第8話 まさか、ここまでの話になるなんて
<VIPルーム>
「ふぁ~、アヤメさん。ここって凄い豪華な部屋ですね~」
「うふふ、私も初めて入ったのよ。最低でも部長級じゃないと使えない部屋よ」
「どおりで豪華だと思った。僕なんかがこんな部屋使っても良いんでしょうか?」
「ヨウ君は鑑定スキルオーブ持ってきたんだから、超VIPなのは間違いないわ」
「えへへ! そう言われたら良い気分ですね」
「もう、ヨウ君は緊張感ないわね? 私の方が緊張しちゃうわ」
「コンッ! コンッ!」
「はい」
「カチャ! 待たせたね藤崎君。そして、彼で間違いないね?」
「はい、彼が鑑定スキルオーブを持ち込まれた三日月様です」
「お待たせ致しました三日月様。私は課長をしております岩永と申します、以後お見知りおきを」
「い、いえ、僕なんかに丁寧な挨拶ありがとうございます」
「フフ、それでですが社長が三日月様と御相談したいと申しておりますので、御足労とは思いますが、お越し願っても宜しいですか?」
「は、はい」
「ありがとうございます。藤崎君もお連れするよう社長からのご指示だ」
「わ、私もですか? は、はい分かりました」
僕とアヤメさんはエレベーターに乗せられ、上階にある会議室に案内された。
会議室の中へ入ると、数十人の偉そうな人達が座っており僕を見ている。
僕はメチャクチャ緊張してきたけど、アヤメさんも緊張してるのを見たら少し楽になった。
「呼び付けてしまって申し訳ない。私が此処の社長をしている瀧見だ」
「は、はい、僕は三日月と言います。ギルドには何時もお世話になってます」
「あはは、そんなに緊張しなくて良いよ。ところで、今日<鑑定>のスキルオーブを売るかどうか相談しに来たらしいね、現物を見せてくれないだろうか?」
「はいい、これがそうです」
僕は緊張して噛みながらも、会議室のテーブルの上に<鑑定>のスキルオーブを置いた。
「ほほ~! 確かにスキルオーブだね。実は魔道具を使ってこれが本物の<鑑定>のスキルオーブか確かめさせて貰いたいのだが了承を貰えるかね?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう。では、斗沢部長お願いするよ」
「はい、では確認致します」
斗沢部長と言う方はテーブルの上に置いてある<鑑定>のスキルオーブに、何か水晶玉のような物を置いている。
すると、水晶に何か光の文字が浮かび上がってきた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
スキルオーブ<鑑定>
万物を見通すスキルを習得出来るオーブ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「「「「「「「「「おお~~~」」」」」」」」」
「ほ、本物の<鑑定>スキルオーブだ!」
「なるほど、確かに本物のようだね」
「ところで三日月君。このスキルオーブの価値は知っていたのかな?」
「はい、ネット情報や雑誌にも乗ってる有名なスキルオーブですから、日本では東京に一人だけしか取得していない希少なスキルなんですよね?」
「フフフ、皆聞いた通りだ。私は斗沢部長の案で話しを進めたいと思う、氏橋支部長も異議はないね?」
「ぐっ・・・ありません」
「ああ、失礼した三日月君。では、相談に移りたいのだが、説明の方は斗沢部長から聞いて貰いたい」
「はい、宜しくお願いします」
「はい、私は部長の斗沢と言います。早速、三日月君と相談と言うより交渉と言った方が良いでしょう。我々は、この<鑑定>スキルオーブを100億で売って頂きたいのです」
「はひっ?」
な、何か今とんでもない金額を聞いたような気がしたんだけど・・・
後ろを振り返り、アヤメさんの顔を見たら目を大きく見開いて驚いている。
ま、まさか、僕の聞き間違いじゃないのか?
