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第80話 見てて気分が悪くなる事ってあるよね


 僕達は、今日も中央区本町上級ダンジョンへ向かう為、ツドイさんが運転する車に乗り込んでいる。



「ちょっとツドイ、運転大丈夫?」


「大丈夫だよ・・・アヤメ、昨日頑張ったんだね?」


「んふふ、分かってくれて嬉しいわ♪」


「あの~ すみません。ツドイさん」


「謝る事じゃないよ。僕、幸せなんだからね」


「そー言う事よ。でも、5人いて良かったなって、ちょっと思ったりして」


「ククッ、そうだね。僕も必然だったんだなって思うよ」


「も~ 私達に分からない話は、そこまでよ」


「はいはい、三日後にしよーね」



 車の中で、ちょっと照れてしまったが、中央区本町上級ダンジョンへ着いた。


 今日も地下10階からダンジョンへ潜る事になった。


 運が良いことに地下10階のボス部屋には誰も居なかったので、サクっとボスを倒し、ドンドン階層を攻略していった。


 そして、ついに地下20階に辿り着いた。


 この階層は初めて来たので初見の魔物を探していると、直ぐに見つけることが出来た。


 魔物はコカトリスと言うらしい、<鑑定>して見た結果は石化の状態異常があるらしいが、僕達は<状態異常耐性>があるので問題ないだろう。


 コカトリスは他の魔物と比べると移動速度が速く、石化よりスピードの方が厄介な魔物だと思う。


 まあ、それでも僕達のスピードに比べたら大した事はないんだけどね。


 しばらく狩り続けていると、ようやくスキルオーブを持っている個体を見つけた。


 倒してみると<縮地>と言う、スキルオーブがドロップした。


 移動速度が速いと思ったら、このスキルの効果だったようだ。


 速度系のスキルは、とても有用なので僕達にとっても嬉しいスキルだった。


 また、素材とし憩羽と鶏肉がドロップするので、また職人さん達へのお土産が出来たので嬉しい限りだ。


 意気揚々と先を進んでいると、こんなに深い階層なのに大勢の人影が<気配感知>に捉えた。


 少し近づいてみると、どうやら自衛隊のような30人ぐらいの男性がいた。


 全員迷彩服を着ている。少し考えたが、一応顔も分かり難くしているし、別に隠れる程の事でもないかと思い普通に進む事にした。


 良く見ると自衛隊じゃなさそうだ。ダンジョン攻略部隊と書いてある。



「いつまで経っても鈍間だなお前は」 ドカッ!


「ぐはっ! す、すみません」


「こっちに来るなバカが!」 ドカッ!


「ガッ! ゲホッ、ゲホッ」


「あはは、なんだサッカーやってるのか? 俺も混ぜろよ」 ドカッ!


