第103話 実力の計り方って難しいですよね
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「すみません紫藤さん、ママさんと話混んじゃって」
「それは良いですが、頭が痛くなるような会話だったような」
「あはは、気のせいですよ、それよりも明日東京のダンジョンに行って見たいのですが、お勧めのダンジョンをお聞きしても良いですか?」
「それは良いですが、中級ダンジョンでしょうか?」
「ん~ ダンジョンランクはどれでも良いのですが、良いスキルがドロップするとこが良いですね」
「んふふ、ダンジョンガイドも宜しくね。紫藤さん♪」
「わ、私も、同行するのですか?」
「東京のガイドをお願いしたんだから、当然ダンジョンも含まれるわよね?」
「やれやれ、私はえらい賭けをしてしまったようですね」
「紫藤さんにもメリットはあると思うわよ、私達の戦闘見たくない?」
「分かりました。私のパーティで同行しても良いでしょうか?」
「もちろん、良いですよ」
それから、紫藤さんとサエさんに東京のダンジョンの事を色々聞いて、大阪のダンジョンとの違いに話も盛り上がり、楽しいお酒を飲む事が出来た。
リョウマさんも綺麗な女性に囲まれて上機嫌のようだった。
楽しい時間が過ぎるのは早い物で、そろそろ帰る時間になったので、紫藤さん達と明日の待ち合わせ場所を決めて帰る事にした。
「三日月様、今日のお代は結構ですよ。連絡をお待ちしておりますわ」
「いや悪いですよ、結構飲んじゃいましたから」
「いえいえ、先程の話が本当なら安い物ですわ」
「ん~ じゃ、お言葉に甘えさせて貰いますね」
「でも、ママさんにはちょっとした頼み事をするかもしれませんので、これ預かっといて貰えますか?」
僕はVIPルームのテーブルの上に、現金で5億円ほど積み上げていく。
「こ、これは一体?」
「僕が頼み事をしたときに使って下さい。全部使っちゃって結構ですので」
僕達は上機嫌で高級クラブを後にし、紫藤さん達と別れホテルに帰る事にした。
「ママ、あの少年って一体何者なの? こんな大金初めて見たわ」
「うわ~ これ数億円あるわよ」
「私にも分からないわ。大阪の冒険者って事ぐらいしかね、思い切ってお代無料にしちゃったけど大正解だったわ」
「今日のお代って2千万ぐらい使ってたわよね? ママすごーい」
「ウフフ、ここぞって時は女は度胸なのよ、覚えておきなさいね」
「ママも凄いけど、何の預り証も無しに数億円置いていくお客さんも、とんでもないよね?」
「きっと、これぐらいのお金が無くなっても良いのでしょうね。でも、そう言う人こそ信用を尊ぶのよ、絶対に不誠実な事しちゃ駄目。二度と会ってくれなくなるわ、このお金も1円単位でキッチリ管理するわよ」
「さっすがママね、勉強になるわ」
◇ ◇ ◇
<ヨウ視点>
翌日僕達はホテルで朝食を取り、紫藤さんと待ち合わせをしているギルド本部まで行く事にした。
ツドイさんの車でギルド本部へ着くと、既に紫藤さん達が待ってくれていたので車から下りて挨拶する事にした。
「おはようございます紫藤さん、今日は宜しくお願いしますね」
「ああ、約束は守るよ」
「よ~ 昨日はありがとな、すっげえ楽しかったよ」
「いえいえ、良いですよ。リョウマさん」
「へえ~ 本当に可愛い顔してるじゃない。君、強いんだってね?」
「あ~ 本人の前で可愛いって言っちゃ駄目って言ったでしょー」
「あはは、良いですよサエさん慣れてますから、もう誉め言葉として喜ぶようにします」
「んっ? どうしたんだ。お前達?」
「ああ、すまん。リョウマが綺麗な女性達って言ってたが驚いた。とんでもなく美しい女性達じゃないか」
「本当に紫藤が模擬戦で負けたのかよ? 美しさでは納得だが」
「煩い奴らだな、やっぱり帰るか?」
「冗談だって。しかし、どっから見ても冒険者には見えねえよな、スーパーモデルの方が信じられるぞ?」
「んふふ、お上手ですね」
「すまない、此奴等の非礼は詫びよう。良いか? もう一度言うが今日はガイド役で来たんだからな、失礼な事はするなよ」
「分かってるが、一つだけ聞かせてくれよ。みんな彼氏は居たりするのかな?」
「フフ、私達はヨウ様のハーレムメンバーです♪」
「「「「「「ええっ?」」」」」」
「5人共その、少年の彼女なのか?」
「んふふ、ヨウ君はハーレムに抵抗があったんだけど、頼み込んでみんな彼女にして貰ったんだよね~」
「うわ~ こんなに綺麗な女性を5人も囲ってるなんて、凄いのね三日月さんって」
「照れちゃいますね。彼女達は、僕の大切なお嫁さんです」
「僕、嬉しいよ三日月君」
「も~ こっちの方が照れるでしょー」
「フフフ、残念だったなお前達」
「「「・・・爆発しろ!!!」」」
「あはは、お前達も彼女作るんだな」
「そう言う紫藤さんも、彼氏居ないじゃ無いですか」
「うっ! 私は出来ないんじゃない、私より強い男が中々居ないだけだ」
「アヤメさんが男なら、彼氏候補になったんですけどね~」
「んふふ、女じゃ駄目かしら紫藤さん?」
「なっ! バカな事言ってないで行きますよ」
僕達は笑いに包まれながらツドイさんが運転する車に乗り込み、ダンジョンに向かう事にした。