「フフフ、この<鑑定>のスキルオーブの価値は知っていても相場までは知らなかったみたいですね。言っておきますが聞き間違いでは無く100億です。我々に100億円で売って頂きたいのです」
「あわわ! そ、そんなに高額とは思いませんでした」
「・・・ですが、三日月君とは今後とも信頼関係を築いていきたいので正直に言います。この<鑑定>スキルをオークションに掛ければ100億円の数倍から数十倍の値段で売れるのが予想されます」
「数十倍ですか? ええっと・・・一千億円!!! うわあ~!」
「このスキルがオークションに出れば、日本だけではなく世界中から買い手が殺到するでしょう。
正直な所もっと値段は跳ね上がるかもしれません。
ですが、我々には100億円を支払うのが限界です。
ですから、我々に出来る最大限の優遇を付けさせて貰いますので、何とか売って頂きたいのです。
もし、我々に売っていただければ大阪でもオークションが開催出来るようになります。
西日本の冒険者から、かなり喜ばれると思います。
優遇には我々が所有する50階建て超高級マンションの最上階室を用意し、最高のコンシェルジュをお付け致します。
また、専任の受付嬢をお付けしますので、自宅での素材買取りも出来るようになります。
そして、移動に関しましても我社と提携している会社から高級車と専任運転者を付けますので、何時でも何処にでも無料で利用出来るようになります。
他にも様々な優遇が御座いますので、どうか是非我々にお譲り下さるようお願い致します。
ちなみに、優遇とは別になるのですが、この買い取り金額ですとギルドカードのランクはSランクとなり、ギルドの最高特典が利用可能となります」
「三日月君。聞いた通りだ、私からも是非お願いしたい。この通りだ」
「ガタッ! ガタタタタタタタタタタタタタタッ!」
社長以下、数十人の幹部連中が立ち上がり、新人冒険者である僕に見事なお辞儀をしてくれている。
僕はどうして良いか分からなくなり、グリンと首を回しアヤメさんの方を見た。
アヤメさんは、人間がこんなに早く首が動くのかと言った速度でブンブンと首を振っている。
あぅぅ~~! 仕方がないので覚悟を決めて僕の希望を伝える事にした。
「わ、分かりました」
「ガバッ! で、では我々に譲ってくれるのかね?」
「はい、でも一つだけ条件を聞いて貰っても良いでしょうか?」
「何かね? 我々に出来る事なら何でもしようじゃないか」
「はい、そんなにも凄いスキルなら是非、いつもお世話になっている藤崎さんに習得して貰いたいです。藤崎さんが<鑑定>スキルを習得してくれるなら、お譲り致します。藤崎さん本人が嫌ならその限りじゃ無いんですけど」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ三日月君。<鑑定>スキルを習得するなら上級ダンジョンを担当している者の方が適任だと思うのだが?」
「そうなんですか・・・では、<鑑定>スキルオーブはオークションに掛ける事にします」
「ま、待ちたまえ三日月君。氏橋支部長、今から発言を禁止する」
「ぐぅ・・・」
「では、藤崎君の了承があれば、我々に譲ってくれるのだね?」
「はい、喜んでお譲り致します」
僕の言葉を受け社長以下、数十人の幹部達の首がグリンと一斉に動き、アヤメさんに注目している。
ひょっ? う、嘘でしょ? やめて、そんな目で私を見ないで~~
「藤崎君。藤崎君にも出来るだけの待遇と報酬を約束しよう。どうか、大阪ダンジョンギルドのためにも宜しくお願いしたい。この通りだ」
先程、僕に向けられたように今度は藤崎さんに社長以下、数十人の幹部達が頭を下げ見事なお辞儀をして頼んでいる。
あわわわ! ヨ、ヨウ君。何て条件出すのよおおおおおおおおおおおおおお。
社長にこんな事されたら断れないじゃないのよ~~~~~
