第5話 大阪に来てから驚く事ばかりだ
ピンッポポポポンポッピポンポンッ!
「はい、ミカヅキです」
「アヤメです、下で待ってますね」
「はい、直ぐに行きますね」
「うふふ、奢って貰うんだから私がお礼言わないとなのに」
「バタバタバタ! ガチャ! 鍵鍵・・・」
「・・・そんなに慌てなくても良いのよ?」
「はい、すみません一旦切りますね」
「はい」
「も~! 可愛いんだから♪ でも年下とは言え、男性と食事に行くなんて久しぶりだな。まあラーメンなんだけど・・・良い機会だから色々聞いちゃおうかな♪」
「お待たせしました」
「じゃ、行きましょうか。安くて美味しいラーメン屋さん紹介するわ」
「はい、ありがとうございます」
「三日月君って変わった名字ね、どっかで聞いたことがある気がするんだけど?」
「はい、よく言われます名前が太陽の陽だから、夜か昼か分からないと」
「あはは、なるほどね。プライベートではヨウ君って呼ばせて貰おうかな。私はアヤメで良いわよ」
「はい、じゃアヤメさんって呼びますね」
「んふふ、ちょっと照れるわね」
「アヤメさん、プライベートの喋り方の方が凄く良いです」
「ごめんね、喋り方の地はこっちなのよ。あんな喋り方は疲れるでしょ?」
「あのキッチリした喋り方も大人の女性って感じで恰好良かったです。秘書さんみたいです」
「んふふ、当たり! ダンジョンギルドに入るまでは大手の会社で秘書をしてたのよ、こっちの方が条件が良いので引き抜かれたんだけどね」
「ああ~! なるほど。どおりで似合ってると思った」
「ヨウ君は高校を卒業して直ぐに大阪へ出てきたの?」
「はい、とんでもない田舎でしたから、大阪に来てからは驚きの連続です」
「確かに此処は人が多いよね。さっ、着いたわ入りましょ」
「はい」
アヤメさんのお気に入りって言ってたから、ラーメン屋さんでもレストランみたいなイメージをしてたけど普通のラーメン屋さんだ。
どちらかと言えば田舎くさい、ひょっとしたら僕に合わせてくれたのかな?
「んふふ、良い所でしょ? 何故かラーメン屋さんは綺麗な所って美味しくないのよね」
「はい、僕もそう思います」
良かった・・・どうやら僕に合わせてくれたって訳じゃなさそうだ。しかし、美人はラーメン屋さんに居ても美人だな。
当たり前なんだけど、地元の友達にアヤメさんを紹介したら驚くだろうな~
「どうしたの? ニコニコしちゃって?」
「すみません。今日はちょっと嬉しい事ばかりで」
「あ~! そうね。そりゃ~!
あんな良い物ドロップしたらニヤけちゃうよね。
でも調子に乗って無茶しちゃ駄目よ?
地下2階からニードルラットって言う魔物が出るんだけど、
ハリネズミを大きくしたような魔物で危ないんだからね?
スライムで戦い方を十分練習してから行った方が良いわよ」
「ふむふむ、なるほど分かりました」
「んふふ、素直な事は良い事よ」
「それと今日、行き成り食事に誘っちゃって、すみませんでした」
「あれっ? ナンパだったのかな?」
「い、いえ、違います・・・違う事ないですね・・・あぅぅ、すみません」
「うふふ、冗談よ♪ ヨウ君ナンパなんてした事ないでしょ?」
「はい、ずっと田舎に住んでたんで、ナンパなんて言葉の意味を知っているだけです」
「あはは、正直なんだから♪ 安心して良いよ、ナンパなんて思ってないから」
「私の方がヨウ君と、もう少し話をしたかっただけだから」
「ホントですか? それなら嬉しいです♪」
「うふふ、ヨウ君の方がもう少し用心深くならなきゃ駄目よ?」
「えっ? どういう意味ですか?」
「ヨウ君、今日大金が手に入ったでしょ? もし私がそのお金目当てだったらどうするのよ?」
「えっ? アヤメさんになら全部渡しますけど?」
「ブッ!? もう、そんな大金簡単に渡しちゃ駄目でしょー」
「あはは、お金ならまた明日から頑張って稼ぎますから大丈夫ですよ?」
「・・・ヨウ君が眩しく見えるわ、私の心が汚れてるのかしら?って違うわ! とにかく、そんなに人を簡単に信じちゃ駄目よ。分かった?」
「はい、でもアヤメさんになら僕、騙されてもいいです♪」
「もう馬鹿ね♪ そんな事言われたらお姉さん喜んじゃうでしょ~?」
「あはは♪」
