第212話 努力が報われるって感動するんだな
あれ? 何か変な形のオーブがドロップしてる?
俺は何だろうと思いながらオーブを拾うと、それが<虚空庫>スキルオーブだと理解した。
えええっ! こ、<虚空庫>スキルオーブって、確かメチャクチャ高いスキルなんじゃ・・・
うはー! とんでもないスキルを手に入れちゃった。ナギ姉に相談しなきゃ。
俺はダンジョンから出て家に帰ると、真っ先にナギ姉に電話してみることにした。
プルルー! 「は~い! どうしたのコウタ?」
「あっナギ姉! ちょっと聞きたい事があるんだけど、今大丈夫かな?」
「良いわよ。なになに? 恋の相談だったりして」
「馬鹿! ちげーよ。実はスキルオーブドロップしちゃったんだけど、どうしたら良いかな?」
「お~ 凄いじゃない。コウタも頑張ってるんだね~ 言っとくけど、売っちゃ駄目よ? 自分で習得しちゃいなよ」
「ええっ! でもよ、<虚空庫>スキルなんだけど?」
「えええっ! コウタ、自力で<虚空庫>スキルオーブドロップしちゃったの?」
「俺も吃驚したんだけど、出ちゃったんだよ」
「ふあ~ 初級ダンジョンのスライムからだよね? 凄く低確率なんだよ?」
「だよな~ もう1ヶ月スライム倒してるけど、初めてドロップしたからな」
「あ、あんた、1ヶ月もスライム倒してたの?」
「ナギ姉が、当分の間スライムで訓練しろって、俺に言ったんじゃねえか?」
「馬鹿ね! 限度ってもんがあるでしょ?」
「でもよ、俺ちょっとずつだけど強くなってきたぜ? クランの高ランク冒険者にも褒められたんだぞ?」
「うふふ、さては、綺麗な女性なんでしょ~?」
「な、なんで分かんだよ?」
「だって、アンタ声が嬉しそうなんだもん♪」
「ちぇ! ナギ姉には敵わないな。でっ? ナギ姉に渡した方が良いかな?」
「渡さなくて良いわよ。自分で習得しちゃいなさい、凄く便利なスキルだからさ」
「良いのかよ? すげー高いんだろ?」
「良いから、良いから! 覚えちゃいなさい。冒険者にはメチャクチャ便利なスキルだからさ」
「分かったよ。じゃ、また電話するな」
「うん、その調子で頑張んなさい。言っとくけど、無理しちゃ駄目なんだからね?」
「分かってるよ。じゃな」
「は~い、またね~♪」
「ふ~ やるな~ アイツめ」
「どうしたのよ?」×アヤメ
「えっとね、コウタの奴が<虚空庫>スキルオーブを自力で手に入れちゃったんだって」
「ええっ! 凄いじゃない?」
「フフ、それは、とても幸運でしたね」×リラ
「ふあ~ ヨウ様以外でも、ドロップするんだ~」×ノノ
「凄いよね。<激運>スキル持ってても落ちないのに?」×ツドイ
「でも、僕以外でもドロップするのが確認されましたね」
「うん、1ヶ月スライムばかり倒してたらしいけどね♪」×ナギサ
「あはは、ヨウ君以上のスライムハンターじゃない?」×アヤメ
「・・・遂に、僕の称号を譲る時が来ましたね♪」
「んふふ、ヨウ君は初代だね?」
「え~ 余計、目立つ言い方じゃないですか~」
「あはははは♪」×全員
◇ ◇ ◇
俺は<虚空庫>スキルを習得し、その便利さに驚愕していた。
うはー、なんて便利なんだろ、そりゃ高値にもなるわな。
何か冒険者になってから毎日が充実してるよな、ナギ姉には感謝しないと。
よし! この1週間、頑張ったし明日はクランに行く日だから、またレイさんに褒めて貰わないと。
俺は先週、レイさんに教わった事を反復して訓練し、我ながら中々良い感じになってきたと思うので、ワクワクしながらクランへ向かった。
何時ものFランク模擬戦場へ行くと、今日もレイさんが、まるで俺を待っていてくれたかのように出迎えてくれた。
「おはようございます。レイさん!」
「嬉しそうな顔しやがって、頑張って来たみたいだな?」
「もちろんです! なんせ、レイさんとの食事が掛かってますからね?」
「ふふ 可愛い事言いやがって。よし! まずは、おさらいだ。私が教えた打ち込みを見せてみろ?」
「はい!」
俺は精神を集中し、木人形に上段、中段、下段と次々に打ち込んで行った。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ! バッキー!!!
