第26話 採集も楽しいかもしれない
<回復魔法>を手に入れた僕達は、どんどん地下へ進んでいくとコボルトって言う魔物に初めて遭遇した。
これも獣人系の魔物で魔法も使って来るので<回復魔法>のスクロールに期待する。
しかし、オーブや魔法スクロールは沢山出て嬉しい限りなんだけど、噂通り素材のドロップが安い物ばかりのようだ。
これなら此処のダンジョンが人気が無いのも頷ける。
まあ、僕達には好都合なんだけどね。
っと言う訳で優先的にオーブや魔法スクロールを持っている個体を倒していく。
また<回復魔法>がドロップする期待を込めて、拾い上げてみると<解毒魔法>のスクロールだった!
「リラさん、ノノさん<解毒魔法>のスクロール出ちゃった」
「うわ~、凄いですね~」
「・・・慣れって怖いですね、凄いですねで済むところが」
「あはは、そうね♪ 普通なら飛び上がって喜んでるわ」
「しかし、慣れて来たとは言え驚愕のドロップ率ですね」
「ドロップ運は良いんですよ!」
「そ、そんなレベルじゃないんだけど・・・」
「あはは、でもこれで酔い覚ましもバッチリですね」
「フフ、数百億するかもしれない魔法スクロールを、酔い覚ましって言えるのがヨウ様の凄さですね」
「ホントですよ~」
「あはは、僕は隠さなくても良いのが嬉しいです」
「フフ、この調子なら、しばらく此処に通うのが良いかもしれませんね」
「うん、とりあえず一定量の回復系魔法が欲しいですね、これからリラさん達以外にも、覚えて貰う様になるか分かりませんし」
「オークションに掛けないんですか?」
「僕達が必要になりそうな物は、極力持っとく事にします」
「そうですね、分かりました」
地下5階、地下6階と進みながら森の中へも入って行くと、話をしていた薬草を発見する事が出来た。
「あっ、これが薬草と毒消し草ですよ」
「へええ~、詳しいですね。ノノさん」
「これでも、元冒険者ですから、良く採取しましたよ?」
「なるほど、結構自生してますね」
「あっ、ヨウ様。それは毒草です」
「えっ? どれだろう・・・」
「とても良く似てるのですが、分けるとこんな感じですね」
「そうそう、最初は良く間違えるんですよ」
「そっか採集も奥が深いんですね~」
「魔草もあったよ~」
「リンゴンの実もありました。美味しいので摘んで行きましょう」
「うわ~、流石ですね。僕も頑張って探してみます」
それからは、色んな物を採集して行く事が楽しくなってきて、二人と探しまくった。
「なんか、久しぶりに採集したら面白いわ♪」
「フフ、私も何時の間にか夢中になってしまいましたね」
「あはは、たまにはこういう事に時間を使うのも楽しくって良いですね」
地下6階の森の中で魔物が居る事も忘れ採集しまくっていたら、何時の間にか帰る時間になってきたので今日は此処までにして帰る事にした。
しかし、今日は中々充実した良い日だった。
念願の回復系魔法も手に入ったし採集で色々採れたし。
採集した物について二人と話しながら、転送クリスタルを使い入口へ戻った。
直ぐにツドイさんに連絡を入れると、既に迎えに来てくれているらしい。なので急いで車へと向かった。
迎えに来てくれた車は行きとは違う車で種類は分からないが、高級感のあるゆったりとした乗り心地に、車内はとても静かだ。
エンジンの音も聞こえないぐらいに・・・めちゃくちゃ高い車なのは分かる。
「すみません、お待たせしました」
「お迎え、ありがとうございます」
「ツドイさん、ありがとね」
「お礼なんて良いよ、これが僕の仕事だからね」
帰りの車でも今日のダンジョンでの話をツドイさんにも聞いて貰ってたら、話にストップが掛かった。
