第63話 脅しが効き過ぎてたみたいです
誤字報告ありがとうございます。
僕は上級ダンジョンの下見をソコソコで切り上げ部屋に戻ると、アヤメとナギサは未だオークションから帰ってきてないらしい。
とりあえず、お風呂にでも入ろうかと思っているとアヤメから電話が入る。
「もしもし、アヤメさんオークション終わったんですか?」
「ええ、終わったわよ詳細は会ってから話するわ、それと今日は外食にしない?」
「良いですよ、ちょっと待って下さいね」
僕は残っているメンバーに外食でも良いか聞いてから、アヤメにOKの返事をした。
「ありがと。じゃ、魚座で待ってるわね」
「分かりました、直ぐ行きますね」
どうやら、お店も魚座と決まっているらしい。
ちょっと不思議に思いつつ魚座には何時も来て貰ってるから、お店に行くのも良いかなと思い、皆で出かけることにした。
出掛けると言っても結構近いので歩いて向かう、魚座のお店に着くとアヤメ達はもう来ているようだったので部屋に案内して貰う事にした。
そして、部屋に入った瞬間、とても驚く事になるのは予想出来なかった。
「ソ、ソフィアさん・・・」
「み、三日月陽・・・」
「あれっ? ヨウ君を驚かそうと思ってたんだけど、知り合いだったの?」
「えっ? ええ、今日上級ダンジョンに下見に行ったんですが、そこで偶然お会いしてサイン貰っちゃいました」
「そうだったんだ。でも、ダンジョン内でサインなんてお願いしちゃ迷惑でしょ?」
「そうですよね、会えた事に感激しちゃって、お願いしちゃいました」
「アヤメさん・・・」
「あっ! すみませんソフィアさん、紹介しますね。彼が私達の専属である三日月陽君です」
「まあ、専属と言っても同じパーティメンバーでもあるのですが」
「お、同じパーティメンバー? アヤメさん達と三日月陽さんがですか?」
「はい、此処にいる5人がヨウ君のパーティメンバーです」
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
「メンバーも揃った事ですし、注文しますね」
「はい、ありがとうございます」
ソフィアさん達は僕との模擬戦が気に掛かるのか、最初は喋り辛そうだったが食事を食べている内に会話するようになってきた。
「しかし、凄いですね6人共ロシア語が話せるなんて。しかも、とても流暢に・・・」
「ひょっとして、<言語理解>スキルをお持ちなのですか?」
「へええ~、そんなスキルもあるんですね」
「・・・習得してる訳では無いと言う事ですね?」
「フフ、すみません例え持っていたとしても、冒険者なら言う人は居ませんよ? それとも私達のスキル構成を知りたいのですか?」
「そうですね、すみませんでした。三日月さんの強さなら取得も可能なのかと思いましたので、つい聞いてしまいました」
「良いですよ、僕達も公開されていないスキル等があれば、教えて欲しいぐらいですから」
「では、情報交換といきませんか? もちろん言えない事は言わなくて結構なので」
「それなら良いかなヨウ君?」
「そうですね、それなら良いですよ」
「では、私達は全員三日月さんの動きが見えませんでした。やはり、速度系のスキル効果なのでしょうか?」
「そうですね<敏捷強化>ってスキルです、でもソフィアさんも持ってますよね?」
「・・・確かに習得してますが、三日月さんの動きとは比べ物になりません」
「すみませんが、それ以上は言えません」
「分かりました。三日月さんが一番の実力者なのですか?」
「フフ、ヨウ様と私達では比べ物になりません」
「・・・しかし、それだけの実力がありながら無名なのは、実力を隠されているのですか?」
「あはは、買い被りですよ、僕は新人冒険者なので強さの方はマダマダですし」
「んふふ、ヨウ君は自分の強さが、あまり分かってないんですよ」
「世界は広いですね、同じメンバーである貴女達も、そうとうな実力者なのでしょう?」
「フフ、本当に私達が実力者に見えますか? それに不思議なのですが、何故初めて会うはずの私達に怯えているのでしょう?」
「「「「「「・・・・・」」」」」」
ソフィアさん達は何故か表情にぎこちなさがあり、汗を掻いているようだった。
「もしかすると、私達の事を誰かからお聞きになりましたか?」
「いえ、そんな事はありませんが・・・」
「今、動揺なさいましたね? 返答には細心の注意を払った方がよろしいかと存じます」
「誰かから私達の事を聞いたのですね?」
「・・・・・・」
「やはり、あのロシアの諜報員に会ったのですね」
「ガタッ! 待て、待ってくれ! 本当に彼女は何も喋ってはいない。本当だ、信じて欲しい」
