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第145話 食材ハンターってのも面白そうですね


 リーダーを呼びに行った女性の気配が2階へ上がっていく、どうやら逃げずに呼びに行ってくれたようだ。


 しばらく待つと、僕達の居る練習場へ1人の男性を連れて帰って来たようだ。



「レンカさん、彼奴がそうですか?」


「ええ、間違いないわ」


「じゃ、これで全員ですね」



 練習場へ来た男性は、血だらけで倒れているクランメンバー達を見て、かなり驚いているようだ。



「なるほど、どうやら本当に強者が来たみたいだな、嬉しい誤算ってとこか」


「何が嬉しいんですか?」


「これって、お前達がやったんだろ? かなり強そうじゃないか。強者と戦えるんだから嬉しいに決まってるだろ?」


「ん~ 戦闘狂は良いですけど、迷惑って言葉を御存知ですか?」


「確かに喧嘩を売られる方は迷惑だろうな、本当に悪かった謝るよ」


「笑顔で謝るもんじゃないですよ?」


「あはは、それは悪かったな。さあ、やろうか誰が一番強いんだ?」


「貴方ね~?」


「ああ、良いですよ。アヤメさん、僕がやりますから」


「なんだ? お前が一番強いのかよ?」


「そうガッカリしなくても、ちゃんと期待には応えて上げますよ。ギャラリーが居ないのも寂しいから、ちょっと待って下さいね」



 僕はエリアヒールを唱え、倒れているクランメンバー達を一気に回復させた。



「・・・こいつは凄いな、一体どんな魔力してやがる?」


「ど、どうなってやがるんだ?」


「<回復魔法>? そ、そんな、これだけの人数を一気に回復させたって言うの?」


「さて、ギャラリーも増えましたし、やりましょうか?」


「クククッ! ああ、とても楽しみだ♪」


「リンさん、レンカさん、意識をシッカリと持っといて下さいね」


「「えっ? は、はい」」


「「「「「ええっ!」」」」」


「ちょ、ちょっとヨウ君、まさか・・・キャ! くぅぅぅ」



 僕は久しぶりに<威圧>スキルを解放した。



 ビリリリリリリリリリリリリリィィィィィ!!!!!!!



「ぐぅあああああああ」


「ヒィ、ヒィィィィィ」


「キャアアアアアアアア」


「さて、リーダーさん、そろそろ始めましょうか?」


「うあっ、うぁぁ」



 強者と戦えるのが楽しみだったのか、ずっとニヤニヤしていたリーダーが大量の汗を掻き、ボタボタと地面に落ちている。


 膝が震え、奥歯が鳴る程に怯えているようだ。


 つい、さっきまで強者と戦えるのを喜んでいたのに、もう戦意が喪失したのか・・・



「どうしたんですか? 貴方が楽しみにしていた強者ですよ?」


「ほらっ、行きますよー、躱さないと死んじゃいますよー」


「うぅ、うぁぁ」



 もう、全然楽しさなんて感じられないリーダーさんは、僕が近づくと尻もちをついて這って逃げていく。



「ドゴオオオオオオオオッン!!!!!!!!」


「ヒッ! ヒィィ!」



 ワザと外してあげた僕の右拳は、轟音を鳴り響かせ練習場の床に大穴を開けてしまった。


 男は這いつくばりながら、必死になって逃げようとしている。



「フー、もうハッキリ言っちゃいますけど、貴方程度なら0.1秒もあれば10回は殺せます。


僕自身もマダマダですけど、強者と戦いたいって言いましたっけ?


死にたいんなら自殺した方が早いんじゃないですか?


