第56話 アヤメさんが、やりすぎました
今日も朝からダンジョンに潜っている。
地下10階のボス戦からスタートしたら運の良いことにレアボスであるキラースパイダーを引き当てた。
強さは大した事ないのでサクッと倒しドロップ品を見てみる。
えっと<鋼糸>スキル2つ、銀色魔糸2つ、宝箱(エリクサー3本)2つだった。
残念ながら新たなスキルじゃなかったけど、レア素材が2つもドロップしたのが喜ばしい。
「やったね、レア素材である銀色魔糸2つよ♪ そういえば以前守護さん達と倒したときにドロップした銀色魔糸は、今日がオークションだった筈よ」
「あれって、今日だったんですね、帰りに確認しに行かないとですねー」
「んふふ、高く売れたら良いのにね」
「はい、守護さん達が喜ぶ顔が目に浮かびます♪」
そして、地下11階から狩りを開始した。
サクサクと色々と集めていき、初めての階層である地下15階に辿り着いた。
ここで初見の魔物を発見する事になる。
一つ目の巨人で名前はサイクロプスと言うらしい。
もちろん良く聞いた名前だから知ってたんだけど、実物は本当に大きいな3メートルぐらいあるんじゃないだろうか。
「フフ、確かに大きいですが、目さえ直視しなければ良さそうですね」
「目は任せて、弓で潰しとくね~」
「私も魔法で先に目を潰しとくかな」
ここまで戦闘を続けてきて、今では<鑑定>スキルすらある僕達には、初見でる魔物と言えど敵には成らなかった。
サクサクと倒していき新たに取得したスキルは<麻痺眼>と言うものだった。
どうやら見ただけで相手を麻痺の状態異常に出来るらしい、<威圧>スキルと使い分ければ非常に便利そうなスキルだった。
素材は角だったので売却用かな、続く地下16階ではリザードマン、地下17階ではバイコーン、地下18階ではキラーアント、地下19階ではサンダーバイソンと色々な初見の魔物が居たが、最近階層を進めていなかったので今日は頑張る事にした。
特に欲しいスキルや素材も無かったが、サンダーバイソンから<雷属性魔法>のスクロールをゲットした。
「やったー♪ これで私の魔法攻撃の幅も広がるわね」
「これも検証しないとですが、<氷属性魔法>の事を考えると中々強力そうですね」
「ん~、慎重に試すようにするわ、流石に危なそうだしね」
取得した<雷属性魔法>は僕とアヤメが先に習得させて貰う事になった。
同じサンダーバイソンからドロップした肉も中々美味しそうで、これも嬉しい。
今日は階層を進めるのに頑張ったため、いつもより遅くなりお昼も過ぎていたので、皆と相談したところ最後まで攻略してしまう事にした。
そして、いよいよ最終階層である地下20階に辿り着いた。
この階層で出会った初見の魔物はアルマイトと言うアルマジロをサイぐらいの大きさにしたような魔物だった。
鎧のような皮で覆われており防御力が高そうだ。
「うわ~、どうしよ、この魔物魔法が全然効かないみたい」
「あ~、私の弓も駄目そうね、物理防御も高いみたいよ?」
「最近あまり使ってませんでしたけど、僕達には<追加攻撃>スキルがあるじゃないですか?」
「これって、防御貫通だからチクチク攻撃してたら倒せると思いますよ」
「へええ~、意外と有用なスキルだったのね」
「ふむふむ、じゃ私の弓は大丈夫として魔法にはスキル効果付かないわよね?」
「フフ、確かに魔法攻撃は効きそうにないですが<氷属性魔法>なら足止め出来るのでは?」
「なーるほどね、それなら出来そうだわ」
「フフ~、動けなくして<追加攻撃>でタコ殴り作戦ですね」
「武器が壊れそうだよ?」
「そうですね、斬ったら刃が欠けそうだから突き攻撃にしましょうか、僕双剣にしちゃお」
「僕魔物に同情しちゃうかも?」
「あはは、確かにヨウ君のスピードで双剣にしたらヤバそうよね」
「じゃ、やってみよっか私がアルマイトの足だけ凍らせてみるね」
「「「「「了解です」」」」」
作戦も決まったので早速単体でいたアルマイトを攻撃してみる。
アヤメの<氷属性魔法>も慣れてきたのか見事にアルマイトの足を凍らせて完全に動きが止まっている。
「ナイスよアヤメ、いっくよ~」
僕達は動けなくなったアルマイトに<追加攻撃>を発動し全員で攻撃に移る。
「カツカツカツッ! ビシッビシッビシッ!」
「カカカカカカカカカカカカカカカカッ」
「ビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッ!」
「ヨウ君、ストップ、ストップ」
「はい?」
「もう倒しちゃってるよ~」
「あっ! ホントだ、そっかHPは低かったですもんね」
「ヨウ君の攻撃速すぎだよ、<追加攻撃>スキルと合わせると凶悪だね~」
「フフ、元々短剣は攻撃速度が速いですし、双剣でヨウ様のスピードが加わると凄い連続攻撃になりますね」
「えへへ! ツキツキ攻撃です!」
「可愛く言っても凶悪さは変わんないんだからね?」
「キルラッシュ?」
「デスラッシュだね」
「・・・こ、怖い名前を考えますね」
