第123話 最近予想を超える事が多いですね
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リラさんからの説明も終わり、幾つかの質問を終えると、僕に話しかけてくれた。
「三日月さん、話しは良く理解させていただきました。雪奈共々、是非お受けしようと思います」
「ありがとうございます」
「しかし、本当に姫奈が作った物が売れるのか心配なのですが」
「フフ、今から守秘義務が発生いたしますが、宜しいですか?」
「「はい」」
「姫奈さん、姫奈さんの作品を1つお貸し願えますか?」
「はい」
姫奈さんは<虚空庫>から指輪を1つ出して、リラさんに手渡した。
「「えっ?」」
「ヒ、ヒメちゃん、貴女今どこから指輪出したの?」
「えへへ、後で分かるよ~」
「フフ、STR+10の指輪ですか、丁度良いですね」
「では、雪奈さん、これを付けて貰えますか」
「はい、でも、これ私にはサイズが大きい・・・ええっ? 縮まった?」
「驚きましたか? それにはサイズ自動調整の機能が付いております」
「凄いですね・・・」
「いえいえ、驚くのはこれからですよ。握力計を用意致しましたので、測定していただけますか?」
「はい?・・・んっ? これで良いですか?」
「ええっ? 73キロ・・・嘘っ!」
「お分かりいただけましたか? それはSTR+10の付与効果が付いている指輪で、装備しただけで力が強くなります」
「んふふ、姫奈さんって実は天才なんですよ? こんなに凄い指輪が作れちゃうんです、どうです売れないと思いますか?」
「実はこれダンジョン産の素材で作って貰ったんですよ、普通に腕の良い職人ってだけじゃ、こんな効果は付かないんですけどね」
「「・・・・・・」」
「ヒメちゃん、一体何時の間に?」
「えへへ、私も知らなかったんだけど、今日教えて貰ったんだ♪」
「ちなみに、その指輪は1億8千万円で売ろうと思ってます」
「「はい?」」
「1億? 冗談ですよね?」
「フフ~ 驚きました? でも、それはまだ安い方なんですよ?」
「「えええ~~~」」
「し、信じられないわ。ヒメちゃん凄く器用だったけど、そんな才能があったなんて・・・」
「ヒメちゃん、凄いじゃない? 昨日なんで言ってくれなかったの?」
「私も今日初めて聞いたんだよぉ~」
「今まで姫奈さん才能に誰も気付かなかったみたいなんです。
ある人の紹介で僕達が会いに行った時に、技術の高さもさることながら、先程説明した付与効果を発見したんですよ。
そして、実際にダンジョン産の素材で作って貰ったら、僕達の予想を遥かに超える出来栄えで驚きました」
「ちょっと、まだ信じられないんですけど」
「あはは、もう契約していただけたので、ゆっくりと理解して貰えれば良いですよ♪」
姫奈さんの家族である二人には契約して貰い、守秘義務も約束して貰ったので更に色々と説明していくと、昨日の姫奈さんのように驚きが止まらないようだった。
それでも食事をしながら時間を掛けて説明していくと、少し落ち着いてきたようだ。
「あの、最初から気に成っていたんですが、皆さんの様に凄く綺麗な人達が本当に魔物と戦うような冒険者なのでしょうか?」
「んふふ、ありがと♪ でも、姫奈さん達にも綺麗になって貰いますよ」
「えっ?」
「分かんないよね? 三日月君って身内の女性は皆綺麗にしちゃうんだよ、僕達も三日月君に綺麗にして貰ったんだよね」
「もう今日は驚き過ぎて、少しパニック状態になってきました」
「お母さん頑張って、私も同じだから」
「私も昨日から、驚きっぱなしなんだからね」
「フフ、開店まで未だ一週間程ありますから、ゆっくりと慣れていきましょうか♪」
今日はちょっと詰め込み過ぎたので、お酒でも飲みながら日本庭園を楽しむ事にした。
時が流れるのも早い物で、いよいよ今日は姫奈さんのお店がオープンする日になった。
この一週間3人にはビューティーポーションはもちろん、キッチリと説明した上でピークベリーまで食べて貰った。
そのお陰で3人は見違える程美しくなり、特に舞華さんは3姉妹と言って良い程若返っていた。
綺麗に成るどころか若返りまでして、また軽くパニックになっていたが追い打ちを掛けるように、各種スキルも習得して貰ったので大変だったと思う。
