第32話 メッセージ付きオークションです
今日はいよいよオークションの当日になる。
急ピッチで訓練した3人は、9日前とは比べ物に成らない程強くなった。
ステータスを上げきるには全然時間が足りなかったけど、十分な強さは身に着いたと思う。
今日のオークション会場は数千人の参加者で溢れかえっている、警察官の数も<鑑定>の時の倍は居るかもしれない。
外には自衛隊まで待機していた。物々しい雰囲気の中、オークションが始まろうとしている。
肝心のエリクサーは未だ僕が持っている。
皆との話し合いの結果、今後の為にも凝った演出をすることになった。
遂に始まったオークションは、何時もなら盛り上がるスキルの数々にも静寂を以って進行していった。
競り落とされていく金額は普段と比べても遜色ないにも関わらず、一向に盛り上がらないオークションは異質な雰囲気を醸し出していた。
時間は流れ会場中のオークション参加者が待ち望んだ、本日の目玉商品であるエリクサーのオークションが始まろうとしていた。
【会場中の皆様、長らくお待たせ致しました!】
【只今より本日の目玉商品であるエリクサーのオークションを開催致します。
舞台中央に置かれている円筒形の容器は耐熱性、
衝撃性に優れた素材になっており、安心して持ち帰れるよう御用意致しました。
しかし、この中にはまだエリクサーは入っておりません】
「ザワザワザワ・・・・・」
「おいおい、嘘だろ?」
「まさか、冗談でしたって言うんじゃないだろうな・・・」
「これだけの人数だ、暴動が起きるぞ?」
【皆さん静粛に、私はまだ入ってないと言ったのです。
誤解の無い様お願い致します。
実はエリクサーの出品者が私に、こう言いました。
エリクサーはオークションが始まる時間、丁度に私が直接届けると。
そして、その時間は後30秒程でしょうか、
私はこの出品者に対し、絶大な信頼を置いております。
会場の皆様、どうか静寂を以って舞台中央にある容器に刮目して下さい!】
そう、凝った演出とはオークション会場に集まった、数千人を超える参加者達が注目している舞台に誰にも見えず、聞こえず、気配すら感じさせずにエリクサーを置いて来る事だ。
既に僕は<気配遮断><隠蔽>そして<魔力操作>を発動し、魔力まで消し去り舞台中央に立っている。
カウントダウンが始まり、時間丁度に僕は<虚空界>からエリクサーを取り出し舞台中央に設置された容器にエリクサーを置いた。
静寂に包まれた数千人が息を飲んだ瞬間、「コツン」と小さな音を立て何もない空間からエリクサーが顕現した。
エリクサーは会場中の人々が良く見える様に、後ろのモニターに拡大表示されている。
淡く発光する、その神秘なる液体は会場中の人間の眼に焼き付いただろう。
次の瞬間、割れんばかりの歓声が会場全体を包み込んだ。
バカな? どうやって? 見えなかった、瞬きすらしてなかったのにと、其々の人間が言葉を発する中、司会の声が響き渡った。
【会場中の皆様、御覧頂けたでしょうか? 今舞台中央に置かれた神秘の液体がエリクサーで御座います。
皆様、実は私もこのエリクサーの出品者に会った事が無いのです。
私がこれを言っても誰も信じなかったでしょう。
しかし、今会場に来られている皆様には分かった筈です。
そう、このエリクサーの出品者は誰にも姿を見せた事がないのです。
私に分かる事は、こんな偉業を簡単にやってのけられる冒険者であると言う事だけです。
それでは、我社が誇る鑑定人から、このエリクサーの出品者からのメッセージを読んでいただきます】
アヤメさんは色の濃いベールで顔が隠れているため誰かは分からないが、誰が見ても美人であることは明らかに分かる出で立ちだった。
黒を基調としたドレスは素晴らしいスタイルを現し、麗人の名に相応しい姿がそこにあった。
そして紙を広げ、出品者からのメッセージを読み上げていく。
【私から世界中の人々にメッセージがある!】
このアヤメさんの一言で、会場中が静まりかえった。
【私がこの度エリクサーの出品に至ったのは、今現実にダンジョンからエリクサーが出現するかもしれないと強く切望している人達のためだ。
これによって治らないと言われている怪我人や病人の最後の希望となる事を祈っている。
そして、今後またエリクサーが手に入ったら、必ず出品する事を此処に誓おう!
