第224話 階層争奪模擬戦は負けられませんね
僕達は他のパーティと共にボス部屋に入ると、そこには真っ黒で大きなリザードマンが佇んでいた。
一見しただけで、普通のボスとは違うと分かる風格は、その強さも如実に表している。
「ブ、ブラックキングリザード・・・ くっ! まさか、本当にレアボスが出現するとは・・・」
僕達以外の冒険者は普通のボスであるリザードマンの強さを知っているだけあり、目の前にいるレアボスに恐怖を感じているようだった。
Sランクである僕達が相手をする事が分かっていても、このレアボスに対して威圧されるのも仕方ないだろう。
「では約束通り、僕達がやらせて貰いますね?」
「あ、ああ、少し動揺してしまったが、本当に大丈夫なのか?」
「うん、僕にお任せ」×ツドイ
「おい、お任せって、まさか1人で戦う気か?」
「僕達が2人で行くほどの魔物じゃないからね、見てたら分かるよ」
「本気で言ってるのか?」
「正気とは思えないわ・・・あんなの相手にどう戦うって言うのよ?」
「マジだ・・・平気で歩いて行きやがる」
「GUGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
ビリビリビリビリ!!!!!!!
「くぅぅ! 空気まで震えやがる、気を付けろ直ぐに・・・」
「十文字!!!」
キンッ!
「はあ?」×他パーティ
ツドイさんが放った斬撃は、凄まじい速度で十文字に軌跡を描き、魔物を4つの肉塊に変えた。
僕達から見ても速く鋭い斬撃は、他の者の視界には映らなかっただろう。
ゾクッ!
「い、何時斬ったんだ・・・見えなかったぞ?」
「何で魔物が肉塊になってんだよ?」
「攻撃したからに決まってるでしょ? でも、私にも全く見えなかった・・・」
「すまないが教えてくれないか? 今一体何をしたんだ?」
「歩いて行って斬っただけだよ、見えなかったかな?」×ツドイ
「あの頑強そうな鱗で覆われた体を、簡単に切断したのか?」
「人間業じゃねえ・・・」
ブラックキングリザードがドロップした素材やスキル、宝箱が何時もの様に大量に出ている。
スキルオーブは<水斬>だった、<風斬>の水バージョンみたいなので有用なスキルが手に入り嬉しくなる♪
約束通り全部貰うのも気が引けるので、素材を一通り譲ることにした。
もちろん、譲る素材以外は隠蔽で隠し収納しておいた。
「あの、これ良かったらどうぞ」
僕はブラックキングリザードの素材を一通り揃え、他の2パーティに手渡してあげた。
「えっ? 良いの?」
「はい、ほんのお裾分けです」
「いや、気持ちは嬉しいが、君達はその素材の価値が分かってないだろう?」
「そうですね、ひょっとして高く売れそうですか?」
「ああ、間違いなく高く売れる筈だ」
「それは良かった。色々と教えて貰ったお礼になりそうですね?」
「・・・本当に高く売れるんだぞ?」
「んふふ、日本では一度差し出した物を返されるのは、恥になるんだよ?」×アヤメ
「そそ、遠慮なんて要らないわ、受け取ってくれた方がヨウ君も喜ぶしね」×ナギサ
「ふぅ~ 分かった。ありがたく受け取っておくよ」
「あ、あの、ありがとう」
「いえいえ、此方こそありがとう」
「ところで、次の地下11階からは許可がいるんですよね?」
「ああ、次の階層からは階層争奪模擬戦に勝たないと、魔物素材や採集素材を獲ってはいけないんだ」
「なるほど、ありがとう。頑張らないとですね~」
「やはり、今日の模擬戦に参加するんだね?」
「はい、頑張って全階層の権利を勝ち取らないとです。ふんす!」
「あはは、全階層か凄いな♪ でも君達なら出来そうな気がするよ」
「私も応援に行くから、頑張ってね」
「わ、私も行くから」
「俺も行く、あんた達出るなら、絶対今日の模擬戦は荒れるぜ」
「くはー、トップランカー達の慌てる顔が見れそうだな」
「全階層取るって事は、久しぶりに奴の模擬戦が見れるのか?」
「そうなるよな。うはー! 今日の模擬戦が楽しみになってきた」
「奴って誰なんですか?」
「ああ、シドニー最強の男さ、名前は『ルーカス・ローリー』どのパーティにも属していないソロプレイヤーだ。
彼は毎回階層争奪模擬戦に出ているが、強すぎて誰も挑戦しないから何時も不戦勝になるんだ」
「あ~ 知ってます! そっかルーカスさんも出るんだ、会えるのが楽しみです♪」
「君達も信じられない程強いが、シドニーに集まるトッププレイヤー達は猛者揃いだから注意した方が良い」
「そうよ、シドニーで有名な3つのクランは絶対参入してくるから頑張ってね」
「あ~ 彼奴等、凄く強いからな」
「でも、ツドイさんならきっと良い勝負になるわ、だってあんなに強いんだもの」