「ちょっと待って。先程からSPオーブとか回復魔法のスクロールが出たとか夢みたいな話が混じってるんだけど、僕聞いて良いの?」
「フフ、それだけヨウ様がツドイさんを信じている証拠だと思われますよ」
「んふふ♪ ツドイさんも、もうヨウ様グループだもんね逃がさないわよ♪」
「ん~、拙かったですか?」
「・・・僕を信じてくれて嬉しいよ。僕、口は堅い方だけど喋ったら死んじゃいそうだよ」
「あはは、大丈夫ですよツドイさんはプロですから」
「でも、冒険者にも三日月君みたいな天才がいるんだね」
「それには私も同意します」
「うふふ、そうね私も同意するわ」
「僕ダンジョンに潜ってるだけなんですが?」
「フフ、ヨウ様の才能はダンジョン内で輝きを放ちますから」
「それも恐ろしい程のね」
「フフ~ 素敵です~♪」
そう言われれば<ウィル>スキルは、ダンジョン内で威力を発揮するから言い得て妙って所なのかな。
「ヨウ様、今日は夕食はどうされますか?」
「ん~、今日は外食にしましょうか?」
「畏まりました、食べたい物はありますか?」
「えっと、それじゃテレビで見た事があるんだけど、牛丼に生卵掛けて食べる所があるんですよね?すっごく美味しそうだったから、大阪に出てきたら食べに行こうと思ってたんですよ」
「畏まりました」
「ねえねえ、それってあそこの事だよね? そんなに高くないと思うけど良いの?」
「値段の高い安いは関係ありません。ヨウ様が望む物を用意するのが大事なのですよ」
「なるほど、流石お姉ちゃんね」
「良いね、僕も行って良いかな?」
「勿論ですよ。ツドイさんも御一緒しましょう、楽しみだな~」
それから、僕の言っていた飲食店は有名な店だったようでリラさんは直ぐに理解し連れて行ってくれた。
意外と近くにあったようで、車をパーキングに止めてから歩いて食べに行った。
牛丼は注文すると驚く程早く持って来てくれた。
確かタマゴを掻き混ぜて上にかける。
えっと、それから一味、一味っと、紅ショウガにハクサイの漬物も忘れないように。
「いただきまーす」
「モグモグ! うん、美味しい! あ~、やっぱり美味しかったんだな~」
「うん、美味しい♪ お姉ちゃんも美味しい?」
「はい、私は良く食べに来ましたので」
「僕も良く食べにくるけど、リラさんは以外だね?」
「フフ、何せ直ぐに用意してくれますから急いでる時には最適ですね」
「モグモグ・・・あ~、美味しかった♪ 僕、もう一杯食べちゃおう」
「は、早いですヨウ様。私まだ1口食べただけなのに」
「あはは、凄いですよ♪ もう、持って来てくれました」
結局、僕は大盛りの牛丼を3杯食べて大満足になった。
「フフフ、流石男の子だね三日月君は♪ 見てて気持ち良かったよ」
「皆そんなに食べて無かったけど、やっぱりスタイルとか気にしてるんですか?」
「普通は大盛り1杯ぐらいよ?」
「そうですね、それぐらいかと」
「僕はスタイルなんて気にした事ないよ?」
「皆スタイル良いから、節制してるのかと思いました」
「フフ~、ヨウ様見て無いようで、良く見てますね?」
「そ、そんな事ないですよ・・・すみません。ウソです」
3人はクスクスと微笑みを僕に向けてくれているので怒ってはないようだ、う~、 仕方ないんだ見ちゃうものは・・・
その日は、そのまま家に帰りツドイさんには、また明日の朝ダンジョンまでお願いしておいた。
翌朝、何時もの時間に目が覚めて心地良いベッドの効果か気分爽快だ。
そう言えば、最近目覚ましを掛けた事がないな。
決まった時間にダンジョンへ行く必要が無いので、時間を気にしなくても良いからな~
時間に縛られる事が無くなったのも、凄く贅沢な事だと改めて思う。
下へ下りると凄く良い匂いが漂ってきた。
リラさんとノノさんが何か作ってくれているようだ。
