第17話 僕は護衛対象になるそうです
「岩永課長。三日月様が高額なスキルオーブを出品した事が世間に知られれば身の危険にもなりますので、隠ぺいする事に合わせて護衛も付けれるでしょうか?」
「それならば心配ない。出品者にあっては徹底的に隠ぺいし、三日月様の護衛についても既にコンシェルジュの天満君が腕利きの護衛でもあるのだよ」
「なるほど・・・岩永課長が十分配慮してくれていますが、決めるのは三日月様になると思います」
「僕の身を案じてくれて、ありがとうございます」
「藤崎さんや課長さんには非常にお世話になっているので、恩返しとして3つ程スキルオーブを持ってるので出品しようと思います・・・一応見て貰います?」
「3つですと? どんなスキルオーブを・・・」
「これなんですが」
僕は目玉商品に成り得るスキルオーブを3つ選んで、VIPルームにあるテーブルに並べていった。
ガタッ!
「えっ? えええ~~~」
「藤崎君?」
「は、はい、三日月様・・・本当に、これを出品しても良いのですか?」
「はい、これなら目玉商品に良いかなと思いまして」
「すみません課長、とんでもないスキルだったもので」
「分かったから、何か教えてくれたまえ」
「はい・・・<身体強化><虚空庫>。そ、そして・・・<鑑定>です!」
「なっ、なんと・・・また<鑑定>スキルを入手されたのですか? それに<虚空庫>とは素晴らしい」
「三日月様。流石に物が物だけに少しだけ時間を頂けますか?」
「はい、良いですよ」
「藤崎君、私は部長に事情を説明してくるから、これをケースに入れておいて貰えるかね」
「はい、分かりました」
課長さんは、VIPルームを急いで出て行った。
「ちょっとヨウ君。また、ドロップしちゃったの?」
「そうなんですよ、出ちゃいました♪」
「で、出ちゃいましたって・・・ヨウ君軽いわよ」
アヤメさんはVIPルームに備え付けてあるオーブ専用ケースを出している。
「ごめんなさい。ヨウ君、ケースに入れて貰って良いかな? 触るのが怖くって」
「あはは、良いですよ」
僕はスキルオーブをケースへ入れていき、同じように並べておいた。
「も~、ヨウ君って、どんな強運してるのよ~」
「ドロップ運良いんですよね」
「そんなレベルじゃないでしょ~? でも<鑑定>スキルオーブなんてオークションに出せるのかな?」
「そうですよね、僕もそれで出すの悩んだんですけど・・・」
結構な時間をアヤメさんと話をしながら待っていると、部長さんに加え社長さんまでVIPルームに来たようだ。
「三日月君。君が譲ってくれた<鑑定>スキルのお陰で、ようやくオークションに漕ぎ着けたよ。ありがとう」
「いえいえ、僕も社長さんのお陰で、素晴らしい生活を送ってます」
「あはは、それは良かった。ところで岩永課長に聞いたのだが、そこに置いてあるのが実物かね?」
「はい瀧見社長、私が<鑑定>で確認しました。間違いなく<身体強化><虚空庫><鑑定>です」
「いやはや、なんとも凄まじいね。三日月君の強運には恐れ入るよ」
「あはは、ドロップ運だけは良いみたいです」
「前回の件で、君の機嫌を損ねる事になっていたらと思うと肝が冷えるよ。しかし、<身体強化>と<虚空庫>は兎も角<鑑定>なのだが」
「やはりオークションに掛けて他所に買われると拙いですか?」
「いや、私の見立てでは日本のダンジョンギルドでは落札出来ないと思っているんだよ」
「えっ? どこも欲しがっているんじゃ?」
「ああ、喉から手が出る程欲しがってるだろうね。しかし、今回のオークションでは出品物を告示するからね」
「あっ? 海外勢ですか?」
「そのとおりだ。おそらく<鑑定>を持っていない国が、次のオークションに殺到するだろう。
私が危惧しているのは、おそらく<鑑定>の落札価格は100億どころではないと思うのだ、そうなると三日月君に申し訳なくてね」
「あはは、そんな事ですか♪ 例え幾らで売れようと僕は気にしませんよ、既に最高級の優遇を受けてますからね」
「そう言ってくれると私も助かるよ。それに、今日持って来てくれた3つのスキルオーブは非常に助かるのだ。
次のオークションでこの3つを出品すれば今後、世界中の国が大阪のオークションに注目するだろう。その価値は計りしれない」
「お礼には及びません。何時も藤崎さんにはお世話になってますので、恩返しになればと」
「そうか、藤崎君には私からも礼を言おう」
「君がいつも冒険者に対して真摯な態度をしてくれていたお陰で、こうして三日月君のような優秀な人材からの信頼を得られた。ありがとう」
「いえ、そんなとんでもないです。全て三日月様の実力ですので、私はほんの少しサポートしただけです」
