第82話 ついでに消しちゃいましょうか
<スズカ視点>
私達を乗せた車は、大きなビルに入っていき、専用エレベーターへ案内される。
エレベーターは恐ろしいぐらいのスピードで上昇していき、気付いた頃には地上50階に到着したようだった。
どうやら此処がヨウ君の部屋らしい・・・部屋と言っても階層全体が部屋だなんて。
既に驚き疲れていたところへリビングに通され、その光景に思わず固まってしまった。
「いらっしゃい皆さん、急な招待だったから迷惑じゃ無かったですか?」
「本日は、御招待に預かりありがとうございます。しかし、見事な景色に驚きましたわ」
「あはは、ありがとうございます。どうぞ座って下さい。飲み物でもお持ちしますよ」
私はヨウ君が勧めてくれた通り、フカフカのソファーに腰掛け、展望台のような景色に目を奪われていた。
あまりにも現実離れした景色に茫然となってしまったため、何時の間にか隣に座っていたヨウ君に気付く事が出来なくて驚いてしまった。
「スズカさん、お久しぶりですね元気でしたか?」
「わっ! ひゃ、ひゃい、元気です」
「あはは、驚かせちゃったかな?」
「ごめんなさい、あまりにも凄い景色だったから驚いちゃった」
「僕も初めて見たときは驚いたよ、技術の進歩って凄いよね」
「良かった~私、田舎者だから都会では普通なのかと思っちゃった」
「あはは、僕も田舎者だから気持ちは良く分かるよ」
「ところで、夕食でもと思ったんだけど、まだ時間も早いから少し泳ぎませんか?」
「「「「「「「ええっ」」」」」」」
「あ、あの三日月様、泳ぐと言っても水着も用意しておりませんし」
「フフ、皆様の水着は用意しておきましたので、どうぞお選びください」
「せっかく来て貰ったんですから、楽しんで行って下さいね」
私達は予想もしなかった展開に汗を滲ませながら、リラさんの進めるまま水着を見に行くと結構際どいビキニの水着がズラッと並んでいた。
此処の女性達は皆スタイルが抜群だから予想はしていたが、やはりビキニの水着しかないようだ・・・
しかし、断る事なんて絶対出来ないので自分のサイズに合った物を試着してみる・・・
何とか大丈夫かなと、ホッと胸を撫でおろしていると、ママも苦悩の表情をしていた。
ママは私よりスタイルも良いぐらいなので、ビキニでも全然恥ずかしく無いと思うんだけど?
「どうしたのママ? 凄い汗掻いてるみたいだけど?」
「こ、困ったわ・・・まさかこんな事になるなんて予想外だったわ」
「ママはスタイル良いんだから、別にビキニでも変じゃないと思うんだけど?」
「アイナちゃん・・・実は若い頃に入れた刺青があるのよ。あ~もう、後悔しかないわ」
「あまり三日月様を待たせる訳にもいかないし、仕方ないわね・・・」
「なるほどね。えっと、どんな感じなのかな? へええ~綺麗じゃないですか、全然変じゃないわよ?」
私も見せて貰ったところ、ママの豊満な胸に青いバラのタトゥーが咲いていた、綺麗な白い肌をしているのでとても見栄えが良い。
「ありがとね。もう覚悟を決めたわ、さあ行きましょうか」
ママは深呼吸をしてから説明して貰っていた出口へ出る、私が見てもママに良く似合ってて良いと思うんだけどな。
出口を出ると、そこには青空が広がっており、リゾート地へ来たかのような、お洒落な空間に大きなプールがある。
私は軽く目眩がするほど驚いたが、待っていてくれたアヤメさん達を見て更に驚く事になる。
ヨウ君のパーティメンバーである5人の女性達は、スーパーモデルでも敵わない様な見事なスタイルで、冒険者の筈なのに美しい肌が眩しいぐらいだった。
「分かってたけど綺麗すぎでしょ? 自分がメチャクチャ恥ずかしいんだけど」
「あの方達は特別と思わないとですね。しかし、女を武器に出来ない事がこんなに辛いとは思いませんでしたわ」
「しかし、冒険者で、あのスタイルはないわ~世の中、不公平よね」
「姉さん達がそんな事いったら私はどうなるんですか?」
「スズカは三日月様のお気に入りじゃない? それに、スズカもスタイル良いくせに何言ってるのよ」
「そ、そんな事ないですよ~」