「おはよう、いつも朝食ありがとう」
「おはようございます。ヨウ様」
「おはよう~、ヨウ様」
「良い匂いですね?」
「これは昨日ダンジョンで採って来た、リンゴンの果実を煮詰めてジャムを作ってるんです」
「へええ~、昨日採ってた、あの赤い実だよね」
「はい、少し酸味が強い果実なのですが、ジャムにすると美味しいんですよ」
「フフ~、私も好きなのよ♪ ヨウ様も食べてみて」
「はい、いただきまーす」
僕は既に焼いてくれていたトーストに、リンゴンジャムを乗せて食べてみる。
「うわ~、美味しいです♪ イチゴとはまた違った感じですね、サクランボに近いのかな?」
「ん~、そうかも? サッパリしてしつこくない味が良いのよ」
「でも、自分達で採って来た物ってのが、余計美味しく感じます」
「フフ、ありがとうございます」
僕は他にも作ってくれていた色々な料理を美味しくいただき、大満足でダンジョンに向かう事にした。
ツドイさんにはリラさんが連絡しておいてくれたらしく、エレベーターで下へ降りると直ぐに車に乗る事になる。
まるで、会社の重役の様な待遇でダンジョンに向かうのには慣れそうにない。
昨日も来た中級ダンジョンへ着くと、ツドイさんにお礼を言い、僕達は建物の中へ入る。
「うおっ! また来やがった」
「おい、絶対に関わるなよ?」
「分かってる、誰が近づくかよ」
「ヒッ・・・・・」
昨日の威圧が効き過ぎたのか、中級ダンジョンの建物に入った僕達を避ける様に皆離れていく。
僕達は苦笑しながら通路を進んで行きダンジョン内へ入る。
今日は、昨日行った地下6階から始めることにした。
今日は回復系魔法スクロールを優先的に狩りをする事にしたので、<気配感知>をフル活用しサクサクと魔物を倒して行く。
リラさん達も徐々にスキルを使いこなすようになってきたので、そろそろ魔法を習得しても良いかもしれない。
そして順調に<回復魔法>と<解毒魔法>のスクロールを集めていくと、何体目かの魔導士系コボルトを倒すと新たな魔法を入手することになった。
「あっ、<快癒魔法>のスクロールだって、これはひょっとして?」
「おめでとうございますヨウ様。それは、病気を治す事が出来る魔法です」
「やっぱり。やった、これで回復系魔法が揃いましたね」
「フフ~ おめでとうヨウ様。でも、回復系魔法を全て習得してる人なんて誰も居ないですよ~」
「そっかー、そうですよね。人前では迂闊に使わない様にします」
僕は早速<快癒魔法>を習得し、回復系魔法をコンプリートした。
これで、誰が病気や怪我をしても対処出来る事が嬉しかった。
SPオーブも結構な量がドロップするので、リラさんとノノさんのステータスも既にオール30を超えたようだ。
「ヨウ様、私達のステータスも全て30を超えました」
「凄いよね~、力もスピードも段違いになりました。ヨウ様が言ったように、ステータスは徐々に上げて慣らしていかないと大変な事になりそうですね~」
「そうなんですよ、結構加減が難しくなってきます」
「フフ、でも、そのお陰で中級ダンジョンの魔物も一撃で倒せるようになりました」
「良いですね。それじゃ今日は地下10階のボス戦行って見ますか?」
「はい、ステータスが平均30なら上級ダンジョンにも行けそうなので、安全マージンは十分かと」
「へええ~、そうだったんですね」
「はい、大体の目安ですがステータスが1~10初級、10~20中級、20~30上級になっています」
「なるほど。僕、安全マージン取り過ぎちゃったのかな? でも安全だから良いよね?」
「フフ、普通ならステータスを平均30にするには何年も掛かりますからね」
「フフ~、ヨウ様は特別ですから」
「そっか、我ながらちょっと反則ですもんね」