「グハッ! うぅぅ・・・」


「あはは、しかし、ボール代わりにも、ならねえ奴だな」



 新人の部隊員だろうか、複数人に蹴られているのが目に入る。


 自衛隊のような所では、酷く見えても普通の事なのだろうかと思って見ていたが、段々と気分が悪くなってきたので止めに入る事にした。



「あの、少しやり過ぎじゃありませんか?」


「な、なんだ冒険者か? えらく若いな・・・此処までどうやって来たんだ?」


「おぉ~ また良い女連れてやがんな」


「なんだ坊主、あんな良い女達を護衛につけて、こんな所まで来たのかよ?」


「嘘だろ? あんな女達にコカトリスを倒せるわけねえだろが」



 どうやら僕だけでなくアヤメさん達も気分が悪かったのか、ドンドン不機嫌になっていくのが分かる。



「えっと、日本語分かりますか? いくら部隊でもパワハラをやめろって言ってるんですが?」


「んっ? いつ、俺達がパワハラしたって言うんだ?」


「そこで倒れている男性を、複数人で蹴ってたじゃないですか?」


「ああ~ そりゃ~誤解ってもんだぜ、あれは俺達の挨拶だ」


「あはははは♪ そうそう、軽い挨拶をパワハラと勘違いしたんだな」


「まあ、そう言う事もあるさ、俺達は大人だからな。パワハラって言った事は勘弁してやるよ」


「「「「「「「「あはははははははは♪」」」」」」」」



「・・・そうでしたか。どうやら僕の勘違いだったようですね」


「分かれば良いんだよ、それよりちょっと休憩していけよ、そっちの綺麗な女性達も疲れてるんじゃねえか?」


「そうかもしれませんね、それじゃお言葉に甘えて『軽い挨拶』から、やらして貰いましょうか」



 僕は一番前にいた部隊の男の顔に、回し蹴りを叩き込んでやった。


 手加減はしたけど<硬質化>スキルを発動していたので、鼻骨は粉々になっているだろう。



「こ、このガキ何しやがる?」


「フフ、これが攻略部隊式の『軽い挨拶』なのでしょう? では、私達も其方の礼儀に乗っ取りましょうか」


「んふふ、そうね、礼儀は大事よね♪」



 それからはアヤメさん達も加わり、その場に居た部隊員達を蹴り飛ばしていく。


 流石に先輩達だけの事はあり、新人さんより良く弾み転がっていった。



「おっと! 確か近くに転がって来たら、蹴り返すんでしたよね?」


 ドカッ! 「グハッ!」


「あはは、良く飛びますね~♪ 流石先輩。ボール役も上手いですね」



 僕達が新人らしい部隊員の男性を蹴っていた者達を、蹴り飛ばしていると近くにいた隊長さんらしき人が此方に走って来たようだ。



「こ、これは、どういう真似かね?」


「えっと、唯の軽い挨拶ですよ?」


「これが挨拶だと?」


「ええ、違うんですか?」



 此方に来た隊長さんらしき人は、この光景を見ても冷静だったので、事の顛末を説明して上げることにした。



「なるほど。フハハハハ♪ それは迷惑を掛けてしまったようだ。しかし、冒険者と言えども若く見えるが、大した度胸だな?」


「ん~ 何故、度胸が居るんです?」


「・・・まさか、我々に手を出しておいて、無事で要られると思っているのか?」


「出したのは足なんですが?」


「クククッ♪ 本当に良い度胸をしているな。そこに倒れている者達には不意をついたのかもしれないが、まだ20人は居る精鋭達を相手に、虚勢を張るつもりか?」


「どうやら貴方は、勘違いをしているようですね?」


「何を勘違いしていると?」


「貴方は隊長なのでしょう? ヨウ様を不快にさせた謝罪の言葉を聞いていないのですが?」


「フハハ♪ どうやら、度胸があるのは少年だけでは無いらしいな」


「はぁ~ ねーねー? ひょっとして、貴方達は私達より強いと思ってるのかしら?」


「銃なんて持ってるから勘違いしてるんじゃない? ダンジョンで銃なんて何の役にも立たないのにね」


「・・・どうやら冒険者とは言え、少しお灸が必要なようだな」


「やれやれ、ヨウ様。私に任せていただけますか?」


「うん、少し注意したいだけだから程々にね?」


「畏まりました」


「では、隊長さん。一体どちらが度胸があるのか、分かりやすくして上げますね」


「なに?」



 リラさんは、部隊に向けて<威圧>スキルを解放したようだ。


 どうやら、少し怒っているのか<状態異常耐性>がある僕達まで、ビリビリと<威圧>が伝わってくる。



「ガッ! なっ、なんだと?」


「ヒッ! ば、化物だ」


「ぐあああ。なん、なんだよ?」


「どうです? ちょっとは、格の違いが分かりましたか?」


「ヒッ! ヒィィ。く、来るな~」


 パンッ! パパパパパパパパパンッ!


「ば、馬鹿者が!」



 自衛隊の1人が恐怖に負けたのか僕達に向かって銃を乱射してきた。


 今の僕達なら銃弾を躱す事も容易なんだけど、とりあえず<追加防御>で受けて見る事にした。


 僕達は微動だにせず銃弾を<追加防御>で受けると、何の音もせずに銃弾はポタポタと地面に落ちていく。



「だーかーらー、そんな玩具が私達に通じる訳ないでしょ?」


「ば、馬鹿な無傷だと? 一体どんな・・・いや何者だ?」


「そんな事より、僕達に銃を発砲しておいて、無事で済むとは思ってないですよね?」


「ま、待て」


「お断りします」 ドカッ!



