第35話 サービスは2号店で良いかな
「でも、ヨウ君来てくれたのは嬉しいけど、タイミング悪いよ~」
「どうしたんです?」
「私の数少ないレパートリーを、見事に引き当てちゃうんだもん」
「えっ? 意味が分からないんですけど?」
「うふふ、ヨウ様。スズカさんのドレスが以前と同じなのではないですか?」
「うわ~! 恥ずかしい~~~、やっぱり女性なら分かっちゃいますよね?」
「あはは、なんだそんな事ですか、僕なんて冒険者の時は毎日同じ服なんですよ?」
「冒険者の服って防護服だから制服みたいなものじゃないですかー」
「そう言われれば、そうかな・・・」
「ん~、私も頑張ってドレスも揃えないと」
「じゃ、僕がプレゼントしますよ♪ リラさんお願いしても良いですか?」
「畏まりました。1時間程お待ち頂けますか?」
「ありがとうございます。あっ! ママさん、スズカさんを1時間程お借りしても良いでしょうか?」
「ウフフ、もちろん良いですわ、その代わりサービスして下さいね」
「あはは、分かりました」
「ではスズカさん、行きましょうか」
「えっ? ええっ? マ、ママ?」
「ウフフ、スズカちゃん行ってらっしゃい♪」
「行ってらっしゃいって・・・そんな手をフリフリして? ママ?」
「それにヨウ君? どういうこと?」
「僕も色々調べてきたんですが、パトロンって言うんですか? 僕スズカさんのパトロンに成りますよ」
「そ、そんなヨウ君、パトロンってそんな大っぴらに言う事じゃ・・・」
「さあ、行きますよスズカさん」
「えっ? あああーーー」
スズカさんはリラさんに連れられて外へ出て行った。
「では、三日月様にはヘルプの女の子お付けしますね」
「ヘルプって勉強してきました、ありがとうございます」
やっぱり、こういうお店の事を調べてきて良かった。
ネットでちょっと検索しただけだけど言葉の意味が分かるって良いよね。
◇ ◇ ◇
<キャバクラNO1、アイナ視点>
「ええと、忙しくなってきたわ・・・ちょっとごめんなさい、直ぐにナンバーワンから順に5名の女の子を集めて頂戴」
「ご、5名もですか?」
「ええ、直ぐによ急いで!」
「はい、分かりました」
「ママ、どうしたの? 大至急って聞いたけど」
「急がせてごめんなさい。今からスズカちゃんのヘルプに入って欲しいの」
「えっ? 新人の子よね? 私あまり面識ないけど・・・それに、私一応此処のトップよ?」
「分かってるわ、良い? 良く聞いて、下手な子に任せられないお客さんなのよ、今から入るお客さんには最大限の誠意を持て成しをして頂戴。
もし、機嫌を損ねるような事があったら首じゃすまないわよ」
「もちろん、私からボーナスも出すから、お願いね」
「わ、分かったわよ、一体どんな大物なの?」
「本当に聞きたいの? 本当に? 後悔しない? 知らない方が良いと思うんだけど・・・」
「ちょ、ちょっと脅さないでよ、分かったから行って来るわ」
「良い? 本当に気をつけてね、言っとくけど庇えないわよ」
「どこまで人を不安にさせるのよ・・・分かったわよ」
「三日月様。お待たせしました」
「うわ~! こんなに綺麗な人ばかり5人も来てくれたんですね、ママさんありがとう」
「ウフフ、いいえ、さあ御挨拶なさい」
嘘でしょ? こんなに若い・・・まだ少年じゃない? それに何この綺麗な女性は?
こんな事考えてる場合じゃなかったわね、一生懸命対応しないと・・・
「初めましてアイナと言います、宜しくお願いします」
私達は、順番に挨拶をして席に着いた。
「僕は三日月陽って言います、来てくれてありがとう」
「ママさん、一番美味しいお酒5本下さい」
「三日月様、一番となると1本100万円になりますよ?」
「じゃ、それ下さい」
「は、はい、しばらくお待ちください」
ええっ? あれってママが高級店には必要って言って仕入れてから全然出てなかった最高級のドンペリじゃない?
それが5本って、殆ど全部じゃない?