「フフ~、防御貫通なら私達でも直ぐ死んじゃいそうですね」
「や、やめてよノノ。想像しちゃったじゃない・・・絶対食らいたくないわよ」
「そういえば<追加攻撃>スキルって重ね掛けしてないんですよね」
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
「怖がらないで下さいよ~」
「ウフフ、冗談よ」
「それ無しでも、ヨウ君には敵う訳ないんだからさ」
「フフ、頼もしいです」
「ヨウ様、最強です」
「僕も直ぐ死んじゃうね」
「や、やめましょうよ僕皆に怖がられたくないです」
「あはは、怖がる訳ないじゃない? 言っとくけど褒めてるのよ?」
「そだよー、強い人に惹かれるのは本能だもんね」
「そうなんですか?」
「フフ、そうですよ」
「もちろんですよ?」
「僕も鍛え出してから、強い人に憧れるの分かるようになったかも」
「えへへ! ありがとうございます」
褒められると直ぐに気分が良くなる・・・我ながら単純だと思うけど幸せ気分になるのは良い事だよね。
同じ調子でサクサク狩っていると、遂にスキルを持っている個体に遭遇し倒して見ると無事スキルオーブが2つドロップしている。
期待を膨らませながら確認してみると<適温効果>と言うスキルだった。
鑑定してみた結果、このスキルを発動すると熱さや寒さに耐性が出来て常に適温に保ってくれるらしい。
「うわ~、これって凄くない?」
「私寒がりだから、メッチャ助かるかも」
「僕は熱がりだから夏助かりますね」
「フフ、ダンジョンには火山地帯や寒冷地帯がありますから、冒険者としても非常に有効なスキルになるかと思いますよ」
「そっか、そっか、このスキル必須になるかもですね~」
「僕も寒がりだから嬉しいかも」
「これは頑張って複数欲しいスキルですね、明日も取りに来ましょうか」
「そうね、じゃ今日はボスを倒して帰ろっか」
「はい」
僕達はいよいよ地下20階のボス戦に挑む事にし大きな扉を潜る。
ボス部屋の中に入ると奥にはサイクロプスより大きな巨体が鎮座していた。
どうやらオーガキングらしい、攻撃力や防御力がメチャクチャ高い魔物だ、かと言っても今の僕達なら余裕で勝てそうなんだけどね。
「ねー、先制攻撃は雷魔法を試して見て良いかな?」
「そうですね、先制攻撃なら危なくないし、良いと思いますよ」
「んふふ、早く試して見たかったんだよね♪ ボス相手なら手加減しなくても良いしさ」
「すっかり戦闘狂になっちゃったんだからアヤメは、こっちまで来ないようにしてよ?」
「大丈夫よ、じゃ、いっくね~」
アヤメは初めて使う魔法とは思えない程、魔力が高まっていくのが分かるイメージが固まったのか、いよいよ攻撃に移るようだ。
「<サンダーボルト>!」
「バチッ! ドオオガアアアアアアアアンッ!!!!!!!!!!!!」
アヤメの放った雷魔法はボス部屋全体が光で見えない程輝き、オーガキングの頭上へ落雷した。
その凄まじい閃光と轟音が静まる頃、オーガキングは光の粒子となって消えていった。
念の為にオーガキングが気付かない程の小石を投げておいて良かった、まさかとは思ったけど本当に一撃で倒したようだ。
「ひょえええ~、ア、アヤメやりすぎよ?」
「び、吃驚した~、私もこんなに凄いとは思わなかったのよ~」
「ふあ~、でもドロップが勿体なかったですね」
「あっ! そうだった、ごめんなさい」
「フフ、心配ないみたいですよ?」
「三日月君、ちゃっかりしてる♪」
「えへへ! ちゃんと小石を投げておきましたから大丈夫ですよ」
「うわ~、ありがと助かったわ、んっ? ヨウ君こうなる事予想してたの?」
「えっ? い、いや、唯の保険ですよ・・・あはは」
「も~、私の加減を信用してないんだから~」
「フフ、逆にアヤメの魔法を信用されてるのでは?」
「そ、そうですよ?」
「ホントに~?」
「ささっ、ドロップ、ドロップ♪」
「あ~、やっぱり誤魔化してる」
「うわ~、宝箱がいっぱい出てるわね」
オーガキングのドロップ品を確認してみると<HP増大>スキル2つ、オーガキングの角2つ、宝箱2つ、宝箱(紅宝石)2つがドロップしていた。
鑑定してみた所<HP増大>スキルは習得すると、ステータスのVITに比例してHPが増大するスキルのようだ。
HPが増えれば死ににくくなるので、安全を心掛けている僕には非常に嬉しい。
宝箱に入っていた紅宝石はアクセサリとして装備すると、なんらかの付与効果が付くらしい。
「うわ~、そんなに大きくないけどルビーみたいな綺麗な宝石ね」
「うん、綺麗だわキラキラしてる」
「やっぱり女性は宝石大好きなんですね~」
「フフ、一種の魔力でしょうか」
「フフ~、そりゃ女性なら皆好きですよ」
「僕分かんないや」
「あはは、きっとツドイに似合うと思いますよ」
「・・・呼捨て良いかも、ちょっとドキッとした」
「ま、まだ恥ずかしいの我慢してるんですから、言わないで下さいよ」
「あはは、早く慣れなさいよね」