舞華さんと雪奈さんには商品を装備し、ステータスが上がった時の注意点等を説明するマニュアルを用意し覚えて貰った。
デパートで店員さんをやっていた事もあり、接客方法は僕達が教えるまでもなかった。
この一週間で姫奈さんに作って貰った商品も、十分な数を確保する事が出来た。
現在は豪華なショーケースに、所狭しと陳列されている。
念の為、ショーケース事<虚空界>に収納してあり、後はお店に行って設置するだけになっている。
もちろん、1つ1つにギルド公認の鑑定書を用意しておいた。
姫奈さんも<鑑定>スキルを持っているんだけど、希少なスキルだからギルドを通さないと、誰も信用してくれないからね。
最終調整のため姫奈さん達には昨日泊まって貰い、お店には一緒に行く手筈になっている。
念の為、開店時間の1時間前には着くように部屋を出る事にしたが、スズカさん達の高級クラブでしか宣伝をしていないので、初日からお客さんが押し寄せる事は無いだろうと思っている。
「「「・・・・・」」」
「どうしたの? 3人共、そんなにキョロキョロしちゃって」
「いえ、その何度見ても、凄い部屋だと思っちゃって」
「そうですわ、この一週間毎日が驚きの連続で」
「うふふ、お母さん。とっても若くて綺麗になっちゃったもんね♪」
「ウフフ、貴方達も見違えるようですよ」
「あはは、私も鏡を見るのが楽しくなっちゃったけど、それでもアヤメさん達を見ていると自信を無くしますね」
「お姉ちゃん、アヤメさん達は特別だよぉ~」
「んふふ、私達を褒めても何にも出ないわよ?」
「にひひ、ヒメちゃんも、とっても可愛くなったよ?」
「ん、可愛いよね」
「えへへ、ありがとうございます♪」
ツドイさんは背の低い姫奈さんの頭に手を置いてナデナデしている、とっても気持ち良さそうだったので僕も参加してみる。
「わわっ! 私は子供じゃないんですよぉ~ あっ! 三日月さんまで~ 私の方がずっと年上なんですよ?」
「あはは、ごめんなさい。僕より背が低い人って初めてだから」
「んふふ、ヨウ君は何時も撫でられる側だもんね~」
「あ~~ それは言わないで下さいよ~」
「あはははは♪」×全員
そろそろ出かける時間になってきたので、僕達は歩いてお店に出掛ける準備をしていく。
「あ~ 緊張してきちゃった、お客さん来てくれるかな・・・」
「ウフフ、ヒメちゃん。三日月さん達も絶対売れるって言ってくれてるじゃない、自信を持ちなさい」
「そうよヒメちゃん。でも、値段が凄すぎて、私も売れるかどうかは半信半疑なんだけどね」
「やっぱりそうだよね? ん~ 心配だよぉ~」
「フフ、心配しなくても大丈夫だと思いますよ? 唯、私は違う心配をしているぐらいですから」
「リラが心配するって珍しいわね?」
「こればかりは、私も今日お店に行かないと、分からないものですから」
すると、テレビのニュースで見慣れた光景が映し出されているので、何だろうとニュースに注目した。
【朝のニュースです! 現在大阪梅田商業ビルにて、謎の行列が出来ているようです、映像を切り替えますのでご覧ください】
【こちら現場です! ご覧ください。凄い行列が出来ております、一体何の行列なのか早速聞いて見たいと思います】
【すみません、これは何の行列なのでしょうか?】
【・・・悪いがテレビでは言えないな】
【えっ? あっ! そこの貴女、何の行列か、教えていただけませんか?】
【悪いけど、誰に聞いても答えてくれないと思うわよ、お願いだから宣伝するような事はやめて】
【・・・すみませんでした】
【このように行列を作っている人達に、スタッフにも聞いて貰いましたが、誰も答えてくれない状況になっております。一体何の行列なのでしょうか? 現場からは以上です】
【はい、現場では不思議な状態になっているようですが、詳しく分かり次第、報道したいと思います】
「えっ? ちょっと、これなに?」
「・・・どうやら、心配していた事が起こったみたいですね」
「まさか、この行列って姫奈さんのお店だったり?」
「はい、間違いないかと思われます」
「えええ~~~~~」×全員
「た、大変だ~!」
「ちょっと、これどうするのよ?」
