第76話 仲間作りは大事ですよ
「いらっしゃい、待ってたで」
「お邪魔します。どうですか新しい部屋は?」
「三日月はんの部屋とは比べ物にならへんけど、ウチ等にとっちゃ最高やで。まあ入って見てーな」
「んふふ、お邪魔しますね」
初めて入った守護さん達の部屋は思っていたよりも広く、僕達の部屋の半分ぐらいの面積がありそうだった。
ユウカさんの話では40階は2部屋あるらしいから、丁度半分ぐらいの広さなのだろう。
流石に同じマンションなので部屋の作りは似ていると思ったが、守護さん達の部屋は全然違う内装だった。
しかし、僕達の部屋と同じ様に、誰が見ても高級そうな雰囲気を醸し出していた。
使われているガラス素材は同じなため柱も無く、窓から見える景色はゴージャスだった。
窓ガラスに映し出されるテレビ映像も、僕達の部屋と同じで非常に大きく鮮明で遜色がない。
バルコニーにはプールは無いけど、十分ガーデンパーティが出来るぐらいの広さがある。
しかし、ちゃんと室内にプールが設置されており、非常にお洒落空間になっていた。
「お~、室内プールも良いですね、メチャクチャ雰囲気良いですよ」
「そうなんです、最高過ぎますよ! でも、私達がこんなに良い部屋に住んで良いのか戸惑ってます」
「私も良い部屋過ぎて驚いてます。それにギルド職員の方が、私達なんかに丁寧な対応すぎて困っちゃいました」
「三日月さんからの紹介だから当然なのかもしれませんが、恐縮しちゃいましたよー」
「なあ、三日月はんウチ等の事なんて言って紹介してくれたんや?」
「えっと、アヤメさんがギルドに伝えてくれたんですよ」
「んふふ、ヨウ君がお世話になってる冒険者だから、良い部屋にしてねって言っといたわ♪」
「「「「えええ~~~~~」」」」
「どうりでギルドの部長さん達も、ウチ等にペコペコしてくれた訳やな・・・」
「フフ、ヨウ様の機嫌を損ねたら、私達が黙ってはいませんからね」
「にひひ、ギルドも必死で対応したんだろな~」
「コトエちゃん達がオークションに出した、<硬質化>スキルオーブの効果もあったんじゃないかな?」
「あの~、その件なのですが、<硬質化>スキルオーブに1000億円の値がついたらしく私達もAランクになるらしいんです」
「へえ~、良いスキルだと思ってたけど、かなり高額になりましたね~、おめでとうございます」
「三日月はん、おめでとうやあらへんって、全部三日月はんの力やで?」
「あはは、まあ良いじゃないですか。それよりも落札金額で、この部屋買取り出来ました?」
「あははって、ウチ等にとっちゃ、とんでもない事なんやで・・・買い取れるどころかお金取ってくれへんかったんや」
「そうなんですよ。落札金額の900億円を貰って、この部屋を付けてくれました」
「ウフフ、ギルドも頑張ってくれたのね~」
「それは良かったです。僕の方からもお礼言っときますね」
「なんやお世話になりっぱなしやけど、ありがとな三日月はん」
「「「ありがとうございました」」」
「いえいえ」
「あはは、三日月はんホンマに軽いんやから、そや! 忘れんうちに落札金返しとくわ」
「分かりました。リラさんお願いします」
「畏まりました」
「しかし、この部屋が無料になったなら、引越し祝いが無くなっちゃいましたね」
「そんなんええって、さっきも言うたけど貰いすぎや、この部屋も結果的には三日月はんに貰ったようなもんやしな」
「う~ん・・・」
「それよりコトエちゃん達は、西区北堀江中級ダンジョンに行ってるんだよね? どんなスキル狙ってるの?」
「はい、今は回復系のスクロールを集めてます。もう全員<回復魔法>を習得してマユは<解毒魔法>と<快癒魔法>が揃った所です」
「へえ~、頑張ってるわね、おめでとうマユちゃん」
「ありがとうございます、とっても嬉しいです♪」
「そろそろボス戦かな?」
「はい、最近ソフィアさん達も私達と同じ中級ダンジョンに来てるので一緒にクリアする予定なんです」
「なるほど、その手もあったわね」
「でも、確かあそこのボスってスケルトンキングよね?」
