第49話 やっぱり大阪にも嫌な奴はいるようです
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ツドイさんの柔らかい太腿の感触を思い出してしまい、その日は少し眠りにくかった。
目蓋を擦りながらリビングへ下りると、何時もの様にリラさんが朝食を作ってくれているようだ。
「おはようございます。リラさん」
「おはようございます。ヨウ様」
「何時もすみません。僕も手伝いますね」
「フフ、もう出来ますので座って待っていて下さい」
「じゃ、運ぶだけでも」
「ありがとうございます」
テーブルに朝食を運び終える頃、皆起きて来て全員揃って朝食になる。
「にひひ♪ ヨウ君昨日は良く眠れた?」
「えっ? はい。もうぐっすりと」
「へ~? その割にはちょっと眠そうね、私の膝枕でちょっとだけ寝ちゃう?」
「こら、ナギサ今日は私の番なんだからね? それに今から寝ちゃったらダンジョン行けなくなるでしょー」
「帰ってからしてあげるねヨウ君」
「は、はい、ありがとうございます」
「僕また三日月君が喜びそうな事考えよっと」
僕は朝からデレデレになりそうで意識を保つのが大変だったが、今日も元気にダンジョンへ向かう。
今日は昨日の続きである、天王寺中級ダンジョンの地下11階からスタートする事にした。
昨日も少しだけ探索したけど、人気のある階層なので人が多すぎてあまり見れなかった。
今日も結構な人数が居るようだけど、ダンジョンは広いので魔物の取り合いになるような事はないだろう。
僕達は他のパーティが居ない所まで移動し、<気配感知>で魔物を探していると久しぶりに初見の魔物を発見した。
大型の鳥の様だが、胸だけ人間の女性のように膨らんでいた。
「あれはハーピーね、ドロップ品のタマゴが人気があるのよ」
「へええ~、僕初めて見ましたねハーピーって言っても完全に大型の鳥なんだ」
「んふふ♪ でもその方が狩り易くて良いんじゃない?」
「確かにそうですね、人面ならそのタマゴも食べにくい所でした」
「あはは、そうよね、じゃ私の弓で撃ち落としてみるね~」
「はい、お任せします」
ナギサさんは、弓を構えると直ぐに矢を放ちハーピーの羽に見事に命中させ地面へ落ちてきた。
ドロップの為に僕が止めをさすと、無事タマゴがドロップしたようだ。
「うわ~、タマゴって言っても大きいのね、ダチョウのタマゴぐらいあるわね」
「アヤメさんが見た事無いって事は、そんなに数が出ないのかな?」
「ん~、ハーピーのタマゴは料理店とかに売る冒険者が多いんじゃないかな? 高く売れるそーよ」
「なるほど、それでギルドに卸さないのか、シオさんに渡したら喜ばれそうですね」
「きっと、すっごい喜ぶわよ。沢山獲っとこうか」
「はい」
それからハーピーを重点的に探して倒して行くが、飛び道具が無ければ狩るのは難しい魔物だと思う。
近付けば攻撃してくるんだけど、逃げるハーピーもいる。
僕達はナギサさんの弓とアヤメさんの魔法で、撃ち漏らす事無く仕留めていける。
遠隔武器があれば、この階層が人気があるのも頷ける。
良い調子でハーピーのタマゴを集めてると、また他のパーティを見かけたが、どうやら様子がおかしい・・・誰かと揉めているようだった。
僕達はパーティ同士の喧嘩かと思い様子を見ていると、どうやら一方的に殴られているようだ。
それも殴っている方は雰囲気からして、あまり良くない者のようだった。
「ヨウ君、助けに行こうよ」
「はい、僕もそう思ってました、一応皆さん警戒しといて下さいね」
「「「「「了解!」」」」」
「もう、やめてくれ。狩場を荒らした訳じゃないだろう?」
「ああ? 入って来たじゃねーか?」
「知らなかったんです、大体初めて来たのに分かる訳がないじゃないですか」
