第93話 上級ダンジョン最後のボス戦ですよ
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「まずは、これを飲んで下さい」
僕はシオさんに頼んで作って貰っておいた、ケルピーの肉から作った丸薬をアリーシャさんの口の中に放り込んだ。
食事として食べて貰った方が美味しくて良いんだけど、この素晴らしい美容効果を手軽に上げたい時のために、作っておいて貰って良かった。
「んぐっ! ゴクッ・・・い、いったい何なのよ、これは?」
「あはは、内緒です♪」
僕は病気の治療の対価に何でもしてくれると言うので、サインのお礼としてスキルオーブや魔法スクロールも習得して貰う事にした。
「えっと、じゃ、次はこれを習得して下さい」
僕は<虚空庫><鑑定><幸運>のスキルと<雷属性魔法><氷属性魔法>のスクロールをテーブルに並べていった。
「これってスキルオーブよね、それに魔法スクロールじゃない?」
「何のスキルとスクロールなのか言いません。それでも習得してくれますか?」
「ひょっとしたら、一生僕の奴隷になるスキルかもしれませんよ?」
「ウフフ、命を救って貰ったんだもの、奴隷ぐらいなりますとも♪」
アリーシャさんは、そう言うとテーブルに置いたスキルオーブと魔法スクロールを習得する度に、驚き戸惑っていた。
「流石に、冗談って訳じゃないんだよね?」
「あはは、どうでしょうね♪ 後は僕の事は全て内緒でお願いします。
もう一つサービスするならアメリカが知りたいような情報は聞いても無駄と言っておきましょう。
絶対に手に入れる事は出来ませんから。
じゃ、僕はもう時間が無いから行きますね、またどこかで会いましょう」
「あっ! ちょ・・・行っちゃったか」
「フゥ~ しかし、凄い人も居たものね。未だに信じられないわ。まさか、命まで救われる事になるなんてね」
「それに、さっきのスキル・・・やっぱり間違いない。これって買うと何千億円もするんじゃ? あはは、信じられない事するわね♪ 笑うしかないわ」
「フフフ、三日月陽か・・・絶対、もう一度会わなきゃね♪」
僕は帰る前にアリーシャさんのパーティメンバーである、スタンリーさん達にも忠告だけしておくことにした。
<気配感知>スキルで上階の部屋に5人居る事は分かっていたので、直ぐに向かう事にする。
忠告のついでに脅しも入れておくために僕は<気配遮断>と<隠蔽>スキルを使い部屋の窓から入っていく。
スタンリーさん達に気付かれないように、ソファーに座ってからスキルを解除した。
「うおっ! てめえ、何時からそこにいやがった?」
「ど、どうして? アリーシャの所に居たんじゃないの?」
「「・・・・・・」」
「参ったな。俺達なんて何時でも殺せるって事かい?」
「挨拶が遅れましたけど、少し近くまで来たんで、忠告だけしに来ました」
「ほほ~ 聞いておくよ」
「僕達の事は忘れて下さい。それから、もう僕達には近寄らない方が良いですよ?」
「・・・分かった。素直にその忠告は聞くことにするよ」
「ありがとうございます。約束ですよ、スタンリーさん」
「でも、スタンリーさんの様に皆が素直かどうか分かりませんから、もし約束を破ったらどうなるか魂に刻んであげますね」
「ま、待ってく・・・ぐあっ!」
僕は横柄な輩も居たので、久しぶりに<威圧>スキルを強めに放つ事にした。
少し強すぎたのかスタンリーさん達は、声も出せずに蒼白な表情をし、滝の様に汗を掻いている。
「実は貴方達には少しだけ怒ってるんですよ。
僕が危険だと分かっていて、よくアリーシャさんだけに任せましたね?
最低でも何かあった時の為に、隣の部屋とかで待機するべきじゃ無かったんですか?