「フフ、斗沢部長、岩永課長、藤崎君のような素晴らしい受付嬢を迎えられたのも君達の指導の賜物だと思っているよ。私は大いに評価したいと思う」
「「ありがとうございます」」
「では、三日月君。このスキルオーブは大事に預からせて貰うよ、斗沢部長は預り証を忘れずにな」
「畏まりました」
「後は三日月君が出品者と言う事は極秘事項とする。この場に居る者以外、誰にも知られぬようにな」
「「「はい」」」
「では、スキルオーブを金庫へ運んでおこう。藤崎君も最後に確認して貰えるか」
「畏まりました」
「三日月君は念のためにオークションには来ない方が良いだろう、結果を楽しみにしておいてくれたまえ」
「はい、楽しみにしてます」
社長さんとアヤメさんは金庫へ行き、僕は部長さんから3つのスキルオーブの預り証を受け取った。
「三日月君。今日お預かりしたスキルオーブは、明日に告示されると思われるので、明日からコンシェルジュである天満君を護衛としてマンションに同居する事を了承願いたいのです」
「えっ? リラさんが一緒に住むって事ですか?」
「はい、天満君は優秀な護衛でもありますので、危険がないと判断されるまでの間だけでも宜しくお願いします」
「僕は良いのですが、リラさんは良いのでしょうか?」
「天満君の方には、私から連絡しておきますので御安心を」
「分かりました」
部長さんとの話も終わり、アヤメさんも帰って来たので一緒に帰る事にした。
「・・・斗沢部長どう思うかね?」
「はい、なんとも不思議な少年ですね・・・どう考えても何か秘密があるとしか思えません」
「ふむ、まだ誰も発見したことが無いレアドロップの方法を見つけたのか、もしくは神掛かった強運の持ち主なのか・・・」
「私は後者の方が恐ろしいと思うのだがね」
「どちらにしても、間違っても本人に聞くわけにはいきませんからね」
「ああ、我々は誠心誠意を以て、三日月君と接するとしよう」
「はい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
僕とアヤメさんは、今日の会話は歩きながらだと誰に聞かれるか分からないので、とりあえず僕の家に来て貰う事にした。
何気ない会話をしながら僕の家に着いたので、リラさんが買っておいてくれたビールを出した。
「ふぅ~、もうヨウ君には驚かされっぱなしね」
「す、すみません」
「別に謝る事は無いんだけど、ちょっと心配なのよ」
「あっ? 護衛の件ありがとうございました。明日からリラさんが此処でも護衛してくれるそうです」
「えっ? 此処でもって、泊まり込むの?」
「そうみたいです」
「・・・ヨウ君、襲っちゃ駄目なんだよ?」
「そ、そんな事しませんよ」
「んふふ、冗談よ♪ しかし、リラさんも凄い人ね? どんな生活してきたんだろ」
「そうですよね、僕には完璧超人に見えます」
「ところでドロップ品で隠してる事って、もう無いよね?」
ギクッ! 「あはははは」
「はぁ~、やっぱりあるのね、全部言いなさい」
「えええええっ? す、すみません勘弁して下さい」
「・・・・・しょうがないわね、じゃ言える奴だけ言いなさい」
「・・・じゃ一つだけ、アヤメさん手を貸して貰えますか?」
「良いわよ、何するの?」
「今日、習得したばかりの魔法です<クリーン>!!!」
僕はアヤメさんの手を取り<クリーン>を発動した。
アヤメさんが光の膜に包まれていく、別に手を触らなくても発動出来そうだったけど、それは言わない事にした。
「えええっ? ヨウ君! これって生活魔法じゃない? 凄い、お風呂に入った後みたい・・・」
「えへへ! 覚えちゃいました」
「って事はゴブリンかオークね? 戦闘の方は大丈夫だった?」
「はい、何とか大丈夫でした。でも、そろそろナイフの方が欠けて来ちゃいました」
「どれどれ、見せて」
「はい、どうぞ」
僕はアヤメさんしか居ないので<虚空界>からナイフを取り出し、アヤメさんに渡した。
「うわ~、メチャクチャ傷んでるじゃない? 一体何体の魔物を倒したらこうなるのよ」
「ええっと・・・3~400体ぐらいかな? はっきりと覚えてないです」
「はぁぁ? ヨウ君ソロなのに、そんなに戦闘してるの?」
「僕弱いから頑張って訓練しないといけないので・・・」
「いくら初級ダンジョンって言っても、弱かったらそんなに倒せないわよ」
「ヨウ君のドロップ率が高いのも頷けるわね・・・
でも訓練無くして、あんな体には成らないわよね? 参った、尊敬するわヨウ君。貴方は凄い人よ」
「や、やめて下さい。照れるじゃないですか」