「お待たせしました、三日月様」
「ありがとうママさん。後、確かフルーツとかもあるんですよね?」
「はい、色々御座いますよ」
「じゃ、一番大きいやつを5つ下さい」
「はい、ちょっと待って下さいね」
「ヨウ様、先に乾杯にしたらどうですか?」
「そうですね、じゃ先に乾杯!」
「「「「「か、乾杯!」」」」」
「これも美味しいですね、ノノさん」
「フフ~♪ はい、美味しいですね」
いつか飲めると良いなと思ってたドンペリが飲めるのは嬉しいけど、何か怖くて味が分かんないよ~
それよりも楽しい会話しなきゃ。でも、こんな可愛い少年にどんな話したら良いのよ~
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
<ヨウ視点>
「皆さん、そんなに緊張しなくても良いですよ? ヨウ様は優しいお方ですから」
「はい、ありがとうございます」
「三日月様は御綺麗な女性を連れていますね、私達が霞んでしまいそうです」
「確かに、僕とパーティを組んでくれて幸せですね」
「パーティと言いますと、冒険者の方なんですね?」
「はい、田舎から大阪に出てきて冒険者になりました」
「そうなんですか、冒険者の方は危険ですし大変でしょう」
「いえ、僕は臆病なんで弱い魔物ばかり相手してるんです」
「フフ~♪ ヨウ様、御謙遜が過ぎますよ」
「ソロの時は本当にそうでしたよ?」
しばらく話をしているとママさんがフルーツを持って来てくれた、思っていた物よりも大きくて美味しそうだ。
「お待たせしました、フルーツ盛り合わせです」
「うわ~! 豪華ですね、それに美味しそうです」
「ウフフ、喜んで頂いて嬉しいですわ」
それから、しばらくママさん達と話をしていると、リラさんがスズカさんを連れて帰って来てくれた。
帰って来たスズカさんはドレスも新調されており、髪形もセットし直しメイクのためか大人びて見えた。
「すみませんリラさん、お使い頼んでしまって」
「いいえ、お気になさらず。頼ってくれて嬉しいぐらいです」
「それに、流石リラさんですね、スズカさん見違えましたよ」
「ヨ、ヨウ君、何か恥ずかしいんだけど、本当に貰っちゃって良いの?」
「勿論ですよ、なにせスズカさんのパトロンですから♪」
「だから、そんな事大っぴらに言う事じゃないんだからね?」
「そうなんですか?」
「そうなのよー! でも良いのありがとう♪ あの、それでリラさんに後10着程いただいちゃったんだけど、置く所がないぐらいよ?」
「ああ、なるほど。僕も最初は部屋が狭かったですからね、スズカさんもそうなんですか?」
「そりゃワンルームよ? まだ、そんなにお金ないもの」
「じゃ、洋服を入れるとこに困りますね・・・じゃ、引っ越ししましょうか」
「リラさん十分洋服が入る部屋で、此処に近い方が良いですね」
「畏まりました、直ぐに手配致します」
「ま、待って・・・お願い、ちょっとだけ待って」
「どうしたんです?」
「お願い待って、何か頭がパニックになってるの。何がどうなってるの? ママ助けて」
「ウフフ、パトロンには甘えないといけませんよ?」
「ママまでパトロンって・・・あれっ? 私がおかしいのかな? お、お姉さん達・・・私どうしたら?」
「ごめんなさいスズカちゃん、私達では・・・」
「ヨウ様、直ぐ近くに良い物件があるそうです。
10分程で鍵を持って此処に来るように手配致しました。
此処から直ぐ近くに新築マンションの30階で専有面積100㎡、3LDKから他の部屋も用意させました。
10件程買取り致しましたので好きな部屋をお選びいただけます。
もちろん他の物件もご希望通りにするよう伝えてあります」
「ありがとう。流石リラさん段取りが早いですね」
「ありがとうございます」
「スズカさん決まったみたいです。直ぐに鍵を持って来てくれるそうだから帰りにでも見て、好きな所を決めて下さい」
「これで洋服10着入りますよね?」
「はい、ドレス専用のウォークインクローゼットを、お付けしましたので追加で50着程注文致しました。既に最初の部屋に運び込まれていると思われます」
