第2話 都会って凄いな
慣れない電車を乗り継ぎ、ようやく大阪駅に着いた。
え~っと、え~っと・・・しかし、大阪駅ってどれだけ大きいんだよ?
都会って凄いな~。っと、それよりも説明会に遅れちゃ大変だ、急がないと。
僕はこの日の為に大阪ダンジョンギルド梅田支部に連絡を入れて、今日開かれる新人講習会に予約しておいた。
先に新居を探そうと思っていたけど色々と調べた結果、どうやらギルドから冒険者支援プログラムとして格安で賃貸ハイツも貸してくれるらしい。
ダンジョンは危険な事もあり、冒険者のためにこういった配慮も充実している。
幸い、近くに交番があったので、道を聞きながら進み無事ギルドに着いた。
しかし、ネットでは調べてあったが実際に見ると、とんでもなく大きいビルに圧倒されてしまう。
うわ~! 凄いな・・・僕なんか入って良いのかな? おっと、時間も無いからそんな事言ってられないか。急がないと。
僕は恐る恐る大阪ダンジョンギルド梅田支部のビルに入っていくと、ビルの中も豪華な内装をしており、田舎者丸出しでキョロキョロとしてしまう。
周りを見渡していると受付が目に入ったので近づいていくと、近代的なカウンターが並んでいた。
田舎では見たこともないような綺麗な女性が、ピシッとした制服に身を包み、大勢並んでいる。
その中でも一際美しい女性が目に入り見惚れてしまった。
僕よりも背が高く、メガネが印象的なお姉さんだ。
絶対教師が似合いそうな雰囲気で、長くて綺麗な黒髪に小さい顔、大きな眼をしている。
加えて大きな胸に、体のラインがハッキリと分かるスーツを着ており、抜群のプロポーションなのがハッキリ分かる。
あまり女性の好みなんて考えた事は無かったが、正に僕の理想のタイプど真ん中に入る様な女性を見て、知らないうちにボ~っと目の前まで歩いていってしまった。
「ようこそ、大阪ダンジョンギルド梅田支部へ。今日はどういった御用件ですか?」
「うわっ!? は、はい! し、新人講習に来ました。いえ、受けさせて貰いに来ました」
「フフ、そんなに緊張しなくても結構ですよ?御案内致しますね♪」
「すみません、ありがとうございます」
僕は新人講習が終わったら冒険者支援プログラムの話を聞く事を思い出し、案内してくれている受付嬢さんに聞いて見る事にした。
「あ、あの僕は三日月って言います。少し聞いておきたい事があるのですが、今聞いても良いでしょうか?」
「はい、私は受付を担当しております藤崎 綾萌と申します。冒険者支援の事でしょうか?」
僕は言い当てられた事に驚き、表情に出てしまった。藤崎さんが此方を見ながら微笑んでいる。
「うふふ、そんなに驚く事はありませんよ? 新人講習を受ける方は皆さんお聞きになりますから」
「ああ、そうだったんですね。はい、正にその事が聞きたくて・・・特に住むところが」
「分かりました。なるべく低価格で条件の良い物件を探しておきますね。講習が終われば私の所までお越し願えますか?」
「はい、ありがとうございます。僕とっても助かります」
「こちらが新人講習の会場となっております。空いている席にお掛けしてお待ちください。では後ほど」
「ありがとうございました。宜しくお願いします」
藤崎さんは、とても良い笑顔で返答してくれ戻っていった。
ふ~・・・緊張した~! 都会ってあんなに綺麗な女性が居るんだ。藤崎綾萌さんか。
あんなに美しい女性に会えるなら、ダンジョン抜きでも毎日ギルドに通っちゃいそうだ♪
興奮冷めやらぬ中、とりあえずは講習を受けないとと思い、行動に移ることにした。
会場を見渡すと僕と同じ年齢ぐらいの男女が数十人座っていた、中には少し年上の方もいるようだが少数のようだ。
やはり、僕と同じように高校を卒業してから冒険者になる者が多いのだろう。
僕は空いている席に座り講習が始まるのを待つことにした。
他の人は友達と来てる人が多いのか皆の会話が良く聞こえてくる。
しばらく待っていると、講師の方が入ってきて講習が始まった。
内容は殆どダンジョンに関する事で2時間ほど続いた。
要約すると、冒険者は基本的に自己責任であり、ギルドは支援はするが保証はしないと言う事。
ダンジョンで入手した高額な素材は、時間は掛るけど東京でオークションに掛けることが出来る事。
魔物の討伐クエストは無いんだけど、魔物素材の納品クエストが多数あるらしい。
有料だが防具等、装備品のレンタルが出来る事、武器のレンタルは無いらしい。
冒険者になればギルドカードが発行され、倒した魔物のドロップ品の買取り金額でランクが上がっていく事。
高ランクになればギルドから様々な特典が受けれるようになり、最初はFランクからスタートし現在ではSランクまであるようだ。
ちなみにギルドカードは世界中で統一されており、日本ではSランクは一人しか居ないらしい。
ダンジョンギルドとしては日本が一番進んでいるが、個人の技量では外人が強いんだそうだ。
SPオーブやスキルオーブを習得したら、自分のステータスが見えるようになるそうだ。
冒険者支援プログラムのような細かな説明もあり、講習の終わりにギルドカードが手渡された。
Fランクのギルドカードは、クレジットカードのような物で名前と番号が刻まれていた。
普通のプラスチックのカードだが、これで冒険者になったのかと思うと、やけに嬉しかった。
講習が終わったので早速、受付嬢である藤崎さんの所へ行こうとしたら同じ受講者である女の子が話しかけてきた。
「なーなー? あんたも高校を卒業して冒険者になった口やろ?」
「はい、今日、田舎から大阪に出て来ました」
