第16話 目玉商品か~
翌朝、何時もの時間に起きて今日もダンジョンに来ている。
一番最初に<気配感知>が欲しかったので、地下5階のナイトウルフからスタートする事にした。
昨日は結構すぐ見つかったんだけど、今日は中々見つけられない。
それでも虱潰しに探していると、ようやくフロアの一番奥。しかも、ダンジョンの端の方でスキルオーブを持っている個体を発見した。
僕は今日は居ないのかもしれないと落ち込んでいたから、かなり嬉しかった。
魔物をサクッと倒し<気配感知>を手に入れたので早速重ね掛けしてみる。
おお~! 更に範囲が広がった。これなら探索速度もメチャクチャ早くなりそうだ。
そして、一番気になっていたスキルオーブを持っている魔物を見分ける事が出来るようになっているか地下6階に下りて試して見る。
ん~・・・居た!!! たぶんこれだ!!!
僕は急いで普通の魔物やSPオーブの反応と異なる魔物の下へ向かうと、居た!
やっぱりそうだ! そこにはスキルオーブを持っている個体が歩いていた。
2つの時はあまり分からなかったけど、3つ重ね掛けしたらスキルオーブを持っている個体もハッキリと識別出来るようになったみたいだ。
僕は思わずガッツポーズを取り喜びを噛みしめた。これでスキルも集め放題だ。
僕はもっと<気配感知>に慣れるため階層を下りながら訓練していく。
とんでもないスピードでスキルオーブとSPオーブを集めながら地下9階へ辿り着いた。
いや~、これは凄いな。でも、もっともっと練習しないとな頑張ろう。
ちなみに、昨日アヤメさんとナギサさんに素材の買取りをお願いしたところ魔糸玉が9千円、虹糸が7千円と言う高額で買ってくれた。
魔糸玉だけでも100個以上あったから100万円程になった。
素材だけでも十分お金持ちになったかもしれない。
忘れない内に転送クリスタルに手を触れておきゴブリンとの戦闘に入る事にした。
<気配感知>を発動してみると、驚く事にスキルオーブとは違う反応を見つける事が出来た。
それも幾つかの反応がある、なにか明滅を感じさせるような気配だ。
あっ! この反応は守護さん達だな頑張ってるな~♪ よし、気配を消してちょっと見てこかな。
僕は興味本位で守護さん達の戦闘を覗きに行くと、丁度新しい反応を示しているゴブリンと戦闘中だった。
この気配は、たぶん魔法スクロールを持っている個体だろうと予測を立てているんだが、丁度試したい事があったからそれも確認しておくことにした。
それは、僕が戦闘した魔物に<ウィル>スキルが発動するのか?
それとも、止めを刺した魔物に発動するのか?
ずっとソロでやってるから分からなかった事だ。
僕の姿を見せる訳にはいかないので、岩陰に隠れながら守護さん達と戦闘中である魔物に小石を当ててみた。
これで攻撃判定が出ると思うんだけど、どうだろう?
上手くいけば魔法スクロールが出る筈なんだけど・・・
しばらく待っていると無事守護さん達がゴブリンを倒したみたいなのでドロップ品を確認してみる。
あった! やっぱり魔法スクロールだ! 結果を見ればどうやら僕が攻撃した魔物に<ウィル>スキルが発動するようだ。
守護さん達を見ると、皆飛び上がって喜んでいる。
あんなに喜んでいる所を見ると、こっちまで嬉しくなっちゃうな♪
でも、生活魔法はドロップし易いって言ってたから<ウィル>スキルが発動したかどうか分からないか・・・
よし、もう少し守護さん達にサービスしようかな。
僕はもう少しだけ守護さん達に着いて行き、もう一度試す事にした。
しばらく着いて行くと、次は運よくSPオーブを持っている個体と戦闘をするようだ。
早速先ほどと同じように小石を当てて観察している。
おっ? あれは間違いなくSPオーブだ! やはり、僕が攻撃した個体に<ウィル>スキルが発動するのは間違い無さそうだな。
守護さん達はSPオーブを指で刺しながら、口をポカンと開けて驚いている。
しばらく固まっていたが、やがて正気に戻り先ほど以上に飛び跳ねて喜んでいる。
ドロップしたSPオーブを大事そうにカバンへ収納していた。
いや~、何か喜びを共有出来たみたいで嬉しい気分だな♪
さて、僕も頑張ろう守護さん達も頑張ってね!