まあ、惨めに逃げ惑いながら反省して下さい」


「うっ、うぁあああ、す、すみません。ゆ、許して」


「黙れ!」



 何度も何度も<威圧>を込めて攻撃した。


 ワザと外してあげたが、床や壁の砕ける衝撃だけで、吹っ飛び続けた。


 既に手足は折れ血だらけになっていたが、頭を掴んで何度も地面に叩きつけると気絶してしまった。


 これだけ追い込んでおいたら、もう2度と馬鹿な真似はしないだろうと思い<威圧>を解除した。



「フゥ~ 終わったみたいねリンさん、レンカさん大丈夫?」


「「・・・・・・」」


「あ~ 震えちゃって怖かったのね、もう大丈夫だから安心してね」


「うわ~ 練習場ボロボロになっちゃったわね~」


「この女の子どうする?」


「あ、あああ・・・」


「ヨウ君、もう涙と鼻水で、グシャグシャになってるから許して上げよっか?」


「ん~ じゃ、僕から忠告だけしておきますね」



 僕は泣き崩れて震えている女の子の前にしゃがみ込み顔を覗くと、僕が余程怖いのか、また泣き出してしまった。



「もう何もしないから泣かなくて良いよ。でも、言っとくけどクズ共が何をしているのか知ってて一緒に居るなら、それはもう同罪だからね?」


「わ、分かりましたぁ」


「そうだ! 貴女、なかなか良いセンスしてるから、メイデンガーデンに入れて貰って反省しなさいよ。レンカさん、良いかな?」


「はい」


「じゃ、そろそろ帰ろっか。ヨウ君」


「ちょっと待って下さい。直ぐ終わりますから」



 僕は最初アヤメさん達に、暴言を吐いた奴だけ蹴り飛ばしてから帰る事にした。



「うわ~ 痛そう~ あんなとこ蹴られちゃって再起不能になるかも?」


「んふふ、まあ自業自得よ♪」



 僕達は仕返しも終わったので、リンさん達を送ってから家に帰る事にした。


 そう言えば、荻田夫妻を待たせてるんだった。


 部屋に戻ると荻田夫妻の接待は、メイドさん達がやってくれており、寛いで貰っていたようだ。



「すみません、お待たせしました」


「いやいや、とても快適に過ごさせていただきました」


「本当に凄い部屋ですね、景色を見ているだけでも退屈しませんでしたわ」


「それなら良かったです。夕食も食べて行って下さいね」


「すみません。お礼をしに来たのに、逆にお世話になってしまいますね」


「いえいえ、ゆっくりして下さい」



 荻田夫妻と夕食を食べ、お土産に貰ったサクランボは粒が大きくて、とても美味しかった。


 フルーツ好きのナギサさんが、メチャクチャ喜んでいた。


 お礼と言ってはなんだけど、お返しにビューティポーションを二人に飲んで貰う事にした。



「ところで最近、僕達のメンバーがビューティポーションってのを開発したんですけど、良かったら飲んで下さい」


「ええっ? それって、今話題になってるポーションですよね?」


「驚きました。三日月さん達が開発したポーションだったのですね」


「御存知でしたか、ウチの専属錬金術師さんが開発したんですよ」


「此処に居る女性の皆さんは、女の私でも溜息が出る程美しいと思っていたんです。私も欲しかったので、夫に頼んでいたところなんですよ?」


「三日月さんには、また驚かされましたね。高級クラブに行かないと手に入らないと言われて困っていたんですよ」


「んふふ、市販で売ってるのは一週間程で効果が切れる様に調整した奴なんですけど、これは非売品の本物なんですよ?」


「「ええっ!」」


「そんな、貴重な物を頂く訳には・・・」


「遠慮しなくて良いですよ、知り合いの特権だと思ってくれれば」


「はい、どうぞ♪」


「私にも良いのですか?」


「うふふ、男性が飲んでも素敵になりますから、遠慮なくどうぞ」


「ありがとうございます。私の様な者には勿体ない様な気がしますが、ありがたく頂こうか?」


「はい、貴方♪」



 その後、荻田夫妻には一緒にお風呂へ入って貰い、その変貌ぶりに驚いているのが面白かった。


 今は部屋着に着替えて貰ってソファーへ座り、ゆったりとお酒を楽しんで貰っている。



「ところで荻田さん、やはり食材ハンターとして冒険者を続けるんですか?」


「はい、妻と散々話し合って決めた事ですから」


「そうですか・・・僕へのお礼なら気にしなくても良いですよ?」


「心配してくれるのはありがたいのですが、頂いたポーションが大変貴重な物だと言うのは分かっております。


一生働いたとしても、私達では、とてもお返し出来るような物ではない事も・・・


それなら、夫婦二人で三日月さんに好まれそうな食材を探しながら、冒険者を楽しもうと思っております」