この後食べたラーメンは本当に美味しくて、お腹もペコペコだったから大満足できた。
髪を後ろに掻き分けながらラーメンを食べるアヤメさんは、とても綺麗で大人の女性を感じた。
美人は何をしても美人ってのは本当なんだな~♪
幸せな時間を過ごし、アヤメさんとはラーメン屋を出て別れた。
手をフリフリしてくれるのが、とても可愛かったので僕も子供のように手をブンブンと振って別れの挨拶をした。
ラーメン屋さんだったけど、アヤメさんと話が出来て人生最良の日になった。
嬉しすぎてスキップしそうになる。
家に帰ってからは、妹のヒカリにスマホで撮ったスライムやスライムボールの写メを送り、初ダンジョンの感想をメールしたらヒカリも凄く喜んでくれた。
我が妹ながら素直で可愛い奴だ。
まあ、流石にSPオーブを売って一千万円稼いだ事は言えなかった。
スライムボールで5万円近く稼いだ事を伝えると、お小遣いプリーズと返ってきた。
折角だから余りまくってるスライムボールの方を送ってやろう。
フフッ、ヒカリ怒るだろうな~♪
でもSPオーブ全部売ってたら1億1千万円になったのか・・・恐ろしい金額だな。全然実感湧かないや。
まあどうせSPオーブを大量に売ったりしたら詮索しまくられるだろうから、今は死なないためにも強くなろう。
うん、そのための必要経費だ。
これから値下がりしたら泣いちゃうかも知れないけど・・・
まだ少し興奮してるけど明日のためにも、そろそろ寝ようと思い布団へ入る。
翌朝、昨日は少し寝つきが悪かったにも関わらず6時に目が覚めてしまった。
今日は、昨日見つけたギルドのカフェで朝食を食べる為に出掛ける事にした。
装備を整え玄関を出ると、今日も気持ちの良い朝の空気に深呼吸をしながら歩いてギルドへ向かう。
ギルドのカフェは24時間営業で無休らしく、此処でパーティの相談とかで利用する人が多いらしい。
今日は早朝って事もあり空いているが、朝から外食ってのも新鮮で楽しくなる。
僕はモーニングセットを注文し、朝のゆっくりとした時間を楽しんでいた。
田舎ではこんな店は無かったし、何か社会人になったんだなと実感しつつ少し感動してしまう。
しかし、やっぱり都会は物価が高い・・・こりゃ頑張って稼がないとな。
周りを見ると僕と同じように早朝からダンジョンに向かう方もいるみたいだ。
高そうな装備を着けているので、上級ダンジョンへ向かう方なのかと思う。
僕も昨日資金が入ったから買う事が出来るんだけど、せっかく昨日レンタルしたところだから、しばらくレンタル装備で頑張ろうと決めた。
モーニングも食べ終わったので、昼食用のサンドイッチも購入し、早めにダンジョンへ入る事にした。
昨日<マッピング>した地図を片手にスライムを探していく。
ギルドには各階層の地図も売っているらしいが、地下2階を目指していないので購入しなかった。
少し昨日の事は夢だったんじゃないかとも思っていたけど、今日もSPオーブが順調に集まっていくので安心する。
そして昨日は気付かなかったけど、歩くだけなら違和感がないが走ってみると足が縺れる?
何故だろうと首を傾げていたが、昨日上げたステータスが原因だと気付いた。
足に力を込めると、上がった身体能力に意識が付いていかないのだ。
どうやら慣れるためにも、少しずつステータスを上げて慣らしていく事にした。
そのため、今日はSPオーブを入手する度にステータスを上げる事にした。
スライムとの戦闘もフットワークを入れながら徐々に体を慣らす事に心掛けた。
ステータスを1つ上げる度に驚くほどの違いが実感出来るようになり、モチベーションが上がる。
気付けば結構な時間が立っており、かなり奥まで来たようだ。
そろそろ地下2階へ下りる階段があるかもしれない。
そんな事を考えていたら強く発光しているスライムを発見した。
SPオーブを落とすスライムより強く光っている。
これはひょっとしたらと思い、逸る気持ちを抑え、いつも以上に慎重に討伐してみた。
すると、地面には球体のSPオーブとは明らかに形が違う、クリスタルのような形をした物がドロップしていた。
僕は恐る恐るクリスタルの形をした物を拾い上げマジマジと確認してみると、間違いない。これはスキルオーブだ!
