第104話 理不尽なまでの力って
僕達は無事地下10階のボスを討伐し、地下11階に辿り着いた。
そこは洞窟から一転し、平原と森林に切り替わり照り付ける太陽が眩しかった。
「ようやく、お目当ての階層に着いたわね。紫藤さん、ガイドして貰って良いかな?」
「ええ、でもごめんなさい。スキル情報は、幾らガイドを引き受けたと言っても簡単に教える事は出来ないんです」
「んふふ、そんなの良いって。此処からの階層で採取出来る食材の情報が聞きたいな、特にフルーツね♪」
「もう、ナギサったら慌てないの」
「それぐらいなら大丈夫ですよ。この階層ではキングトリュフが採れますが、発見が非常に難しい食材なんですよ」
「うわ~ 高級食材じゃないですか! ダンジョン産ならメチャクチャ美味しそうですね」
「フフ~ 頑張って探しますね♪」
とりあえず僕達は、キングトリュフを求めて探す事になったけど、地中に埋まっているため、普通に探しても発見は困難だろう。
でも、僕達には便利なスキルがあったりする。そう、大阪の上級ダンジョンのレッドドラゴンから手に入れた<千里眼>スキルだ。
これは僕のキーポイントスキルだから迂闊に習得する事は出来ないけど、僕以外の面子は既に習得済みだから、皆に任せる事にした。
皆に聞いたところ<千里眼>スキルは、探し物であっても大体の位置が見えるそうだ。
とりあえず感の鋭いノノさんに<千里眼>スキルを使って、探して貰う事にした。
「フフ~ 私の出番ね♪ えっと、こっちにあるような気がするわ」
ノノさんの誘導の下、歩いてダンジョンを進んで行くと何も無い平原でノノさんが立ち止まった。
「ん~ ここら辺かな~ <アースメイク>!!!」
ノノさんは何も特徴がない平原の一角を<土属性魔法>を器用に使い掘り返していく。
「あったーー♪ ねーねー、これでしょ?」
「「「「「おお~ パチパチパチ!!!」」」」」
「本当に見つけたの?」
「・・・驚いた。間違いないわキングトリュフよ」
「バカな、なんで分かるんだよ?」
「フフ~ 感かな? この付近にマダマダありそうな気がするのよね」
「相変わらずノノの感は凄いですね。私には、この辺り程度しか分かりません」
「えへへ♪ それほどでも」
「へええ~ キノコの一種だと思ってたから雑木林にあると思ったら、こんな平原で採れるんだ」
「じゃ、ありそうな所を掘り返して行くから皆で探そっか」
「「「「「了解♪」」」」」
「紫藤さん達も一緒に探しましょ」
「え、ええ」
「今日だけで何度驚かせてくれるのか、凄い人達だよ」
それからはトリュフ祭になった。
ザクザク採れるから、紫藤さん達も楽しくなってきたのか、楽しみながら採集していった。
「フー、何時の間にか必死になって探してたな。高額なキングトリュフが面白い様に採れるんだから無理も無いか」
「ウフフ、そういえば、私達が採集するのは久しぶりね」
「たまには採集も面白いですね♪ 三日月さん達が居なけりゃ、こんなに採れないだろうけど」
「そうなんですか? せっかくダンジョンに来てるのに勿体ないですね。僕達は採集もよくしますよ」
「んふふ、私達は、美味しい物が好きだもんね~」
「そそ、だって、ダンジョン産の物って美味しいんだもの♪」
「結構、白いトリュフも混じってますね」
「呆れた知らずに採ってたの? それはクイーントリュフよ。キングトリュフより高額で売買されてるわ、今なら1つ300万ぐらいかしら」
「うわっ! じゃ、数十億円分ほど採ったんじゃない?」
「シオさんへの良いお土産が出来ましたね。じゃ、そろそろ次の階層に行きましょうか」
「お、おい、俺達が採ったトリュフ忘れてるぞ?」
「それは、リョウマさん達の分じゃないですか」
「正直、ちょっとぐらい貰えるかなとは思ったけど、全部貰って良いのか? 売れば数億円になるんだぞ」
「あはは、僕達は売りませんからね。どうぞ、遠慮なく持ってって下さい」
「そだよ、自分で採ったんだもの、自分で売るか食べるかしなきゃね」
「これ以上何を言っても、受け取ってくれなさそうですね。ガイド報酬にしては破格になったものです」
「まだまだ、これからですよー! 今日はメロンが本命ですから」
「キャー、嬉しー、ヨウ君大好き♪」
「ハシャギ過ぎよ。ナギサ?」