出口を出た所で話をしていたら、アヤメさん達に呼ばれて、とても解放感のある場所でテーブルを囲み、座る事になる。
「んふふ、ママさん色っぽいタトゥーですね」
「お恥ずかしいんですが、若気の至りです」
「とても似合ってますよ?」
私はキョロキョロとヨウ君を探していると、どうやら先にプールで泳いでいるようだった。
ヨウ君も此方に気付いたのか、プールから出て此方に歩いてくる。
「すみません、先に泳いで待ってました。皆さん、水着姿も良く似合ってますね♪」
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」
「んっ? どうしたんですか?」
「いえ、三日月様は流石冒険者なだけあって、凄い体をしているのに驚きました」
「凄いわヨウ君。鋼の様な筋肉じゃない?」
「服を着ているときは、全然分かりませんでしたが、凄まじい体ですね」
「ありがとうございます。ちょっとは冒険者だと信じて貰えたかな?」
「うふふ、そうね。凄いわヨウ君。メチャクチャ頑張ってるのが分かるわ、私も頑張らないとね」
「田舎者同士ですから一緒に頑張って行きましょうか」
「も~ どこまで強く成る気なの、ヨウ君?」
「まだまだ、これからですよアヤメさん♪ さっ、皆でビーチボールでもしましょうか」
私はビーチボールなんてやったことが無かったけど、皆と遊んでいる内に夢中になってボールを追い掛けていた。
メイクが落ちる事も忘れ、ボールを追い掛けながらプールへ潜り、思いっきり笑い楽しんだ。
休憩の時にはビーチチェアーに座り、美味しそうな果物が沢山入ったトロピカルジュースを出してくれた。
ん~ 凄い解放感♪ 都会に居るのが信じられないわ。
「ところでママさん、素敵なタトゥーですね~」
「お恥ずかしいです。消せる事なら消してしまいたいのですが、どうしても跡が残るので諦めているんですよ」
「ん~ 僕は似合ってると思うんですが、消したいなら消しましょうか?」
「ウフフ、そうですね。綺麗に消せるならお願いしたいですわ」
「分かりました。あっ! でもひょっとして、水着の中までタトゥーがあったりします?」
「えっ? ありますけど・・・」
「ん~ 出来るだけ見ない様にしますから、水着取って貰って良いですか?」
「まさか、本当に消せるのでしょうか?」
「んふふ、信じられないかもしれないけど、私達って冒険者なのに傷が無いでしょ?」
「そうですね信じますわ。どうか、宜しくお願い致します」
ママはヨウ君に深々と頭を下げ、水着を外し豊満な胸を曝け出している。
「ええっ? ママ?」
「流石に少し恥ずかしいですが、女は度胸もいるんですよ」
「あわわ、直ぐやっちゃいますね<ハイエストヒール>!!!!!」
私には何が起こっているのか分からなかったけど、ママの豊満な胸に咲いていた青い薔薇のタトゥーが光に包まれ消えていくときには薔薇も消えており、今までどこにあったのかすら分からなくなっていた。
「よし、綺麗に消せたみたいですね」
「も~ ヨウ君、別の所見てない?」
「み、見てませんよ、見えちゃったんです・・・」
「本当に消えちゃった・・・三日月様これは?」
「えっと、<ハイエストヒール>って言って<回復魔法>ってやつですね、アヤメさん達に協力して貰って練習したんですよ」
「そうなのよヨウ君ったら、蚊に刺された跡まで消しちゃうんだから」
「だからアヤメさん達って体に傷跡1つないんですね。でも、それって凄い事じゃ?」
「フフ、こんな事が出来るのは、世界中探してもヨウ様だけかと存じます」
「良かったらママさん達も、古傷とか消しちゃいましょうか?」
「「「「「「「本当ですか?」」」」」」」
「あはは、もちろんですよ」
それから私を含めママや姉さん達も、ヨウ君の<回復魔法>で生まれたてのような傷1つ無い体にして貰った。
当然ママや姉さん達は歓喜の声を上げ、とても喜んでいた。
「ありがとうヨウ君」
「まさか、こんな奇跡を見せていただけるとは、ありがとうございます」
「「「「「私達まで、ありがとうございます」」」」」
「いえいえ、でも内緒ですよ?」
「もちろんです」