僕は気分良く、その場を離れた。
進化した<気配感知>を頼りに探し始める。
最初見つけたのは明滅するような反応なので魔法スクロールを持っている個体だった。
初の魔法かと思うと気持ちも逸るが、落ち着いて死角から首にナイフを横なぎに振るうとアッサリとゴブリンの首が切断された。
どうも<腕力強化>を発動するとオーバーキルになってしまうようだ。
よしよし、ちゃんとドロップしているようだ。
魔法スクロールは巻物のような形をしており、オーブと同じように手に取ると何のスクロールか分かるようだ。
どうやらこれは<生活魔法>のようだ。
よしっ! これでようやく僕も魔法が使えるようになる。
今までは無駄なMPだったけど、冒険者をするならパーティに一人は欲しい魔法らしい。
早速、習得する事にした。スクロールを開くと魔法陣の様な物が描かれており、オーブと同じように光の粒子となって体に吸い込まれていく。
お~! 分かる♪
不思議な感覚で魔法も理解できるようになった。
<クリーン><ライト><プチファイア><プチウォーター>等が使えるようになったようだ。
僕は試しに色々な物を綺麗にする<クリーン>を、体に発動して見る事にした。
「<クリーン>!!! おお~~!」
これは、思った以上に便利な魔法かもしれない。
体全体がお風呂上りのようにサッパリして髪や歯までスッキリしている。
なるほど、守護さん達が欲しがってたのも頷けるな。
しかし、妹のヒカリにこれを見せてやったら驚くだろうな~
でも、言うのは当分先の話になりそうだ。
<生活魔法>ぐらいならヒカリに上げても良いし、これも集めておこうかな。
よし、次に行こうと思い<気配感知>を発動し検索してみると、見つけた! スキルオーブを持っている個体だ!
僕は慌てない様に距離を詰め<気配遮断>からの<敏捷強化><腕力強化>コンボでアッサリとゴブリンを倒す。
これだけ強くなったなら地下10階のボスも倒せるかもしれない。
いやいや、慢心は良くないな。シッカリと訓練してから挑もう。
さて、問題のスキルオーブを手に取ると<身体強化>のスキルオーブだった。
おお~~! 定番中の定番スキルが手に入った。
これでスタミナや防御力が跳ね上がるかもしれない。
迷う事無く習得することにし<身体強化>を発動してみる。
うん、さっきとは全然違う。スタミナや防御力は勿論、動きにキレと言うかシャープに動けるようになった。
これで<敏捷強化>や<腕力強化>を合わせれば、凄い動きが出来るようになるかもしれない。
このダンジョンへ来て一番最初にやった体捌きの訓練を、もう一度やり直すような気持ちで体に覚え込ませていく。
気が付くと地下10階へ下りる階段を見つけたので、行って見る事にした。
初級ダンジョンは、この階が最終らしく最奥にボスがいるらしい。
この階層の魔物はオークだ。
定番の魔物だがゴブリンと同じくかなり醜悪な見た目なので人型と言えど、倒すのに微塵も躊躇する気になれない。
問題は強さなのだが<身体強化>からの<敏捷強化><腕力強化>コンビでオークの首もアッサリと切断する事が出来た。
なので次は正面から戦闘して見る事にした。
魔導士系のオークが居たので戦闘してみると、<ファイアボール>の様な物が飛んで来た。
初めて魔法を見たけど、スピードはあるが直線的に飛んでくるので回避するのは造作も無く、倒すのは簡単だった。
それからも戦闘訓練をやりながら、オーブやスクロールを持っている個体を優先して倒して行くと、魔法スクロールで<水属性魔法>をドロップした。
きた~! ついに、僕も魔法攻撃が出来るようになる。
まあ、水属性だから攻撃力は低いかもしれないけど、色々と有用になるのは間違いない。