特に、そこの女性二人は反省するべきですね」
「「ヒィ! ヒィィィ」」
「僕は何時でも何処でもスタンリーさん達の背後に立てます。もう、会う事は無いと思いますけど御注意を」
僕はそれだけを言い残してドアから外へ出て、<威圧>スキルを解除した。
「ブハー! ハァーハァーハァー、な、なんて殺気だ・・・」
「い、いかん、ショックが強すぎたのか痙攣してやがるな、早くアリーシャを呼ばないと」
「おいっ! しっかりしろ」
僕はダンジョンに行く時間が無くなったので、部屋に戻る事にした。
約束した2時間まで10分程しかないけど、此処からなら十分間に合うだろう。
部屋に戻ると皆は、食事の用意もしてくれていたので、ソファーに腰掛ける事にした。
「おかえりなさいヨウ様」
「ただいまです。ところでミナミさんは、どうなったんです?」
「焦らないの。今アヤメが最後の仕上げをしてるから」
しばらく待つとナギサさんの言った通り、浴室の方からアヤメさんに連れられてミナミさんがリビングへやってきた。
ミナミさんは胸元が開いているセクシーなドレスに身を包んでいた。
化粧をしているためか眼もとがクッキリしている。
セミロングの赤い髪は後ろに括られていたのに、今は髪を下ろしており軽くウェーブが掛かって、気品のある女性のような出で立ちになっていた。
「うわ~~ 凄いですね、綺麗ですよミナミさん」
「・・・分かった、それ以上言わないでくれ」
「どちらかと言えば可愛い顔だと思っていたんですが、凄く綺麗な大人の女性って感じになりましたね」
「うぅ~ 参ったから。もう勘弁してくれよ」
「ウフフ、それぐらいにして上げて、ミナミさん褒められ慣れてないんだから」
「仕方ないよね~ ヨウ君ってば、年上の女性がタイプなんだからさ♪」
「フフ、どうですか? 少しは自分に自信が持てましたか?」
「ああ、怖い奴等だよな? 俺でもこんなに綺麗にしちまうんだからよ・・・
なんだよ、この肌艶にボサボサだった髪もツヤツヤになってるじゃないか。
指先から爪まで鍛冶職人に見えなくなっちまったよ」
「あはは、でも、最初から可愛い女性と思ってましたよ」
「あ~~~ お手上げだ。なあ、これなら俺でも抱いて貰えるか?」
「そ、その・・・ハッキリ言われると照れちゃうんですが、ミナミさんさえ良ければ、僕はとても嬉しいです」
「ほ、本当か? 良かった・・・リラ達には感謝しないとな、お礼って訳じゃ無いが、これから鍛冶は任せてくれよ、全身全霊で作ってやるからよ」
「フフ、明日の朝も、それだけ元気があると良いんですが」
「どういう意味なんだ? 気になるじゃねえか」
「んふふ、ヨウ君が好きなんでしょ? それなら大丈夫よ、耐えられると思うわ」
「まあ好きだけど耐えられるって? 俺は痛みには強いぞ?」
「ククッ! 痛みなんてチャチなもんじゃないよ♪ 大丈夫、今日分かるから」
「なんだよ、ちっと不安になってきたぞ?」
「皆さんが変な事言うから、誤解されてるじゃないですか」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「皆さんジト目はやめましょうよ」
それから皆で楽しく食事を取る事になり、僕は一応アリーシャさん達との事を皆にも伝えておいた。
「うわ~ ヨウ君また<威圧>スキル使っちゃったんだ」
「まあSランクだし、横柄な奴も居たから良いんじゃない?」
「そうですよ。あの人達なら少々の事なら大丈夫ですよ」
「少々の事じゃないけどね。でも、口止めは大事だよ」
「フフ、アリーシャさんって大した方ですね、心不全だったなら回復魔法があっても辛かったでしょうに」
「ねーねー? ヨウ君。アリーシャさんの裸って綺麗だった?」
「えっ? えっと、あはは、あんまりよく見て無いような・・・」
「そんな訳ないでしょ~ 惚けるって事は綺麗だったんだ。良いスタイルしてたもんね」
「でも、見ただけですからね、触っても無いですよ」
「あはは、そんなに焦らなくても、怒ったりしないわよ。これから、そんな事も増えるかもしれないしね」
「そそ、ヨウ君さえ気に入ったら、抱いちゃっても良いんだよ?」
「そんな事で、ヨウ様を嫌いになったりしないですもんね」
「フフ、ヨウ様でしたら変な女に引っかかる事も無いと思いますから」
「えっと、十分気を付けます・・・」
そして、皆と楽しくお酒を飲みながら新たな武器の話をし、ミナミさんと素敵な夜を過ごすことになった。
翌朝、目が覚めるとミナミさんは既に起きていたのか、顔を真っ赤にしていた。
「おはようございます。ミナミさん」
「ふあっ! お、おはよう」
「ん~ 今日も良い朝ですね~」
「ああ・・・な、なあ、何か途中から頭が真っ白になっちまったんだが。俺、変じゃ無かったか?」
「はい、とっても可愛かったですよ♪」