「知らない奴が悪いんだろうが? どんな理由であれ俺達の狩場に入って来たんだ無事に帰すわけにゃ行かねえんだよ」
「そ、そんな魔物すら狩ってないじゃない? そんなの横暴だわ」
「うふふ、不満があるなら警察でも呼んだら~」
「ふざけるな警察が居なくてもダンジョンギルドに報告したら、お前達はダンジョンカード剥奪だ」
「おめでたい奴等だな、それは無事に帰れたらの話だろうが?」
「ぎゃはははは♪ 俺達にボコボコに殴られた後、身包み剥がされて這ってでも帰れたら良いな?」
「まあ、間違いなく魔物の餌食だろ?」
「キャハハ♪ 女の子はちゃんとオークの近くで放置して上げるからね~」
「・・・外道共が」
「なんだ~? やるのかよ?」
僕は話しを聞けば聞く程、理不尽な事を言っている者達に我慢できなくなってきた。
大阪に来てから良い人ばかりだったのに、少し残念な気持ちになりながら声を掛けることにした。
「あの、すみませんダンジョンに縄張りなんてありませんよ?」
「ああ~? なんだお前ら?」
「ダンジョンは誰の物でも無いって言ってるのよ頭悪いわね」
「俺達の狩場だってさ。プププッ、子供みたいね?」
「そうですよ、みっともない真似はやめましょう。その人達に謝ってから治療費と迷惑料を払って上げて下さいね」
「ねえ、僕死にたいの? この人数が見えないのかな? 謝ってももう遅いよ?」
「また頭悪そうな女ね、日本語で言って上げてるでしょ? 国語ぐらい小学校で習って来なさいよ」
「・・・俺達は「スカッド」だぞ、分かってんのかよ?」
「誰か知ってますか?」
「はい、確か質の悪いグループだったかと。ゴミの集まりなので潰した方が宜しいかと」
「あ~、知ってるわ。クズ共よ」
「へえ~、こいつ等がね。まあ確かに知性が足りないバカみたいな顔してるわね」
「もう良いわ、死になさい<ファイアボール>!!!」
「ひっ! キャアアアアアア」
スカッドの一員である女性が僕達の言葉に怒ったのか、突然<ファイアボール>を放ってきた。
絡まれていた者達は驚き戸惑っていたが、僕達にとっては<ファイアボール>ぐらいで驚くような者はいない。
しかし、許せないのは<ファイアボール>をアヤメさんに向かって放ちやがったことだ・・・
僕はアヤメさんに向かって放たれた<ファイアボール>を左腕に装備している盾で払い落し、<ファイアボール>を放った女性の顔面を鷲掴みにしてやった。
「キャアアアアアアアアア! い、痛い! 放して!」
「・・・放してですか? 嫌ですよ。このまま顔を握り潰して上げましょうか?」
「なっ? 何時の間に! 放しやがれ」
近くに居たスカッドの者達が僕に殴り掛かってきたが、今度はリラさん達が阻止してくれた。
「ギャアアアアアアア! 足が、俺の足があああああ!」
僕に殴り掛かろうとしていた男はリラさんに太腿を切られ、のた打ち回っている。
他の連中も同様に足を攻撃されたのか、膝から先が変な方向に曲がっていた。
「ねー? こいつ等這って逃げろって言ってたから、這うのが好きなんじゃないかしら?」
「フフ、それは良い考えですね。それでは両足を切断して差し上げましょう」
「ヨウ君も殺しちゃ駄目よ?」
「・・・ふぅ~、そうですね。少し頭に血が登っちゃいました」
「でも<ファイアボール>を撃ってきたんですから、殺される覚悟ぐらいあるんですよね?」
「痛い、痛い放してよ?」
「・・・あの、人の話を聞いてます? 頭蓋骨が割れますよ」
「ゆ、許して。お願いもうしないから・・・」
「貴方は馬鹿ですか? 死になさいとか言ってたのに、許して? お願い? 訳が分かりませんね」
「足を踏み砕いて上げますから、這って逃げたらどうですか?」
僕は顔を鷲掴みにしていた女性を、地面に叩きつけ膝を踏みつけた。
「キャアアア! 痛いよ。許してよお~、もうしないから」
「お前ら、もう許さねえ、殺してやる」
「馬鹿共が、逃げられると思うなよ」