「あ~、そう言えば最初に大きな魔法を撃ってくる魔物でしたね」
「うはっ、厳しそうやな・・・」
「まあ、ソフィアさん達が居たら勝てると思うけどね、レア種なら厳しいかな?」
「なら、念の為に守護さん達のパーティに僕達が二人入って、一緒にクリアしちゃいますか」
「それが安全そうね、明日やっちゃいましょうか」
「何から何まですみません」
「そうだ! 忘れてたわコトエちゃん達のパーティに、良さそうな娘が居るみたいよ?」
「えっ? 本当ですか?」
「ええ、受付嬢ネットワークで聞いたんだけど、双子の可愛い娘らしいわよ」
「名前はミミとルルだったかな? 何時も二人で初級ダンジョンに潜ってるらしいから趣味って訳じゃなさそうだし、若いらしいから条件にピッタリでしょ?」
「確かにウチ等の条件にはピッタリや、一度声を掛けてパーティ組んでみる価値はありそーやな」
「良いわね。一度パーティを組んだら、戦闘方法とか性格とかも分かるしね」
「6人パーティになったら、ボス戦にも対応出来るようになるしね」
「今まで避けてた群れでいる魔物にも対応出来るのが大きいわ、一度会ってみようよ」
「せやな、明日にでも探して夕食にでも誘ってみよか」
「「「さんせーい!」」」
「ありがとうございますアヤメさん」
「良いのよ、私も友達に聞いただけだしね、でもコトエちゃん達の秘密を守れるような娘じゃないと駄目よ?」
「了解や、とりあえず良い娘なんを期待して話してみるわ」
こうして明日、守護さん達と西区北堀江中級ダンジョンのボス戦をやる約束をして、僕達は自分の部屋に帰る事にした。
少しリビングで皆とお酒を飲んでから、自分の部屋に行くと直ぐにアヤメさんが来てくれた。
「んふふ、今日は私が抱き枕担当よ♪」
「ありがとうございます、大歓迎ですよ」
「素直に喜んでくれると嬉しいんだけど、なんか照れるわね・・・パチッ」
「あれっ? もう、照明を消しちゃうんですか?」
「・・・ちょっと恥ずかしいから、今日は見えない様にしちゃいます」
そう言い終わると、アヤメさんがベッドにゴソゴソと入って来て、僕に抱き着いてくれた。
「えっ? アヤメさん、ひょっとして?」
「も~、言葉にしちゃ駄目よ? 大丈夫よ、ちゃんと履いてるんだから」
「そ、それって殆ど裸じゃ・・・」
「んふふ、ヨウ君には何時も我慢させちゃってるからね、そろそろ私も覚悟を決めちゃおうかなってね」
「アヤメさん、僕なんかで良いんですか?」
「んふふ、相変わらず自分の事は過小評価なんだから、世界中のどこにヨウ君以上の男性が居るって言うのよ?」
「ん~、いっぱい居そうな気もするんですが・・・でも、アヤメさんを渡す気にはなれません」
「・・・ヨウ君、大好きよ♪」
この日、僕は本当の意味で大人になった。
人生で一番の幸福感に包まれ、生涯忘れる事が出来ない体験をした。
翌朝、とても良い匂いと唇に柔らかい感触を感じながら目が覚めると、アヤメさんがキスをしてくれていた。
「んふふ、おはよヨウ君。まだ眠いでしょ♪」
「おはようアヤメさん、今完全に目が覚めましたよ」
「も~、どこ見てるのよ。昨日いっぱい見たでしょ?」
「えっと、暗かったからシルエットぐらいしか見てませんよ、それに目の前で揺れてるんですよ男なら見ちゃいます」
「んふふ、そう思って少し体を起こしてサービスしてたりして♪」
「凄く綺麗ですアヤメさん」
「嬉しいけど、やっぱり見られると恥ずかしいわね。サービス終了♪」
「ええ~~、アンコールを要請します!」
「んふふ、却下します! さっ、起きよっか」
「まだ駄目です♪」
「キャ! もう、ヨウ君ったら~」
それからしばらくの間アヤメさんとイチャイチャし、リビングに下りようとしたらアヤメさんが歩きにくそうにしていたので、抱き抱えて連れて行く事にした。
「ヨウ君、恥ずかしいよ~」
「あはは、良いじゃないですか♪」
「にひひ アヤメ照れちゃって可愛いじゃない」
「もう、揶揄わないでよ、結構必死なんだから」
「えっ? そんなになの?」
