第10話 これはもう別世界と言って良いかもしれない
僕は何とか約束の時間に間に合い、待ち合わせ場所へ行くと、そこには凛とした佇まいの美しい女性が立っていた。
アヤメさんとはタイプは違うが、間違いなく大人の女性といった魅力に溢れた美人さんで見惚れてしまいそうだ。
知的そうな顔立ち、ストレートで艶のある黒髪、スーツを着ているのにハッキリと分かる見事な双丘に縊れた腰回り、抜群のプロポーションが伺える。
アヤメさんの様に、僕はこういった大人の女性がタイプなのかもしれないな・・・
そんな邪な事を考えていると、驚く事にその女性が声を掛けてきた。
「失礼ですが三日月様で御座いますか?」
「はい、そうですけど何故、僕の名前を?」
「申し遅れました。私はコンシェルジュをしております天満 リラ(てんま りら)と申します。此度は三日月様に仕えさせて頂く事になりましたので、これから宜しくお願い致します」
「あっ! 最高のコンシェルジュって聞いてます、天満さんがそうだったんですね」
「フフ、最高は言い過ぎかも知れませんが精一杯頑張らせて頂きますので、どんなことでも私に申し付け下さいませ」
天満さんの様な美しい大人の女性に、どんなことでもなんて言われると鼓動が跳ね上がり顔が赤くなってしまった。
そう言う意味ではないと自分に言い聞かし、必死になって自制することにした。
僕は思ったよりHなのかもしれない・・・
「こちらこそ、どうか宜しくお願いします」
「では、早速新しいマンションの鍵を預かっておりますので御案内致します。三日月様は御昼食はお召し上がりになりましたか?」
「いえ、まだ食べてないのですが、そこのカフェでサンドイッチでも買っていきます」
「サンドイッチで宜しければ私が御用意致します」
「えっ? では、お願いします」
「フフ、私に敬語は不要で御座いますよ」
「あ~、すみません。天満さんみたいな大人の女性に対しては、どうしてもこんな喋り方になっちゃうんです」
「フフ、私の事はリラとお呼び下さい」
「ではリラさんって呼ばせて貰いますね」
「呼捨てで結構なのですが、三日月様がそう言われるのでしたら」
「う~ん、呼捨ては僕にはハードルが高いので勘弁して下さい」
「フフ、畏まりました。では、御案内致します」
「はい」
リラさんは、どこかへ電話しながら優雅に歩いて行く。
ただ歩いているだけなのにずっと見ていられそうだ。
ギルドが用意してくれたのは超高級マンションって言ってたから楽しみだ。
最上階って言ってたしな・・・どんな部屋なんだろう。
場所についてはギルドの近くと言っていたので、歩いて向かうようだ。
2~3分歩いただろうか、周りに立ち並ぶビル群より一際高いマンションが眼前に聳え立っている。
リラさんは誰かから紙袋を預かっているようだが何なんだろう?
「到着致しました。このマンションの最上階が三日月様の部屋で御座います」
へえ~、凄く近いなと思い1階から徐々に視線を上に上げて行き、最上階に辿り着く頃には口をポカンと開け一瞬固まってしまった。
「うわ~、50階建って言ってましたけど、とんでもなく高いし大きなマンションですね」
「はい、ここは大阪でも最上位のマンションになっております」
「・・・本当に僕がこんなところに住んで良いんでしょうか?」
「フフ、三日月様は謙虚な方ですね。私も大体の話はお聞きしましたが、この部屋を貰っても足りないぐらいかと思いますので遠慮は要らないと思いますよ」
「そうなんですか? 僕にはお金だけでも驚くような額だったんですが」
「さあ、入口へ参りましょう。幾つかのセキュリティーシステムがありますので御説明致します」
「はい、お願いします」
リラさんの案内の下マンションの入口へ入ると、エレベーターが並んでいたが素通りし奥へ歩いて行く。
あれっ? 最上階だからエレベーターで行くと思ったけど違うのかな・・・
ついに通路の突き当りまで来てしまった。
「三日月様、少々設定を致しますので此処へ立って頂けますか?」
「はい」
僕は何か分からなかったが、リラさんの言う通り立っていると突き当りだと思っていた壁が開き、少し広めの空間に豪華なエレベーターが1つだけあるようだった。
「三日月様の虹彩認識システムと顔認証システムを登録致しました。今後は自動で三日月様を検出し開閉されます」
「えっ? エレベーターに乗る前にセキュリティーがあるの?」
「はい、このエレベーターは最上階専用エレベーターですので、此処が部屋の玄関と思って貰って結構かと」
「ええっ? 専用って最上階の1部屋だけのエレベーターなの?」
「はい、その通りで御座います」
「うわ~、そりゃ此処からセキュリティーがある訳だ・・・いったいどれだけお金掛かってるんだろ」
「フフ、それだけ最上階の部屋は特別仕様になっております。さあ此方へどうぞ」
僕は豪華なエレベーターに入ると1部屋専用のエレベーターとは思えないほど広く、あっと言う間に最上階へ着いてしまった。
「も、もう着いたんですか? 50階なんですよね?」
「はい、高速エレベーターとなっておりますので、ストレスを感じさせる事無く数秒で移動出来ます」
「・・・何か色々凄いですね~」
「フフ、さあ御進み下さい、此処は靴を脱ぐ部屋になっております」
「えっ? 靴を脱ぐ部屋って、この部屋が下駄箱なの?」
「はい、此処で脱いだ靴は自動で洗浄殺菌され、収納されるようになっております」
「・・・もう僕の理解が追い付かないのですが?」
「直ぐに慣れるかと思いますよ、此処を出るとリビングになっております。どうぞ御進み下さい」
「はい・・・ほえっ!」
下駄箱部屋を出ると、僕は驚きのあまり変な声が出てしまった・・・
壁が全て窓ガラスになっており柱すらない、その光景は地上50階だけあり見事な景色になっている。
設置されたソファーは、一体何人座れるのか分からない別世界のような豪華で広い空間だった。
「うは~~~~~~~~~~!!!!!凄い景色・・・まるでセレブみたいな部屋じゃないですか?」
「フフ、此処がリビングダイニングキッチンになっており後は寝室、客室と複数用意されております」
「あ、あの窓ガラスなんですよね? 殆ど見えないんですが柱も無いし」
「フフ、御心配無く。ちゃんとありますよ?
