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第120話 天才には歩合制が良いですよね


 僕達は彼女に詳しい話をするため、どこか落ち着いた場所に移動することになった。


 少し考えたところ、初対面の僕達だけじゃ信用できないと思うので、彼女を紹介してくれたフミさんの事務所に行くことにした。


 フミさんにも、スカウトの口添えをしてくれたら、信用して貰えるだろう。


 フミさんにも了解が取れたので、ツドイさんが出してくれた車で向かう事にする。


 車にチョコンっと座っている彼女を改めて見ると、本当に背が低くショートカットで可愛らしい顔立ちをしている。


 スリムなのに、アンバランスな程の巨乳の持ち主だった。



「凄い車ですね、私こんな高級車なんて初めて乗りました」


「あはは、ありがとう」


「あの、先程は、混乱してたから分からなかったんですが、ひょっとして有名なトップモデルさんなのでしょうか?」


「あっ! 芸能人なのかな? すみません。私テレビを見ないので」


「うふふ、そんなに緊張しなくても良いわよ、私達は唯の冒険者だから」


「えっ? 冒険者って、ダンジョンの冒険者ですよね?」


「そうだけど、そんなに不思議かしら?」


「不思議と言うか、皆さんとても綺麗なのに魔物と戦ってるのが想像出来ません。三日月さんも冒険者なんですか?」


「はい、僕も冒険者です。っと、言っても今年からだから新人冒険者なんですよ」


「うわ~ 三日月さんみたいな可愛くて恰好良い人が、魔物と戦ってるなんて凄いです」


「僕、まだ可愛いから抜け出せないんだ」


「んふふ、落ち込まないの。ちゃんと恰好良いって言ってくれてるじゃない」


「す、すみません私、失礼な事言っちゃって」


「いえ、褒めて貰ってるのは分ってますから、ありがとうございます」


「ヨウ君が可愛く無くなっちゃったら、私達は少し残念かも?」


「僕、ずっと可愛いままで良いです」


「「「「「「あはははは♪」」」」」」


「うふふ、皆さんとっても良い関係なんですね♪ ところで何処へ向かってるんですか?」


「フミさんの事務所ですね、フミさんも居た方が僕達を信用して貰えると思いまして」


「お気遣い、ありがとうございます」



 話をしているうちにフミさんの会社であるビルに着いたので、入口へ行くと吹き抜けになっている。


 豪華な受付前に、従業員が20人程並んでおり出迎えてくれた。


 受付の綺麗なお姉さんから重役の様な方達まで、ビシッとしたお辞儀をしてくれているので恐縮してしまう。



「ようこそ、おいで下さりました。三日月様」


「急に我儘言っちゃってすみません、フミさん」


「とんでもございません、おっしゃって下されば、私が出向きましたのに」


「いえ、場所も欲しかったから丁度良いかなと思いまして」


「畏まりました、どうぞこちらへ」



 フミさんはエレベーターまで案内してくれて、何時もの応接室へ向かう。




「フ~ 行き成り呼び出されたと思ったら、とんでもない美女達の出迎えとはな」


「社長の事だ、トップモデルを引き抜いて来たのだろう?」


「国内のモデルは大体把握しておりますが、あれ程素晴らしいモデルは記憶にありません」


「君でも知らないとなると社長が発掘した秘蔵のモデルか・・・しかし、社長には何時も驚かされるな」