「・・・なるほど、僕も思い出しました」
「リラ? どういう事?」
「はい、実は以前ロシアの諜報員に尾行された事があるのです、その時に私達の事は忘れる様にシッカリと忠告しておいたのですが」
「「「「「ピクッ」」」」」
「なるほどね、忠告を無視して引き続き私達を調査してたのかな?」
次の瞬間アヤメさん達の纏う空気が緊張に包まれたように見えた。
「「「「「「ゾクッ」」」」」」
だ、駄目だ・・・この女性達も圧倒的な程強い・・・私の本能が最大級の危険を感じている。
膝が震える・・・な、何とか誤解を解かないと。
「違う、誤解だ! 彼女は異常な程怯えていた。三日月さん達の事は何も聞いていない」
「本当よ? 真面に喋れない程怯えてたんだから、一体彼女に何をしたの?」
「そんなに怯えてましたか・・・う~ん、ちょっと脅しすぎちゃったかな」
「あっ! ヨウ君まさか、あれ使っちゃったの?」
「ちょっとだけですよ?」
「うわ~、あれ使っちゃったんだ」
「よく生きてたね?」
「あの時は仕方なかったと思いますよ、私とリラねえの3人だけでしたし」
「いくら尾行されたからって、あんなの女性に使っちゃ駄目よ」
「でも、あのときは調べられたら、皆にも危険が及ぶかもしれなかったので」
「フフ、なるほど事情は分かりました。皆さんが何故緊張されてたのかも、彼女から私達が危険だから近づくなと言われたのですね?」
「彼女は私達の身を案じて伝えてくれただけだ、誓ってそれ以上の事は聞いていない」
「う~ん、ソフィアさん。その方に会わせて貰っても良いですか?」
「待ってくれ、確かに彼女が尾行した事は謝る。許してはくれないだろうか?」
「私達からも謝ります。出来る限りの謝罪を致しますから許して下さい」
「あ~、いや、そうじゃなくてですね。そこまで怯えさせてしまったなら謝りに行こうかと思いまして」
「あ、謝る?」
「そうね、あれを受けたんならトラウマになっちゃうわ」
「僕は尾行したんなら、あれを使われても仕方ないと思うよ?」
「まあ、私もそうは思うけどさ」
「フフ、ヨウ様がそうされたいのでしたら、私が彼女の所まで案内致しますよ」
「なっ?」
「相変わらず凄いですね? あれからずっと彼女の事を把握してたんですか?」
「当然です。ヨウ様に敵対する可能性がある者を野放しには出来ません。ですがソフィア様の話を聞く限り、十分反省していただけたかと存じます」
「じゃ、ソフィアさん。僕、帰りに謝りに行ってきますね、御心配なさらずに」
「待ってくれ。本当に彼女に危害を加えないと約束してくれるのか?」
「はい、良かったら同行されますか?」
「分かった。同行させて貰いたい」
僕達は食事を取り終えた後、ソフィアさんの案内で諜報員の女性の下へ向かった。
僕達が行って怯えさせてもいけないので、ソフィアさんが事前に事の成り行きを説明しに行ってくれた。
そして、久しぶりに僕は諜報員の女性と会う事になる、目の前に居る彼女は説明を受けたにも関わらず震えているようだった。
「久しぶりですね、どうやら約束を守ってくれているようで助かります」
「ほ、本当に信じてくれるのですか?」
「そうですね、あの時は殺したくなかったので強めに脅しを掛けましたが、どうやらそれが強すぎたようですね? 今日はその事を謝りに来ました」
「いえ、殺されなかっただけでも感謝していますので」
「ヨウ君の威圧受けたんだってね? あれ厳しかったでしょ? 私達でも膝が振るえるんだよ」
「そうだよねー、未だヨウ君が怖いんじゃない?」
「正直に言えば怖いです。ですが、勝手に尾行した私が悪いのでお気になさらずに」
「ん~、お詫びと言っては何ですが、このスキルを差し上げますので習得して下さい」
「それはスキルオーブ? スキルオーブは、どれも高額なのでは?」
「大丈夫ですよ? このスキルオーブは未登録なので値段は付いてませんから」
「・・・因みにどんなスキルなのですか?」
「これは<状態異常耐性>のスキルです。僕から受けた恐怖もかなり楽になると思いますよ」
「「「「「「<状態異常耐性>?」」」」」」
「そんなスキルが存在してたなんて・・・」
「さあ、どうぞ習得して下さい」
「待て、待ってくれ。もし、それが名前通りの効果なら、かなり高額になるはずだ。彼女に何を求める気だ?」
「お詫びなので、無料で差し上げますよ?」
「無料だと? どれぐらいの金額になるか分かって言ってるのか?」
「フフ、毒、麻痺、病気あらゆる状態異常に強い耐性が付きますので、数千億円と言ったところでしょうか」
「あいにく恐怖耐性だけのスキルオーブは持ち合わせていないので、遠慮なくどうぞ」
