第154話 スタンピートに続いてレイドボスさんです
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続く地下16階では、アップルバナナと言う名前のバナナを見つけた。
食べて見るとバナナなのに、リンゴの味もする変わったバナナだった。
バナナには色んな種類があるのは知っていたけど、こんなのもあるんだ。
僕達は、どんな魔物が出て来たのかも覚えていない程、採集に明け暮れ地下へ潜っていった。
地下17階では、パッションフルーツと言う果物で、赤くて丸い形をしておりアケビのような果肉で種が多く、食べてみると甘酸っぱくて美味しかった。
種がメチャクチャ多いんだけど、種ごと食べるらしい。
皮がシワシワになってる物が完熟した物らしく、酸っぱさが消えてメチャクチャ甘くなっていた。
どちらも美味しいので両方収穫していき、また次の階層へ目指して進む。
そして、地下18階では、アサイーと呼ばれるブルーベリーの様な見た目の果実を見つけた。
此処まで深い階層になると、アリーシャさんもよく知らないらしく、色々探していて偶然発見出来た。
背の高い木に一杯実っており、大量に採れたので試食してみると、殆どが種で果実が少なく特徴的な味もしなかった。
でも、スーパーフードと呼ばれる程、栄養が高いらしく、セツナさんに渡したら良い物を作ってくれるかもしれない。
また、次の階層に目指そうと足を進めていると、とても巨大な魔力を感知した。
僕は何があるのだろうと考えていると、アヤメさん達も感じ取ったのか、皆僕と同じ方向に目をやった。
「ど、どうしたんですか?」
「今まで、感じた事がない程の魔力を感じるわ」
「どうやら、動いてるみたいだから魔物の様ですね」
「お、おい、それってまさか?」
「私には感じ取れないけど、地下18階なんだもの可能性は高いわ」
「フフ、どうやらアリーシャさんが言っていた、徘徊レイドモンスターでしょうか?」
「そう、ヨウ君達から見て、高い魔力と言うなら間違いないと思うわ。徘徊レイドモンスター【不死王】エルダーリッチよ!
あれは、幾らヨウ君達が強くても駄目よ? 今まで、あれに挑んだ者は全員死んでるわ。
分かっているのは物理攻撃はもちろん、魔法にも高い耐性があって、どうにも出来ないのよ」
「へえ~ でも、せっかくだから挑戦してみます。駄目そうなら直ぐ逃げますから心配しなくても良いですよ」
「・・・やっぱりやるんですね、本当に危ないと思ったら直ぐに逃げて下さいね」
「本当にやるのかよ? あれは桁違いに強いんだぞ? Aランク以上の冒険者数百人で挑んでも勝てるかどうか・・・」
「大丈夫よ。これでもヨウ君は凄く慎重派なんだから、危ないと思ったら直ぐ撤退するわ」
「オーケー、分かった。正直、ヨウ達とアレの戦闘は見てみたいしな」
「しかし、本当に危険な魔物ですから、危険を感じたら早めに撤退して下さいね」
「分かりました。じゃ、行きましょうか」
僕は心躍りながら、高い魔力を感じる魔物へ向けて移動した。
すると、直ぐに視界に捉えることが出来た。
その魔物は、身長が3メートル程あり、黒いフードコートに身を包み、ゆっくりと移動している。
露出している手足に肉は無く、おそらく全身が骸骨なのが予想される。
右手には杖を持ち、禍々しい魔力を放っていた。
しかし、以前、特級ダンジョンで見たスライム程の脅威は感じなかった。
鑑定をしてみたところSTRやVITは低いが、INTは1200程ありMPも高かった。
魔力耐性は兎も角、何故物理攻撃にも強いのか不思議に思っていると、その秘密は装備にあった。
リッチが装備しているフードコートを鑑定してみたところ、高い物理耐性が付与されていた。
それだけではなく、右手の杖には魔力増大や魔法威力上昇効果があり、左手の指輪には物理耐性と魔法耐性の効果があるようだ。