「君から見た、彼女達の感想を聞きたいね」


「はい、国内どころか海外にも、あれ程美しい女性は見た事ありません。一目見ただけで身震いした程です」


「胸の大きな女性達でしたから、そちらのデザインに力を入れられるのでは?」


「なるほど、直ぐにデザイナーを集めてくれたまえ、先んじて動いておこう」


「はい、直ちに手配致します」


       ◇     ◇     ◇


 僕達は応接室に入ると直ぐにコーヒーを出してくれたので、ソファーに座って頂くことにする。



「フミさんって、大会社の社長さんだったんですね~」


「ウフフ、私なんて大した事ありませんよ。姫奈さん」


「でも、凄い会社ですよ」


「ウフフ、三日月様、彼女はお気に召しましたか?」


「はい、流石にフミさんからの紹介だけあって、実に良い腕してますね」


「そんな、褒めすぎですよ、私なんて先程店をクビになっちゃいましたし」


「えっ? 姫奈さん、それはどういう事でしょうか?」


「私、作業が遅いから、先程店長からクビだと言われちゃいまして」


「なんですって? 貴女の作品は見てるんですよね?」


「はい、他と違いは無いと言われました」


「・・・頭が痛いわね、あそこの店長が、そんなお馬鹿さんだったなんて」


「あはは、私をそこまで買ってくれるのは、フミさんだけですよ♪」


「ウフフ、でも最高のタイミングだったみたいですわね。三日月様」


「あはは、僕もそう思います」


「では、そろそろ本題に入りたいのですけど、宜しいですか。端渓姫奈さん」


「はい」


「僕は貴女を、僕達の専属彫金師として、スカウトしたいと思っています」


「えっ! それって他の仕事は受けずに、三日月さん達だけの彫金師に成るって事ですか?」


「それだと、お金があまり貰えないんじゃ?」


「いえ、そうじゃないんですけど、詳しい説明はリラさん良いですか?」


「畏まりました。では、御説明致しますね」


「はい」


「私達は専属の職人さんを何人か抱えているのですが、フミさんもその内の一人です」


「えっ! フミさんもなんですか? それじゃあ、他の仕事をしても良いんですね」


「はい、もちろん結構です。ですが、私達の専属になっていただけるのでしたら、お店もこちらで用意致します。専属と言いましても、私達からの依頼は優先的に受けて下さるだけで結構なんですよ」


「お店も用意して下さるんですか?」


「はい、一等地に端渓様の御希望に沿ったお店を、御用意させていただきます」


「ええっ? そんなお金なんて私、持ってないです」


「フフ、もちろんお店の費用及び彫金専用の設備・道具類に至るまで全て此方で負担致します。それと専属契約金として300万円御用意致しました。御不満でしたら更に追加する用意もしております」


「そ、そんな夢みたいな話が本当にあるんですか? 専属契約を解除したら私の借金になるとか?」


「フフ、何時でも専属契約は解除出来ますし、私達が負担したお金を返せなんて言いませんよ」


「ええっ!」


「ウフフ、姫奈さん本当ですよ? 私も保証致します」


「受けます! こんな好条件で受けない訳ないです。是非、私と専属契約して下さいお願いします。私、稼がないといけないんで専属契約金を300万円も頂けるなら、メチャクチャ嬉しいです」