「ありがとね、僕頑張る」×ツドイ
僕達は親切な冒険者達に、手をブンブンと振って別れの挨拶をし、その場を後にした。
ダンジョンを後にした僕達は、少し早めだがシドニーギルド本部に行く事にした。
本部に入ると、何故か受付嬢の長であるナタリーさんが出迎えてくれていた。
「お疲れ様でした、三日月様」
「ありがとうございます。ひょっとして、何か僕達に用事ですか?」
「はい、あれから上司に報告したところ今日の階層争奪模擬戦には、私が三日月様達を御案内するよう命令を受けました」
「うわ~ サービス満点ですね~」
「うふふ、日本のSランク冒険者なのですから、これぐらいの待遇は、させていただきますよ?」
「フフ、本当にサービスなのでしょうか?」×リラ
「もちろんです」
「貴女はとても優秀な方ですね、今日の模擬戦が終わる頃には英断だったと思う事でしょう」
「・・・とても、自信が御有りなのですね?」
「フフ、それはどうでしょう」
「とりあえず、まだ時間もありますからコーヒーでも如何ですか?」
「ありがとうございます。それと買取りもお願いして良いですか?」
「畏まりました。では、どうぞお部屋へ」
ナタリーさんの案内の下、豪華な部屋で頂いたコーヒーは、とても薫り高く美味しかった。
「これ美味しいですね~」
「うふふ、お口に合って良かったです。私はコーヒーが好きなので色々と揃えているんですよ」
「ナタリーさん。良ければ、このコーヒー豆を譲って貰っても宜しいでしょうか?」×リラ
「はい、もちろん、御用意しておきますね」
「ありがとうございます」
「流石リラ姉、行動が早いんだから」×ノノ
「フフ、ヨウ様が気に入った物は、全て確保しておかないとですよ?」
「は~い、リラ姉って、良い奥さんだよね?」
「えっ! こ、こら、ノノ」
「んふふ、私もお嫁さん貰うなら、リラが良いな」×アヤメ
「にひひ、完璧超人だからね~」×ナギサ
「理想のお嫁さんだよね、リラ姉は」×ノノ
「僕もそう思う、見習わないとだよね」×ツドイ
「僕のお嫁さんですから、取っちゃ駄目ですよ?」
「え~ 私達の彼女でもあるんだから、ヨウ君独り占めは駄目よ?」×ナギサ
「もう、皆こんな所で話す事じゃ無いでしょ?」×アヤメ
「フフ~ リラ姉が照れてる~」×ノノ
「もう、ノノったら」×リラ
「リラさん?」
「はい、ヨウ様」
「可愛いです♪」
「えっ! も、もう、ヨウ様まで揶揄わないで下さい・・・」
「あはははは♪」×クレセントメンバー
「驚きました。本当にハーレムパーティなのですね」×ナタリー
「そだよ、僕のハーレムパーティ」×ツドイ
「こらツドイ、そこはヨウ君のハーレムパーティって言わないと駄目でしょ?」×アヤメ
「嘘じゃないよ?」
「同性を囲ってもハーレムって言わないんじゃない?」×ナギサ
「そっか、やっぱりヨウ君のハーレムパーティだね」
「あ、あの、僕はまだハーレムって言葉に抵抗があるんですけど?」
「フフ~ ヨウ様、もう諦めないと?」×ノノ
「あぅ~」
「フフ、もうこれぐらいにしましょう、ナタリーさんが困惑してますから」×リラ
「あっ! 素材の買取りお願いしてたんでした。すみませんナタリーさん、此処に出しても良いですか?」
「はい、お願いします」
僕達はシドニーダンジョンで手に入れたドロップ品を、次々にテーブルの上に出していった。
もちろん、赤色のSPオーブや希少なスキルオーブは出せないんだけどね。
魔物の数が多かったのでドロップ品も多く、テーブルに乗り切るか不安な程積み上げていく。
「こ、こんなにも・・・」×ナタリー
「<虚空庫>スキル? そ、それも全員?」
「なんて量なのですか? スキルオーブまで・・・」
「ん~ ちょっと、乗り切らないですね」
「一体どれ程の、魔物を倒したと言うのですか?」
「えっ? シドニーのダンジョンってモンスターハウスって言うかモンスターエリアって言うのかな? 魔物が大量に居る所が多いんじゃないんですか?」
「確かにそうですが、まさか、モンスターエリアを全て殲滅して来たとでも言うのですか?」
「んふふ、全部じゃないかもしれないけど、2~30ぐらいのモンスターエリアは倒して来たかな?」×アヤメ
「スタンピートみたいな大規模じゃないから、覚えてないな~」×ナギサ
「そんな、信じられない・・・」×ナタリー
「これを見たら、信じられるんじゃないかな?」×ツドイ
ツドイさんは地下10階のボスである、ブラックキングリザードがドロップした鱗に覆われた皮を取り出して、ナタリーさんに見せている。
「それはキングリザードの皮? い、いえ、まさかブラックキングリザード?