「あぅぅ」
「ところでミナミさん。まだ、起きるには早いと思いませんか?」
「う、嘘だろ? 待て、待ってくれよ」
「えへへ♪ 待った無しです♪」
途中からミナミさんが照れまくるのが可愛くなり、結構な時間イチャイチャしてしまった。
そろそろ起きる時間になったので、ミナミさんとリビングに行く事にする。
「なあ、このシーツ持って帰って良いか?」
「どうしてです?」
「言わせるなよな、その・・・なんだ俺、初めてだったからよ」
「あ~ そう言う事なら大丈夫ですよ<クリーン>!!!」
「お~~ スゲエな魔法って、便利過ぎるだろ」
「さっ、行きましょうか」
「ああ、そうしよう・・・って、悪い先に行っててくれ」
「連れてって上げますよ♪」
「うわわ! ちょっと、照れるんだが」
僕はミナミさんを抱っこしてリビングに下りると、皆ニヤニヤして此方を見ている。僕はもう慣れちゃったけど、ミナミさんは凄く照れていた。
「フフ、そんなに照れなくても、足腰が動かない気持ちは分かりますから」
「うぅ、なあ、男って皆ああなのか?」
「まさか~ 私達はドラゴンって言ってるぐらいよ?」
「ナ、ナギサさん~~~~」
「ウフフ、照れないのヨウ君は、こっちも超人って事よ♪」
「凄いのは体だけじゃねえんだな、全く凄い男だよ」
ミナミさんは照れながらも皆と楽しく朝食を取り、タクシーで家に帰って行った。
そして、僕達は今日いよいよ中央区本町上級ダンジョン地下30階のボスに挑戦するため、家を出ることになる。
新たな武器も手に入れたし、準備は万端と言って良いだろう。
サクサクと魔物を倒し、地下30階のボス部屋に入ると、そこにはレッドドラゴンが鎮座していた。
地下20階のボスとして出現したアースドラゴンより、かなり強そうだ。
「うわ~ 凄い迫力ね。流石に今までで一番強そうだわ」
「やはりドラゴンでしたね。火龍だしエンチャットは水属性にしましょうか、アヤメさんの開幕先制攻撃も<水属性魔法>でお願いします」
「分かったわ」
「後はせっかく壊れない武器を手に入れたので、<超振動>スキルも試して見ましょう」
「今まではドラゴンの鱗が硬すぎて、武器での攻撃が聞きませんでしたけど、其々部位破壊も狙って行きましょうか」
「部位破壊ってどういう事なの?」
「えっと、リラさんとノノさんは、何時も両足に攻撃して貰ってますが、今日は両足の爪と翼の鉤爪を切り離して下さい。
僕は尻尾を切断してみます。ナギサさんは弓で両目を、ツドイさんは心臓を破壊して下さい。
そして最後にアヤメさんがロングメイスで頭部へ思いっきり打撃を叩き込んで貰って角と牙を破壊して止めといきましょうか」
「私はボス戦初の近接攻撃になるわね」
「思いっきり打ちかましてやって下さい」
「ウフフ、任せて♪」
「皆準備は良いですか?」
「「「「「OKよ!」」」」」
僕達は其々の武器に水属性を付与すると、アダマンタイト製の武器が半透明になり淡く輝きだす。
続いて今まで使えなかった<超振動>スキルを発動し終わると、アヤメさんの巨大な<ウォーターボール>が、唸りを上げてレッドドラゴンに着弾した。
「GUGYAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
「行きますよ、ノノ」
「了解よ、リラ姉」
「「ハアアアアアアアアアアッ!!!!!!」」
両名が切り出す剣戟は、全く同じタイミングでレッドドラゴンの爪を容易く切り離し、次の瞬間には翼の鉤爪も宙を飛んでいた。
「うはー♪ 凄い切れ味よ」
「フフ、素晴らしい武器です♪」
既にレッドドラゴンの背後に回っていた僕も、大きなレッドドラゴンの尻尾を一撃の下に切り離すことに成功した。
驚いた事に、殆ど斬った手応えがない。
「ンギギッ! いっけえええええええええ!!!!!」
続くナギサさんの放った矢は、見事にレッドドラゴンの眼球を捉え、なんと矢は刺さる事無く貫通し、一矢で両目を破壊していた。
「フゥゥゥゥゥゥ! ヤッ!!!!!」
間髪入れず中距離からツドイさんの薙刀による突きが、レッドドラゴンの胸部に深々と突き刺さり、大量の血しぶきを上げていた。
これはもう、倒したんじゃないかと思うぐらい、レッドドラゴンの動きを止めていた。
最後にアヤメさんが飛翔しながら振り上げたロングメイスが、レッドドラゴンの頭部へ振り下ろされた。
「ドゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!」
地面に叩きつけられたレッドドラゴンは、見事に角と牙が叩き折られピクリとも動かず、そのまま光の粒子となって消えていった。
僕達6人は、ハイタッチして喜びを分かち合う。
「「「「「「ヤッタアアアアアア!」」」」」」