「あはは、僕も楽しみです」
それからは魔物を倒しながら進んで行き、地下12階では白ニンニクに黒ニンニクを探し当てた。
これからの肉料理が格段に美味しくなりそうな事に喜び、トリュフ以上に採集した。
ちなみに、ニンニクはトリュフと違い黒い方が価値が高いらしい。こういうのも面白いなと思う。
道中スキルを持っている魔物も倒していったが、残念ながら持っているスキルばかりだった。
「「「ゼェー、ゼェー! ハァー、ハァー」」」
「三日月君、ちょっと休憩しよっか?」
「ああ、なるほど、疲れちゃいましたか。じゃ、休憩しますね」
「ごめんねナギサが急かしちゃって、回復しとくわね<ヒール>!」
「うわ~ 一気に楽になっちゃった」
「当たり前の様に<回復魔法>まで使えるのね?」
「フゥー、いったい、どんな体力してるんだよ」
「これでも、メチャクチャゆっくり進んでるんだよ?」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
「人も居ないみたいだし、僕のジープだすよ」
「そうですね、そろそろペース上げましょうか」
「私達Aランクよね? 新人扱いなんだけど」
「私のプライドもどこかに行っちゃったわ、どこまで規格外な方達なのか」
僕達は少し休憩した後、紫藤さん達をツドイさんのジープに乗って貰い、移動速度を上げることにした。
舗装路じゃないから、そんなにスピードは出せないんだけど、それでも時速100キロ程は出ているかな。
今の僕達の移動速度は既に車より早いので成長の程が伺える。
「信じられねえ。今度は<虚空庫>からジープかよ? 便利すぎるだろ」
「それもだけど、車より早い三日月さん達って・・・」
「ようやく、分かってきたけど、完全に化物クラスだよな?」
「もう、私は驚かない事にしたわ、完全に理解の外よ」
移動速度を上げた事により順調に歩を進め、いよいよプラチナマスクメロンがある地下13階に辿り着いた。
どうやら、お目当ての物はテーブルマウンテンのような高台の上にあるようだ。
ノノさんの誘導の下、山登りをしているが、普通の冒険者なら中々辿り着くのは厳しい場所の様だ。
「ん、ちょっと揺れるけど我慢だよ」
「うわわわわ、ちょっとじゃないような?」
「ガタガタガタガタ! ゴトゴトゴトゴト!」
「オワワ!」
中々傾斜の厳しい所もあったけど、流石ツドイさんが運転しているだけあって問題なく走破し、僕達は目的地に辿り着いた。
テーブルマウンテンの頂上には遠目でも分かるぐらい、タワワに実った大きなメロンがまるで畑のように並んでいる。
「うわー、うわー、凄ーい、美味しそー♪」
僕達6人は、ハイタッチして喜びを分かち合う。
「さっ、紫藤さん達も一緒に収穫しよー」
僕達6人は大喜びで、プラチナマスクメロンの収穫に精をだした。
「フゥー、死ぬかと思った。しかし、本当に見つけやがった、なんでもありかよ」
「ああやって、楽しそうにしてるとこ見ると、恐怖を感じる程の強者には見えねえんだけどな」
「そうね・・・何て言うか、羨ましいぐらい自由に生きてるって感じがするわ。
敵対する者には、冷酷とも思える程叩きのめし。
友好的な者には、どこまでも優しく。
楽しむ時は、思い切り楽しむ。
それを可能にするだけの、圧倒的なまでの強さ。
羨ましいような、恐ろしいような」
「ウフフ、でも私、三日月君達を気に入っちゃいました。私達も行きましょっか」
「そうね、私達も楽しみましょうか」
「「「「「ういー♪」」」」」
僕達は早速収穫してようと思ったら、邪魔するかのように魔物の群れが近づいてくるようだった。
「皆さん、魔物が近づいてます。結構大型で数は30体ぐらいですね」
「も~ 良いとこなのに意地悪な魔物ね」
「んふふ、怒らないの♪ サクッと倒しちゃいましょ」
僕達は先に魔物を殲滅することにし、戦闘態勢をとって待ち構えていると、現れたのは大きな鹿の魔物だった。凶悪で綺麗な赤い角が目立っている。
「うおお! コーラルディーアじゃねえか!」
「クッ! 何て数なの? 1体でも厳しいのに、三日月君。私達なら1~2体相手するのが精いっぱいだわ」
「了解しました。そちらへ1体誘導しますね」
「でも、何かこの魔物怒ってるみたいに見えるわね?」
