第11話 おかしい出前って、こうだったかな
<アヤメ視点>
「おはよ~! ナギサ」
「おはよアヤメ! でっ、早速話してくれるんでしょうね?」
「も~、まだ着替え終わってもないのに焦りすぎよ」
「じゃ、誰かに聞かれても良いって言うの?」
「ん~、駄目・・・」
「ほらっ! 今しかないでしょ?」
「はいはい、言っとくけど極秘事項だからね? 何から話して良いか分かんないけど順序良く簡単に説明するから、途中でチャチャ入れないでよ?」
「分かったわよ、それで?」
「えっとヨウ君がね、昨日ダンジョンから帰って来て、私に相談があるって言うから、相談室へ行ったのよ」
「先ずはヨウ君って呼び方に突っ込みたいけど我慢するわ」
「そうして。それから、どんな相談なのかと思ったらスキルオーブを手に入れたから、どうしたら良いですか? って言うのよ」
「ええっ? 初級ダンジョンでスキルオーブが出たの? 凄いじゃない」
「まだまだ、話はこれからよ問題は。そのスキルオーブが<鑑定>のスキルオーブだったの」
「ええええええええっ? た、大変じゃない?」
「そう、それから大変だったの・・・私もどうして良いか分からなかったから課長と部長に相談したんだけど、それから直ぐに社長を交えた幹部全員で緊急会議になっちゃって」
「うわ~、昨日の緊急会議ってそれの事だったんだ・・・でも、そりゃそうよね<鑑定>スキルを持ってる人が此処に居たら、大阪でもオークション開けるようになるもんね」
「そうなのよ。でも<鑑定>スキルオーブを買えるだけの資金なんて此処に無いからってさ。
社長がありったけの好待遇を付けてヨウ君に<鑑定>のスキルオーブを譲ってくれるように頼んだわけよ。
ヨウ君は売るかどうか迷ってたんだけど1つだけ条件をつけて、それを飲んだら譲っても良いって言ったの」
「そ、それって、どんな条件だったのよ? は、早く言いなさいよ」
「焦らないでよ。そ、それが・・・私が<鑑定>スキルを習得するならって事だったの」
「ハァアアアアアア? それで、ま、まさか?」
「はい、覚えちゃいました。私が日本で二人目の<鑑定>スキルユーザーです!」
「えええええええええええええええええええっ? 凄いじゃない! そんな極秘事項なに簡単に喋ってるのよ!」
「ちょっと怒るわよ? ナギサが話せっていったんでしょ?」
「そりゃそーだけど、誰がそんな事予想出来るのよー」
「でっ、話はまだあるんだけど」
「まだあるの?」
「まあ聞いて。社長がヨウ君に付けた待遇の中に専任受付嬢ってのもあるんだけど、それも私になって欲しいって頼まれちゃって」
「愛され過ぎでしょ? でも<鑑定>スキル覚えちゃったんなら部長級ぐらいになるかもよ? そんな暇あるの?」
「うわっ! 部長級って嘘でしょ?」
「いやいや、それぐらいなるでしょ? だってアヤメが居ないとオークション開催出来ないんだもの」
「うわ~! そこまで考えてなかったな~・・・まあ、それはこれから考えるとして私を選任受付嬢に選ぶなら、もう一人補佐を選んでくれって事になったのよ」
「まあ、普通そうでしょうね・・・って、まさか?」
「うふふ、正解! 私からナギサを紹介しておいたから、今日からナギサはヨウ君の専任受付嬢よ!」
「ちょ、ちょっと。なに人を勝手に巻き込んでるのよ?」
「あれっ? 嫌なの? 専任受付嬢よ? 給料めっちゃ上がるわよ? 毎日出勤しなくても良くなるのよ? そっかー! 嫌なのか~! じゃ誰か他の人に・・・」
「・・・待って。なんて意地悪なの? アヤメ様! わたくし宮上渚は謹んで専任受付嬢をお受けいたします!」
「分かれば宜しい! だから今日食事の約束してたけど、その前にヨウ君の家に行くわよ」
「ひょえ?」
「ヨウ君の家の場所覚えとかないと行けないでしょ?」
「あ~、なるほど。そりゃそうよね・・・それってどこなの?」
「当ギルドが所有する超高級マンションの最上階よ、ナギサも知ってるでしょ?」
「ええええええっ? それって、ひょっとして百億ションって呼ばれてる有名なあれ?」
「正解!」
「うわあああああ! 私あの部屋に入れちゃうんだ!」
「んふふ、私に感謝しなさい」
「感謝、感謝、大感謝よ! やっぱり持つべき者は友達ね♪」
「も~、ナギサ調子良いんだから。さっ、行くわよ」
「アイアイサ~~! うっれしいなっと♪でも、あの可愛い男の子が凄い事になったわね~。やっぱり冒険者って夢のある仕事よね」
「そうね・・・」
・・・ヨウ君がラッキーボーイってだけなら良いんだけど、SPオーブと良い<鑑定>に<虚空庫>のスキルオーブまで取得するなんて、どう考えても唯のラッキーボーイってレベルではないわ。
高確率でオーブがドロップする方法を知ってるか、もしくは何らかの特殊能力があるとしか考えられない。
もし、この事が公になれば大変な事になるはず。
今後、またヨウ君がスキルオーブを入手するような事があれば護衛も考えないといけないわね。
そこまで考えると、あのマンションならセキュリティーも万全だから、まだ安心だわ。
あんな可愛い男の子なんだもの、絶対守らなきゃね。