高透過偏光強化ガラスと申しましょうか、ダンジョン素材から開発された新技術のガラスで出来ております。
紫外線をカットし、防弾ガラスを超える強度を有し、素晴らしい透明度を誇りますが外からは全く見えないようになっております。
此方のコントロールパネルから操作する事により、遮光機能や映像機能が付いており、テレビやパソコンのモニターとしても使用出来ます。
それではソファーにお座り下さい、サンドイッチを御用意致しました。飲み物はコーヒーで宜しいでしょうか?」
「えっ? はい、でも何時の間に・・・あっ? さっき貰ってた紙袋って中身はサンドイッチだったんですか?」
「はい、ギルドを出る前に手配しておきました」
「うは~、あんなに短時間で・・・リラさんって凄い人なんですね」
「フフ、さあ、どうぞコーヒーで御座います」
「はやっ! い、いただきます」
参った・・・最高のコンシェルジュって言ってたけど、リラさんって恐ろしい人かも・・・
それにしても凄い部屋だな~! 妹のヒカリが此処に来たら驚くに違いない。フフ、その時が楽しみだ♪
「美味しい・・・って、これギルドのカフェにあるサンドイッチじゃないような?」
「はい、大阪でも有名な店のサンドイッチを御用意致しました」
「・・・・・リラさんって本当に凄い人なんですね?」
「お褒めに預かり、光栄でございます」
「あっ? そうだ。今日2人程お客さんが来られるんだけど、僕にもコーヒーの作り方教えて貰って良いですか?」
「いえ、その様な事は私に申し付け下さい。これからはダンジョンに行かれる時以外、近くに待機しておりますので」
「ふあ~、コンシェルジュってそれが普通なんですか?」
「いえ、私は特別かと思われます。ですが、それに相応しい報酬を頂いておりますのでお気にせず」
「ありがとうございます。でも、出掛けたい時や休みたい日があれば言ってくださいね?」
「はい、ありがとうございます」
「お客様が来られるのでしたら、お食事も用意出来ますが如何致しますか?」
「それなら、お寿司の出前って取れるかな?」
「勿論で御座います」
「じゃ、一応用意しといて貰おうかな、アヤメさん達が食べなくても僕が食べたら良いしね」
「畏まりました御用意致します」
「きっとギルドが終わってからだろうから、まだ時間あるんだけど」
「リラさん。もし良かったら、この付近の観光案内して貰っても良いかな? 妹や友達が遊びに来るまでに覚えておきたくて」
「畏まりました、御車を用意致しますね」
「そっか、そういえば車も自由に使えるって言ってたけど、そうなのですか?」
「はい、24時間何時でも御利用になられます」
「うわ~、便利すぎですね。楽しみです♪」
部屋の説明は全然終わってなかったけど、部屋の鍵とか存在しないのが今までと違いすぎる・・・
知り合いが来ても一度、各種セキュリティーシステムに登録しておけばモニター越しに入って貰えるようだ。
う~ん、何から何まで凄いな。もう都会だからってレベルじゃないような・・・
この最上階専用エレベーターも止まろう思えばどの階でも止まれるらしい。
リラさんは下の階で部屋を借りており、そこで待機してくれているそうだ。
下へ下りる前にリラさんはスマホで車を手配してくれていたが、驚く事に高速エレベーターで下へ下りると既に車が待機してくれていた。
いったいどれだけ早いんだよ~
ちょっと怖くなるぐらいだったりします・・・
しかも、また車が凄い! リムジンって言う車らしいけど、長い長すぎる!
車内はシートって言うか、これもうソファーだよね? なんか僕の笑顔が引き攣って来たよ・・・
僕が近づくと、運転手さんが下りて来てくれて挨拶をしてくれる。
「初めまして。私は三日月様の専任運転手になりました神戸 集と申します。宜しくお願いします」
「此方こそ宜しくお願いします」
うひゃ~! 驚いた。まさか、女性の運転手だったなんて。
しかも、凄く綺麗だ! 都会には美人しかいないのか・・・
運転手らしいピシッとしたスーツで帽子を被っているから髪形は分からないが、特徴的なのは身長が凄く高い。
ネクタイが不自然に盛り上がる程の双丘に縊れた腰、細くて長い脚はまるでモデルか女優さんの様だ。
「どうぞ、お乗りください」
「すみません、お願い致します」
そして、まるでどこかの社長になった気分で観光に出かける事になった。
明日からは下書きが無くなるまで毎日投稿します。
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