だが、私の事を調べエリクサーを独占しようとする者が現れた時、私は永遠に姿を消すだろう。
以上で御座います】
アヤメさんがメッセージを読み終えると、また会場中が騒がしくなる。
【世界中の皆様、この出品者の言葉を良く考え、軽率な行動を取らないようお願い致します】
アヤメさんは、深くお辞儀をしてから舞台の外へ消えていった。
【それではエリクサーのオークションを開催致します。開始額は5000億円からです】
オークションの競りが始まる頃には、僕はもう会場の外にいた。
アヤメさんは受け渡しの確認があるため会場に残っているので、僕は外で待つ事にした。
既にアヤメさん以外のメンバーはツドイさんの運転する車の中に揃っていた。
「しかし、凄かったわね? <気配感知>を持ってる私でも、全然分からなかったわ」
「でも、同じスキルを持っている筈の僕達は、三日月君にアッサリ見つかるのにね・・・不思議」
「フフ、ヨウ様に狙われたら逃げられず、追う事すら敵わずと言う事です」
「そうだね、幾ら強く成っても三日月君には勝てる気がしないよ、僕は」
「フフ~、ヨウ様最強です~」
「えへへ! 褒めすぎです照れますよ?」
「ねーねー? ヨウ君なら覗き放題だね?」
「えっ? いやあの・・・」
「にひひ♪ このこの~」
「僕達相手なら覗く必要すら無いんじゃないかな?」
「「「・・・・・・・」」」
「えっ? ど、どういう・・・」
「ヨウ君は分からなくて良いの♪ あっ、来たわよ」
「皆、お待たせ~」
「お疲れ様です、アヤメさん」
「んふふ♪ 緊張したわ、ヨウ君も流石だったね」
「えへへ! ありがとうございます」
「フフ、これだけ演出しておけば、出品者であるヨウ様を調べようとは思わない筈です」
「そうね、普通あんな離れ業が出来る冒険者に近づいたら、逆に殺される可能性が高いって分かるもんね」
「あのメッセージも役立つよね? 調べられたら姿を消すって言ってるんだもの各国が牽制し合うでしょ」
「そうですよね、どっかの国が勝手に出品者を追い掛けて、二度とエリクサーが出品されないような事になったら大変ですもんね」
「フフ、そうですね、それに唯一繋がりのあったギルドの社長も、あれだけ出品者の事は何も知らないと公言しておけば、社長が襲われる事も無いでしょう」
「つまり作戦通りって訳ね」
「ところで、アヤメ? どれぐらいの値段が付いたの?」
「知りたい?」
「も~、引っ張るな~♪ 教えて下さいアヤメ様~」
「うむうむ、仕方ない教えてやるか」
「アメリカが競り勝ったわ」
「2兆2000億円よ!」
アヤメさんの言葉に皆の首がグリンと動き、アヤメさんを見ながら言葉を発す。
「「「「「はい?」」」」」
「んふふ♪ もう笑うしかないでしょ?」
「アヤメさん、兆って、億の向こう側?」
「・・・言い方が新しいけど億の次ね」
「フフ、ヨウ様は、兆万長者と言う所ですか」
「儲かっちゃいましたね」
「だから軽いってば」
「フフ~♪ 今日はパーティってのはどうかな?」
「「「「「賛成~~~♪」」」」」
僕達は信じられない様な大金が手に入り、懸念していた危険も予防策を打ち、僕達自身も鍛え襲撃に備える事出来た。
全て良い方向に転んだ事に大満足し、気持ち良くパーティが出来そうだ。
今日は時間も無かったので、色々な物を買い込み部屋に帰る事にした。
今日は人に聞かせられない話もありそうだから、料理人も呼べなかった。
それでもテーブルに並んだ料理は、どれも美味しそうで皆にビールが注がれる。
「じゃ、作戦の成功と兆万長者を祝って乾杯!」
「「「「「乾杯~!!! やっほーーーーーーー!!!!!!」」」」」
「プハッ! 美味しいです」