速攻で習得し練習で<ウォーターボール>を何発か撃ってみると、想像以上に破壊力があって驚く。
いや~、水属性舐めてました。ごめんなさい。
魔法攻撃は強くイメージを持つ事で、かなり飛距離やスピード、威力が変わるみたいだ。
これからはイメージトレーニングも取り入れて行く事にしよう。
それからも地下10階を探索したところ、スキルオーブは<身体強化>でゴブリンと同じだったのが残念だがストックしておく事にした。
新たにスクロールも出たんだけど<水属性魔法>で、こちらもダブリだけどストックに回す。
そろそろ帰る時間になり、SPオーブでのステータス上げも、切りの良いとこなので帰る事にした。
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【STATUS】
HP 400/400
MP 400/400
STR 34→40
VIT 34→40
DEX 34→40
INT 33→40
AGI 34→40
LUK 33→40
【skill】
<ウィル>
<虚空界>
<追加攻撃>
<敏捷強化>
<腕力強化>New!
<気配感知>
<気配遮断>New!
<追加防御>New!
<身体強化>New!
【Magic】
<生活魔法>New!
<水属性魔法>New!
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こうしてステータスを見ると、全体的に上げているので少しずつだが確実に強く成って行ってるのが実感出来るのが良いな。
今日はアヤメさんの上司である課長さんと会う約束があるので、ダンジョンを出てからアヤメさんに電話すると、ギルドにあるカフェで待ち合わせする事になった。
カフェに着くとアヤメさんは未だ来ていなかったので、アイスコーヒーを注文し飲みながら待つことにした。
「三日月様、お待たせ致しました」
「フフ、何か敬語で喋られると新鮮な気持ちになりますね。藤崎さん」
「うふふ、では参りましょうか」
「はい」
僕はアヤメさんの案内の下、久しぶりにVIPルームへ行く事になった。
VIPルームに着くと、既に課長さんが待っていてくれたので挨拶する事にした。
「呼び出してしまってすまないね。三日月君」
「いえいえ、ダンジョンの帰りに寄るだけなので気を使わないで下さい。それに、非常に良いマンションと優秀なコンシェルジュさんを付けて貰って、ありがとうございます」
「ハハハ♪ 彼女はうちも必死で口説き落とした逸材ですから、気に入って貰えて嬉しいです。それでは、早速本題に入りたいのですが」
「はい」
「実はオークションの日程が決まった事は藤崎君から聞いて貰ったと思うのですが、目玉商品と言うか品揃えがパッとしませんので苦慮している次第でして」
「ああ~、なるほど。僕が新たにスキルオーブを持っていたらって事ですか?」
「その通りでございます。告知の時間も必要ですので、現在持っていたらと言う事ですが如何ですか?」
「う~~~ん・・・」
「おお! 悩んでおられると言う事は、お持ちなのですね?」
「ええ、まあ無い事は無いのですけど・・・」
「み、三日月様。本当ですか?」
「はい、今日あたり藤崎さんに相談しようかと思っていたんですが」
「岩永課長。もう、私達は聞いてしまったので仕方ありませんが、三日月様がスキルオーブを持っている事は極秘で進められるでしょうか?」
「ああ、勿論。私が責任を持って三日月様に迷惑が掛からぬよう手配致します」
「そう言う事ならオークションに出しても良いですか藤崎さん?」
課長さんの首がグリンと動きアヤメさんを見ている。
そ、そんな目で私を見ないで~~~~~