貴方達は、こんな短時間で地下10階まで攻略し、レアボスまで倒したと言うのですか?」
「フフ、流石に受付嬢の長をしているだけはありますね、御理解願えましたか?」×リラ
「フフ~ これでも、階層争奪模擬戦に出るのは無謀だと思いますか?」×ノノ
「失礼しました・・・私はまだ、三日月様達を過小評価していたようです。
急いで査定致しますので、しばらくお待ちくださいませ」
ナタリーさんは数人の受付嬢を呼び、僕達が取り出したドロップ品を全て査定に回してくれた。
駆けつけてくれた受付嬢さん達は、積み上げられた素材を見て目を見開いて驚いていた。
「申し訳御座いません三日月様。少し時間を頂いても宜しいでしょうか?」
「はい、良いですよ」
「それにスキルオーブはオークションに出品した方が高値になりますので、オークションへ出品する手配を致しますね」
「いえ、良いですよ。スキルオーブもギルドで買い取って下さい。しばらくお世話になると思いますから、ちょっとしたお礼です」
「本気で仰っておられるのですか? 数十万ドルの損失になると思われますが」
「えっと、数十万ドルって日本円ならどれぐらいだっけ?」
「現在は1ドル88円ぐらいになっております」
「ふむふむ、なら十万ドルなら八百八十万円ぐらいか。
お世話になる、お礼としては少ないですかね?」
「いえ、とんでもない。スキルオーブをギルドで買い取った事は今まで無いぐらいですから」
「なるなる、じゃ丁度良い感じかもですね」
「ありがとうございます。精一杯、高値で買い取らせていただきます」
ナタリーさんは、喜んでくれたのか笑顔を見せてくれ、忙しそうに上司と相談してくると言い部屋を出て行った。
「さてと、じゃ、そろそろ着替えて貰おうかな?」
「「「「「えっ?」」」」」
「着替えるって・・・何か嫌な予感がするんだけど?」×アヤメ
「えへへ、何時か皆に着て貰おうと思って、密かにフミさんに作って貰った戦闘服があるんですよね~♪」
「もう、何時の間にそんなの作ってたのよ~」
「何時もは正体を隠すような服ばかりだったじゃないですか、だから思いっ切り目立つ戦闘服も良いかなと思ってたんですよ?
観客がいる模擬戦だし、今日が着る良いタイミングでしょ?」
「最大の問題は、どんなデザインかなんだけど?」×ナギサ
「こんなのです♪」
「「「「「ええっ!」」」」」
◇ ◇ ◇
<ナタリー視点>
「ナタリーさん。これは一体どう言う事なんですか?」
「そう言いたい気持ちは分かりますが、見ての通りです」
「見ての通りって、凄い量の魔物素材ですよ? 私こんなに大量の査定した事ないですもん」
「ええ、私も完全に三日月様達の実力を見誤ってました。
あの方達は、化物かもしれません・・・」
「ええっ! ば、化物って?」
「あの見た目では想像も出来ませんが、間違い無いでしょう。
この短時間で地下10階まで辿り着いたのも驚きですが、その間にモンスターエリアを30程撃破し、レアボスまで屠ったそうです。
怪我も無く涼しい顔をして帰って来たのですから、人外とも言える実力を持っているのは間違いありません」
「うはー、本当ですか?」
「それに6人共<虚空庫>スキルを所持しているようでした。並大抵の財力では無いでしょう」
「<虚空庫>スキルですか? そんな? パーティで1人持っているだけで凄いのに?」
「購入したのか、自力で取得したのか分かりませんが、おそらく後者でしょう。
三日月様達の対応を間違えない様に言いましたが、これは他言無用ですよ?」
「は、はい、もちろんですけど、信じられない程凄い人達だったんですね」
「全くです・・・今日の階層争奪模擬戦が怖くなってきました」
「私は凄く楽しみになってきました♪」
「もう、貴方は能天気で良いですね?」
「ぶー、私は能天気じゃないですよー」
「うふふ、さあ急ぎますよ?」
「はい、受付嬢を総動員して頑張りまっす」
それにしても、本当に不安になってきましたね・・・
もし、もしも、彼等が私の想像を絶する様な実力を持っているならば、今日の模擬戦が惨劇にならなければ良いのですが。
フフ、考えすぎですね、驚異的なスピードを持っているのは間違いありませんが、どんな戦闘をするのか楽しみにしておきましょう♪




