第124話 職人さんパーティ結成ですね
「ぐすっ! み、三日月さん、こんな私に何て額のお金を渡すんですか?」
「私、一か月の給料20万円以下だったんですよ?」
「やっぱり、天才には歩合制が良いと思ったんですよね、才能に比例してお金が増えるのって公平で良いじゃないですか。
それに、お金を気にせずに作品作りに没頭して貰った方が、良い物出来そうじゃないですか?」
「それにしても多すぎるような・・・さっきまで、大入袋の100万円で飛び上がる程、喜んでいたんですよ?」
「久しぶりに、家族で美味しい物を食べようとか、考えてました」
「私も同じ事を考えてたわ、ヒメちゃん」
「私もよ」
「んふふ、これから毎日、美味しい物を食べれるじゃない♪」
「ん、これから、住む所を考えないとだよね?」
「そっか、家を何とかしないとだね~」
「えっ? 家は賃貸住宅に3人で住んでますけど?」
「あ~ 分かって無いな~ それは今まででしょ?」
「フフ、姫奈さん達は今日から億万長者ですから、セキュリティーシステムの高い所へ住まないと危険ですよ?」
「「「・・・・・」」」
「あ、あの、恥ずかしいお話ですが、私達はずっと貧乏生活をしているので、お金持ちの生活なんて分からなくて」
「私達も貧乏だったから分かるわ。でも、大金を持っていると泥棒・強盗・誘拐・詐欺等、色々と気を付けなきゃね」
「良かったら、僕達が住んでるマンションで、空部屋があるか聞いてみましょうか?」
「借金返済祝いに、僕からプレゼントしちゃいます!」
「「「ええっ?」」」
「そんな、あんなに高そうなマンションの部屋まで、頂く訳にはいきませんよ」
「今日のヒメちゃんの稼ぎだけでも、一番高い僕達が住んでる部屋買えちゃうよ?」
「そうでした・・・ど、どうしよう、お姉ちゃん」
「わ、私には分からないわよ~ ヒメちゃんの稼いだお金なんだから、ヒメちゃんが決めないと?」
「お母さん?」
「雪奈の言う通りよ、ヒメちゃんに任せるわ」
「そんなに急いで決めなくても良いですよ、とりあえず部屋を用意しますから、ゆっくり考えて決めたらどうでしょう?」
「すみません。でも、本当に一番安い部屋で結構ですから」
「あはは、そう言われたら頑張りたくなりますね~ リラさん良いですか?」
「畏まりました。ヨウ様」
「じゃ、ヒメちゃん達は、家にあるもの全部持って来てね」
「えっ? 全部ですか?」
「そーよ、<虚空庫>があるから簡単でしょ?」
「あっ! そうでした。すみません、まだ慣れて無くて」
「フフ、部屋の段取りはやっておきますから、家族水入らずで食事にでも行ってきて下さって良いですよ」
「すみません、ありがとうございます」
「皆様、ありがとうございます」
「色々と、ありがとうございます」
「いえいえ、僕達の方こそ助かってますから、お互い様ですよ」
「ところで美味しい物って、どこへ行く気なのかな?」
「最近は贅沢出来なかったから、久しぶりにヒメちゃんの好きなお寿司でもどうかな?」
「あっ! それ嬉しいかも、お寿司って久しぶりだね?」
「ごめんなさいね。最近厳しかったから母さん、連れて行けなくて」
「良いのよ、お母さん。今日はいっぱい食べよ♪」
「一応聞いて見たいんだけど、ひょっとして回転寿司なんじゃ?」
「はい、そうですけど?」
「あのね~ せっかく億万長者になったんだから、もう少し贅沢しても良いでしょ?」
「でも私、回ってないお寿司屋さんなんて、知らないですから」
「私達が良く行くお寿司屋さんに予約しといて上げるわ、メチャクチャ美味しいからお勧めよ♪」
姫奈さん達は、何度もお礼を言ってくれ、笑顔で帰っていった。
部屋の方は既にリラさんが押さえてくれたようだ、地上30階でお勧めの部屋らしい。
少し狭いかもしれないけど、3人なら大丈夫かな? とりあえず、住むだけだからね。
「流石リラさん。段取りがメチャクチャ早いですね」
「フフ、ありがとうございます。サプライズで色々と買っておきましょうか?」
「んふふ、面白そうね♪ お酒とか甘い物、置いておこっか」
「良いですね~ じゃ、買いに行きましょうか」
「「「「「了解!」」」」」
◇ ◇ ◇
<姫奈視点>
「えっと、あっ! あったわ。予約して貰ったとこ『魚座』って書いてあるもの」