「ん~~ でも、僕としては荻田夫妻には、死んで欲しくないんですよね」


「あはは、大丈夫ですよ。私もせっかく助けて貰った妻を危険な目には合わしたくありませんからね、決して無理はしませんよ」


「フフ、それでしたらヨウ様、荻田夫妻には私達の専属食材ハンターになって貰うと言うのはどうでしょうか?」


「専属ですか? あ~ なるほど。それなら僕も少し安心出来ますね♪」


「あの専属とは、一体どういう事なのでしょう?」


「はい、私達は専属の職人さんを数人雇っているのですが、専属の方達には絶対の守秘義務を守って貰っております。


荻田夫妻にも私達の専属に成っていただけるなら、幾つかの制約がありますが、それに見合った特典をお付けいたしますので、御検討下さいますか?」


「制約と言うのは、どういった事でしょうか?」


「申し訳ありません。守秘義務が掛かるって事以外は、専属に成っていただけるまで、お伝えする事が出来ないんですよ。


ですが、デメリットがあるとすれば、私達と関わりを持つと、危険な事に巻き込まれる可能性があると言う事だけですね」


「なるほど。なら私達にとっては、メリットしかないと言う事ですね」


「僕達と関わらないと言う手もありますよ?」


「それだと恩返しが出来ませんので、私達にはありえない選択ですね」


「あはは、ブレませんね荻田さんは♪ では、強制になりますが僕達の専属になっていただけますか?」



 荻田夫妻は無言のまま二人で頷き合い、快く専属に成ってくれることに了承してくれた。



「ありがとうございます。此処からは守秘義務が掛かりますけど良いですか?」


「「はい、もちろんです」」


「先に言っておきますけど、今から僕が言う事は絶対必要な事ですから遠慮とかは無しでお願いしますね?」


「「は、はい?」」


「じゃ、今から幾つかオーブを渡しますから、習得していって下さい」


「「ええっ?」」



 僕は戦闘に必要な強化系と感知系スキルを次々に取り出し、二人の前に置いていく。


 <鑑定><MP増大><HP増大><言語理解><激運><虚空界><追加攻撃><追加防御>


 <敏捷強化><腕力強化><身体強化><気配感知><魔力感知><温度感知><罠感知>


 <発見><気配遮断><魔力操作><状態異常耐性><隠蔽><超回復><結界><マッピング>


 っと、最低限にしたつもりだけど、結構な数のスキルになってしまった。



「ちょ、ちょっと待って下さい! 何のスキルオーブなのか分かりませんが、これだけあれば高額どころではないでしょう?」



 奥さんもスキルオーブの価値は知っているのか、目を大きく見開いて驚いていたが、直ぐに冷静になってくれた。


 やはり、女性の方が度胸があるってのは本当かもね。



「ウフフ、アナタ。遠慮は無しと言う約束ですよ?」


「・・・参りましたね。まさか、こんなに重い布石だとは思いませんでしたよ」


「あはは、理解してくれたなら、遠慮なく習得して下さい」


「「ありがとうございます」」



 荻田夫妻はスキルオーブを1つ習得する度に、とても驚いた表情をしていたが一通りのスキルオーブを習得して貰った。


 驚き疲れたのか、少し顔色も悪くなってきたので、少し聞いて見る事にした。



「えと、大丈夫ですか?」


「・・・はい、<鑑定>スキルや<虚空庫>スキルに目眩がしそうなのですが?」


「うふふ、まだ魔法スクロールがあったりして♪」


「一体私達に、どれほどのお金を掛けるのですか?」


「ん~ 3~4兆円ぐらいかな? ちょっと、今の相場が分からないです」


「フフ、ヨウ様、未確認スキルがありますので値段は付けれませんね」


「「・・・・・・・・」」



 荻田夫妻は、また少し顔色が悪くなっていたが、魔法スクロールも一気に習得して貰った。



「とりあえずは、こんなもんかな。スキルの使い方は習得したときに大体把握出来たと思うのですが、結構練習しないと使いこなせないので頑張って下さいね」


「み、三日月さん、貴方は一体?」


「あ~ ちょっと変わってるのは自覚してますけど、新人冒険者ですよ?」



 僕の言葉に他のメンバーは、やっと自覚したのかと苦笑していた。



「あはは、そうでしたね。詮索するような事を言って申し訳ありませんでした」


「これでダンジョンでも結構安全になる筈ですから、食材ハンターを楽しんで下さいね。


そうだ! ついでに武器と防具も新調しちゃいましょうか、僕達の専属職人さんを紹介しますよ。