「うひゃ~ 凄い人だね~」
「うわ~ 大変な事になっちゃってますね。スズカさん達、頑張って宣伝してくれたんだ」
「僕達が手伝うと、目立っちゃうよね?」
「はい、アヤメとナギサは急いでギルドに応援要請を、私は警備会社に人員の手配を致します。
姫奈さん達は裏口から入って、ショーケースの配置をお願いします。
ツドイとノノは、<隠蔽>で姿を消してトラブル対応を。
ヨウ様は、姫奈さん達の護衛を宜しいですか?」
「了解です!!!」×全員
「じゃ、姫奈さん達は、僕と行きましょうか」
「「「は、はい」」」
こうして、僕達は予想外であるお客さんの多さに驚きながらも、素早く対応して行く事にした。
アヤメさんとナギサさんは直接ギルドへ行って、受付嬢の助っ人を借りにいってくれた。
しばらくすると、アヤメさんとナギサさんは受付嬢の服装で来てくれ、おそらく友達だろう受付嬢を5人も連れて来てくれた。
「アヤメ、凄い行列になってるじゃない?」
「それで困ってるのよ、お願い接客を手伝って」
「分かったけど、説明してよ? ショーケースに入ってるアクセサリー類の性能にも驚くけど、値段も凄いじゃない?」
「あんまり時間が無いから、簡単に説明するわ」
助っ人に来てくれたギルド受付嬢5人と、アヤメさんナギサさんが接客してくれる事になった。
舞華さんと雪奈さんはカウンターで、レジをして貰う事にした。
行列の方もリラさんが急遽、雇ってくれた警備員が既に誘導に当たってくれている様だ。
余りにも人数が多いため入場制限を設け、一度に入れる人数は20人までとした。
商品が高額なため複数購入される人は居ないと思うけど、念の為お一人様1点のみの制限も掛けた。
そして、いよいよ開店時間となったので、お店のシャッターを開けると次々とお客さんが、店内に雪崩れ込み警備員が必死になって止めてくれている。
「おお~~~ 本当に情報通りか。有った店員さん、これをくれ」
「はい、畏まりました。この商品でお間違え有りませんか?」
「ああ、間違いない、早くしてくれ」
「では、カウンターへどうぞ」
「み、見つけた! 店員さん、こっちよ早く」
「はい」
「うおおおおお! 有った。これだ、おーいこっちだ、早く来てくれ」
「は、はい」
「マジか、マジで有りよった。このブレスレットはワシのや、店員さん早よう来たってくれ」
「は、はい、お待ちを」
「むぅ・・・性能もさることながら、出来栄えも素晴らしいですな、お嬢さんこれを貰えますかな」
「はい、ただいま」
「ゆ、雪奈、桁を間違えない様にね」
「うん、分かってるわ・・・でも『ゼロ』が多すぎるよぉ~」
舞華さんと雪奈さんは、この日の為に用意した高級そうな箱に、商品を詰めていき、会計に苦労しているようだ。
姫奈さんは、作業場で一生懸命、追加の商品を作っている。
「姫奈さん。原石の在庫はマダマダありますから慌てなくても良いですよ」
「は、はい、頑張りますぅ~ ひゃぁ~」
次々と押し寄せてくる、お客さんを相手に、僕達は嬉しい悲鳴を上げていた。
大勢が押し寄せていた行列も中盤辺りから、何の店か分からないまま行列に並んでいたお客さんも混じり始め、一通り見ると値段に驚き、そのまま退店していった。
っと、言う訳で昼過ぎあたりから徐々に楽になってきたが、展示していた商品は夕方頃に成る頃にはスカスカになっていた。
少し時間は早いけど商品も殆ど売れてしまったので、お店を閉めることにした。
助っ人に来てくれた受付嬢さん達も、帰る前に休憩して貰う事にして、今は全員でゆっくりしている。
「ふぁ~ 終わった~ 嵐の様だったわね」
「うふふ、たまには、こういうのも楽しかったけどね♪」
「しっかし、アヤメとナギサも冒険者に成ったと思ったら、色々な事してるわね~」
「んふふ、今日はありがとね~ 助かったわ」
「なんか、二人共メチャクチャ綺麗になってるし? それにしても三日月君だっけ、すっごく可愛いし恰好良いんだけど、ちゃんと紹介してくれる約束だよね?」
「もう、分かったわよ。私達のパーティリーダーをしている三日月陽君よ、可愛いけどすっごく強いんだからね」
「今日は、助っ人ありがとうございました。アヤメさんとナギサさんには何時もお世話になってます」