「時間に間に合って良かったわ」
「でも<虚空庫>って凄すぎない? あっと言う間に家の物、全部入っちゃうなんて」
「でしょ~ 私も貰った時吃驚したもの、購入したら何千億円もするらしいんだよ?」
「「ええっ!」」
「三日月さん達って、どれだけお金持ちなのよ?」
「私も驚くばかりで、分かんないんだよ」
「ヒメちゃん、本当に凄い方達に見込まれたのね?」
「母さんも、まだ信じられないわ。借金も全部返せるどころか、大金まで貰っちゃって、ヒメちゃん様様ね」
「それを言うなら、三日月さん達様様だよぉ~」
私達は三日月さん達の話をしながら、『魚座』と言う名前のお寿司屋さんに入った。
店内はとても明るく、清潔そうな綺麗なお店で、テレビで見たような職人さんの前に設置されたカウンター席に着いた。
「いらっしゃいませ、何になさいますか?」
「わわっ! メニューとか無いんだ?」
「すみません。食べたい物を言っていただければ握りますので」
「じゃ、鯛をお願いします」
「へい!」
「あっ! 私達も鯛にしよっかな」
「へい!」
目の前にいる職人さんは見事な手付きで、お寿司を握ってくれて、目の前に置いてくれた。
「あれ? お箸がないんだけど?」
「すみません。ウチは手に取って食べていただいてます、どうぞお試し下さい」
「うふふ、お母さん。一度はお寿司を手掴みで食べて見たかったの」
「あはは、分かるわ♪」
「早く食べようよー、もう私、お腹ペコペコだよ」
「はいはい♪」
「うわっ! 美味しい~~~」
「凄く、美味しいわ。手掴みで食べるのって美味しいのね」
「ん~ 幸せだよ~ こんなに美味しいお寿司食べたの初めてだよ」
「ありがとうございます。良かったら、お勧めのネタも試されますか?」
「はい、お願いします」
次々と出してくれるお寿司は、どれもこれも信じられないほど美味しくて、夢中になって食べてしまう。
「お寿司ってこんなに美味しかったんだ、職人さん凄いです」
「ありがとうございます。ですが、ネタが良いんですよ」
「もう一度、大トロ良いですか? 最高に美味しかったです」
「へい、お嬢さん達に喜んで貰えたら、握り甲斐がありますよ」
「うふふ、ねっ、聞いたヒメちゃん? お嬢さんだって♪」
「あ~ お母さん。今は本当に若いからね~」
美味しいお寿司と、職人さんとの楽しい会話で、今日は最高の夕食になった。
帰りには幾らお金があったとしても、支払いが怖かったんだけど、既にアヤメさんが払ってくれていた。
もう美人なだけじゃなくて、神様みたいだよぉ~
部屋の方もリラさんから連絡があり、三日月さんと同じマンションで、30階にある部屋を購入してくれたらしい。
マンションの部屋まで頂けるなんて、どれだけ、私は優遇されているのだろうと怖くなる。
説明を聞くと私達の虹彩認識システムと顔認証システムを既に登録しているらしく、鍵も無いらしい。
どれだけ凄い技術なのか、おそらく私には聞いても理解できないだろう。
マンションに着いて、複数あるエレベーターに乗り30階に辿り着いた。
これだけ広いマンションなのに、この階は4部屋しかないようだ。
事前に聞いていた部屋番号の前に立つと、自動ドアのように左右に開いていく本当に鍵がないようだ。
3人で驚きながら此処まで来たけど、リビングに入って更に驚愕することになる。
「「「・・・・・・・」」」
「す、凄いわ、三日月さんの部屋みたい」
「ヒ、ヒメちゃん、本当にこんなに素晴らしい部屋を貰っちゃったの? 間違ってない?」
「そんな訳ないよ、だって扉が自動で開いたもの」
「そ、そうよね、でも幾ら何でも・・・」
「あっ! テーブルに手紙があるみたいよ。えっと『どう? 気に入ってくれたかしら? ちょっと小さめの部屋だけど、設備は私達の部屋と変わらないから色々と便利だよ、お酒とケーキ買っといたから皆で食べてね♪』だって」
「全然、小さな部屋じゃないよぉ~~~」
「わわわっ! 室内プールがある」
「「ええ~~~!」」
「お風呂も大きいよぉ~ 24時間入れるみたい」
「個室も何部屋あるか分からないわ・・・」
「ベッドもウォークインクローゼットもあるから、今まで使ってた家具は要らないかも?」
「電化製品まで、全部揃ってるんだけど?」