「あっ! しまった・・・また、木剣が折れちゃった。すみませんレイさん」
ゾクゾクッ! 「な、なんて奴だよ。先週より更に早くなってやがる。
どんな訓練したら、こんなに早く上達するって言うんだよ?
もう疑いようが無いな、此奴は私なんて軽く超える天才だ♪
ふふ、あはははは! 参った。私の負けだな♪ コウタ。約束通りメシ連れてってやるよ♪」
「本当ですか? やったー! 頑張った甲斐がありました♪」
「コウタ、模擬戦しようか?」
「うわ! 俺と模擬戦してくれるんですか?」
「喜んでんじゃねえ。さあ、掛かって来い」
「はい!」
俺は初めてレイさんが模擬戦してくれるので、有頂天になってしまった。
少しは俺の事を認めてくれたのかな?
レイさんを失望させないよう頑張らないと!
カツッ! カカカカカッ! カカカカカカカカカッ!!!
「よし、良いぞ! もっと打ち込んで来い」
「はい!」
「ふふ、此奴スピードだけじゃねえ。一撃一撃がなんて重さだ私でも真面に受けてたら腕が持たねえな。
良い、良いぞ。なんて楽しいんだ♪ おらおら、もっとスピードを上げやがれ」
「はい!」
ガガガガガガガガガガガガツッ!!!
「ス、スゲエ・・・彼奴レイさんと真面に打ち合ってやがる」
「彼奴、この間入会した新人だよな?」
「うん、私が受付したんだけど・・・完全な素人だったのに凄いわ」
「うはー、なんて成長スピードだよ。もう、俺達より遥かに強いじゃねえか」
「居るんだな~ 天才って奴が・・・レイさんも凄く嬉しそうだしな」
「レイさんが目を掛けてたの分かるわ」
周りがザワザワしていたが、俺はそれどころじゃない。
幾ら攻撃しても、レイさんには掠りもしなかった。
何十何百回打ち込んだだろうか、俺は疲れて腕が上がらなくなってしまった。
「ハァーハァー、ま、参りました!」
「ふふ、よし休憩しろ! 私も久しぶりに良い汗を掻いた」
「レイさん、どれだけ強いんですか? 俺、全く攻撃が当たる気がしませんでしたよ?」
「馬鹿野郎! 私はAランクだぞ? Fランクの奴に負けてられるかよ。
だが、見てみろ。私の木剣がボロボロだ、受け流したつもりだが良い打ち込みだったぞ?」
「あ、ありがとうございます♪」
「さて、シャワーで汗でも流してくるか?」
「えっ?」
「馬鹿! メシ連れて行ってやるって言ってんだろ? さっさと汗流してこい」
「そうだった! はい、直ぐ行って来ます♪」
俺は喜び勇んでシャワーを浴びて、服を着替えた。
あちゃ! こんな事なら、もっと良い服着てくりゃ良かった・・・
「おい、何してんだ行くぞ?」
「は、はい」
私服に着替えたレイさんはGパンにパーカーと言った服装だったが、どこからどう見ても大人の女性と言った感じだった。
細くて長い脚、縊れた腰、大きな胸が実にセクシーだ。
訓練中と違って、バッチリメイクもしているので、見惚れてしまうほど綺麗だった。
「なんだよ?」
「えっ? い、いや~ 綺麗だなと?」
「あはは、可愛い事言いやがって♪ ほら、好きなもん食わせてやる、何が食いたい?」
「ん~ 肉とかでも良いですか? でも、俺何でも良いですよ?」
「遠慮なんてすんなよな? 私も肉は好きだからな、ほら着いて来い」
「はい」
俺はレイさんと一緒に街を歩いていると、周りの人々から注目を集めているようだ。
何かこういうのも優越感があって良いな。
レイさんが連れて行ってくれた店は、ビルの20階にある敷居の高そうな店だった。
従業員が並んで出迎えてくれ、個室に案内してくれた。
うわわ! 俺こんな高そうな店入った事ないんだけど・・・
「コウタも飲むだろ? ビールで良いか?」
「はい、頂きます」
「いい加減、その固い喋り方やめろよな~」
「ええっ? そんな、レイさん相手に溜め口なんて無理ですよ?」
「私が偉そうにしてるみたいだろ?」
「実際偉いんだから、良いじゃ無いですか?」
「ばっか、偉いわけあるか、普通で良いんだよ普通で?」
「・・・努力します?」
「まあ良いけどよ、さあ飲め乾杯だ♪」
「はい、乾杯です♪」
「ぷはっ! 訓練の後のビールは最高だな、おい?」
「あはは、レイさんお酒好きなんですね?」
