第27話 スキルって色々あるんだ
<快癒魔法>を手に入れた僕達は、遂に地下10階にあるボス部屋に辿り着いた。
初級ダンジョンなら地下10階が最終階層なんだけど、中級ダンジョンは地下20階まであるらしい。
どのダンジョンも10階層事にボスがおり、階層が深く成れば成る程ボスも強くなっていく。
「うわわ、嫌な予感がビシバシします。お姉ちゃんと二人なら絶対入らないかも」
「僕と3人なら、どんな感じです?」
「えっとですね、スッと嫌な感じが消える感じかな? でも速攻で倒した方が良いみたい」
「ノノの感は確かなので、その方が良いと思います」
「了解! じゃボス部屋に入ったら作戦を立てて、速攻で撃破しましょうか」
「「了解しました!」」
僕達は大きな扉を開けボス部屋に入って行く、ボス部屋の最奥で姿を現したのは大きな骸骨だった。
「スケルトンキングのようです。確かにノノの言う通り私達だけでは厳しい相手ですね」
「なるほど、大きいですね。僕ナイフだからスケルトンとは相性が悪いので、蹴りで倒したいと思います。
なので、開幕からリラさんとノノさんで、両足に攻撃して貰えますか?」
「分かったわ。スケルトンキングの体勢を低くしたら良いのね」
「分かりました。では、ノノ私は左足を行きますね」
「じゃ、私は右足ね」
「では、速攻で倒します。準備は良いですか?」
「「はい」」
作戦も決まり僕達はスケルトンキングに先制攻撃するため駆け出した。
スケルトンキングは僕達の姿を視界に捉えると、直ぐに魔法を唱えだし足元に大きな魔法陣が広がって行く。
「ノノ、急ぎますよ」
「分かってるわ、お姉ちゃん」
リラさんの掛け声と共に、二人は更に加速し<腕力強化>が乗った刀での攻撃がスケルトンキングの両膝に叩きつけられた。
ステータスを全て30にまで上げ<腕力強化>まで乗せた二人の攻撃に、スケルトンキングの両膝がビキビキと音を立ててヒビが入り、前のめりに倒れて行く。
僕は倒れてくるスケルトンキングの顔面目掛けて<身体強化><敏捷強化><腕力強化>を発動し、渾身の飛び蹴りを放つ!
カウンターで入った僕の飛び蹴りはドガンッと言う音を響かせ、スケルトンキングの頭部を粉々に吹き飛ばした。
すると、足元に広がっていた魔法陣が徐々に消えていく。
そして、横たわったスケルトンキングは光の粒子となり消えて行った。
「ふぅ~、何か危なかったですね。ノノさんが言う通り速攻で倒して良かったです」
「あの魔法ヤバそうでしたね。でも、流石ヨウ様すっごい蹴りでした」
「フフ、どんな魔法か分かりませんでしたけど、作戦通り上手くいって良かったですね」
「あっ! 凄い。色々ドロップしてますよ? スキルや宝箱まである~」
「やった、楽しみですね♪」
「フフ、強い魔物を倒しただけに期待出来そうですね」
僕は先ず、スキルオーブを手に取り確認してみると<言語理解>のスキルオーブだった。
「ん~、<言語理解>ってスキルみたいです」
「それは確か、アメリカで初めて発見されたスキルで、世界中の言葉を理解し話せるようになるスキルだったかと」
「凄いじゃない? 究極のマルチリンガルよ」
「うは~! それは知りませんでした。リラさん向きのスキルですね早速覚えちゃって下さい」
「こんなに凄いスキルを? 私よりヨウ様がお使い下さい」
「あれっ? 僕の言う事は確か・・・」
「そ、その約束は私達しか得をしていないのですが・・・」
「うふふ、お姉ちゃん諦めが悪いよ」
「・・・ヨウ様、初めからあの約束は私達の遠慮封じのためにさせたのですね?
こんな騙され方をされたのは生まれて初めてですよ」
「そんな事ないですよ? このスキルだって僕が習得するより、リラさんが習得してくれた方が、僕のメリットが大きくなりそうだからですよ」
「この分ではお受けした恩は、何時まで経っても返せそうにないですね」
「フフ~♪ 何言ってるのお姉ちゃん。一生掛けて返せば良いじゃない」
「そうですね、末永くお願いします。リラさん、ノノさん」
「「はい」」
そして、残りのドロップ品は魔石と宝箱にはエリクサーが3本入っていた。
「あわわ! エリクサーっぽいのが3本も入ってましたよ」
「へえ~、初級ダンジョンより効率的に集まりそうですね」
「「・・・・・・・」」
「ど、どうしたんですかお二人共?」
「「・・・ヨウ様軽いです」」
「エリクサーですよエリクサー!!! 私の潰れた眼球まで元通りにしちゃう至高の霊薬ですよ」
「凄い薬ですよね~♪ そうだ、お二人にも1本ずつ渡しておきますね。<虚空庫>に入れて置いて下さい」
「ええっ? あ、あの・・・」
「フフ、ノノ? 諦めが悪いですよ」
「もう・・・私達、絶対に一生ヨウ様に着いて行きますからね?」
「ホントですか? 僕凄く助かります♪」
「「フフ、ウフフ、あはは」」
「わわっ」
リラさんとノノさんは僕の両腕にギュっと抱き着いてくれた。
それから、しばらく夢のような感触に照れてしまう。
冒険を再開するため心頭滅却するのに力を費やした。
ボスを倒し地下11階に足を踏み入れると、そこは今までの平地では無く山や川、林に森と言った起伏にとんだ地形だった。
此処でも今まで居た魔物が生息しているようだが、初見の魔物としてキノコの魔物が居た。