更に、何らかの魔法効果だろうか防御膜のような物に包まれている。
なるほど、此処まで鉄壁の防御をされたら、攻めるのは困難だっただろう。
ここまで確認し、僕の作戦は決まった。
早速アヤメさん達に討伐に向けての作戦を伝えると、アヤメさん達も鑑定でリッチを調べていたので、すんなりと作戦の意図を理解してくれた。
そして、ステータスの優位性を過信する訳ではないが、勝率が高い事も理解してくれている。
「んふふ、じゃ、開幕は私からね」
「本当にやるのか?」
「まっ、見ててね。今回は、結構本気の攻撃になるからさ♪ さっ行くよー、皆準備は良いかな?」
「「「「「何時でも♪」」」」」
「にひひ、じゃ行きますかー、<追加攻撃><腕力強化><身体強化><精神強化><硬質化><風斬><精密動作><エンチャット>ファイア!」
「んんっ! オープニングアロー!!!!!」
ナギサさんは、次々にスキルを同時発動していき初撃の矢を放った。
かなり力を込めたのか、唸りを上げながら恐ろしい速度で矢が飛んで行く。
結構な距離があったにも関わらず、瞬く間にエルダーリッチの側頭部にヒットし轟音が轟いた。
矢はエルダーリッチの側頭部にヒットし、刺さりはしなかったが着弾の衝撃で首が傾いている。
「ス、スゲエな、たった1本の矢でリッチの首を傾けやがった・・・」
「ん~ 私としては、貫けなかった魔物は初めてなんだよ。流石に強いな~」
奇襲を受け首を傾けていたエルダーリッチは、グルリと首を回し、僕達の方に顔を向けた。
やはり、予想通り全身骸骨のようだ、落ち込んだ目の穴から赤い光を放ち、威圧を放ってきた。
「くぅぅ・・・」
「ぐあっ・・・」
「二人共大丈夫?」
「な、何で平気そうなんだよ?」
「うふふ、こんな威圧なんてヨウ君の威圧に比べたら、そよ風みたいなもんよ♪」
「嘘だろ?」
「じゃ、作戦通り本気で行くわよ~」
「も~り~も~り~アローーーーーー!!!!!!!!」
キリキリキリィィ! キュン! キュキュキュキュキュキュキュキュン!!!
ドンッ! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!!!
ナギサさんが放った連続矢は、放物線を描くことなく、マシンガンのようにエルダーリッチの全身へ着弾していく。
その凄まじい弾幕は、巨大なエルダーリッチを後退させるほど、凄まじいものだった。
パッリーン!!!!!
「よし! 私の仕事は終わったよ~。アヤメ!」
作戦通りエルダーリッチが纏っていた防御膜は、ナギサさんの連続矢で粉々に砕け散った。
「んふふ、次は任せて♪」
「<精神強化><魔力感知><魔力操作><精密動作><火属性強化><火属性魔法><エンチャット>ファイア!!!!!」
ナギサさんに続き、アヤメさんもスキルを同時発動し、彼女が持っている火属性に特化した杖に魔力が集束していく。
どれだけの魔力を込めているのか、甲高い事が辺りに響き渡る。
「くぅぅ、耳鳴りがしやがる。どんだけの魔力を込めてるんだよ・・・」
「んふふ、久しぶりの本気の魔法を食らいなさい!」
「いっけぇ~~~~~!」
「<インフェルノ>!!!!!」
アヤメさんが放った<火属性魔法>は、エルダーリッチの頭上に顕現した。
それは最早、恒星と言っても過言では無い炎の塊が、エルダーリッチに直撃した。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
「あ、あれだけの魔法を食らって生きてるなんて・・・」
エルダーリッチは巨大な炎に包まれ、断末魔に似た叫び声を上げていた。
結構な距離があるにも関わらず、此処まで熱風が押し寄せほど威力の大きさが伺える。
炎が終息する頃、エルダーリッチが纏っていたフードコートが焼け落ち、全身の骸骨が露出していた。