「あはは、あんた正直者やな♪ うち等は地元なんやけど4人で冒険者に成りに来たんや」
「へえ~! ダンジョンは危険そうなのに女子だけで勇気ありますね」
「別に敬語使わんでええよ、どうせ同い年やし女子だけのパーティも多いんやで」
「そうなんですか?」
「だから敬語はええって。だって、トイレとか野営もあるやろ?男子がいたら気ぃ使うねん」
「なるほど」
「あんた大人しそうやから声掛けてんけど、新人同士やし今後も情報交換せーへん?」
「はい、是非お願いします。僕でよければ喜んで」
「あはは、とりあえず私の名前だけ言っとくわ。ウチは守護 琴絵って言うねん」
「僕は三日月 陽って言うんだ宜しくね」
「なんや、夜か昼か分からん名前やな」
「あはは、よく言われるんだ」
「じゃアドレス交換よろしゅーな」
「はい」
僕は守護さんとアドレス交換した後、4人は手を振りながら去って行った。
あ~! ドキドキした・・・流石に都会の女の子は皆可愛いな~♪ 積極的だし人見知りの僕にしては普通に話せて良かった。
同い年って言ってたけど、とてもそうは見えないぐらい大人びていた。
全員胸も大きかったし、都会の女性はスタイルが良すぎるよな。
立ち去った後でも良い匂いが残っている。化粧品か香水かは分からないけどクラクラしちゃうな。
おっと、藤崎さんの所へ行かなくちゃ、ギルドの中も見学したいところだけど今日寝る所を確保しとかないと。
僕は急いで受付に戻り藤崎さんを探したら直ぐに見つかった。先程会った4人も可愛かったけど藤崎さんはレベルが違うな・・・
遠くから見ても綺麗だな~♪ 一日中見ていられそうだ。
僕は遠くから藤崎さんを見ていると、藤崎さんも僕に気付いたのか微笑みながら手をフリフリしてくれている。
何て可愛いんだろうと思いながら、僕は見つめていた事がバレたかも知れないと照れながら近づいていく。
「お疲れ様でした三日月様、良さそうな物件を確保しておきました。今からご覧になりますか?」
「はい、ありがとうございます。お願いします」
「フフ、ではご案内します。当ギルドから直ぐ近くですので歩いて向かいますね」
「はい」
良かった。近いのは凄く助かる。探索しておかないと都会では迷子になりそうだしな。
ああ、でも藤崎さんの後ろを歩いていると良い匂いがするな。これはシャンプーの匂いなのかな? 優しい良い匂いだ。
おっと、駄目だ駄目だ。匂いばかり気にしてたら変態みたいだな気を付けないと。
「三日月様、着きました。此処はギルドが所有している冒険者向けのワンルームマンションです」
「うわ~! 大きいですね」
僕の目の前には15階ぐらいありそうな高いマンションが建っていた。
敷地面積はそんなに広くなさそうだけど、その分高さがある。
都会は土地代が高額だから、こういう建物が多くなるのかなと茫然と考えていた。
「私のお勧めとしては、4階~6階ぐらいが虫も少ないし良いと思いますよ。値段も安くなっています」
「なるほど、ちなみに値段をお聞きしても良いですか?」
「はい、今空いている5階の部屋ですと、月5万円になります」
「うわっ!? 都会にしては、めちゃくちゃ安いですね?」
「そうですね。この地域では、かなり低価格だと思います。部屋の中も見れますよ?」
「はい、お願いします」
僕は予想より安い価格の物件があって内心ホッとした。藤崎さんに案内され5階にある部屋を見せて貰い、驚く事になる。
「えっ!? 電化製品や家具まで付いているんですか?」
「はい、冒険者は拠点を移動する方が多いので、生活するための一通りは揃ってますよ。布団は有料ですがクリーニング済みの物をレンタル出来ますし、週1回シーツ交換サービスが付いております」
「うわ~! 流石都会は凄いですね」
僕は狭い部屋に邪魔にならないように、設置してあるテレビや冷蔵庫に感心し、ここなら大満足だと思っていた。
「お気に召したみたいですね、此処になさいますか?」
「はい、大満足です! 良い所を探して貰ってありがとうございます」
「いえ、空き部屋があって良かったです。此処は人気がありますので♪ 今日から利用なさいますか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。布団は直ぐに運んで貰いますね、調理器具等は設置してないのですが、皆さん外食が多いみたいです」
「なるほど、此処なら幾らでも飲食店がありそうですね」
「安くて美味しいお店を紹介します」
「うわ~! 本当ですか? 凄く助かります」
「ちなみに、お支払いはギルド口座を作って頂ければ、自動引き落としになりますので便利ですよ。引き続きギルドで手続き致しますか?」
「はい、お願いします。何か至れり尽くせりで助かります。心配していた事が一気に解決しました」
「三日月様は、とても嬉しそうな表情をされますね。こちらも嬉しくなって気分が良いですよ」
「あ~! 僕顔に出やすいのかな・・・それに藤崎さんみたいな綺麗な方に様付けで呼ばれると背中がくすぐったいです」
「まあ、御上手ですね♪ 私を褒めてもこれ以上のサービスはありませんよ?」
「あはは、それは残念ですね♪」
「うふふ、では、戻りながら簡単な説明を致しますね」
「はい、お願いします」
こうして藤崎さんとも少し仲良くなり、ギルドで必要な書類に記入した。
今日、やらなければならなかった事が全て終わったので、ギルド内の見学や藤崎さんに聞いたお勧めの飲食店を確認する時間も取れた。
この調子なら明日には初ダンジョンに挑戦出来るかもしれない。