「どっちが馬鹿か分からない?」
「近接攻撃の練習台にしてあげよっかな、何時も弓だからね」
「あ~、私も魔法ばかりだから、そうしよっと」
僕は容赦なく女性の膝を踏み潰し、スカッドのメンバーに襲い掛かった。
今の僕の身体能力なら足払いをするだけで、両足の骨が砕けるようだ。
魔物に比べたら脆弱にも程がある、こんなにも弱いのによく高圧的になれるもんだ・・・
しばらくすると、30人近く居たスカッドのメンバーは全員悲鳴を上げながら地面に転がっていた、殆どの者が両足を切断されている。
まあ、回復ポーションがあるので切断しない限り簡単に治っちゃうから、やりすぎって事はないだろう殺さないだけ感謝して貰わないとね。
「あらっ? 貴女両足が残ってますね。ちゃんと今から切断して上げますね」
「ひっ! ゆ、許してよ~、もうしないって言ってるじゃないのよ」
「何言ってるのよ? 貴女がしたように<ファイアボール>の方が良いのかしら?」
アヤメさんは、そう言うと<ファイアボール>を作りだし頭上へ掲げた。
アヤメさんの<ファイアボール>は、先の女性が作り出した物とはレベルが違う凶悪な炎の塊だった。
「ひぃ、ひぃぃぃ、許して、お願い、そんなの死んじゃう・・・脅すつもりだったのよ本当よ、ゆ、許して」
「脅すつもりなら<ファイアボール>撃っても良いんだね? じゃ、撃つから上手く躱しなさいよ」
「待って、わ、私動けないの、許して死んじゃうよおおおおおおお」
「・・・随分勝手な事言うのね? 貴女達もやってる事でしょ? ああ、そうだ女性はオークの近くに放置だっけ?」
「なら足だけで勘弁して上げるわ。でもオークの近くまで連れてって上げるね、文句ないでしょ?」
「ひっ! ま、待って・・・キャアアアアアア」
女性はノノさんに両足を切断されたが<ヒール>を掛け、死なない様に配慮されていた。
こいつらが言っていたように全員装備を剥ぎ取り、這って動けるようにはした。
だが此処からクリスタルまでかなりの距離があるので、辿り着くのは不可能だろう。
スカッドのメンバー全員のギルドカードを回収しギルドへ渡しておこう。もし、命が助かったとしても2度とダンジョンには入れない様にね。
僕達がスカッドのメンバー全員を死なない様に<ヒール>を掛け終わる頃、助けたパーティから声を掛けてきた。
「あの・・・助けていただいて、ありがとうございました」
「いえ、見てられなかっただけなので、気にしなくても良いですよ」
「・・・そ、それで両足を切断するなんて、やり過ぎなのでは・・・」
「ん~、気持ちは分かるんですが、ここまでやらないとポーションで直ぐ治っちゃうんですよ。そうすると同じ事を繰り返すだけだと思うんで仕方ないですね」
「そうよ、それに私達が助けなかったら、貴方達間違いなく死んでたのよ?」
「そそ、ここはダンジョンなんだから、殺しても誰にも分からないしね、それでもやり過ぎだと思う?」
「・・・・・・・・」
「そうですね、俺が間違ってました。すみません」
「ダンジョンが怖い所だってのを、改めて認識する事が出来ました、本当にありがとうございました」
「良いのよ、私達はもう行くけど気をつけてね」
「あ~、そだ。念のために言っとくけど私達の事は喋っちゃ駄目よ?」
「はい。俺達は何も見てません」
「貴方達も早めに此処を離れた方が良いですよ、血の匂いで魔物が集まって来そうですから」
「わ、分かりました」
僕達は引き続きダンジョン探索に戻る事にした。
「・・・おい、俺達も早く此処から離れるぞ」
「そ、それじゃ、この人達は・・・」
「自業自得って事だ。此奴等を助ける義理もないし、せっかく助けて貰った命だしな。行くぞ」
「はい」
俺達は急いで移動し、しばらく経つと遠くから叫び声の様なものが聞こえて来たような気がしたが、気にしない事にした。




