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第176話 歌の力って凄いんですね


【ニュース速報です!】


【本日、歌手である真樹五十鈴が新曲『セイレーン』をテレビで初披露したところ、ファンの凄まじい反響があり、パニックになる事件がありました!】



「「「「「「えええええっ!!!!!!!!!!」」」」」」



【スタジオや芸能事務所に日本中のファンが殺到し凄まじい交通渋滞が相次ぎました。


本人である真樹五十鈴さんは現在避難しているようですが、我々も消息を掴めておりません】


【真樹五十鈴さんと言えば、最近元気が無く病気ではないかと噂されていましたよね】


【そうですよね、元々歌が上手い歌手だったのですが、最近は確かに元気がありませんでした】


【はい、ところが本日初披露した新曲では、曲名の通りセイレーンの唄声と絶賛され、感涙に浸る者から失神者まで出る事態に、日本中の救急件数が跳ね上がったと報告されております】


【いやはや、凄まじいですね。是非聞いてみたいところですが?」


【申し訳ありません。現在規制が掛かっており、再放送は出来なくなってるんですよ】


【なるほど、それは仕方ないですね・・・しかし、一体真樹五十鈴さんにどんな変化があったのでしょうか?】


【関係者によりますと、ロケ現場だったハワイにおいて、まるで、生まれ変わったように覚醒したと聞いております。


不思議なのが唄声だけでなく、容姿も非常に美しくなっており、オーラのような風格を纏っていると言う者もいたそうです】


【なるほど。覚醒とは大袈裟と思いましたが、不思議な事があるものですね】


【また、詳しい事が分かり次第、お伝えしたいと思います】



「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」


「た、大変だ!」



 僕達はニュースを聞いて茫然としていると、カンナさん達が慌てて部屋へ入って来た。



「ヨ、ヨウ様! た、大変です!」×カンナ


「イスズさんの事ですか?」


「はい、御存知でしたか」


「はい、たった今、ニュースを見て驚いていたところなんですよ」


「カンナさん。すみませんが、留守番お願いします」


「はい」


「皆さん、疲れてるとは思いますけど」


「行くに決まってるでしょ、急がないと!」



 イスズさん達の事が心配なので、急いで見に行こうとしていると電話が鳴り、まさかと思ったらやはりイスズさんからだった。



「はい、三日月です」


「ヨウ君! 助けてーーーーー!!!」


「イスズさん、直ぐに行きます!」



 僕は大体の場所を聞いてから慌てて電話を切ると<千里眼>スキルを駆使して、イスズさんを探した。



「見つけた! 僕、先に行きます」


「分かったわ、急いで。ヨウ君」


「はい」



 急いで<虚空界>から飛行用の服に着替え、<隠蔽>と<気配遮断>を掛け東京へ飛び立った。


 高速で飛行しながら<千里眼>でイスズさんを確認すると、どうやら大勢のファンに追いかけられているようだ。


 うはー、ゾンビ映画みたいになってるや・・・急がないと。


 イスズさんとイズミさんは、変装がバレたのか走ってファンから走って逃げている。



       ◇     ◇     ◇


 <イスズ視点>


「わわわっ! 先回りされちゃったよーーー」×イスズ


「こっちよ、イスズ」×イズミ


「ここ、何のビルなの?」


「分からないけど、もう此処しか逃げ道が無かったのよ、走るわよ」


「ひゃあ~~~」



「居たぞ、イスズちゃんだ!」


「うおおおおおお! もう一度、歌ってくれええええええ!」


「お願いサインしてーーー!」


「感動しました。握手して下さい~~~!」


「イスズちゃん、お願い待ってえええええ!」


「結婚してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「あの唄声は、間違いなく妖精だ。捕まえろ!」



「ヒィ~ マ、マネージャー、ファンに何か変なのも混じってるよぉ~」×イスズ


「走るのよイスズ! 全く、天使ぐらい言えないのかしら」×イズミ


「私は人間だよぉ~」



 私達はファンから追いかけられ、どこかのビルに逃げ込み、上階に逃げていった。


 途中から屋外階段に出てみると、既に下には夥しい数のファンが集まっていた。



「あわわ! 信じられないぐらい人が居るよぉ~」


「イスズ走って! とりあえず屋上に行くわ」


「私、一応病み上がりなんだけど、ちくそーーー!」



 私達は必死になって屋外階段を駆け上がり、屋上を目指した。


 屋上へ行っても逃げ場は無いんだけど、そこしか逃げ場が無いんだからしょうがない。


 兎に角、ギリギリまで逃げ続けて助けを待たないと。


 あ~ん、ヨウ君助けて~ あんな人数で追い掛けられても、私何にも出来ないよぉ~