「ありがとうございます。では、専属契約に当たり唯一にして絶対の条件が守秘義務です。私達に関する全ての口外を禁止致しますが宜しいですか?」


「はい、この仕事では当然の事なので、家族であっても絶対言いません」



 こうして彼女は、無事に僕達の専属彫金師として契約書にサインしてくれた。



「ありがとうございます端渓さん。これから宜しくお願いします」


「いえ、こちらこそ仕事を首になって途方に暮れたところに、ありがとうございます」


「んふふ、よろしくねヒメちゃん♪」


「こらっ! ナギサ。行き成りヒメちゃんは失礼でしょ」


「あはは、私って背が低いせいか、仇名がずっとヒメちゃんなんですよ、だからそう呼んで下さい」


「ほらほら~♪」


「調子に乗らないの、じゃ、私もヒメちゃんって呼ぶわね」



 それから皆で自己紹介をして、全員ヒメちゃんと呼ぶことになった。



「じゃ、そろそろ専属になってくれた、特典の事を話したいんですけど良いですか?」


「えっ? 特典って何ですか?」


「えっと、守秘義務が発生するから専属になってくれるまで言えなかった事ですね」


「うわ~ まだ良い事があるんですね」


「あはは、職人さんなら、たぶん良い事だと思うんですけど。ヒメさんも彫金するのに良い素材があったら嬉しいですか?」


「はい、もちろんです。特にダンジョン産なんて垂涎物ですよ、すっごい作り甲斐があるんですから。


でも、ダンジョン産の原石とかは高価だから、カットも研磨もさせて貰えなかったし、ちっちゃい石を指輪やネックレスに加工した事があるだけなんですよ」


「「「「「「ええっ!」」」」」」


「どうしたんですか皆さん? 私変な事言いました?」


「ふぁ~ それが本当ならヒメちゃん本物の天才かもね」


「ええ、驚きました。加工だけで付与しちゃったんですね」


「あ、あの、何の話をしているんでしょうか」


「あはは、ごめんね。ヒメさんに良い物渡しますね♪」



 僕は今まで<虚空界>にストックしていた、宝箱から入手した宝石の原石を1箱だけテーブルの上に置いた。



「これって何ですか? 宝箱みたいですけど」


「フフ、これは上級ダンジョンのボスからドロップした銀宝箱です」


「じょ、上級ダンジョンのボスって・・・ええ~ それってメチャクチャ高価な物なんじゃないですか?」


「開けて見て、ヒメちゃん♪」


「はい」



 ヒメさんは恐る恐る銀宝箱に触ると、ゆっくりと蓋を開けていた。


 中に入って居る様々な属性原石を見て、口をポカンと開けたまま完全に固まってしまった。



「ヒメちゃん、固まっちゃった?」


「おーい、ヒメちゃーん帰って来て~」


「あっ! すみません・・・


こ、これ属性原石です! 間違いありません。


それになんて大きさ、こんなに大きな原石が幾つあるのか分からなくぐらい入ってます。


こんなの幾らで購入したんですか? とんでもない金額だったんじゃないですか?」


「うふふ、私達は冒険者だって言ったでしょ?」


「だって上級ダンジョン・・・ええっ? 三日月さん達って、そんなに強い冒険者だったんですか?」


「私達って言うか、ヨウ君が強いんだよ」



 ヒメさんは首をグリンっと動かし、僕をキラキラした目で見つめている。



「凄いです三日月さん。これ本当に全部、私がカットしても良いんですか?」


「あはは、そんなに喜んでくれると嬉しいですね。もちろん全部自由にしてくれて結構ですよ」


「うわっ、うわぁ~ 早速お店に・・・ああ~ 私クビになっちゃったんだ。どうしよ、私今ジュエリーツールしか持ってない! 誰かに借りて・・・ああぁ~ん、そんな伝手ないよぉ~」


「あはは、落ち着いてヒメちゃん、だから私達で揃えるからさ♪」


「そうでした、すみません。私嬉しすぎてパニクっちゃいました」


「えっと、それは、まだ一部なんですけど全部見たいですか?」


「はい?」


「あの三日月様、ひょっとして?」


「フミさんには大体分かっちゃいますよね、同じ銀宝箱が後20個ぐらいと、レッドドラゴンの爪・角・牙と言った様々な魔物素材。


シルバー鉱石・ゴールド鉱石・アダマン鉱石・オリハルコン鉱石等々メチャクチャストックしてあります。


そうそう、宝石の原石も一杯ありますよ、最近トレジャーハントに凝っちゃって面白いんですよね」


「それなら、私も大量に持ってたわ」


「僕もあるよ」


「にひひ、全部出しちゃおっか♪」



 <発見>スキルを習得してから見つけた、数々の宝箱から得た宝石の原石や真珠からサンゴに至るまで、皆で持っていた物を全部出していく。


 面白くなってきて一杯探したんで、応接室にあるテーブルには零れ落ちるぐらいの素材を積み上げていった。



「・・・姫奈さん、洋服の装飾用として私にも幾つかお願いしたいんだけど? 姫奈さん? た、大変! 姫奈さんシッカリして!!!」


「ありゃ?」



 ヒメさんは、大量の素材を前にして、驚き過ぎたのか気を失っているようだ。


 少し落ち着いてから、次の特典である職人さん全員に渡しているスキルオーブを習得して貰って、その説明をするとまた気を失ってしまった・・・


 ちょっと行き成り詰め込み過ぎちゃったかな?