彼女は戸惑っていたがリラにスキルオーブを手渡され、恐る恐る<状態異常耐性>スキルを習得してくれた。
「あ、あああ・・・凄いです。あれだけ怖かったのに・・・」
「良かった♪」
「でも、お酒にも酔わなくなるんですが、意識的に調整出来るようになるので心配ないですよ」
「ええっ? それじゃ、幾らでもお酒飲めるようになるんだ?」
「そうですね買われますか?」
「無理、無理、そんなお金ないですよ」
「あはは、それから言っておきますが、今日の事は内緒でお願いしますね」
「はい、もちろんです。ありがとうございました」
「もちろん、私達も誰にも言わないけど、一つだけお聞きしたいです」
「お答え出来る事なら良いですよ?」
「私達が対価として何を差し出せば、空を飛ぶ事が出来るスキルオーブの情報を教えていただけますか?」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
「やはり、ご存知なんですね♪」
「クククッ、三日月君。僕この子、気に入っちゃったよ♪」
「珍しいですね~、ツドイさんがそう言うなら、飲みながら喋りましょうか」
僕は<虚空界>からワインを取り出し、少し飲む事にした。
「ソフィアさんだっけ?」
「はい、ツドイさん。お答えしていただけるのですか?」
「三日月君、任して貰っても良いかな?」
「はい、お任せしますよ」
「ありがと。じゃ、方法は3つかな」
「ほ、本当に教えていただけるんですね?」
「聞くだけでも覚悟が居るけど、良いよね?」
「待って下さい。私は聞きたいけど皆はどうする?」
「ソフィアが聞きたいなら皆付き合うわよ」
「ウフフ、ありがと大好きよ♪」
「も~、調子良いんだから」
「じゃ、言うね」
「はい」
「1つ目は、買う事だね・・・恐らくオークションには一生出ないと思うけど、6つで数兆円以上になるかな?」
「む、無理です・・・私達では到底払えません!」
「2つ目は、三日月君の弟子? になる事かな。時間は掛るかもしれないけど自力で入手出来るかも? ただし、条件は三日月君に絶対服従かな」
「絶対服従ですか・・・」
「3つ目は、三日月君のハーレムに入る事! 以上だね」
「ハ、ハーレム! 体ぐらいなら覚悟してましたが、ハードルが高いですね?」
「体ぐらいってソフィア~、簡単に言いすぎよ?」
「現時点では方法はこれだけだよ、この話を聞けるだけでも奇跡に近いかも?」
「弟子とハーレムは、両方日本に住まなくてはいけませんか?」
「それは三日月君次第かな?」
「ちょ、ちょっと待って下さい! ハーレムって言葉にも抵抗があるんですからね? そりゃ、ソフィアさん達は全員素敵な女性ですけど、幾ら何でも無茶ですよ?」
「僕はスキルを入手出来るかもしれない方法を言っただけだよ? 後は彼女達次第だね」
「そうなると選択肢は弟子になる事だけになりますね?」
「それも簡単じゃないよ? 三日月君が認めたらだから」
「三日月さん、どうすれば弟子にしていただけますか?」
「ちょっと待って。本当に貴方達は空を飛べるのでしょうか?」
「んふふ ツドイは一言も空を飛べるとは言ってないわよ? 信じる、信じないは貴方達の自由よね」
「信じます。おそらく闇雲に探しても一生分からないような気がします」
「ん~、弟子ですか・・・正直僕みたいな新人冒険者が弟子なんて。それもソフィアさん達のような国を代表するSランク冒険者を?」
「良いんじゃない? コトエちゃん達みたいにさ」
「あ~、でも、あれでドロップするか分かりませんよ?」
「それなら、ある程度ソフィアさん達に喋っちゃったんだし、上級ダンジョンで一緒に探してみる? 上級ダンジョンであのスキルがあったらドロップするんじゃないかな?」
「フフ、かなり私達と深入りする事になりますが、宜しいのですか?」
「ん、僕の我が儘だからさ、裏切られたら僕が始末するよ」
「「「「「「ゾクッ」」」」」」
「ツドイだけに行かせる訳ないでしょ? その時はロシアのダンジョンギルドも潰さないとだしね」
「あ、貴女達・・・何を言ってるのでしょうか?」
「みんな僕を守る為に言ってくれてるんですよ。でも、そんな事をしない限り大丈夫ですよ?」
「フフ~、ソフィアさん達ならロシアのダンジョンギルドにも深い関わりがあるでしょ? だから私達を敵に回したら遠慮なく口封じしに行くからね」
「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
とりあえず今日は時間も遅くなってきたので、ソフィアさん達とは明日一緒に上級ダンジョンへ潜る約束をし部屋に帰る事にした。




