな男だった?」


 「やせぎすで、無愛想。だが眼だけは、まるで死人のようだった。刀を手に取った瞬間だけ……妙に、嬉しそうに笑ったのを覚えてるよ」



---


 吉睦はしばし沈黙した。


 「……その男、他にも刀を注文した様子は?」


 「いや、“景光写し”一振りだけだ。だがな……」


 親方は声を潜めた。


 「奴が帰ったあと、工房の裏口に“試し斬り”された竹が一本転がってた。――並みの力じゃあんな風には斬れねぇ。  刀がよほど“斬り手”と呼吸を合わせていたんだろうよ」



---


 吉睦と録之助は、鍛冶屋を後にする。


 雨は止み、町には鈍い光が射していた。


 「――小森は“自分の刀”でなければ気が済まない。奴にとって、人を斬るのは“儀式”なんだろう」


 録之助が低く呟いた。


 「斬り痕を見れば分かる。あれは鍛冶屋と斬り手、二人で仕上げた“作品”だ」


 「次は……小森の過去を洗う。御前試合の記録を探そう」


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