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第30話 都会での暮らしって大変ですよね


 アヤメさんの部屋へ行った事で色々とアヤメさんの事が知れたのが、とても嬉しかった。ナギサさんには感謝だな。


 今度アヤメさんに眼鏡をプレゼントしたいなと思いながら、時間も遅くなってきたので帰る事にした。


 そう言えば、皆何が好きなんだろう・・・何時もお世話になってるから何か皆にもプレゼントを考えておこっと。


 そして翌日、朝からダンジョンで頑張り続け、帰りに約束通りギルドへ行く事にした。


 僕達は3人で何時ものVIPルームへ案内されると既に社長さん・支部長さん・部長さんが勢揃いしていた。



「こんばんは、皆さん」


「ようこそ三日月君。君のお陰でこの大阪ダンジョンギルドも活気づいてきたよ」


「ところでアヤメ君から聞いたのだが、その話は本当かね?」


「はい、これがエリクサーです」



 僕は<虚空界>からエリクサーを1本取り出し、皆に見せてみる」



「「「おお~~~」」」


「こ、これがエリクサーなのか・・・確かに見たこともないような淡く発光している液体とは・・・アヤメ君?」


「はい、鑑定したところ間違いありません。これは全ての怪我や病気、欠損部位どころか生まれつきの障害に至るまで完全に正常な状態に癒す事が出来る奇跡の霊薬とあります」


「なんと素晴らしい・・・私に財力があれば何としてでも欲しい逸品だね。三日月君には何時も驚かされるね、君は本当にこれをオークションに出しても良いのかね?」


「はい、色々考えると出さない方が安全なのは分かってます。


でも、今現実にダンジョンからエリクサーが出現するかもしれないと、強く切望している人達のために出品する事を決めました。


これを出品すれば世界中にエリクサーの存在が知れ渡るでしょう。


治らないと言われている怪我人や病人の最後の希望となるよう出品する事を決めました」


「なるほど、君は素晴らしい当日まで預からせて貰って良いかね」


「すみません、これは当日まで僕が持っていて良いですか? いくらギルドの金庫とは言え、告知するなら危ないと思いますので」


「そうか・・・そうかもしれないな。分かった。しかし、君は当日オークション会場に来ない方が良いだろう? どうやって受け渡しをする気かね?」


「オークション当日に誰にも分からない方法で、アヤメさんに渡しに行きますので僕を信じて貰えますか?」


「分かった、勿論信じよう。当日までにエリクサーの入れ物を用意しよう、耐熱・耐衝撃の奴をな。


エリクサーの告知は明日になるだろう、次のオークションは10日後だ。良いかね?」


「分かりました、ではお願いします」


「あっ! それと出品者のメッセージとして、これを読み上げてくれませんか?」



 社長さんはメッセージを受け取ると、じっくりと読み深く頷いてくれた。



「ふむ、なるほど良い考えだね。上手く行けば次の抑止力になるだろう」



 僕達はVIPルームを出て帰るためにギルドの通路を歩いていると、見覚えがある人が居ると思ったらトールさんだった。


 トールさんは上級ダンジョンへ潜っている先輩冒険者で、僕と唯一面識のある方だった。



「おっ! 誰かと思ったら以前会った新人の坊主か、頑張ってるみたいだな似合ってるぜ」


「ありがとうございます♪ トールさん今日は一人なんですね」


「んっ? やけに良い女連れてるじゃねえか♪ ハハハッ、護衛みたいだな?」


「違いますよー、彼女達は僕のパーティメンバーです」


「ほほ~、うちのチンチクリンとは、えらい違いだな。中々強そうだしよ」


「ありがとうございます」


「そっちも、中々強そうね」


「わはは♪ 良い奴見つけたみたいだな♪ よし、飲みに連れてってやる。着いてこい」


「えっ? あ、あの?」


「おっと、お前一人で来いよ! さっ、行くぞ」


「ヨウ様、私達の事は良いですから、たまには宜しいのでは?」


「う~~ん、そうですね・・・では、先に家に帰ってて下さい。今日はトールさんと飲んでから帰りますので」


「畏まりました」


「気を付けてね」


「はい、ありがとう」



 何故かトールさんの強引な誘いに乗る事になり、トコトコとトールさんの後を着いて行く。


 トールさんは都会の賑やかな街並みをズンズンと進んで行き声を掛けて来る。



「ところで少年、メシは食ったのか?」


「いえ、ダンジョンからの帰りだったので」


「じゃ、先にメシにするか」



 トールさんは目の前にあったステーキハウスに入って、直ぐに僕の分まで注文してくれた。


 しばらく待つと、ジュージューと音を立てて分厚くて巨大なステーキが運ばれてきた。


 うわ~、っと思っていたら、キンキンに冷えた大ジョッキに注がれたビールを片手に僕の方へ掲げている。


 僕は直ぐに大ジョッキを持ってトールさんと乾杯した。



「プハッ! 美味しいですね~」


「ガハハ♪ なんだ少年いけるじゃねえか、さあ食え」


「はい、いただきます」



 トールさんはナイフで大きく切った肉の塊を豪快に口へ運んでいく。


 なんて冒険者らしい人だと思い、少し楽しくなってしまう。


 トールさんは正に僕が描いていた冒険者そのものだ。


 僕も遅れない様にパクパクと肉を口へ運びビールで押し流した。


 僕が食べ終わる頃には、トールさんはとっくに食べ終わりタバコを吸っていた。



「よし、次行くぞ」


「は、はい」



 ズカズカと大股で歩いて行くトールさんに、遅れないようテクテクと着いて行くと細い路地に入って行き、その通りにある看板がやけに目立つ店へ入って行く。