「あちゃー、また気を失っちゃったね」


「フフ、無理も無いですね、スキルだけでも数千億円の価値がありますから」


「ところで、ヨウ君?」


「なんです、アヤメさん?」


「ヨウ君にしては契約金が凄く安いし、給料の話も全然してないよね?」


「・・・もう、バレちゃいましたか」


「やっぱり、ワザとだったんだ?」


「アヤメさんには隠せないですね。皆さんにも後で驚いて貰おうと思ってたんですけど」


「フフ、歩合制ですか?」


「たはっ! 何で分かるんですか・・・もう怖いな~」


「なるほどね、僕にも分かっちゃった♪」


「バレちゃったから言いますけど、ヒメさんには、成り上がって貰おうかなと思ってます。給料は完全歩合制にして、売り上げの1割を支給ってのはどうです?」


「ん~ 売れなかったら0円って事だよね?」


「はい、でもヒメさんの作品に、ギルドの魔女が鑑定書を付けたら、どうなると思います?」


「フフ、流石ヨウ様、きっと飛ぶように売れるかと存じます」


「そっか、私の鑑定なら世間にしれ渡ってるからね、それ名案だわ♪」


「あの、私には何のことか分からないのですけど?」


「フミさんは、ヒメさんが作ったダンジョン産の作品見て無かったんですね、これがそうです」



 僕は買い占めて来たヒメさんの作品を、フミさんに全部見せて上げた。



「ウフフ、理解しましたわ♪ 流石に姫奈さん、良い仕事ですね」


「まあ<鑑定>スキルが無かったら、1~3程度のステータスの違いは分かり難いですからね、今まで誰にも分からなかったのも頷けます」


「でも、それも加工しただけで付与効果が付いたんなら、全ての工程をヒメちゃんがしたら凄い付与効果になっちゃったりして?」


「んふふ、やっちゃったわね、アヤメ?」


「あっ! 今の無し」


「アヤメが、フラグ立てたーーーーーーーーーー♪」


「ちょ、ちょっと、今のは取り消しだって」


「もう手遅れだよ?」


「あはは、スッゴイことになったら、アヤメさんのせいですね」


「もう、つい思った事言っちゃっただけなのよ~」


「「「「「「あはははは♪」」」」」」



 時間も夕方になってきたのでヒメさんと夕食を誘って夕食でも行こうとしたが、今日だけで色々な事を詰め込み過ぎたせいか、かなり疲れていたので続きは明日にすることになり、家まで送って上げた。


 フミさんにも予定を聞いたところ、今日は空いているらしいので、一緒に焼肉屋さんに行く事にした。


 久しぶりの外食だけど中々高級な店で、出てくるお肉も見事なサシが入っており、どれもこれも美味しかった。



「えっとロースとバラ50人前追加で良いかな?」


「あっ! 僕、マルチョウとテッチャン30人前ぐらい良いですか?」


「私はハラミ50人前追加で」


「僕、ゴハン食べちゃお10合ぐらいお願い」


「フフ、皆さんビール追加しますね」


「あー、私はミスジとザブトン30人前にしよっと」


「フミさんは何にする?」


「・・・私はキムチでも貰いますわ」


「あ、あの、本当にそれだけ追加されるのですか? 桁を間違ってないでしょうか?」×店員さん


「あはは、間違って無いわよ。急いでお願いね♪」


「は、はい、畏まりました」



 僕達は肉を焼く時間が勿体ないので、<火属性魔法>を駆使して一瞬で焼き上げドンドン食べていく。



「どうしたの、フミさん?」


「・・・皆さんの健啖家振りに、少々戸惑いを感じてしまいますわ」


「あー、強くなっていくと燃費が悪くなっちゃうのよね、まあ美味しい物が一杯食べれて嬉しいんだけど♪」


「そそ、毎日ダンジョン行って運動してるから太んないしね」


「しっかり食べてカロリーを補充しとかないと、ヨウ様に着いていけなくなっちゃうよ」


「僕みたいに、ゴハンも食べなきゃカロリー足んないよ?」


「フフ、私も頂きますわ♪」


「ウフフ、スーパーモデルのような皆様が高カロリーを欲するなんて、世の女性達が羨みますね♪」


「んふふ、フミさんも、その内分かるようになるからさ♪」


「すみませーん。カルビ100人前追加お願いします」


「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」


「あはは、ヨウ君には敵わないわね♪」



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