「わ、分かりました、私で宜しければお受けいたしますから、どうか頭を上げて下さい」
「ガバッ! そうか、そうか、良く言ってくれた。ありがとう藤崎君。斗沢部長。良くやってくれた、三日月君と藤崎君の気が変わらない内に手続きを」
「分かりました社長!」
それから会議室では色々な書類が持ち込まれ、僕とアヤメさんは何十枚もの書類にサインをしていく事になった。
僕のギルドカードは黒色になりSランクの文字が刻まれている。
日本では僕が二人目のSランクのようだ。
そして、僕のギルドカードに100億円が入金され口座の桁が跳ね上がった。
アヤメさんは超高額なスキルを習得するため、健康診断の診断結果もいるらしく、保険とか何やらで僕より大変みたいだった。
ようやく、全ての書類が書き終わり、アヤメさんが<鑑定>スキルを習得した。
「はい、問題なく習得致しました。ステータスに反映しております」
「そうか、ありがとう藤崎君。斗沢部長、岩永課長、藤崎君のサポートをしっかり頼むよ」
「「畏まりました」」
「さあ、これから忙しくなるぞ皆早速、大阪ダンジョンギルドでのオークション開催に向けて準備をしてくれ」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
「さて、氏橋支部長」
「・・・はい」
「君はちょっと疲れているようだね。しばらく自宅療養していたまえ、此方から連絡するまで休んでて貰おう」
「そ、それでは今、私がやっている仕事は・・・」
「ああ、そんな心配はしなくても宜しい、全て斗沢部長が引き継ぐから」
「ぐぐぐ・・・わ、分かりました」
「斗沢部長。今聞いた通りだ。上級・中級ダンジョンは君が仕切りたまえ、それと初級ダンジョンは岩永課長。君が担当だ」
「「はい、分かりました。精一杯頑張らせて頂きます」」
「あはは、私は有能な部下がいて最高の気分だ! 今日は飲もうじゃないか」
「「はっ! お付き合い致します!」」
「では、私は三日月様をお送りして参りますので失礼します」
「ああ、今日はありがとう。藤崎君には、これから色々と頼りにすると思うが宜しく頼むよ」
「はい、私こそ宜しくお願い致します」
「三日月君も、本当にありがとう。君のお陰で大阪ギルドも活気づくだろう」
「いえ、僕の方こそ色々とありがとうございました」
僕はアヤメさんと共に会議室を出て、廊下を歩いて戻る事になる。
「三日月様」
「は、はいい! 藤崎さん・・・なんか雰囲気が怖いんですけど?」
「うふふ、気のせいでは無いでしょうか? 少し彼方でお話があるのですが、お越し願えますか?」
「は、はいい! 喜んで」
僕は半ば強制的にアヤメさんに連れて行かれ人気のない所までくると、いつもの喋り方になる。
「ヨウ君」
「は、はぃぃ」
「食事を奢りなさい」
「喜んで奢らせて頂きます」
「宜しい、このまま行きますよ」
「えっ? ギルドから一緒に出ても良いんですか?」
「もう、そんな小さい話なんて、どうでも良くなっちゃったのよ・・・」
「着替えたら直ぐ行きます、良いですか?」
「はい」
無理やりアヤメさんに<鑑定>スキル覚えて貰っちゃったから怒られるかもしれないけど、食事の時にシッカリと謝っておこう。
ちょっと怖いけど、またアヤメさんと食事に行けるのは嬉しいな♪
「あれっ? アヤメ私服に着替えちゃって、何処行ってたのよ?」
「色々あったのよ・・・ナギサには明日詳しく話すわ」
「ほえ? もう帰るの? どーして今言わないのよ」
「話す事が多すぎてね・・・明日食事にでも行きましょ」
「・・・なんか分からないけど、今日も年下の彼ですか? ニシシ」
「そーよ、今日はおもっきり高い料理奢って貰うんだから、じゃ明日ね」
「ありゃ・・・うわ~! 堂々とギルドから同伴ですか、アヤメどうしちゃったんだろ。何か変ね」
「まっ、明日分かるか」