「流石完璧ですね、これでドレスで困る事は無くなりそうですね」
「えっ? あの、その、あ、ありがとう・・・で良いんだよね?」
「あはは、どういたしまして♪ 後、何か困った事があったら僕に言って下さい」
「あっ? そうだ、ママさんにサービスを忘れてました」
「大事なスズカさんをお借りして、すみませんでした」
「どんなサービスが良いか考えたんですけど、こういうお店って景気が良くなると2号店とか出すもんなんですよね?僕、昨日調べておいて良かったです、リラさん良いかな?」
「畏まりました。お店を出すのに適した立地を検索致しますので、その中からお選びいただけるように致します」
「うはー! 僕の考えが見えるみたいですね、リラさん凄いです」
「フフ、ありがとうございます♪」
「あ、あの、一体何の話を・・・」
「あはは、ママさんへのサービスですよ♪」
「此処の2号店をサービスしますね」
「2号店をサービス? お店ごと? で、ですがスズカちゃんにママは、まだ早いかも・・・」
「あはは、ママさんへのサービスですよ? 確か2号店って信頼のおけるお店のトップの人にママさんやって貰うんですよね?」
「えと、この店のトップの方ってアイナさんでしたよね、って事はアイナさんがママになるのかな?」
「ママになる? ちょ、ちょっと待ってママ? 一体どうなってるの? さっきから話について行けないんだけど?」
「ちょっと待ってね・・・私も未だ頭の整理がつかなくて・・・」
「今不動産屋に連絡を取りました、5分で此方に到着するそうです。
既に何件か買取り致しましたので2号店の場所をお決めください。
内装業者も一緒に来られるそうです、ソファーから家具一式と水回りの業者も手配致しましたので御相談下さい。
ちなみに料金は既に支払ってありますので心配無用です」
「・・・5分で2号店が決まったのね、やっと理解出来たわアイナちゃん頑張ってね」
「えええええっ? わ、私がママやるの?」
「安心してちょうだい。私がちゃんと教えるからね、それとも三日月様の要望を断るのかな? 本当に? 覚悟は出来てます?」
「わ、分かりました! ママやらしていただきます」
「フゥ~! 安心したわ。悲しい思いをしなくて済んだのね」
「私命の危機だったの? 断ったら私死んでたの? 嘘でしょ?」
「アイナちゃん? 人生って決断を間違えちゃいけない時があるのよ」
「待って、それが今だったの? 私何時も通りお客さんの接待してた普通の日だった筈よ?」
「人生そんなものよ」
「あはは、面白いママさんですね♪ あっ? そろそろ帰らないといけない時間ですね」
「じゃ、スズカさん僕、今日は帰りますね。また来ます」
「はい、あの、今日は本当にありがとう」
「いえいえ、ではまたです」
「あっ? そうそう皆さん?」
「そういえば言い忘れてましたけど、皆さんヨウ様の名前を出しちゃいけませんよ? これは私からの忠告です! 今日は美味しいお酒ありがとう。じゃね」
何か色々やっている内に時間が経ってしまい、スズカさんとあまり話が出来なかったけど、また今度アヤメさん達と来るときでも良いよね。
そして僕達3人はお店を出て家に帰る事にした。
ノノさんがママさん達に小声で何か言ってたけど、何を言ってたんだろう?
「ママ、何か嵐の様だったんだけど?」
「フゥ~、スズカちゃん。貴女も凄い人に気に入られたものね、私も冷や汗掻きっぱなしだったわ」
「ママ、私マンションの家賃なんて払えないかも・・・」
「ウフフ、何言ってるのスズカちゃん? マンションの部屋を買って貰ったのよ、家賃なんて無いわ」
「ええっ? そ、そんな! 何千万円もするんじゃ?」
「そんなに安くないわ、予備で数十件買い取ったって言ってたから数億円使った筈よ?」
「あわわ! そ、そんな・・・」
「良い方向に巻き込まれたアイナちゃんも頑張ってね」
「たぶん、私が一番理解不能だと思うわよ? あの少年って、いったい何者なのよ~~~」
「本当に聞きたいの?」
「・・・いいえ・・・結構よ・・・」