スマホで調べた所マタンゴと言う魔物らしい。
キノコに足が生えてトコトコ歩いているだけなので、簡単に倒す事が出来るのだが麻痺毒のある胞子を持っており注意しなければならない。
かと言っても、今の僕達なら一撃で倒せるので動きの遅い分、楽な敵だった。
初見の魔物なのでスキルオーブを持っている個体を探し、どんなスキルをドロップするのか確認する事にする。
こればっかりは、スマホで調べる訳にはいかなかったりする。
誰も知らないか、知ってても情報公開しないからだ。
<気配感知>で探しだしたので早速倒してスキルオーブを確認してみると、<状態異常耐性>のスキルオーブだった。
僕は二人にこの事を伝えると、二人も知らないスキルだったようだ。
「でも、名前から察するにあらゆる状態異常に耐性が付くんでしょうね」
「お~! 良いスキルですね、じゃ早速・・・」
「早速、ヨウ様が習得されるのが望ましいと思います。
何故ならヨウ様は回復系魔法を全てお持ちですから、ヨウ様が状態異常にならなければ全員が助かる可能性が高くなるからです。
耐久力の面から考えましても一撃で行動不能にされ難い、ヨウ様が適任かと思慮致します」
「フフ~♪ どうしますヨウ様?」
「参りました。習得させて頂きます」
「フフ、それがよろしいかと♪」
「あはは、ヨウ様もお姉ちゃんの理論武装には完敗ね」
「・・・ぐうの音も出ないですよー」
「でも、このスキルは是非、皆に習得して欲しいですね。しばらく此処に通うのは決定ですね」
「「はい」」
次に初見の魔物に出会ったのは、地下12階に下りてしばらく歩いてからだった。
この魔物は<気配感知>を3つ重ね掛けした僕にしか感知する事が出来ないほど、隠れるのが上手い。
攻撃すると、ようやく姿を現してくれるカメレオンの様な魔物だった。
「驚きました。ヨウ様が言う通りでしたね」
「何か嫌な感じはしたけど本当に居たんだ。私何も見えなかったよ?」
「僕も辛うじて分かった程度です。気付けて良かった」
近付くと奇襲を掛けてくるのかと思い、試しに少し近づいてみても攻撃はして来なかった。
ひょっとしたらこの魔物は今まで誰も気付いてないかもしれない。
おそらく、奇襲攻撃はして来ないとは思うが、近くに魔物が居ても気付けないのは危ないので、これを機会に二人にも<気配感知>スキルの重ね掛けをして貰おうとスキルオーブを取り出し二人に渡した。
「えっと、これ渡しときますね」
「ヨウ様、このスキルオーブは何のスキルですか?」
僕は素直に<気配感知>のスキルだと言おうとしたが、二人を驚かしたいため黙っておくことにした。
「まあ、とりあえず習得してみてください」
「「は、はい?」」
「あ、あれ? ヨウ様このスキルオーブは習得出来ないのですが?」
「私も出来ないようです。これはスキルオーブなのでしょうか?」
「えっ?」
僕は二人から意外な言葉が返って来た事に驚いた。
習得出来ない? 何故? そんな筈はないんだけど・・・
現に僕は3つも重ね掛けしているし・・・まさか重ね掛けしようと意識しないと習得出来ないとか?
いや、その可能性は低い筈・・・スキルオーブにそんな意識を汲み取る様な機能まで付いているとは思えないし。
ってことは<ウィル>スキルの能力としか思えない。
道理で情報が無いわけだ・・・
現状では僕だけがスキルの重ね掛けが出来るのかもしれない。
どれだけ凄いスキルを所持してしまったのかと思うと、身震いしてしまう。
「どうしたんですかヨウ様?」
「ううん、ごめん。少し考え事をしちゃって変な事言ってごめんね」
「何かヨウ様にとって想定外の事が起こったのですね」
「・・・流石ですね。でも、僕にも未だ分からないから整理がついたら説明しますね」
「分かりました。でも、説明し辛い事でしたら言わなくても良いですよ」
「いいえ、絶対に説明しますから。しばらく待っていて下さい」
「「分かりました」」
誰かに相談しようかと思った事もあるけど、両親にも相談しなかった<ウィル>スキルの事は、何故か言ってはいけない事だと思えてしまう。
<ウィル>スキルがどんなスキルなのか・・・
また、分からなくなってしまったが、現状焦る事もないのでゆっくり考えて見る事にした。
そして、このカメレオンのような魔物からスキルオーブを持っている個体を探し出し、倒して確認してみると<隠蔽>と言うスキルだった。
この魔物の生態から察するに、自身の姿を<隠蔽>するスキルなのだろうと予想し、二人の了承を得てから習得してみる。
<隠蔽>スキルを習得し使用方法が何となく分かると、このスキルは姿だけではなく隠蔽したいと思った物を隠す事が出来るスキルのようだった。
何の事かと言うと、自分のスキルを隠蔽する事も出来るようだ。
頭の中で隠蔽したいスキルを意識するだけで、ステータス上の文字が薄くなる。
おそらく、これで<鑑定>スキルを使われたとしても、隠したいと思ったスキルは見えなくなったのではないかと思う。
これで懸念していた<鑑定>スキルでステータスがバレる恐れは無くなったかもしれない。
さらに<気配遮断>と<隠蔽>を同時使用すれば完全に姿を隠せるかも、そうなれば不意打ちも格段にやりやすくなる。