「僕も何も気にせず飲むお酒が、こんなに美味しいとは思わなかったよ」
「スキルの恩恵って凄いわよね~」
「ねーねー? ヨウ君?」
「はい、何ですかアヤメさん?」
「これで一応危険は回避出来たと思うんだけど、引き続きパーティに入れてくれないかな?」
「はーい、私も引き続き参加したいです」
「・・・実は僕も、お願いしたいな」
「フフ、良いですね」
「フフ~、楽しくなりそうですね~」
「はい、僕にとっては願っても無い事なんで、是非僕からもお願いします」
「んふふ、ありがと♪ じゃ、本格的にパーティ結成した事を祝って、もう一度」
「「「「「「乾杯~!!!!!」」」」」」
こうして僕達はこの先もパーティを組む事になり、僕にとっては嬉しい限りだ。
「あ~、それと、それと、このまま此処に住んで良いかな? 実家暮らししてると親が自立しろって煩いのよね~」
「それなら、私も居候させて貰おっかな」
「僕どうせウサギ小屋だから、皆が来るなら来たいかも」
「うわ~、これから楽しくなりそうですね♪ 是非来てくださいお願いします」
「ありがと、ヨウ君の家なんだけど、広すぎてシェアハウスみたいだもんね」
「シェアハウスにしても立派すぎよ?」
「僕が今借りてる部屋って、僕が住んでるウサギ小屋の5倍ぐらい広いんだけど?」
「あはは、僕も最初住んでた部屋は、それぐらいでしたよ」
「私が紹介したとこよね? この間の話なんだけど、何か懐かしいわね」
「そりゃそーよ? この一週間だけでも、どれだけ密度の濃い時間だったか」
「フフ、私もヨウ様にお会いしてから、素晴らしい毎日を送っております」
「私なんて病院生活からの激変よ、密度が濃いってもんじゃないよー」
「僕もこの一週間大変だったけど、今までで一番面白かったかも?」
「うふふ、私もよ♪ ヨウ君に出会ってから激動の毎日よ♪」
「あはは、僕ものんびりした田舎から出て来たから、都会って毎日こんな、なんだな~って思ってましたけど」
「都会が凄いんじゃなくて、ヨウ君が凄いのよー」
「最初はスライムハンターって、呼ばれてたのにね」
「ア、アヤメさんーーー! それは忘れて下さいよーーーーーー!」
「あはは、そうなの?」
「うぅぅ・・・大阪に来てから、僕本当に弱かったから、毎日スライム倒してSPオーブ溜めてたんです」
「・・・普通スライムでSPオーブなんて出ないんだけどね」
「でも、凄かったのよー! ヨウ君朝から晩まで、ずっとスライム倒してて毎日スライムボール100個程売りに来たもんね」
「えっ? それって数がおかしくない?」
「すみません・・・実は毎日もっと出てたんですが、多すぎたら不振に思われると思ってセーブしてました」
「・・・そっか今考えたら、ヨウ君なら1匹に1個は絶対出るもんね」
「でも、そのお陰でSPオーブと<虚空庫>が溜まりましたから良かったです」
「えっ? <虚空庫>ってスライムから出るの?」
「はい、そう言えば、言ってなかったです?」
「・・・・普通2000億もする<虚空庫>のスキルが、スライムから出るって分からないもんね」
「でも、三日月君じゃないと出ないよ?」
「それがヨウ君の不思議な所なのよ」
「あはは、ドロップ運良いみたいです」
「「「「「そんなレベルじゃないわ(ですよ・よ)」」」」」
「ねーねー? ヨウ君とんでもないお金が手に入ったけど、何か使う予定あるのかな?」
「良くぞ聞いてくれました♪」
「実は・・・」
「「「「「うんうん♪」」」」」
「一度好きな漫画を纏め買いしてみたかったんですよね♪」
「「「「「ガクッ・・・・・・」」」」」
「そんなの店ごと買えるわよーーーーーー」
「あぅぅ」