「うわ~ これでも倒せないんだ。でも、私の仕事も終わったわ。リラ・ノノ!」×アヤメ
「「行きます!」」
アヤメさんからの言葉のバトンを受取り、リラさんとノノさんが地を蹴った。
少し間隔を開けてツドイさんが、その後には僕が続き地を翔る。
2人は疾走しながら、数々のスキルを同時発動しているようだ。
連続で攻撃を受けていたエルダーリッチも遂に反撃に出たのか、右手に持っている杖を地面に突き刺すと同時に、地面から無数のスケルトンが溢れ出て来た。
「リラさん、ノノさん、作戦追加します。蹴散らして下さい!」
「「了解!」」
「行きますよ、ノノ」
「OKよ、リラ姉」
「「双鏡連斬!!!!!」」
横並びで地を掛けていた2人の剣戟は、まるで鏡映しのように無数のスケルトンを斬り飛ばしていく。
その凄まじい剣戟は、一振り事に複数のスケルトンが宙を舞っていた。
そのままエルダーリッチに肉薄した2人は左右に広がり、リラさんは右袈裟斬りで指輪を付けている左手首を、ノノさんは左袈裟斬りで杖を持っている右手首を見事に斬り落とした。
「つ、つええ・・・なんで、あんな真似が出来るんだよ?」
「「ツドイ!」」
「僕の出番だね♪」
エルダーリッチに反撃の暇を与える事無く、ツドイさんの追撃が走る。
「んんっ! 一刀・・・両~~~ 断!!!!!」
エルダーリッチに肉薄したツドイさんの攻撃は、まるで野球のフルスイングのように溜めた力を解き放ち唸りを上げながら、エルダーリッチの太い腰骨に直撃し容易く両断した。
僕でも、あのフルスイングの前には立ちたく無いと思う程、威力ある一撃だった。
「なっ! あ、あの【不死王】を切断した?」
「三日月君、任せたよ!」
「任されましたー♪」
腰骨を両断されたエルダーリッチの上半身は、地面へと向けて崩れ落ちようとしているが、僕は落下地点で待ち構えた。
狙いは頭蓋骨のド真ん中! 複数のスキルを同時発動し右拳に力を注ぐ。
僕の短剣にはナックルガードも付いているので、<エンチャット>ファイアもシッカリ纏わせる。
弓矢の様に引き絞った身体から振り被った右拳を、落下してくるエルダーリッチの頭部へ解き放つ!
今回は、僕も一切の手加減は無しだ、全力の力を右拳へと乗せた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!」
「渾身右拳だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
ゾクゾクッ!!! ×全員
カッ! ドッガアアアアアアアアアア!!!!!!
エルダーリッチの頭部は綺麗に吹き飛び、その破片は空へ突き抜けるかのようにバラバラになり霧散した。
久しぶりに全力を出した僕は、とてもスッキリした気分だ!
エルダーリッチの残った骨が、光の粒子となり消えていくのを見ながら清々しい気持ちになった。
僕達は全員でハイタッチし、勝利の喜びを分かち合った。
「「・・・・・・・・」」
「あ、圧倒的・・・なんて凄い衝撃波。どこまで規格外なのかな貴方達は?」
「くはっ! す、凄いもん見ちまったな、最後の一撃には体が震えたぜ」
「んふふ、私もゾクゾク来ちゃったわ♪ 素敵だったわよ。ヨウ君」
「私も鳥肌が立ったわ♪ 凄く恰好良かった」
「フフ、ヨウ様、最高の一撃でした♪」
「フフ~ 私も見惚れちゃいましたよ♪」
「僕も惚れ直しちゃった♪ 歓喜って背中から来るんだね素敵だったよ」
「うわ~ 皆ベタ褒めですね。僕、照れちゃいますよ?」
「僕、今日は抱かれたいんだけど、良いかな?」
「えっ? はわわ、も、もちろん良いです!」
「ちょ、な、なに言ってるのよツドイ? わ、私も・・・」
「にひひ、今日は全員抱いてね。ヨウ君?」
「あはは、照れますね。もちろんです!」
「おいおい、私達も居るんだぞ?」
「うふふ、妬けちゃいますね」
「にひひ、貴方達も来る?」