「なに聞いてるのよ、今は駄目でしょ?」
「はいはい、ちゃんと夜まで待ちますよ~」
「何の話ですか?」
「ヨウ君は良いのよ、早く食べて行かないと」
何故か誤魔化されてるような気もするけど、僕達は朝食を食べて西区北堀江中級ダンジョンへ向かった。
約束していた時間ギリギリになっちゃったためか、守護さん達とソフィアさん達は既に来ているようだ。
「すみません、お待たせしました」
「おはようさん、謝らんでも時間通りやで」
「今日は宜しくお願いします」
「ソフィアさん達も久しぶり、頑張ってるかな?」
「此処では少し、言い辛いのでダンジョンの中で言いますね」
「そうですね、すみませんです」
相変わらずソフィアさん達は皆綺麗だから注目を集めている。
でも、守護さん達も負けないぐらい可愛いし、アヤメさん達は当然として・・・ひょっとして僕、睨まれてるのかな。
「なんや、今日はおかしいな何時もなら、めっちゃ男共が絡んでくるんやけどウチ等、避けられとる?」
「そうですね、今日は誰も近寄って来ないので助かります」
「んふふ、そりゃそうよ、以前私達も此処で絡まれた事があるんだけど、ヨウ君がその時、威圧しちゃったのよね」
「あはは、なるほど納得しました。三日月さんを恐れてるんですね」
「う~ん、ちょっとやり過ぎたせいか、職員の人からも避けられるんですよ・・・」
「その気持ちは、凄く良く分かったりします・・・」
「ところでアヤメ姉さん、歩き方が変やけど怪我でもしたんかいな?」
「だ、大丈夫よ、心配するような事じゃないから」
「プッ! クククッ」
「・・・ナギサ蹴られたいの?」
「ご、ごめんてば、許して黙っとくから」
アヤメさんとナギサさんが理由の分からない話をしていると、皆が避けていく通路の中、二人の女性が立ち尽くして此方をずっと見ているようだ。
僕より身長が低いのに、立派な胸をしているのでかなり目立っている。
可愛い顔をしておりポニーテールが良く似合っている女性達だ。
見分けが付かないぐらい、よく似た双子だったので、ようやく気付くことが出来た。
あれっ? ひょっとしたら、この子達が守護さん達のパーティ候補なのかな?
「ひょえええ~、ミミどないしよ、メチャクチャ綺麗な人達だよ~」
「し、仕方ないじゃないルル、やっと会えたんや! 今声掛けなきゃ次何時会えるか分からへんし」
「せやかて、一緒に居るあの外人さんメチャクチャ有名人やし、他の人もとんでもない美人ばかりやで? 私等みたいな子供相手してくれへんのんちゃう?」
「それでも、聞いて見るしかないやろ? 行くでミミ」
「うぅ、分かったよ~」
「あ、あの、忙しい所すみません。守護コトエさんでしょうか?」
「せやけど、ウチ等に用事かいな?」
「は、はい、私達は東林 ミミ(とうばやし ミミ)とルルって言います」
「女性ばかりの4人パーティって聞いてます。良かったら私達をパーティに入れて貰えないかと」
「話だけでも聞いて欲しくて、駄目でしょうか?」
「あはは、そう緊張せんでもええで、今は時間無いさかい今日一緒に夕食でも行かへんか?」
「「はい、是非お願いします」」
「じゃ、17時にギルド前で待ち合わせしよか、連絡先だけ交換しとこか」
「「あ、ありがとうございます」」
双子の女性達は守護さんと話をした後、嬉しかったのかスキップするように去って行った。
「んふふ、どうやら先にアプローチされちゃったみたいね」
「せや、ええタイミングやったわ頼むのと頼まれるのとでは、えらい違いやからな」
「でも、中々良さそうな娘達じゃないですか?」
「そうよね~、小さくて可愛いし巨乳だし、ヨウ君のタイプだったのかな?」
「ブッ!? ち、違いますよ! 僕のタイプは年上の女性ですから」
「「「「「・・・・・・・」」」」」
「ハッキリ言われると照れちゃうね」
「ウフフ、私達も年上ですよ♪」
「も~、ソフィアさん? 私達のリーダーを口説かないの」
「ウチ等は同い年やからな~」
「んふふ、ヨウ君モテモテだね~、このこの~」
「そ、それより早く行きましょうか」