それからも今まで食べた事がないような美味しい肉料理を御馳走になった。
なんの肉なのか聞いて見たら、ダンジョン産のケルピーの肉と言っていたが私には想像も出来なかった。
「ところでママさん。高級クラブの視察はどうでした?」
「はい、お陰様でスズカさんと相談して大体の構想は出来ました。新たな人材として女の子も10人ほどスカウト出来ましたので、2号店の方も円滑に回るようになりましたわ」
「お~ それは良かったですね。もうスズカさん、お店出来そうですか?」
「はい、私に出来るかどうか分かりませんが、あれからママに色々と教えて貰いながら一生懸命勉強してます」
「スズカさんも頑張ってますね。じゃ、明日にでも買いに行きましょうか?」
「えっ? ヨウ君。何を買いに行くんです?」
「あはは、スズカさんが経営する高級クラブですよ」
「ええっ?」
「も、もう、私にお店を任せて貰えるんですか?」
「もうちょっと時間が欲しいですか?」
「いえ、ヨウ君の期待に応えれる様に一生懸命頑張ります」
「分かりました。ママさんも良いですか?」
「もちろんですわ」
「ありがとうございます。それからアイナさん達5人なんですが」
「「「「「はい」」」」」
「出来れば最初だけでも結構ですので、高級クラブの方で働いて頂けませんか?」
「ええっ? 私達もですか?」
「はい。やはり、どうせなら超一流の高級クラブにしたいので、そこで働く人達も超一流の人が良いと思うんですよ」
「そう言っていただけるのは嬉しいですが、私達はとても超一流とは言えないかと・・・」
「あはは、謙遜するところも良いですね、ママさんの教育が良いのかもしれませんが、僕達の対応をしてくれた人は皆さんは、超一流と思ってますよ」
「もちろん、今日招待させて貰ったのは、超一流の女性になるお手伝いもしたかったんですよ」
「それで古傷を治して下さったのですね」
「んふふ、それだけだと思う?」
「まだ何かあるんですか?」
「いえ、もう何もないと言うか、すみません。仕込みは勝手にやらせていただきました、もう最後の仕上げだけなんですよ」
「一体何を・・・話が見えないのですが?」
「ん~ 百聞は一見に如かずですね。アヤメさん、皆さんをお願い出来ますか?」
「任せて。さあ、ママさん達は私達とお風呂へ行きましょうか。ヨウ君楽しみにしててね~」
「あはは、お願いしますね」
「えっ? 何故お風呂へ・・・」
私達は何故かアヤメさん達に連れられて、お風呂へ行く事になった。
プールにも驚いたけど、お風呂も豪華過ぎて呆気にとられる。
アヤメさん達に、私達の体の隅々までチェックされ、いくら女性同士と言っても恥ずかしかった。
異変に気が付いたのは、お風呂から上がりに髪を乾かすため鏡を見た時だった。
はい? 何故鏡に知らない人が・・・これって鏡じゃないの?
私達は訳が分からないまま服を着て、リビングに戻る事になる。
「うわ~ 皆さん凄く綺麗になりましたね、元々綺麗でしたけど見違える様ですよ」
「ヨ、ヨウ君、これって一体?」
「あはは、スズカさんも驚いたでしょ? 実は夕食に出したケルピーの肉って美容効果がメチャクチャ高くて、髪は艶々に肌はツルツルになるんですよ」
「「「「「「「ええっ!!!」」」」」」」
「そんな物聞いた事ないんだけど?」
「フフ、当然です市場には出た事はありませんから。ヨウ様にしか手に入らない希少品と思ってよろしいかと」
「やっぱり、あれって鏡だったんだ・・・嘘でしょ?」
「まーまーまー、これが私なの?」
「「「「「し、信じられないわ♪」」」」」
「あはは、高級クラブの件は断ってくれても良いんですが、もっとサービスしちゃいますよ?」
「ママ?」
「ええ、もちろん良いですよ♪ こんな良い話を断る気にはなれないですわ」
「すみませんママさん。我がまま言っちゃって」
「ウフフ、こんな素晴らしい体験をさせて貰ってるんですもの、当然の事ですわ」
「それでは、私達も頑張らせていただきますね、ありがとうございます」
それから話しはトントン拍子に話が進んで行き、明日の昼からヨウ君とリラさん、ママと私の4人で高級クラブを購入しに行く事になった。