「フフ、ひょっとしたら、プラチナマスクメロンを主食にしてるのかもしれませんね」
「あ~ きっとそうだよ。リラ姉の言う通りかも」
「悪いけど、今日は渡す訳にはいかないわ、負けないわよ~」
「あはは、ナギサ気合入り過ぎなんだから」
コーラルディーアの群れの中に運よくスキルオーブやSPオーブを持っている個体も居たので、上手く誘導してSPオーブを持っている個体の方を紫藤さん達と戦闘になるように仕向けることにした。
ドロップ率を上げる為に僕が攻撃しちゃうと黄色のSPオーブになっちゃうので、リラさんに軽く攻撃を入れて貰ってから紫藤さん達に誘導して貰った。
リラさんは<激運>スキルを所持してるので、これでかなりドロップ率は上がる筈。
僕達はサクサクとコーラルディーアを倒して行き、紫藤さん達の戦闘を見物する事にした。
紫藤さん達の戦闘を見ていると、上手く連携を取り確実にダメージを稼いでいた。
これなら加勢しなくても大丈夫だろうと思い静観していると、最後まで無傷で倒し切った様だ。
「お疲れ~ 良い連携だったわ」
「ありがとう。何時もなら自慢出来るような事なんだけど、貴方達と居たら自分の弱さが恥ずかしくなるわ」
「全くだ、どうやったら、そんなに強くなれるんだよ」
「あはは、それよりも、良い物ドロップしてますよ」
「えっ? ホントだ~ SPオーブとコーラルホーンがドロップしてるわ♪」
「おいおい、貰っちまって良いのか?」
「もちろんですよ」
「何か悪いわねガイドしに来たのに、こんなに稼がして貰っちゃって」
「いえいえ、十分助かってますよ」
「それより、早く早く」
「そんなに慌てなくても、メロンは逃げないわよ」
「あはは、じゃ収穫しましょうか」
ハシャギ捲るナギサさんと共にプラチナマスクメロンを狩り尽くし、大変な量になったので紫藤さん達の分も僕の<虚空界>に収納して上げた。
今日は色々と採集を頑張ってたので、そろそろ良い時間になり今日はこれで帰る事にした。
預かっている紫藤さん達の素材は、ほとんどギルドの買取りセンターで売るそうなので、ギルドまで運んであげることにする。
しかし、東京では有名らしい紫藤さん達でも<虚空庫>スキルは持ってないのか・・・
そういえばロシアのソフィアさん達も習得してなかったからな。
僕達は<虚空庫>スキルの便利さにスッカリ慣れちゃったけど、改めて希少なスキルなんだと感じさせられる。
ギルドの買取りセンターへ行くと、流石に紫藤さん達は有名なだけはあり、直ぐに個室に通されることになった。
「紫藤さん、何時も御利用ありがとうございます。今日は何を売って下さるのですか?」
「ああ、言うより見せた方が早いと思う。三日月君、此処に出して貰って良いだろうか?」
「分かりました。預かってる素材を全部出しちゃいますね」
僕はテーブルの上に、紫藤さん達から預かっていた素材を次々に出していく。
「えっ? ええっ! <虚空庫>持ちの方なんて久しぶりに見ましたよ」
「それに何ですか! この豪華な食材は? レアな食材ばかりじゃないですか、うわっ! コーラルホーンまで」
「流石に紫藤さん達ですね。今日はコーラルディーアを倒して来たんだ」
「あー、いやそうなんだけど・・・今日は勘弁してくれると助かるのよ、少々恥ずかしくてね」
「ウフフ、今日はお連れさんが居るので謙遜されてるのですね。でも、お連れさんも<虚空庫>持ってるなんて凄い方達なんですね」
買取りセンター受付嬢の言葉に、紫藤さん達は苦笑していた。
気を使って、僕達の情報を言わないでくれたのだろう。
「即金で買い取る事も出来ますが、食材は明日の競り市へ出した方が良いですよね。コーラルホーンもオークションに出した方が高値が付くと思われますが、如何致しますか?」
「ええ、急がないので、そうしてくれると助かるわ」
「分かりました。それでは、早速情報を流しておきますね。きっと、明日の競り市は凄い事になりますよ」
こうして用事も終わったので、紫藤さん達にガイドのお礼を言っておいた。
「いいえ、お礼を言いたいのは此方の方だわ、大阪の冒険者はどうなってるの? 今日は驚きの連続でした」
「なあ、大阪には三日月達のような強者ばかりなのか?」
「あはは、強者なんて言われると擽ったいですね。僕達はマイペースなんで他の冒険者は余り知らないんですけど、ロシアのソフィアさん達とか強かったですよ」
