表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山田浅右衛門 吉睦〜斬痕見立て帖〜  作者: やはぎ・エリンギ
第二章 影斬りの刀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/36

現場検証と調査

深川・町外れ、斬殺事件の現場。


 雪解けの泥に、まだ乾ききらぬ血の筋が残る。

 吉睦は屈み込み、指先で土をすくった。

 ほんのりと温もりを帯びた地面――斬られたのは、夜明け前か。


 「――胴を一息で断った跡だな。力任せじゃない、“抜き打ち”の型だ」


 隣で見ていた録之助が、現場に落ちた草履の裏を見つめる。


 「足の向きが逆だ……斬られた奴は逃げようと振り返った、その瞬間に斬られている」


 「斬り手は、相手の動きに合わせて“正確に型をなぞった”」


 「型をなぞる……?」


 吉睦は立ち上がり、再度周囲を見渡した。


 「“刀の型”だ。犯人は、ただ殺すだけじゃない。“試技”のように順序立てて人を斬っている」


 与力が息を呑んだ。


 「人を、稽古台に……!」



---


 第一の被害者宅。

 吉睦と録之助は、被害者の妻から話を聞いた。


 「夫は、普段通りに仕事に出ただけで……何の揉め事もありませんでした」


 「恨みや借金など、心当たりは?」


 「全く……。ただ……あの日の朝、見知らぬ男が店の前に立っていたと、夫がぼやいていたのを覚えています」


 「どんな風体でしたか?」


 「背は高くも低くもなく、顔立ちも思い出せません。ただ、すごく無口で、じっとこちらを見ていたそうです……」



---


 次に、斬殺現場近くの茶屋。


 茶屋の老女は、事件の夜を思い返す。


 「夜中、変な音がしてな……見に出たら、白い着物の男が立っていたんだよ。あの辺り、雪解けで足元が悪いのに、まるで濡れてなかった」


 「白い着物……?」


 「裾も袖も、真っ白。刀だけが、やけに光って見えたよ……」



---


 伏見屋――本所の書物問屋。


 帳場にいた主が、帳簿を開いて言う。


 「確かに“景光写し”は注文されたが、あれは二月末に“本人”が取りに来た。痩せた男で、年の頃は三十路前後、無口だったが眼だけは恐ろしいほど据わっていた」


 「その男が“彦次郎”と名乗ったのか?」


 「名は……確かに“彦次郎”と聞いた。ただ、身分証文は見せず、代金も一分銀でぴたりと支払った」


 「その刀は?」


 「細身で、長さは三尺三寸。刃文が荒々しく波立っていて、鞘の色が薄墨。名工物ともちょっと違う、妙な迫力があった」



---


 伏見屋を出ると、外は冷たい雨が降り出していた。


 録之助は呟く。


 「……この足で、鍛冶屋にも聞いてみるか。“景光写し”を鍛えた職人なら、何か知っているかもしれん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