せっかく、大阪へ来たんだから武器や防具が出来上がるまで、観光でもして楽しんでって下さい」


「何から何まで、ありがとうございます」


「三日月さん、この御恩は決して忘れません。主人と冒険者を楽しみながら生涯恩返しさせていただきます」


「いえいえ、僕は美味しい物が大好きですから、専属の食材ハンターになってくれて感謝です。


後は最後まで言うかどうか迷ったんですが、長かった闘病生活を取り戻すためにも、もう一つフルーツを食べて見ませんか?」


「ヨウ君。アレの事なら、ちゃんと説明しとかなきゃ駄目よ?」


「はい、もちろんですよ」


「三日月さんが、そこまで悩まれるとは、何やら恐ろしいですね」


「あはは、えっとピークベリーって言うんですけど、流石に効果が凄すぎなんですよね」


「「ゴクッ・・・」」


「このイチゴの様なフルーツなんですけど、食べると身体能力が最もピークの時を維持します。


つまり、死ぬまで25歳ぐらいの見た目と、身体能力になっちゃうフルーツです」


「うはっ!」


「えええっ?」


「んふふ、エルフの果実ってところね♪ もちろん、私達も食べてるから安心して下さいね」


「わ、私達にとっては夢のような果実ですね、それだけに売れば一体どれだけの値段が付くのか恐ろしいですが」


「私の為に永年苦労を掛けた主人だけでも、是非頂きたいです」


「何を言うんだ。長年苦労したのはお前だろう? お言葉に甘えさせて貰いなさい」


「あはは、仲が良いですね? ちゃんと2つ差し上げますよ、覚悟して食べて下さいね」


「ウフフ、アナタ覚悟は決めた?」


「もちろん、一緒に若返れるなら選択の余地は無いだろう?」


「ウフフ、そうね。入院中に老けちゃったからアナタにも申し訳なかったの・・・夢の様な話しだけど、凄く嬉しいわ♪」


「もう、惚気てないで早く食べて?」


「あはは、申し訳ない」


「ウフフ、頂きます♪」



 二人共30代半ばぐらいの年齢だと思うけど、ピークベリーを食べた瞬間20代前半ぐらいまで若返り、見違えるようになっていった。



「おお、なんと素晴らしい」


「す、凄いわ、本当に若返るなんて・・・」


「そうなんですよね、これ効果が凄すぎて市場にも出せないんですよ」


「それはそうでしょう、これが市場に出たらエリクサー並みの騒ぎになりますよ」


「ですよね~ じゃ、今日はそろそろ休んで下さい。疲れたでしょ?」


「そうですね、驚き疲れましたかな?」


「んふふ、ヨウ君と居ると驚きの連続ですからね~」


「ウフフ、アヤメさん達の美しさも、中々衝撃的でしたわ♪」


「私達を褒めても何にも出ませんよ?」


「もう、過分な程頂きましたから」


「お部屋に案内させていただきますね」


「「ありがとうございます」」



 メイドさんに荻田夫妻を部屋に案内して貰い、僕達も眠りに付くことにした。


 翌朝からミナミさんとフミさんに連絡を入れて、荻田夫妻の武器防具を作って貰う様にお願いし、メイドさんに案内を頼んでおいた。


 習得したばかりのスキルも慣れる為に、今日は初級ダンジョンへ行く事を進めておいた。


 荻田夫妻にはシッカリと慣れて貰ってから、北海道へ帰って貰う事にした。


 その方が僕も安心出来るからね。


 そして、もう一点気になっていた事を朝食時に言う事にした。



「カンナさん、カンナさん」


「はい?」


「メイドさん達にも、少しだけ自衛手段を見に付けて貰おうかと思うんですけど、出来たら冒険者に成りませんか?」


「ええっ? 私達が冒険者にですか?」


「はい、戦うメイドさんって恰好良いじゃないですか? 出来たら武器は大剣で揃えて貰って、うわ~ 考えただけでゾクゾクしますね♪」


「・・・ええっと」


「あ~ ごめんねカンナさん、諦めて?」


「ええっ?」


「にひひ、こうなったヨウ君は、もう何言っても無理よ?」


「フフ、ミナミさんに大剣を追加注文しておきます」


「フフ~ 当然、冒険者用メイド服になるよね?」


「大丈夫だよ。危険な事はないから、やってみたら楽しいからさ」


「ほ、本気のようですね・・・畏まりました。戦うメイド? を目指して頑張ります」


「やった~ ありがとう。カンナさん♪」


「フフ、カンナさん、迅速に段取りをお願いします」


「ありがとうございます。それでは用意して参ります」


「皆さん、一度メイド室へ戻って緊急会議を致しますので集まって下さい」


「は、はい」×メイド達


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