「「「「「可愛い~♪」」」」」
「私、何回か見た事あるわ」
「私もある~」
「そっか、君が三日月君だったんだね、確かスライムハンター?」
「ブッ!? そ、それは忘れて下さい~」
「あはははは♪」×全員
「ヨウ様、本日の売上金、計算が完了しました。御確認なさいますか?」
「はい、皆さんにもお願いします」
「畏まりました。それでは発表致します、本日の総売上金は812点販売し1753億8500万円となりました!」
「「「「「おお~ パチパチパチ!!!」」」」」
「「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」」
「は、はい?」
「今日は、属性原石あんまり出してなかったから、こんなもんかな?」
「そうですね、普通の原石ばかりだったし、最初にしては上々ですよね?」
「上々の滑り出しなのは間違いないよ?」
「しっかし、宣伝なんてしてないのに、良い情報って伝わるのが早いわ」
「リラ姉、これからもっと売れるのかな?」
「ええ、これから属性原石にミスリル・アダマンタイト・オリハルコンが加われば売上は数倍に成ると思われます」
「あっ! そうだ。僕、良い物用意しといたんですよ」
「んっ? 大入袋じゃない、なるほどね~♪」
僕は今日参加してくれた皆に100万円の大入袋を渡して行った。
ちょっと少ないかなと思ったけど、袋に100万円しか入らなかったんだよね・・・
「はい、受付嬢さん達もどうぞ♪」
「えっ? あの、こんなに貰って良いんですか?」
「んふふ、ヨウ君からの気持ちなんだから、断っちゃ駄目よ?」
「気持ちって・・・札束が入ってるんだけど?」
「はい、100万円入ってますから、遠慮なくどうぞ」
「「「「「キャーーー♪」」」」」
「「「「「ありがとうございます♪」」」」」
ギルドの受付嬢さん達は、時間が来たので皆、喜んで帰っていった。
岩永部長にも今度お礼しなきゃね。
「舞華さん達もどうぞ、今日はお疲れ様でした」
「うふふ、いっぱい売れて良かったね、ヒメちゃん」
「ありがとうございます。私もまさか、こんなに売れちゃうなんて思いもよりませんでした」
「だから売れるって言ったでしょ?」
「私達まで大入袋を貰っても良いんでしょうか? 300万円って凄いお金なんですけど?」
「もちろんですよ、お祝いですから」
「ありがとうございます、凄く助かります♪」
「良かったね、お母さん。頑張ろうね」
「私も頑張るから借金返して行こ」
「ヒ、ヒメちゃん」
「あはは、大丈夫だよ。借金の事は三日月さん達にも話してあるから」
「そうですか、すみません恥ずかしい事を・・・」
「ねーねー、そう言えば聞いて無かったけど借金って幾らぐらいあるの?」
「あ~ えっと、3億円ぐらいです」
「ヒメちゃん、言っちゃ駄目よ」
「大丈夫だよ。借金があっても三日月君が気にする訳ないから」
「すみません。とても言えなくて・・・」
「でもヒメちゃん、3億円の借金ぐらいで気にするなんて契約書ちゃんと読んでないでしょ?」
「3億円ぐらいって、私達には凄く大金なんですよぉ~ あれっ? でも、そう言えば、私の給料って幾らぐらいなんですか?」
「ほら~ やっぱり契約書読んでない」
「あぅぅ、すみません。雇ってくれたのが嬉しすぎて」
「あはは、姫奈さんにお給料なんてありませんよ?」
「ええっ? そ、そんなぁ~」
「もう、ちゃんと聞きなさい。ヒメちゃんは給料制じゃないの、歩合制なのよ?」
「えっ? 歩合制って・・・」
「ほら、契約書にちゃんと書いてあるでしょ? 1点売れたら1割のお金がヒメちゃんに入るんだよ」
「そ、それじゃあ」
「フフ、今日だけで姫奈さんは、175億3850万円の稼ぎになりますね」
「ふえ?」
「「「えええええええっ~~~~~~」」」
「分かったヒメちゃん? 3億の借金なんて直ぐ返しちゃいなさい、もう億万長者なんだからね?」
「ほ、本当に?」
未だに信じてくれない姫奈さんに、僕達はコクコクと頷き本当だと伝える。
「はわわ! お、お母さん、お姉ちゃん」
「「ヒメちゃん」」
今まで余程辛かったのか、3人は泣きながら抱き合っている、どうも僕はこういうのに弱いのか貰い泣きしてしまう。