しかも<虚空庫>のスキルオーブと言う事が頭に流れ込んでくる。
「や、やった! やったぞ!」
僕はまた興奮して声を出してガッツポーズを決めてしまい、昨日と同じように周りをキョロキョロと見渡した。
幸い誰も居なかったようなのでホッと安堵の息を吐く。
くぅ~~~やった、やった、やった♪ <虚空庫>のスキルオーブを手に入れた。
これは僕でも知っている。
数あるスキルの中でも超有名なスキルで、分かりやすく言えば<アイテムBOX>だ。
売ればめちゃくちゃ高く売れる事は分かっているけど、僕は迷いなく習得する事にした。
手に持った<虚空庫>のスキルオーブは、使用を意識しただけで淡く発光し、SPオーブと同じように僕の体に吸収されていった。
僕は急いでステータスを確認すると、スキル項目に間違いなく<虚空庫>の文字が刻まれている。
僕はもう一度ガッツポーズを取り喜びを噛みしめた。
早速試してみようと、ワクワクしながらドロップ品であるスライムボールをカバンから取り出し、収納を意識してみた。
すると、手の中にあったスライムボールはスッと消えた。
次に取り出す事を意識すると、また手の中にスライムボールが現れる。
うわ~! 想像通りめちゃくちゃ便利だ。
不思議な事に覚えたスキルは何となく使い方も分かる。
でも、<ウィル>スキルは全然能力が分からなかったんだよな・・・これは特別なスキルなのだろう。
流石にネットや雑誌には<虚空庫>の容量まで乗ってなかったので、検証していかないと分からないが、それが楽しみでもある。
<虚空庫>へ収納した物は、ステータス画面でも一覧で表示されるようだ。
これで、もう部屋へ装備を置きに行かなくても良くなったけど、他人にバレない様に気を付けないと。
これは流石に誰にも言えないな。
しかし、大阪に来てから驚く事ばかりだな。
調子の良い時ほど気を引き締めて行こっと。
SPオーブに引き続き、スキルオーブを持っている魔物も区別出来るのは大きいな。
これも<ウィル>スキルの効果だよな。
凄いスキルを手に入れたもんだ。
いつか<鑑定>スキルが手に入ったら調べてみようかな。
気分も良くなったし、引き続きスライム討伐を頑張った。
昨日と同じSPオーブ11個を手に入れた。
一応1つだけ<虚空庫>に収納し、残り10個はステータス上げに使用した。
スライムボールも130個ほどドロップしたから、今日は80個ほど売っちゃおうかな。
僕はテクテクとギルドへ戻ると、昨日より時間が早いせいか空いていたため、直ぐにアヤメさんの所へ向かった。
「こんにちわ藤崎さん」
「お疲れ様でした三日月様。今日も買取りですか?」
「はい、出来たら相談室でお願い出来ますか?」
「畏まりました。此方へどうぞ」
僕はアヤメさんの案内の下、また相談室へ入れて貰った。
「昨日は御馳走様。美味しかったわ」
「いえ、こちらこそ良い店を教えて貰って、ありがとうございました」
「今日はSPオーブは出なかったのかな?」
「あはは、流石に連続では無理みたいですね」
「うふふ、そりゃーそうよ♪ でも、相談室に来るぐらいだからスライムボールは大量に出たんでしょ?」
「ご明察です。今日は80個ほど買取りお願いしても良いですか?」
「えっ? 80個って、幾ら何でも多すぎでしょ? どれだけ幸運なのよ」
「えっと、今日はお弁当持って早朝から潜ってましたし、僕ドロップ運は良いみたいです♪」
「ヨウ君、頑張りすぎよ? ちゃんと休憩も取ってる?」
「はい、楽しみながらやってるので大丈夫ですよ」
「もう、心配になるぐらい取って来るんだから。ちょっと待っててね」
アヤメさんは昨日と同じように、端末をポチポチ弾いて買取り代金をギルドカードへ入れてくれている。
「はい、お待たせ。今日は6万4千円よ。こんなペースで稼いでたら月収100万超えちゃうわよ?」
「あはは、良いですね♪ でも、アヤメさんも言ってたとおり、納得がいくまでスライムで戦闘訓練しようと思います」
「うん、良い事ね。普通なら飽きてドンドン進みたくなっちゃうけど、ヨウ君は偉いわ。いつか大物になるかもね♪」
「あはは、僕なんかじゃ無理と思いますけど、頑張って強くなります」
「んふふ、応援してるわ」
明日は第10話まで投稿します。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