「冒険者が酒好きでなくて、どうするよ?」
「それもそうですね♪ 今日は俺も飲んじゃいますよ?」
「あはは、そうだ。飲め飲め♪」
レイさんは酒豪なのか、ビールをカパカパ空けていくから、俺も気分良く飲んで行く。
「ところでコウタ? この1ヶ月どんな訓練してたんだよ?」
「えっと、スライムを倒してました」
「はっ?」
「えっ? スライムを倒してたんですけど・・・」
「お前、この1ヶ月ずっとスライムを倒してた訳じゃ無いだろ?」
「ずっと倒してましたよ? 1ヶ月毎日スライム狩りしてました」
「ぐはっ! お前、信じられない事するな?」
「あれ? 普通そうなんじゃないんですか?」
「スライム狩りなんて直ぐに飽きるだろ? 普通はドンドン先へ進むんだよ」
「そうだったんですか・・・でも、俺スライム狩りしてたお陰で、結構強くなってきましたよ?」
「ふふ、あはははは! メキメキと成長したお前が、ずっとスライム狩りしてたと知ったら皆驚くだろうな♪」
「あっ! レイさん・・・内緒でお願いします」
「クククッ! ああ分かったよ♪ だが、そうやって愚直にコツコツと頑張ったからコウタは強くなったんだろうな。私もコウタを見習おう」
「ええっ? そんな、レイさんみたいな強い人が見習う様な事じゃないですよー」
「あはは、謙遜するな、コウタは凄い男だよ」
「うはっ! レイさんに褒められると嬉しいんですけど?」
「私はお世辞なんて言わないぞ?」
「あ~ この1ヶ月、頑張って良かったな♪ よ~し、明日から地下2階に行って見よっと」
「なあコウタ? 頼みがあんだけどよ?」
「えっ? レイさんの頼みなら何でも聞いちゃいますよ?」
「そう言ってくれると助かるんだが、明日から私もコウタに付いて行って良いか?」
「えっ? だって、初級ダンジョンですよ?」
「そんな事分かってるさ。まあ、ぶっちゃけるとコウタとパーティを組みたいんだ」
「えええっ? どうして俺なんかと?」
「私は長い間パーティメンツを探してたんだが、どうにも一緒に組みたいと思った奴が居なくてな。
もう半ば諦めてソロでも良いかと思ってたんだが、ちょっとした切っ掛けがあってな、最近真面目にパーティメンツを探してたんだよ」
「あ~ それで、Fランクの模擬戦場で、俺みたいな新人の指導してくれてたんですね?」
「まあ、そう言う事だ。そして、やっと見つけたのがコウタって訳さ♪
お前となら楽しくダンジョンに潜れると思ってな」
「・・・俺にとっては願っても無い事ですが、本当に良いんですか?
だって俺、Fランクの新人なんですよ?」
「馬鹿野郎! これで断られたら、こっちは土下座で頼み込む覚悟もあるんだよ?」
「あはは、それは、ちょっと惜しい事しちゃいました?」
「って事は、良いんだな?」
「もちろんです! 俺からも足を引っ張るかもしれませんが是非、宜しくお願いします」
「そっか・・・ありがとな。くぅぅ、今日は飲むぞ~」
「おー♪」
レイさんは、俺とパーティを組む事に本当に喜んでくれ、俺もとても嬉しい気分になった。
こんな綺麗で凄い人とパーティを組むなんて、なんか申し訳ない気持ちになるが頑張って強く成ろうと決心した。
今まで、酒はあまり飲んだ事なかったけど、この日の酒は最高に美味かった♪
「ん? おいコウタ、寝ちまいやがったか・・・幸せそうな寝顔しやがって♪
ふふ、コウタありがとな。やっと、私の念願も敵った事だし、明日から頑張ろうな」
<そして翌朝>
ん・・・朝か・・・う~ん、いてて あ~ちょっと頭が痛いな昨日飲み過ぎたか。
でも、昨日は最高の1日だったな♪ これから、あのレイさんとパーティを組めるのか。
まさか、夢って事は無いよな?
あれ? ええっ! 此処ってどこだ?
うわっ! うわ~~~! な、な、なんで、レイさんが隣で寝てるんだ?
えっ! めっちゃ良い匂いがする・・・
いやいや、それどころじゃない・・・昨日は・・・あああ、俺酔い潰れたんだ・・・
って事は、此処はレイさんの部屋か?
うわ~ レイさんの寝顔可愛い~♪
いや、だから、それどころじゃねえって。ふ、服は着てるな・・・俺、変な事してねえよな?