私達家族は、部屋の凄さに驚きまくってから、急いで三日月さんにお礼の電話をすると『気に入ってくれて良かったよ』と簡単に言ってくれた。
とりあえず3人でお風呂へ入ることにしたら、見たこともないような高級なシャンプーやトリートメントが揃っている。
洗濯機が無いと思ったら、自動クリーニングで数十分で衣類が自分の個室に届くらしい。
部屋着からバスローブまで、欲しい物は全部あるんじゃないかと思う程ある。
ひょっとしたら、私達は未来に来たのかもしれない・・・
お風呂から出て巨大な冷蔵庫を開けると、メチャクチャ高そうなケーキが入っていた。
一緒にワインとワイングラスまで、冷やしてくれていた。
ケーキには『開店祝い!』と『借金完済おめでとう!』と刻まれている。
私達は3人共感動してしまい、嗚咽を漏らしながら泣きじゃくってしまった。
正直、今まで辛い毎日だったけど、まさか、こんなに幸せな事になるなんて。
私達家族は、三日月さん達の優しさに感謝し、泣きながらワインで乾杯することにした。
◇ ◇ ◇
「んふふ、ヒメちゃん、喜んでくれて良かったわね」
「はい、それに僕達が取っきた物をお店で売るのって、思っていたより楽しかったです」
「それならセツナさんが作ってくれた、スタミナポーションとかビューティーポーションも売っちゃう?」
「そうですね。でも、それらを販売するならセツナさんだけじゃ大変ですよね?」
「宜しければ、製造を任せられる所を探しておきましょうか?」
「はい、何時もすみませんリラさん」
「いえ、お任せください」
「ねーねー、ところでヨウ君?」
「なんですか、ナギサさん?」
「なんか、ギルドカードの残高が増えてるんだけど?」
「えっ? ええっと、利子が付いたとか?」
「んん~~ あっ! 私も増えてる・・・175億円ぐらい、なんか見覚えのある数字よね?」
僕はダラダラと汗を流しながら、惚けようかと思ったけど無理そうなので正直に言う事にした。
「えっと・・・姫奈さんのついでに、皆にも売り上げの1割入る様にして貰いました。だって、皆で取って来たんだから公平で良いじゃ無いですか」
「も~ この間また1000億円貰ったばかりなのよ?」
「それは給料ですから、ちゃんと値上げしなかったのを、褒めて下さいよ?」
「クク! 何か会話が、可笑しいよね?」
「あはは、本当ね」
「そろそろ、本気でお金の使い道も考えないとね」
「親とか兄妹に、家とか買って上げるとか?」
「ん~ 家ぐらいなら良いかな」
「私も実家を出てから自由にさせて貰ってるからね~ ちょっと親孝行しちゃおうかな」
「僕も、たまには機嫌とっとこうかな」
「私とリラ姉は、とっくに他界してますからね~」
「あっ! ごめんなさい」
「いえ、お気になさらずに、私達は十分幸せですから」
「フフ~ そそ、ヨウ様が居るから最高に幸せよ♪」
「ありがとう。親の変わりは出来ませんけど、僕が家族ですからね」
「「はい」」
「僕も、そろそろ家族に家でも買おうかと思うんですけど、良かったらリラさんノノさん、一緒に僕の実家へ行きませんか?」
「「ええっ!」」
「ヨ、ヨウ様の、御両親に会うのですか?」
「はい、僕の両親は、リラさんとノノさんの両親でもありますから」
「ありがとうございます。是非、行かせて下さい」
「ぐすっ! ありがとう。ヨウ様」
「ねえヨウ君、私も行っちゃ駄目かな?」
「私も、行きたーい」
「僕も、行きたいかな」
「フフ、私もヨウ様の御両親と会うのなら、全員で行くのが良いと思います」
「そうですね、僕の思慮が足りませんでした。本当にド田舎で何も無い所ですが、宜しくお願いします」
「やたー♪」
「でも、ヨウ君の御両親に会うのは緊張しちゃいそうね」
「あ~ リラ姉、どんな服着て行ったら良いかな?」
「フフ、失礼のないように厳選しないといけませんね」
「僕もどんな、服装で行くか考えなきゃ」
「あはは、普段着で良いですよ?」
「そんな訳にはいかないでしょー、あっ! お土産も考えなきゃね」
話しの流れで僕の実家に行く事になっちゃったけど、良く考えたら僕も緊張してきた。
あんなド田舎に、アヤメさん達みたいな美人が歩いているだけでも皆驚くのに、両親が見たらどんな顔するだろ・・・