「ええっ? ソフィアってロシアのSランク冒険者じゃないですか、そりゃ強い筈ですよ」
「なるほど、今大阪には各国の強者が集まってるのね。そんな強者を見てたら強くなるのも必然でしょうね、少し大阪に行きたくなりましたよ」
「大阪に遊びに来るなら連絡してね、今度は私達がガイドするわよ」
「フフフ、とても貴方達のレベルには付いて行けないわ。でも、私達も頑張って強くなるわ」
「んふふ、また模擬戦しましょうね♪」
「また、手加減してくれるならね?」
「あはははは♪」×全員
色々と良くしてくれた紫藤さん達と別れ、僕達は一旦ホテルに帰る事にした。
「しかし、スゲエ奴等もいたもんだな」
「ウフフ、彼女達は、そんなに凄かったのかしら?」
「おっと、驚いた。藤堂院さんでしたか」
「ごめんなさい。その様子ならダンジョンまでガイドしてきたみたいね」
「藤堂院さんも彼達が気になりますか?」
「そりゃーね。だって、貴女に模擬戦で勝つ新人冒険者なのよ?」
「フフフ、藤堂院さんでも、彼達の情報を詳しく掴んでないのですね」
「分かる? 頭の痛い事にあれだけの実力がありながら、殆ど分からないのよね」
「それで私達に情報収集にって所ですか」
「ウフフ、只とは言わないわよ?」
「これは何時もお世話になっている藤堂院さんだから言うのですが、彼達にはあまり拘わらない方が良いですよ?」
「それは、どう言う事なのかしら?」
「いくら藤堂院さんでも、危険だって事ですよ」
「ん~ 私もそう思うな~ 藤堂院さんなら、もう彼達とダンジョンで揉めた者達の情報は入ってるんでしょ?」
「ええ、もちろんよ。ダンジョン内で彼女達に襲われたとギルドへ怒鳴り込んできた見たいね」
「あはは、バカな奴等だぜ。よく恥ずかしくないもんだな」
「藤堂院さん言っておきますが、悪いのは彼奴らですよ?」
「ええ、聞かなくても大体分かるわ素行の悪い彼等の事だから。
大方、彼女達にチョッカイだして、逆に彼女達に叩きのめされたんでしょ?
でも、素行が悪いと言っても彼らの実力は紫藤さん達と同じかそれ以上よね?
いくら模擬戦で紫藤さんに勝ったといえど、アヤメさんだけじゃ厳しい相手の筈。
他の女性達の実力も高い事が予想されるわ」
「フフフ、藤堂院さんは、どうやら大きな勘違いをしてるみたいですね。それも仕方の無い事ですけど」
「そうだよな、分かる訳ねえよ」
「そうよねー、だって三日月君達の事を、彼女達って言ってるもんね」
「どういう事なのよ?」
「簡単に言えば彼女達ってのは適切な言い方じゃ無いって事ですよ、三日月君達もしくは彼達と呼ぶ方が適切ですね」
「まあ、つまり。奴等を叩きのめしたのは三日月たった一人なんですよ、俺達も見てたけど勝負にもならないって言うか、子供扱い以下なんだもんな」
「あー、でもアヤメさんだけじゃなく、他の彼女達も恐ろしい化物でしたよ? 規格外も良いとこです」
「正直、私は彼達が恐ろしい・・・間違っても敵対したくないわ。いいえ、不快にさせるだけでも命懸けだと言って良い。藤堂院さん。忠告はしましたからね、それでは」
「・・・何者なのよ? 私の鑑定では彼は間違いなく普通の少年なのに」
◇ ◇ ◇
ホテルに帰ってから、今日取得したスキルや宝箱を見る事にした。
紫藤さん達が居たから、確認出来なかったからな~
まず、地下10階のボス戦で倒したキメラからは<合成>スキルを取得していた。
これは複数の素材を合成する事が出来るスキルのようだ。
職人さん達に習得して貰ったら、凄い装備が生まれるかもしれない。
素材はキメラの翼・爪・皮がドロップしたようだ。
次に宝箱を取り出し、皆で中身の確認をする。
「えっと、普通の宝箱から見てみるね。薬品みたいね、ソーマって言うのが5本入ってるわ」
「うわ~ 凄いわよ。このソーマって薬品、一定時間全てのステータスが2倍になるみたい」
「また、とんでもないドーピング薬ね」
「お~ 僕達の切り札になりそうですね、非常用に取っときましょう」
「ヨウ君がピンチになるのって、想像出来ないけど保険は大事よね」
「そうですよ、何があるか分かりませんし」
「フフ、相変わらず慎重ですねヨウ様は」
「えっと、次いくね黒宝箱の方は。うわ~ 月光種って言う種みたいよ」