 リラさんの<威圧>による恐怖に負けて、銃を発砲した男を蹴り飛ばし、隊長の前に歩み寄った。



「言っておきますが、貴方達を皆殺しにすることなんて簡単なんですよ? 謝罪されますか? それとも死にますか?」


「わ、分かった謝る。君達の気分を害して悪かった」


「さっきまで強気な態度だったのに情けないわね、死ぬ気で掛かって来たら良いのに」



 隊長さんが素直に謝ったので、リラさんは<威圧>スキルを解除したようだ。


 <威圧>スキルを受けていた部隊員達は、汗が噴き出し地面につけ蹲っている。



「隊長さん。僕が言いたいのはイジメみたいな真似はやめろって事です。見ていても気分が悪くなりますしね」


「そんな事をしているから、虫けら並みに弱いんですよ? 弱いくせに威勢だけは良いのは滑稽ですよ?」


「後は長生きしたかったら、人を見掛けで判断しない事ですね」


「ここはダンジョン! いつ死んでもおかしくない場所なんです」


 ゾクッ! 「わ、分かった、肝に銘じておくよ・・・」



 僕達は言いたい事も言ったので立ち去ろうそすると、一か所に長く留まり過ぎたのか、コカトリスの団体が血の匂いに釣られ集まってきたようだ。



「ま、拙い、なんて数だ」


「何を慌ててるんです?」


「強そうな魔物に怯えるくせに弱そうな人間を虐めるんだから、強く成れないんですよ」


「んふふ、貴方達は魔物のエサとしては優秀なのかもね? 私がやるわ。ヨウ君良いかな?」


「そうですね、2~30体ってとこですか。じゃ、いつもので」


「分かったわ」


「行きますよ<スコール>!!!」



 僕は最近よく使っている銃弾のような雨を、数秒間だけ降らせアヤメさんにトスをした。



「ありがと~ <サンダーボルト>!!!」



 アヤメさんが放った<雷属性魔法>は魔物が濡れていた事もあり、天空から落ちた雷撃が地面を伝い、一瞬でその場に居たコカトリスを全滅させた。


 倒したコカトリスのドロップ品は<隠蔽>で隠しながら回収していき、部隊員達の下を後にした。



「なんて奴らだ・・・・・」


「ふぅ~ ボロカス言われましたが、どうやら命拾いしたようですね隊長」


「やっぱり、上級ダンジョンは違いますね? 冒険者にも化物がいるようだ」


「・・・こっちの気も知らないで、気楽な事を言ってくれるなよ。応対してた俺は死を覚悟したぞ?」


「どこのどいつだ? しょーもない虐めなんてしてやがった奴は?」


「あはは、隊長。俺達も死ぬかと思いましたって、未だに膝が震えてますもの」


「あの冒険者達、どっかで見た事があると思ってたんですが、動物園で子供を救助してた奴等じゃないですか?」


「そういえば、あったな。そう言うのが・・・通りで顔を隠してる訳か」


「マジか? 早く言えよメチャクチャ美人な女性だったぞ? 生で見たかったな・・・」


「強がるなよ、お前も膝が震えてるじゃねーか」


「あはは、違いねえ」


「しかし、こいつ。気が弱いのか強いのか、よくあんな恐ろしい奴等によく発砲しやがったな?」


「まあ、銃で撃たれてケロッとしてる奴等も、どんだけだよって話なんだがな」


「・・・確かに魔物には大して効かねえが、人間相手なら殺戮兵器だぜ?」


「奴らは玩具って言ってたがな・・・」


「とりあえず、幾ら冒険者とは言え、民間人に銃を撃つとはな。こいつは帰ったら首だ」


「その民間人に皆殺しにされるとこでしたけどね、いくら人は見掛けに寄らねえって言っても、罠みたいな少年でしたね」


「ああ、俺はもう相手が赤ん坊でも敬意を以って応対する事にするよ、全く世の中ってな怖ええよな?」


「違いないです」


「誰も笑えねえですよ・・・」



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>「どこのどいつだ? しょーもない虐めなんてしてやがった奴は?」 虐めを注意するどころか強者面して主人公達にちょっかい出そうとしたクズが何か言ってら。
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