 店の中へ入ると以外に広く、綺麗な女性がドレス姿で各テーブルで接客しているような店だった。



「いらっしゃいませトールさん、今日は早いですね」


「ああ、今日は新人を連れて来てやった。そうだな同じような新人を付けてやってくれ」


「ウフフ、まあ、ありがとうございます♪ トールさんにしては気が利くじゃないですか」


「それにしても、可愛い新人さんね♪ さあ座って下さいな」



 僕とトールさんは、店の一番奥にあるテーブルに招かれソファーに腰掛けた。



「私は此処のママをしているシノと言います、今後とも宜しくお願いしますね」


「はい、僕三日月陽って言います」


「ウフフ、本当に可愛いわね、ちょっと待っててね」



 トールさんは同じテーブルの少し離れた所へ座っており、既に両サイドに綺麗な女性が2人座っている。


 ガハハと笑いながら上機嫌だ。


 僕はチョコンと座りながらキョロキョロと周りを見ていると、他のテーブルでも綺麗な女性とお酒を飲みながら楽しそうにしていた。



「フフフ、お客さん私と同じで新人さんなんですね」



 店内をキョロキョロと見ていた僕に話掛けてくれたのは、綺麗なドレスを着ているが、どこか垢抜ける前って感じの僕が良く知っているような可愛い顔をした女の子だった。



「私も新人なんです。スズカって言います、今日は宜しくお願いします」


「はい、僕は三日月陽って言います。宜しくお願いします」


「フフ、お客さんは宜しくって言わなくて良いのよ?」


「そうなんですか?」


「それに敬語も要らないわ、お客さんなんだから」


「はい」


「ヨウ君って呼ばせてね、ヨウ君も高校を卒業して直ぐに冒険者に成りに来たの?」


「はい、田舎から大阪へ出てきました。スズカさんも?」


「うん、私も高校を卒業して田舎から出てきたの一緒ね♪」


「はい、水割りで良かったかな?」


「それで良いです」


「じゃ、乾杯ね」



 僕はスズカさんと水割りってお酒で乾杯をした、ボトルを見たらウイスキーらしい。



「良い匂いがするお酒ですね」


「大丈夫? もっと薄めようか?」


「いえ、僕お酒強いみたいなんで大丈夫ですよ」


「あはは、流石冒険者さんね♪ ねえ、やっぱり冒険者って厳しい世界なのかな?」


「そうですね、危ない仕事ですから気を付けないと死んじゃいます」


「うわ~、やっぱり大変なんだね? 私もへこたれずに頑張んなきゃ」


「スズカさんも大変なんですか?」


「そうよ、田舎から出てきた娘なんて誰も相手してくれないもの、実はヘルプ以外でお客さんに着くの久しぶりなんだよね。だから今日はありがとね、私を選んでくれて」


「えと、正直に言うとトールさんが僕が新人だから、新人付けてくれってママさんに言ってましたので」


「あはは、なるほどね♪ それでもありがと。ねーねー? 毎日ダンジョンに潜ってるの?」


「そうですね、大阪に出てきてから毎日潜ってますね」


「危ない目にあった?」


「いえ、臆病なんで最初はスライムって言う魔物ばかり倒してました」


「知ってる~! スライムって漫画にも良く出てくるもんね」


「写メありますよ、これがスライムです!」


「へええ~、これなら私でも倒せるのかな?」


「体当たりしてくるので、当たったら結構痛いですよ」


「わわわっ、やっぱり私には無理だ~」


「あはは、速攻で倒したら大丈夫かも?」


「いつもソロで潜ってるの?」


「最初はソロだったんですが、今は3人でパーティを組んでます」


「そりゃそうよね、ソロだと危ないもんね」


「ヨウ君も頑張ってるんだね、私も頑張んないと」


「やっぱり色んな人と会話するのって難しいですか?」


「そうなのよね~、話題を豊富に持ってないと話に着いていけないのよね、ねーねー? もっと冒険者の話聞かせてくれない?」


「はい、じゃ、えっと・・・」



 僕は今まで行ったダンジョンの階層や魔物。そして、採集出来る薬草や果物等を色々と話をした。


 スズカさんは、それを一生懸命覚えようとフンフンと相槌を打ちながら話を聞いてくれる。


 拙い僕の話に一喜一憂し、話をしている僕も実に楽しい♪


 もちろんオーブやスクロールの事は言えなかったけど、魔糸や虹糸と言った高く売れる素材の話には夢中になって聞いてくれた。


 やはり、新人と言えどスズカさんもプロなんだなと感心してしまう。



「へええ~、やっぱり冒険者って危ないけど儲かるんだね、オーブってのが出たら大金持ちになるって夢もあるし」


「そうなんですよ、コツコツと頑張って行こうと思ってます」


「今日の話って誰かに喋っても大丈夫?」


「はい、大丈夫ですよ」


「良かった、ダンジョンの話って皆隠したがるから聞いても喋れない事が多いのよね、すっごく面白かったし助かったわ」


「おい、少年。そろそろ帰るぞ」


「はい、ちょっと待って下さい」


「ねえ、このお店ちょっと高いんだけど、また来てくれる?」


「はい、僕も楽しかったんで、また来ますね」


「うふふ、ありがと♪ 儲かった時で良いから無理しないでね」


「はい、では、またです♪」



 僕はスズカさんに手をブンブンと振り、別れの挨拶をした。



「ウフフ、本当に可愛い少年ね、彼は良かった?」


「はい、ママありがとう。今日はとても勉強になったし、彼からやる気も貰いました私もっと頑張ります」


「その意気よ、貴女ならきっと売れると思うわ」


「ありがとうママ」



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