「へええ~ また楽しみが出来ましたね」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「ぼ、僕は、別にフラグを立ててないですよ?」
「きっと、またとんでもない物が実る気がしてならないわ・・・」
「あはは、またシオに頼んで育てて貰わないとね♪」
どうも僕が何か言うと、とんでもない事になるような誤解を招いているが、気のせいだと思いたい。
コーラルディーアからは<マッピング>スキルが手に入っていた。
鑑定した所、一度訪れた場所や地図等で把握した場所を自動で地図化してくれるようだ。
これはダンジョンを攻略する上で、非常に有用になりそうなので嬉しい限りだ。
是非全員に習得して貰おう。
コーラルディーアからドロップした素材である、コーラルホーンも鑑定してみた。
その美しさから美術品としても非常に価値が高く、また錬金術の素材としても高額で取引されているようだ。
思った以上に有用なスキルが取得出来たため、大阪に帰る前に一定数確保する事にした。
翌朝、皆と朝食を取った後、昨日見て無かったクエストも確認しておこうと言う話になったので、ダンジョンへ行く前にギルドに寄る事にした。
ギルドへ着いた僕達は、どんなクエストがあるのか其々確認していく。
ちなみにクエストは現代らしく電光掲示板になっており、受付に行くとスマホにクエストの詳細を転送してくれるようだ。
「ふんふん。クエストは大阪で出ていたものと変わりませんね」
「あっ! この珪砂の納品クエストって、私達の部屋に使われているガラスの素材じゃないかな?」
「あー、あの凄いガラスの素材って、昨日行ったダンジョンで取れるんだ」
「なるほどね~ クエストを見るだけでも結構情報が手に入るのね」
やはり、場所が変わればクエストを見るのも面白い。
皆と楽しく見ていると、ギルドの鑑定人である藤堂院さんが話しかけてきたようだ。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます。藤堂院さん」
「こっちのダンジョンは気に入ったかしら?」
「そうですね、色々と良い採集物や、高額買取りの素材とか中々良いですね」
「私はメロン気に入っちゃったわ♪」
「ウフフ、それは良かったです。ところで昨日、冒険者と争ったみたいね?」
「あー、そう言えばゴミクズみたいな冒険者がいましたね」
「フフ、中々辛辣ね。ちょっと、その事で話を聞いておきたいんだけど良いかしら?」
「すみません。今からダンジョンに行きたいので、ちょっと無理ですね」
「えっ? 相手は君達に襲われたから訴えるって言ってるのよ?」
「へええ~」
「ギルドにちゃんと説明して、印象良くしといた方が良いんじゃないかしら?」
「フフ、藤堂院さん。何か勘違いしているようですね」
「私が? どういう意味なの?」
「私達はクズ共など放置しようと思っていましたが、クズ達が訴えると言うならば私達も相応の対応を致します。もちろん、その時はギルドも訴えますので覚悟しておいて下さい」
「な、何故、ギルドが訴えられないといけないのよ?」
「あんなクズ共を冒険者として認めたのはギルドでしょう? 当然その責任を取って貰いますよ」
「そんな事出来る訳が・・・」
「フフ、出来ないと思いますか? 冗談に聞こえましたか? 私も舐められたものですね。
既に私の手には、あのクズ共が犯して来た数々の証拠が揃っております。
それも、冒険者に成る以前のものまで。
ギルドはロクに調べもせずに犯罪者を冒険者と認め、ダンジョン内の犯罪行為を助長したと言って良いでしょう。
もし、ギルド職員でクズ共の犯罪に加担している者が居たら、相当な数の首が入れ替わるでしょうね。
藤堂院さん。今、貴女がすべき最善の一手はヨウ様に迷惑が掛からないよう、クズ共に相応の処分をし、ヨウ様に対し少しでも印象を良くする事でした。
貴女は対応を間違えました。今日と言う日を一生後悔する事になると、私が保証しましょう。
悔やんでも悔やんでも、もう取り返しは付きません。では、御機嫌よう」
リラさんは憐憫な眼差しを藤堂院さんに向け、僕達と共に何事も無かったようにギルドを後にした。
「そ、そんな事って・・・」