◇ ◇ ◇
<ヨウ視点>
「はい、分かりました外で待ってます」
「リラさん。お客さんが、もう直ぐ着くそうなので迎えに行ってきます」
「はい、私も行きましょう。今後のためにも、お客様の認証登録しておいた方が宜しいかと」
「そうですね、宜しくお願いします」
僕はアヤメさんとナギサさんを出迎えるため、マンションの正面入り口で立っていると、前方からアヤメさん達が歩いてくる。
僕はブンブンと手を振ると、アヤメさんも手を挙げて笑顔で挨拶してくれている。
隣にいるのがアヤメさんの友達って言ってたナギサさんっぽい、流石にアヤメさんの友達だけあり凄い美人だ。
ベリーショートで明るい髪色をした女性で、綺麗と言うより可愛いって言った方が似合うかもしれない。
しかし、ナギサさんもアヤメさんに負けないぐらい胸が大きな女性だな~、大人の女性感が半端じゃない。
もう僕、大阪から離れれないかも・・・・・
「お待たせヨウ君。こちらが、私の友人でナギサって言うの専任の件引き受けてくれたわよ」
「初めまして三日月様。本日付けを以って専任受付嬢に任命されました宮上渚と申します、これから宜しくお願いします」
「初めまして三日月陽と言います。専任の件、引き受けて下さりありがとうございます、此方こそ宜しくお願いします」
「それと紹介しておきます。こちらコンシェルジュの天満リラさんです」
「初めまして。三日月様のコンシェルジュを致しております天満リラです、宜しくお願い致します」
「へえ、貴女が噂の? 最高のコンシェルジュとお聞きしています」
「いえ、そんな事はありませんが精一杯務めさせて頂きます」
「では、御案内させて頂きます」
リラさんは僕を案内してくれた時と同じようにアヤメさん達に説明し、部屋へ招いてくれた。
「うわあ~! 専用エレベーターって・・・噂では聞いてたけど凄いわね」
「僕もビックリしました。鍵が無いんですよ」
「あはは、凄いですね~♪ 私も一度見てみたかったんですよ」
「あっ、僕には敬語無しでお願いします」
「分かりました。じゃ、今から私もヨウ君って呼ぶわね、私もナギサで良いわよ」
「ちょっと、ナギサ変わり身が早すぎるわよ」
「あはは、良いですよ♪ アヤメさん僕もその方が助かります」
「えへへ! まーまー、本人の希望だしさ」
「も~、調子良いんだから」
そして、下駄箱部屋を出てリビングへ入ると、アヤメさん達は僕と同じように驚いている。
人が驚いているのを見るのは何か楽しいな♪
「うわ~♪ なんて素敵な部屋・・・夜景が凄いんじゃない?」
「予想はしてたけど、流石にちょっと凄すぎるわね」
「ですよね~。どうぞ座って下さい、コーヒーでも如何ですか?」
「ありがとう頂くわ」
「私も頂きます」
アヤメさん達にソファーに腰掛けて貰い、リラさんは皆のコーヒーを淹れてくれたので、寛いで貰う事にした。
「あっ、そうだ! アヤメさんナギサさん。僕、今日お寿司の出前取ったんですけど、良かったら食べていきませんか?」
「ん~、せっかくだから、お言葉に甘えちゃおうかナギサ?」
「うふふ、私は喜んで甘えちゃいます♪」
「もう、ナギサったら」
「あはは、どうぞ御遠慮なく、リラさん良いですか?」
「畏まりました」
リラさんは、またスマホでどこかへ連絡してくれると、直ぐに専用エレベーターが動き出し誰かが来たようだ。
どうやら、もうお寿司が届いたようだ、まだお願いしてから1分も経ってないのに・・・
そして如何にもお寿司屋さんのような割烹着を着た男性が部屋へ入って来た。
「本日は魚座を注文して頂きありがとうございます。心を込めて握らせて頂きます」
「「「ほえっ?」」」
「リ、リラさん? お寿司じゃなくて、お寿司職人さんを出前したのかな?」
「勿論です。お寿司は握りたてが一番美味しいので、さあカウンターの方へお移り下さいませ」
「ちょ、ちょっとヨウ君。魚座って確か超有名なお寿司屋さんよ?」
「ひええ~~! 宅寿司職人なんて・・・」
「・・・あはは、僕も驚いてます」
今までの常識の違いに戸惑いつつも皆でリビングにあるカウンターへ移り、職人さんが見事な手捌きで握ってくれた寿司を堪能することになった。
「くぅぅ~~、美味しい~~~♪」
「ああ~、幸せです~♪」
「うわ~、手掴みで食べるお寿司が、こんなに美味しいなんて初めて知りました」
「申し訳ありません。魚座の寿司は箸で掴むとシャリが崩れてしまいますので御容赦下さい」
「いえいえ、こんなに美味しいお寿司を食べたのは初めてです。見事な腕前ですね」
「ありがとうございます。では、次は本マグロをお楽しみ下さい」
「あっ、リラさんも一緒に食べて下さい」
「いえ、私は後で頂きますので」
「まあ、そう言わずにどぞどぞ」
「では、ご相伴に預からせて頂きます」
魚座のお寿司は、どれもこれも素晴らしい出来栄えで、中盤では美味しい日本酒と一品料理も出てきて大満足だった。
僕達は満腹になり職人さんに今日のお礼を言うと、とても丁寧な対応を返してくれて帰って行った。
またソファーに戻り少し休憩する事にした。皆美味しくて食べすぎたようだ。




