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第37話 驚きに打ち止めは無いらしい


 ツドイさんが迎えに来てくれた高級車は、とても大きくて長く、後部座席のシートもフカフカでテーブルまで付いていた。



「広ーい、す、凄いよお兄ちゃん♪ 車なのに全然揺れないし、テーブルまで付いてるんだけど?」


「凄いだろ、ツドイさんの運転が上手いからだぞ、それから喉乾いただろ買っといてやったぞ」


「私こんな高級車初めて乗ったよー、確かに驚きすぎて喉が渇いちゃったよ・・・って、これ300円もするジュースじゃない? すごーいお兄ちゃん、流石社会人だね」


「フフフ、やっとヒカリにも分かったか、そうだぞ社会人なんだぞ? もうこんなジュースも買えるんだからな」


「うわ~、私これ飲みたかったんだ♪ どんな味がするんだろって思ってたの、ありがとう。お兄ちゃん」



 ・・・う~ん僕、ほっこりした気持ちになってる? リラさんも微笑んでるから同じ気分なんだろうな・・・


 兆万長者に成った三日月君が300円のジュースで誇ってるのも、ある意味凄いかも・・・僕ほっこりする~



「うわ~、ビルがたかーい、都会だねお兄ちゃん、人がいっぱい居るよー」


「お兄ちゃんも初めて来た時は驚いたな~」


「やっぱり都会は怖い所なの?」


「それがな、お兄ちゃんが出会った人は良い人ばかりなんだ、運が良いだけかもしれないけど都会も良い所なんだぞ」


「そうなんだー、都会は怖い所だって聞いてたから安心しちゃったよ」


「まあ、お兄ちゃんもそう思ってたからな、でも十分注意しないとな」


「じゃ、ヒカリ。今日はあまり時間が無いから、近くて有名な所回って貰うからな」


「うん、ありがとう。お兄ちゃんが行ってる大阪ダンジョンギルドも見てみたいよ」


「ヒカリはダンジョンの中に入れないぞ?」


「それでも良いよ、どんなところか見たかったんだ~」


「じゃ、近いから最初にギルドに行く?」


「そうですね、すみません。ツドイさん」


「良いよ」



 ギルドへ先に行くと言っても本当に直ぐ近くだったので車を止めると、ギルドの中を見学する事になった。



「うわ~、ここがダンジョンギルドなんだ、お店とか色々あるんだね」


「そうだぞ、冒険者に必要な店は殆ど揃ってるんだ、カフェや飲食店だってあるしな」


「へええ~、でも意外と人が少ないみたいだけど?」


「今は時間が中途半端なんだよ、5時ぐらいになったらダンジョンから帰ってきた冒険者で凄く混むんだぞ」


「そっか~、でも冒険者の恰好した人もいる~、何か信じられないけどお兄ちゃんも冒険者なんだね」


「当たり前だろ? さあ次に行くぞ」


「は~い」



 それからはツドイさんに色々と有名な所を回って貰い、テレビに良く映る所ではヒカリがキャーキャー言っていた。



「うわー、うわー、凄いね、お兄ちゃん♪ 今はこんな都会に住んでるんだね~」


「まあ、そうなんだけど正直に言うとダンジョンにばかり潜ってるから、お兄ちゃんも余り観光してないんだ」


「やっぱり生活が苦しいんだ、大体分かるよ・・・だって物価も高そうだしね。