でも、アヤメさん達なら自信を持って、両親に紹介出来るのは間違いないよね。
なんだ、そう考えたら緊張することもないや、久しぶりの帰省を楽しみにしとこっかな。
アヤメさん達を連れて帰ったら、ヒカリも喜ぶだろうな♪
僕の実家に帰省することは決まったけど、姫奈さんのお店が落ち着いてから帰る事にした。
姫奈さんのお店は二日目も行列が出来ていたけど初日程、品数が出せなかったので開店から1時間で閉める事になった。
お昼からは姫奈さんの製作時間になり舞華さんと雪奈さんも、製作のお手伝いをしてくれている。
姫奈さん一人で作っているので、当分の間は品薄状態になるのは仕方ないだろう。
ミスリルは兎も角、アダマンタイトやオリハルコンは、ミナミさんの協力がないと加工出来ないので、しばらく掛かりそうだ。
魔物素材で作るアクセサリーは、セツナさんに協力して貰う事にした。
ダンジョンに行きながらお店の様子を見ていたが、一週間経つ頃には何とかギルドの助っ人無しでも大丈夫な程、落ち着いてきたようだった。
そして、今日は姫奈さんを紹介するため、職人さん達とスズカさんを部屋に招待することにした。
約束の時間になると、次々と部屋に集まってくれて、最後にミナミさんが来てくれた。
「おう、来たぜ」
「いらっしゃい、ミナミさん♪」
最近ミナミさんが、一番照れ屋なのが分かってきた。
それが可愛くて、会うと同時に抱き抱えお姫様抱っこで、ソファーまで連れて行く事にした。
「わわっ! お、おい恥ずかしいだろ?」
「いえいえ、大事なお客様ですからね、案内しますよ♪」
「ん~~~ くっ! どんな力してんだよ、下りられねえよ」
「にひひ、顔が赤くなってるよミナミ?」
「バ、バカ野郎、絶対俺が照れるの面白がってるだろ?」
僕はミナミさんを、皆が座っているソファーに下ろし、小鳥のようなキスをした。
「もう、ヨウ君やりすぎよ、耳まで赤くなってるじゃない」
「あはは、ごめんね、ついミナミさんが照れるのが可愛くて♪」
「か、可愛いって・・・」
「うふふ、妬けますわね♪」
「あの~ スズカさん?」
「はい?」
「ミナミさんって、三日月さんの恋人さんなんですか?」
「うふふ、そっか、姫奈さんは、まだ知らなかったんだね」
「今、此処にいる女性は全員恋人って言うか、ヨウ君のハーレムメンバーだよ」
「ええっ! 全員って?」
「全員恋人なの♪ 他にも居るんだけどね」
「ふあ~ 三日月さん凄いです~ こんなに綺麗な女性達を彼女にしちゃうなんて」
「何言ってるのよ? ヒメちゃんもヨウ君のハーレムメンバー候補なんだよ?」
「わ、私なんて皆さんと比べたら、チンチクリンだし無理ですよぉ~」
「フフ、無理な人を専属職人さんにしたりしませんよ?」
「にひひ、ヒメちゃんも胸が大きいもんね~♪」
「そう言えば皆さん胸が大きいですね・・・三日月さんって、おっぱい星人なんだ?」
「ブハッ!? そ、そんな事・・・ありますけど」
「そっかー、うふふ、私おっぱい大きい事に、初めて感謝するかも♪」
「私も同じ事、思っちゃったよ?」
「スズカさんは、凄く綺麗だし、高級クラブのママさんじゃないですか」
「あはは、私なんてヨウ君と会うまでは、普通の田舎娘だったんだよ?」
「まあ、彼奴は色々と異常だからな」
「酷いです。ミナミさん!」
僕はミナミさんの正面から、思い切り抱き着きにいった。
「わっ! こら、恥ずかしいだろ? 悪かったから、謝るって」
「あはははは♪」×全員
夕食の準備が出来たので、皆に姫奈さんを紹介した。
「わ、私は彫金の専属職人として雇って貰った、端渓姫奈って言います。皆さん宜しくお願いします」
「宜しくね~♪」×全員
姫奈さんの自己紹介も終わり、皆からの拍手に姫奈さんは照れているようだ。
「他の職人さん達と同じく、姫奈さんも凄い才能の持ち主なので、皆さんも協力の程、宜しくお願いします」
「おう、俺も装飾に力を貸して欲しいしな」
「ナハハ、私も喜んで協力するよ」
「ウフフ、私は強力して貰う方かしら」
「私は、調理師だからな~」
「私なんて接客業だよ?」
「私も手先が器用なぐらいなので、皆さんのお力になれるかどうか」
「僕から見たら皆さん天才ですよ? っと、言う訳で職人さんパーティ結成ですね!」
「「「「「「えっ?」」」」」」