「えっ! だ、駄目、屋上の扉に鍵が掛かってるわ」


「ええっ! もう下まで、ファンが迫ってるよ?」


「クッ! イスズ、私の後ろに居なさい。何があっても貴女だけは守って見せるわ」


「だ、駄目だよ~ 私もマネージャーの事、守るんだからね」


「貴方達、とりあえず止まりなさい。こんなとこで、押し寄せたら危ないわ」


「居た! 居たぞ~ イスズちゃんだ!」


「くっ! 駄目、興奮して聞いてくれないわ」


「ああ、も、もう駄目~~~」



 私達は、とてもファンとは思えない、目が血走った人間達が迫って来るのを見て、もう駄目だと思った瞬間。後ろから抱き締められた。


 <追加防御>があるのに、どうして? と思ったら足元に地面が無く、私達は遥か上空に浮かんでいた。



「「えっ! えええええっ!」」


「フ~ 危なかったですね~ ゾンビ映画みたいでしたよ?」


「声が違うんだけど、ヨウ君なの?」


「あっ! 変装用の服だから変声機が付いてるんですよ、遅くなりましたけど助けに来ました♪」


「た、助かったよ~ ありがとう。ヨウ君」


「ヨウ様は空まで飛べるんですね、その服も見覚えがありますわ♪」×イズミ


「あはは、バレちゃったかな?」


「うふふ、大阪を飛び回っていたのは、ヨウ様のハーレムメンバーだったんですね」


「ピンポン、ピンポン!」


「ええっ! ピンポンじゃないわよ、ヨウ君どれだけ凄いんだよー」


「えへへ、惚れ直しましたか?」


「もう、毎日祈っちゃうわよ?」


「か、神様扱いは止めて下さい」


「「あはは♪」」



 イスズさん達と、そんな話をしていると、アヤメさん達も追い付いたようだ。



「どうやら、間に合ったみたいね、良かったわ」×アヤメ


「うわ~ 下は凄い事になってるわね~」×ナギサ


「フフ、無事で良かったです」×リラ


「心配したけど、流石ヨウ様ですね」×ノノ


「歌の力って凄いんだね」×ツドイ


「皆さん、助けてくれてありがとう。死んじゃうかと思いました」×イスズ


「皆さん。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」×イズミ


「いえいえ、おっと、報道ヘリが来たみたいですね、とりあえず僕の部屋に行きましょうか」


「「はい」」



 僕達は報道ヘリに見つからないように、<隠蔽>と<気配遮断>を掛け大阪に戻ることにした。


 イスズさん達は、大空の散歩を楽しんでいるようだ。


 帰りはゆっくりと飛んで来たので30分程掛かり、屋上から部屋に戻った。


 部屋に戻ると、カンナさん達が出迎えてくれて、イスズさん達の無事を喜んでくれた。



「お帰りなさいませヨウ様、皆さん無事で何よりです」×カンナ


「ありがとうカンナさん。また、ヨウ君に助けられちゃった」×スズカ


「ウフフ、流石ヨウ様ですね。夕食の用意が出来ておりますが、如何されますか?」


「あっ! そう言えば、お腹減ってますね頂きます!」



 イスズさんは食事を食べて少し落ち着いたのか、芸能事務所に電話を入れ無事を伝えていた。


 どうやら、ファンの熱が落ち着くまで、1週間程休みになったそうで喜んでいた。



「しかし、ヨウ君って本当にお金持ちなんだね~ ハワイの家も凄かったけど、この部屋は素敵過ぎるわ」×スズカ


「自分の部屋でパノラマ夜景なんて、贅沢過ぎるよー」


「私、芸能人だから稼いでる方なんだけどな~ こんな部屋になんて一生住めるような気がしないよ」


「本当ですね、テレビで見たことがあるような億ションですか?」×イズミ


「んふふ、ここは100億ションだけどね♪」×ナギサ


「はわわ、桁違い過ぎるよぉ~」×イスズ


「凄すぎますね・・・」×イズミ


「貰い物なんですけどね。それより、イスズさん達に休みが取れて良かったです。


また、こんな事になっても困らない様に、明日リッカさんの所へ連れて行きますから、訓練して強く成って下さいね」


「はい、私頑張っちゃいますね」×イスズ


「私もイスズを守れるよう、頑張ります」×イズミ


「んふふ、そうね、あそこなら安全だしね」×ナギサ


「ん~ でもスズカさん達は、有名人だから僕達との関係性があるのバレちゃうよ?」×ツドイ


「あっそうか・・・じゃ、リッカさんに無理を言って、こっちへ来て貰いましょうか?」


「なるほどね~ カンナさん達の様にはいかないか・・・」×アヤメ


「フフ、分かりました。勧誘の件もありますし、リッカさんの方へには私が頼んでおきますね」×リラ


「何時も、すみませんリラさん」


「いえ、ヨウ様のお役に立てるのが、私の喜びですので」


「うふふ、ヨウ君。愛されてる~」×イスズ


「えへへ、照れますね♪」


「それにしても、凄い事になったもんですね」


「あ~ 嬉しすぎて、ちょっと張り切り過ぎちゃったかも? でも、まさか私もこんな事になるなんて、思わなかったよぉ~」