それとママが心配してたよ、お兄ちゃんが仕送り沢山送って来たって、


無理してるんじゃないかって、今日も私の為に綺麗な女性2人も雇っちゃって、


こーんなに高そうな車だって借りちゃうし、無理しなくて良いよ。お兄ちゃん?」



 妹のヒカリの言葉に運転手のツドイさんが必死に笑いを堪えてるのが分かる・・・


 不意にリラさんの方を見ると顔を逸らされた・・・



「普段のままの、お兄ちゃんで良いんだからね? 無理して広い部屋借りてない? ちょっと恥ずかしいけど、一緒のベッドで寝ても良いんだからね?」


「ぷっ! ごほん、ごほん」


「・・・ツドイさん・・・どうかしました?」


「な、なんでも無いよ、ちょっと咽てしまったよ」



 僕はグリンっと首を動かしリラさんの方を見ると、リラさんが小刻みに震えていた、きっと寒いんだろう・・・


 しかし、ヒカリめ・・・どこまでお兄ちゃんを信用してないんだ・・・



「あのなヒカリ、お兄ちゃんも、ちゃんと稼いでるんだぞ? 余計な心配はしなくて良いからな」


「ホント? 嘘じゃない? あっ? 野宿なんてしてないよね? 都会は危ないから駄目なんだよ?」



 クッ! こ、これは一種の拷問だね・・・ククッ! まさか、笑いを堪えるのがこんなに辛いとは・・・クククッ。


 だ、駄目です・・・笑ってはいけません・・・ヨウ様に怒られてしまいます、これは試練ですね・・・


 ピクピクッ! ヒ、ヒカリめ・・・どこまで、お兄ちゃんを信用してないんだ・・・



「よーし、ヒカリがそこまで言うなら、お兄ちゃんが今住んでる所へ連れてってやる。驚くなよ?」


「うん、吃驚するぐらい汚くて狭くても私笑わないよ、安心してねお兄ちゃん」



 クッ! クククッ! こ、これは駄目だ。もう僕の腹筋が崩壊寸前だよ♪ 急いで向かおう。クククッ。


 スーハースーハー! 流石にヨウ様の妹さんです。まさか、私が此処まで感情をコントロール出来ないとは、スーハースーハー。


 ぐぐぐっ! ヒカリのお陰でツドイさんとリラさんには笑われっぱなしだ、いくらヒカリでも僕の住んでいる部屋を見たら、僕が稼いでる事が分かるだろう・・・見てろよヒカリめ。


 ツドイさんは何時もの場所へ車を止めてくれ、僕達は歩いてマンションの入口へ向かう。



「うわ~、すっごく高くて大きい~~~♪ お兄ちゃんの部屋に行くんじゃないの?」


「だから、此処がお兄ちゃんが住んでるマンションなんだよ」


「えええ~~? で、でもすっごく大きいよ? 此処って小さい部屋もあるの?」


「・・・ヒカリには説明するのが難しい、見たら分かるって」


「えっ? ちょ、ちょっとお兄ちゃん。勝手に入って怒られるよ~~」



 僕はヒカリの手を引き、部屋に続くエレベーターに乗った。



「えっ? えええっ? は、はやーい! 凄く早いよこのエレベーター、うわっ?  高ーい、どこまで行くの? お兄ちゃん」


「フフフ、最上階にある部屋がお兄ちゃんの部屋なんだ、だから一番上の50階まで行くぞ」


「50階? 嘘よねお兄ちゃん? だって最上階の部屋なんて、お兄ちゃんが住めるわけ・・・あっ? お兄ちゃん。ひょっとして屋上に無断で住んでるの? 駄目だよお兄ちゃん、そんなことしちゃー」