「ん! んん~ ん? なんだよ起きてたのか?」
「ふあ~ おはよう、コウタ」
「お、お、おはようございます」
「なに緊張してやがんだよ? 言っとくけど何も無かったからな?
しょーがねえだろ? お前の家なんて知らねえし、何度起こしても起きなかったんだからよ」
「すみません、お、俺」
「良いって。これからパーティを組む仲間だろ? 気にすんな。
さて朝飯にするか、コウタは顔洗って来いよ」
「は、はい」
うわ~ やっぱりレイさんって大人の女性なんだな・・・俺なんて子供扱いなんかな。
ちょっとへこむけど、レイさんの寝顔見れたんだから、良しとするか♪
<レイ思想>
『あわわ! や、やっちまった・・・昨日コウタをベッドに寝かせて別の部屋で寝ようと思ってたのに、一緒のベッドで寝ちまった・・・
あ~ 昨日は、嬉しすぎて飲み過ぎちまったからな・・・
若い男連れ込んで、同衾したなんてしれたら皆から何て言われるか・・・
よ、よし、シッカリ口止めだけはしとくか・・・
リーダーなんかに知られた日にゃ、絶対、体で堕としたのか? とか言われちまう』
「こ、こら、あんまりキョロキョロすんなよな? 恥ずかしいだろ?」
「すみません。俺、女性の部屋なんて入った事なくて・・・」
「ば、馬鹿野郎、女性の部屋なんて言うなよな? 照れるだろ?」
「ええっ! だって、初女性部屋なんですよ? 姉や妹の部屋ならありますけど」
「だから、あんまり見んなって、ろくに掃除もしてないんだからよ」
「え~ めっちゃ、綺麗じゃないですか? 凄く良い匂いもしますし♪」
「ば、馬鹿野郎、匂いなんて嗅ぐな!」
「そ、そんな無茶な」
「あ~ もう良いから、朝飯にするぞ」
「はい」
レイさんは食パンを焼いてくれ、目玉焼きとコーヒーと言った簡単や朝食だったけど、メチャクチャ美味かった♪
レイさんは朝食を食べ終わるとタバコを吸いだした。
なんか、大人の女性だなと見惚れてしまう。
「へえ~ レイさんって、タバコ吸うんですね」
「ん? なんだ? タバコ嫌いだったか?」
「いえ、メチャクチャ恰好良いです!」
「ふふ、変な奴だな♪ ほら、お前も吸うか?」
「良いんですか? ありがとうございます」
俺はタバコなんて吸った事無かったけど、レイさんの真似をしてタバコを吸ってみた。
「ゴホ! ゴホゴホッ!」
「あはは、なんだよ? タバコ吸った事ねえのかよ?」
「はい、初めてですけど、タバコってこんな味だったんですね」
「ふふ、子供には未だ早かったか?」
「う~ 俺、子供じゃないですよー」
「あはは、可愛い奴め♪ さて、ダンジョン行くか?」
「はい、もちろんです」
「そんなに喜ぶなって。今日から宜しくな?」
「はい、宜しくお願いします」
俺はレイさんと一緒に部屋を出て、初級ダンジョンへ向かった。
武器とか防具はギルドのロッカーに預けてあるので直接向かう事にした。
レイさんは自宅に置いてあったのか、大きな鞄を持っていた。
ギルドへ着くと、お互い装備を整え初級ダンジョンへ向かう。
レイさんの装備は流石にAランクなだけあり、とても高そうで恰好良かった。
「へえ~ コウタは黒鉄製の武器使ってるのか」
「はい、実はこれ、姉がプレゼントしてくれたんですよ」
「ふふ、随分と優しい姉さんがいるんだな?」
「はい、装備類って高いから、姉には頭上がんないんですよ?」
「それなら、頑張って稼がないとな」
「冒険者になってから日給4~5万稼いでるから、結構溜まって来ましたよ?」
「はあ? スライム狩りしかやってねえって、言って無かったか?」
「はい、スライムボールで稼いでます!」
「お前、一体どんだけスライム倒してたんだよ?」
「ええっと、朝から夜までずっとだから覚えてなかったりします?」
「信じられんことするな・・・お前、頑張り過ぎだぞ?」
「あはは、でも、楽しいんですよね」
「参った! お前は凄い奴だよ」
「いや~ それほどでも♪」
「ふふ、でっ? 地下2階のオーブには触ってあるのか?」
「いえ、地下2階には行った事ないです」
「じゃ、とりあえず今日は、地下2階を目指して進もうか?」
「はい」