「ごめんね、シオがあんな料理作っちゃったから」×ナギサ


「いえいえ、これについては私も大感謝してますから、以前より歌うのが大好きになっちゃいましたよ」


「それなら、良かったけど」


「これからも何か困った事があったら直ぐ言ってくださいね、あっそうだ! 非常用に<念話>スキルオーブ渡しときますね」


「えっ! これって?」



 イスズさんとイズミさんに<念話>スキルオーブを渡し、説明の方はノノさんがしてくれた。



「うわ~ 凄く便利なスキルですね。ありがとう、ヨウ君」


「何から何まで、ありがとうございます、ヨウ様」×イズミ


「いえいえ♪」



 <念話>スキルについては色々と検証したところ、ハワイに居るアリーシャさん達とも会話出来るので、どうやら距離は関係なさそうだ。


 何より便利なのが、ダンジョンの中と外でも会話が出来る事が分かった。


 これにより、僕がダンジョンに居る時に非常事態があっても、直ぐに駆けつける事が出来るようになったのが、非常に喜ばしい。


 まあ、今は更に便利な方法もあるんだけどね♪



「あの~ ノノさん?」×イスズ


「ん? どうしたの?」×ノノ


「今日は怖い思いしたんで、ちょっと甘えさせてくれたら嬉しいなぁ~ っと♪」


「フフ~ 甘えるだけで良いのかな?」


「えへへ、キスしてくれたら、もっと嬉しいかも?」


「もう、Hなアイドルさんなんだから♪」



 ノノさんは最近、女性同士でキスするのにも慣れてきたのか、イスズさんのアゴを少し持ち上げ、やさしくキスをしている。


 目の前でそんな光景を見てしまうと、ドキドキが止まらないんだけど。


 そんな時アヤメさんが、チョンチョンと指を指す方向を見てみると、イズミさんも僕と同じ様にモジモジしていた。


 僕はなるほどと思い、アヤメさんにOKのサインを出し、イズミさんの隣に座りに行ったのは言うまでもない。


 そんなこんなで、翌朝を迎え周りを見てみると、今日も刺激的な光景になっていた。


 我ながら獣だな~ っと思い少し反省したが、自重する気は全く無かったりする。


 大阪に来てから、本当に幸せな毎日を送っている事に、神様に感謝したくなる。


 とりあえず、近くに居たメイドさんに、日課であるキスをして起こしてあげると、不思議そうな顔をして僕を見ていた。



「えっ! あ、あの、おはようございます。ヨウ様」


「うん、おはよ♪」


「うわー、うわー、ハワイ限定の夢じゃなかったんですね」


「そう言えば、この部屋では初めてだったよね」


「もちろんですよ、ヨウ様の部屋には、掃除でしか入った事ありませんでしたから」


「あはは、これから、毎日来てくれるかな?」


「お呼び下されば、何時でも♪」


「ありがとう嬉しいな。メイドさん達の部屋にも、遊びに行っちゃって良いかな?」


「はい、何時でも、お越し下さいね」



 メイドさん達は、皆僕と話をするとき緊張してたけど、最近は会話も増え嬉しい限りだ。


 日課を終える頃には全員、目を覚ましたので何時もの様にソファーで朝食を取る事にした。


 イスズさん達は外に出れないので、部屋でゆっくりして貰う事にし、リッカさん達は今日大阪に来てくれる事になった。


 昨日の今日なのに無理を聞いてくれて、ありがたい限りだ。



「ねーねー、ヨウ君。今日は何処のダンジョンへ行くのかな?」×ナギサ


「えっと、まだ内緒です!」


「んふふ、そう言うって事は、新たなダンジョンみたいね?」×アヤメ


「リラ姉は、予想ついてるのかな?」×ノノ


「いいえ、私も何も聞いておりませんし、予想するのは難しいですね」×リラ


「・・・何か企んでるっぽい?」×ツドイ


「なにも、企んでないですよ?」


「ホントに?」


「・・・ちょっとだけ♪」


「もう、また私達を驚かそうと、してるんじゃないでしょうね?」×アヤメ


「そ、そんな訳、ないじゃないですか」


「んふふ、もう大抵の事じゃ驚かないぞ。ヨウ君」×ナギサ


「ありゃ、慣れちゃいました?」


「そりゃ、これだけ毎日驚かされちゃったらね~」


「もし、驚いたらどうします?」


「んふふ、そんときは、なんでもして上げるわ」


「言質は取りましたよ?」


「余裕だから、大丈夫だよ♪」


「「「「・・・・」」」」


「な、なによ、皆その目は?」


「ヨウ君とそんな賭けをするなんて、馬鹿なんだからナギサは」×アヤメ


「フフ、勝ち目は薄いですよ?」×リラ


「フフ~ 最初から勝ち目なんて、無かったりして」×ノノ


「・・・南無~」×ツドイ


「ちょ、ちょっと、拝まないでよツドイ、不安になるでしょ?」


「あはははは♪」×全員



 それから僕達は、ダンジョンに行く用意をして高速エレベーターに乗り込んだ。



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