「「ぶはっ♪♪♪♪♪」」


「くっ! くくっ! だ、駄目です♪」


「も、もう駄目、僕死んじゃう♪」



 今まで笑うのを我慢してくれていたリラさんとツドイさんが、遂に声を出して笑っている。


 この馬鹿妹め、どれだけお兄ちゃんを信用していないのか伺い知れる。



 ヒカリが喋っている内に部屋に着いたので、ヒカリをリビングまで連れて行き地上50階から見える風景をヒカリに見せてやった。



「わわわ、すごーーーーい! 遠くまで見える♪ それに素敵な部屋ーーー♪ なにこれ? テレビで見たことある高級マンションの部屋みたいなんだけど?」


「んふふ、お帰りなさいヨウ君」


「ただいまアヤメさん、えっと紹介しますね妹のヒカリって言います、見ての通り煩い奴ですが宜しくお願いします」


「へええ~、ヨウ君そっくりじゃない、可愛い妹さんね♪ こんにちわ。私はヨウ君と同じパーティメンバーのアヤメって言うの。宜しくねヒカリちゃん」


「可愛い~♪ ヨウ君を女の子にしたみたい♪ 私もパーティメンバーのナギサです。宜しくねヒカリちゃん」


「私はリラ姉さんの妹でヨウ様とパーティを組ませて貰ってるノノです。宜しくお願いします、ヒカリ様」


「えっ? えっ? ええっと? ええっ?」


「こらっ! ヒカリ。ちゃんと挨拶しないと」


「うん、わ、わ、私お兄ちゃんの妹で今日、田舎から出てきましたヒカリって言います。宜しくお願いします」


「んふふ♪ ゆっくりしてってね。って私が言うのも変か、ヨウ君の部屋だもんね」


「お兄ちゃん? 屋上じゃなかったの?」


「そんな訳あるかー」


「でも、どうしてお兄ちゃんの部屋に綺麗なお姉さんが、いっぱい?」


「ああ、お兄ちゃん今パーティメンバーである5人の女性と一緒にルームシェアしてるんだ」


「お兄ちゃん? 幾ら私が来るからって見栄を張りすぎだよ~~~」


「劇団の人なんだよね? いくら借金したの? やりすぎだよ~~」


「「「「「ぷっ! あはははははははは♪(クッ クククッ)」」」」」


「・・・バカ、ヒカリのせいで笑われてるだろ?」


「だって、お兄ちゃんが見栄っ張りになってるなんて私ショックだよ~~、正気に戻ってよ~~」



 僕は現状を全く理解してくれないヒカリに、ガックリと膝を落としていると、リラさんが懇切丁寧に本当に僕の部屋であり、他の女性達は居候している事を説明してくれた。


 時間は掛ったが、ようやくヒカリも理解してくれたようだ。


 今度は僕を尊敬の眼差しで見てくれている。



「お兄ちゃん、私信じてたよ?」


「ブッ!? 良くそんな、手の平返しが出来るよな?」


「えへへ! でも私が悪い訳じゃないわ、だって普通信じられないよ~、いくら冒険者に成ったからって、こんな短期間でこんなに良い部屋に住めるものなの?」


「フフ、限りなく不可能に近いと思われます。ヨウ様は冒険者の天才ですから出来た事だと思われます」


「う~ん、そうよね。ヨウ君と同じ事が出来る人なんて居る訳ないわね」


「天才なんて言葉では括れないぐらいよ?」


「ヨウ様は奇跡の人です」


「そうだね、僕も同意するよ」


「・・・・・お兄ちゃん・・・薬物とか使ってないよね?」


「ブッ!? おまえな~」


「「「「「ぷっ! あははははははは♪(クッ クククッ)」」」」」


「あはは、あ~♪ もう、お腹が痛いわ面白いわね、ヒカリちゃん。貴女のお兄さんは本当に天才なのよ? 私達全員が認めるぐらいのね」


「で、でも、田舎に居る時は普通のお兄ちゃんだったんですよ?」


「そりゃそーよ、だってヨウ君は冒険者の天才なんだから、ヨウ君の真価はダンジョンで発揮されるのよ?」


「ふあ~、本当にお兄ちゃんって凄い人だったんだ」


「遅い・・・遅すぎるぞヒカリ、でもちょっと過大評価だと思うんだけど・・・」


「フフ、過大評価でこの部屋に住む事は出来ないかと思いますよ?」


「そーよ、ヨウ君ある程度は自分の事も認めておかないと嫌味になるかもよ」


「・・・あまり自覚はありませんが、そう思う様にします」


「じゃ、今日はヒカリちゃんの歓迎会にしましょうか」


「良いわね、ヒカリちゃんの好きな食べ物って何かな?」


「私お寿司が大好きなんです♪ だから一度回らないお寿司が食べてみたくて、お兄ちゃん良いでしょー?」


「良く言うよ、美味しい物は全部好きなくせに・・・」


「フフ、では何時もの魚座で宜しいでしょうか?」


「すみませんリラさん、お願いします」


「わーい、やったー♪ お寿司の出前だ~~♪」



 お寿司に上機嫌になったヒカリは、皆と直ぐに仲良くなりハシャイでいる。



「改めて見ると凄い部屋だね~、凄いね? お兄ちゃん自慢ものだよ~」


「ふふん♪ そーだろ、そーだろ、そうだ! 夕食食べたらプールで泳いでも良いぞ?」


「えええっ? プールもあるの? 見たい、見たい、見たーーーい、今見る~~」


「分かった分かった、でも泳ぐのは食べてからな」


「分かったから、早く早く~~」



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