「えっ? そ、そんな・・・」
「なっ! 何言ってんだよ」
「冗談よ♪ でも、その気になったら相談に乗るからね~」
「「・・・・」」
こうして、エルダーリッチを倒した僕達は、とりあえずドロップ品を回収しておいた。
回収する際、とんでもない魔法スクロールが確認出来たけど、全ては帰ってからにすることにした。
帰ってからにすると決めたんだけど、あまりの嬉しさに、ついつい顔が綻んでしまう。
まだ、ダンジョン探索中なので自分を律する事にし、先に進む事に集中した。
次の地下19階ではピタヤと呼ばれる果実を見つけた。
ドラゴンフルーツと言った方が知名度は高いかもしれない。
背の低い木に生っており、赤い皮と特徴のある見た目が非常に目立つ。
果肉はスイカの様な見た目で、色は白と赤が多いらしい、味もスイカに似ており種が小さいので一緒に食べるようだ。
本来あまり甘くないらしいのだけど、ダンジョン産のためか非常に甘く、スイカより美味しいかもしれない。
採集がしやすいのも手伝い、楽しみながら収穫していった。
そして、いよいよ地下20階に到達し、2度目のボス戦が楽しみだ♪
もちろん、この階層でも果物を探していくと、アリーシャさんがパンノキと呼ばれる果物を発見してくれた。
背の高い木に緑色の果実が無数に実っている。
早速、幾つか採集して食べようとしたら、果物なのに生では食べられないらしい。
加熱して食べる果物って、変わってて非常に面白い。
仕方が無いので、帰ってから食べることにした。
どんな味がするのか聞いた所、加熱するとパンのような食感になると言われているが、実際はサツマイモに近いらしい。
それって果物なのかと疑いたくなるが、木に生るサツマイモって言うのも面白い♪
1本の木に一杯実っているので沢山収穫し、いよいよボス部屋の前に辿り着いた。
何の躊躇も無くボス部屋に入ると、そこはボス部屋らしくない、砂浜がステージなっていた。
不思議に思っていると、浅瀬に大きなイカが佇んでいる。どうやらあれがボスのようだ。
名前がクラーケンらしい。誰もが知っている、有名な海の魔物が現れたようだ。
「なるほどね、だからステージが砂浜だったんだ」
「アリーシャさんは、クラーケン倒しましたか?」
「まさか、私達はこんなに深い階層には来れないですよ」
「たった1日で此処まで来る、ヨウ達がおかしいんだよ?」
「そうなのかな? でも、今日はクラーケン倒したら帰りましょうか」
「んふふ、私の順番だから行ってくるわね」
「アヤメ。今度は手加減しないと駄目よ?」
「分かってるわよー、水系の魔物には雷系が一番よね!」
「行きますね~」
「<インドラ>!!!!!」
カッ! ビリリリリリリリリリリィィィ!!!!!
浅瀬に佇んでいたクラーケンは何も出来ないまま、<インドラ>の直撃を受け光の粒子となって消えて行った。
僕は素材だけ残し、他のドロップ品は<虚空界>へ回収しておいた。
「・・・またソロで一撃かよ? 絶対お前達とは喧嘩しねえよ」
「本当に恐ろしい人達ですね、世界の広さを感じましたよ」
「あはは、ガイドありがとうございました」
「いえ、逆に足手纏いになってしまって、申し訳ありませんでした。
今日、見聞きした事は私のパーティ以外、誰にも喋らない事をお約束しておきますね」
「ありがとう、気を使わせちゃいますね」
「私達も貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」
「ねーねー、今日はハワイ初日だからバタバタしちゃうと思うけど、明日以降で都合の良い日に、食事でも一緒にしようよ」
「はい、是非、お願い致します」
僕達はアリーシャさん達と連絡先を交換し、ダンジョンから引き上げることにした。
やはり、場所が変わるとダンジョン探索は面白い、また明日が楽しみになってきた♪