「んふふ、謙虚なんだから♪ でも、ナイフの方は研ぎ直さないと駄目ね」
「そうですよね、困ったな・・・」
「ヨウ君、予備の武器ないの?」
「はい、僕の武器はこれだけです」
「あ~、駄目よ? 冒険者はちゃんと予備の武器持っとかなきゃ、ダンジョンで壊れたら戦えなくなるでしょ?」
「そうですよね、明日何か買いに行ってきます」
「良かったら私も着いて行こっか?」
「わ~♪ 助かります。僕、武器屋さん知らないので」
「そうと決まれば今日は飲もっか?」
「はい、ビールならいっぱいありますよ」
「じゃ、カンパーイ!!!」
「カンパーイ!!!」
美人と飲むお酒は本当に美味しくてクピクピと飲んでいると、良い気分になってきた。
アヤメさんも酔うと笑い上戸になるのか、とても機嫌が良さそうだ♪
しかし、改めて良く見るとアヤメさんは、とても綺麗な顔をしており胸も大きいので視線のやり場に困る。
「んふふ、何見てるのヨウ君?」
「えっ? いやあの、アヤメさんって本当に綺麗だなと」
「んふふ、それって口説いてるのかな?」
「そ、そんな事ないです、僕なんてあの・・・」
「ヨウ君も、すっごく可愛い顔してるんだよ?」
「可愛いですか?」
「そそ、何度持って帰ろうと思ったか♪」
アヤメさんは酔っているのか僕を正面から抱き締め、頬を擦り付けて来た。
僕はプチパニックになり、あわあわしたが柔らかい胸の感触や、頬がとても気持ち良くクラクラしてきた。
「もう我慢してたのに、ヨウ君が可愛い事言うからだよ?」
「あわわ」
「えへへ! ごめんね。でも、ヨウ君は可愛いだけじゃなくて凄い人よ♪」
「て、照れちゃいますよ?」
「んふふ♪」
しばらくするとアヤメさんも飲み過ぎたのかソファーで寝てしまった、可愛い寝息を立てている。
しかし、吃驚したな~。まだドキドキするや、でも嬉しかったな♪
アヤメさんは何度か呼び掛けても起きないし、どうしようかと考えたけど風邪を引いても駄目なので2階にある客室まで運ぶ事にした。
僕は先に客室を確認して扉を開けておき、アヤメさんを余計な所を触らない様に気を付けてお姫様抱っこで持ち上げる。
うわ~! 僕より背が高いのに、とても軽いや・・・それにとても良い匂いがする。
見惚れてる場合じゃないや・・・僕は2階にある客室にアヤメさんを、そっと寝かせ布団を掛けて、おやすみを言ってから扉を閉める。
僕も自分の寝室で横になり、アヤメさんを気になりつつも疲れのせいか眠りに落ちてしまった。
◇ ◇ ◇
<アヤメ視点>
「う、うぅん・・・ん~、ふかふか~ 気持ち良い~♪」
「んっ? フカフカ?」
ガバッ! キョロキョロ・・・
や、やっちゃったか・・・昨日、ヨウ君と飲んでて寝ちゃったんだ。
うわ~、ヨウ君が運んでくれたのかな?
服は・・・良かった昨日のままね・・・お風呂も入ってないのに、でもヨウ君に<クリーン>掛けて貰ったから良いか。
とりあえず、ヨウ君を探しに行こう。
私はどうやら2階にある客室で寝てたらしく、1階へ下りてヨウ君を探すと居なかったので、まだ寝てるのかもしれないわね。
勝手に帰る訳にもいかないし、どうしようと考えているとヨウ君が起きてきたようだ。
「おはようございますアヤメさん」
「おはよヨウ君。昨日はごめんね、私寝ちゃったみたいねヨウ君が運んでくれたの?」
「すみません。失礼かと思ったんですが、風邪を引いたら駄目なので客室まで運ばせて貰いました」
「ん~・・・もっかい運んでみて」
「えっ? えと?」
「だって、どうやって運んでくれたか、知っとかないと恥ずかしいじゃない」
「あはは、分かりました。えと・・・こうやってお姫様抱っこして」
僕は昨日の夜と同じようにアヤメさんを軽く抱き上げる。
「や、やっぱりちょっと照れるわね・・・ありがとう下ろしてくれて良いわ」
「ヨウ君小さいのに凄い力ね、さっすが男の子」
「いえいえ、アヤメさん凄く軽かったので・・・あっ、ごめんなさい」
「こちらこそ、ごめんなさい・・・」
「そうだ、リラさんに連絡しなきゃ」
「えっ? 嘘? 大変急いで帰るわ、リラさんに今日泊ったこと知られたら恥ずかしいから」
「あっ? そうですね、分かりました。家を出るとき連絡しますね」
「分かったわ、ごめんね。じゃ後で」
慌ててアヤメさんが帰っていき、こういうのも何か良いなと思いながらリラさんに連絡を入れた。
リラさんには今日もダンジョンに潜る事を告げると、今日から泊りがけで護衛する事を伝えられた。
その件については了承を伝えてから、ダンジョンから戻ったら連絡する約束をした。
家を出てギルドへ着く前にアヤメさんに連絡を入れると、ギルド前で待っててくれるそうなので、急いで行く事にする。