紫藤さんお勧めのダンジョンは、東京でも人気がある世田谷区上級ダンジョンらしくて直ぐ近くにあるらしい。
ダンジョンに着くと流石に人気のあるダンジョンなのか、冒険者が多く活気に溢れていた。
「さっ、着いたわよ。此処が私達が良く来ている上級ダンジョンなの、スキルの事は兎も角として高額で売れる素材も多いし、地下10階以上から色々な食材も取れるからお勧めよ」
「えっ? それってフルーツも採れるのかな?」
「そうね、中々発見が困難だけど、プラチナマスクメロンとか高級品として有名よ」
「うわー、うわー、行きたい! スッゴク採りに行きたいよー」
「ウフフ、フルーツが好きなのね。でも、貴方達には初めてのダンジョンだから、地下1階から行くとして今日は無理かな」
「ん~ それなら紫藤さん達は、先に地下10階で待ってて貰えますか? 僕達も急いで向かいますから」
「ええっ? 地下10階まで早くても数日掛かるわよ?」
「んふふ、良いから良いから。じゃ、地下10階のボス部屋前で待ち合わせしよっか」
「おいおい、本気で言ってるのかよ?」
「ごめんね。ナギサが我儘言っちゃって、急いで行くから気長に待っててね」
「まあ、私達は良いですけど」
僕は紫藤さん達にブンブンと手を振り、東京に来て初めての上級ダンジョンに潜る事にした。
「ウフフ、本当に三日月君って可愛いですよね、紫藤さん♪」
「まあ否定はしないけど、あれで本当にアヤメさん達が言う様に強いとは、とても信じられないな」
「な~ 俺達もう今日は帰っても良いんじゃないか? 今日中に地下10階なんて無理だろう」
「そう言いたい気持ちは理解出来るけど駄目です。さあ、行きますよ? 万が一でも約束を違える訳にはいきませんからね」
「フゥ~ そう言うと思ったよ」
僕達はダンジョンに入り地下1階へ下りると、そこは見慣れた洞窟タイプのダンジョンで<気配感知>したところ、広さも大阪のダンジョンと同じぐらいだった。
「う~ん、何か久しぶりにダンジョンに来たような気がしますね~」
「フフ、ヨウ様嬉しそうですね」
「三日月君、本当にダンジョンが好きだよね」
「んふふ、ヨウ君の持ってる凄い能力が無かったとしても、毎日ダンジョンに通いそうね」
「あはは、そうかもしれませんね。だって、楽しいじゃないですか。ワクワクしません?」
「フフ~ ダンジョンって危ない所なんだけど、ヨウ君は絶対無理しないもんね、すっごく強いのに慢心しないのがダンジョンを楽しむ秘訣なのかもね」
「実際、弱かった時はスライムハンターって言われるぐらいコツコツと頑張ってたもんね」
「そ、それは忘れて下さいよ。でも、毎日スライムばかり倒してる時も楽しかったのは事実ですけど」
「あはは、まあ、私達もヨウ君のお陰で冒険者が大好きになっちゃったしね」
「そう言って貰えると僕も嬉しいですね。紫藤さん達も待たせてる事だし行きましょうか」
「「「「「了解よ!」」」」」
僕達は走りながらオーブやスキルを持っている魔物だけを倒していく。
そこそこ、他の冒険者も居るので、時には<隠蔽>と<気配遮断>を使い、駆け抜けて行った。
どんどん地下へ下りて行くにつれ、他の冒険者も少なくなってきた。
なのでスピードを上げていく。それでも、オーブとスキルは回収してるので、地下10階に着くまでには1時間近く掛かってしまった。
もうすぐ地下10階のボス部屋に着くところで、紫藤さん達を見つけた。
僕達に合わせて、ゆっくりと来てくれたんだろう。
「紫藤さん、お待たせしました」
「ええっ? 嘘でしょ?」
「なんだよ、このダンジョンに来た事があったのかよ」
「あらっ! 嘘なんて言ってないわよ? ちゃんと地下1階から此処まで走って来たんだから」
「私達は地下10階から来たのに、まだボス部屋まで着いてないんですよ? 幾ら何でも速すぎでしょ」
「えへへ♪ 紫藤さん達を待たせちゃ悪いと思って、急いじゃいました」
「えへへって・・・いったい、どんなスピードしてるんですか?」
「んふふ、まあ良いじゃない。早く行きましょメロンが待ってるしね♪」
「「「「「「・・・・・」」」」」」
「まさか本当に地下1階から来たのか?」
「まさか・・・とは、言い切れないのよね・・・」
紫藤さんと合流した僕達は、ワクワクしているナギサさんに急かされながら、地下10階のボス部屋に到着した。
するとボス部屋の前には結構な人数が順番待ちをしているようだった。
残念ながら待つしかないなと思っていると、紫藤さんの知り合いなのか声を掛けてきた。
「んっ? こんな所に綺麗な女性達が居ると思ったら、紫藤達も居たのか」
「チッ! また、嫌な奴等に会っちまったな」
「お知り合いですか? 紫藤さん」
「知り合いと言うか、高ランクの冒険者なんだけど、質の悪い奴等なのよ」
「なるほどね~ どこにでも居るのよね、こういう奴等が」
「なんだ? 2パーティでボス戦やりに来たのか?」
「お前らには関係ないだろうが、サッサとボス戦に行ったらどうだ」
「偉そうに言いやがって、3パーティ居る俺達とやろうってのか?」
「良い機会だ、潰してやろうか? 前から気に入らなかったんだよお前達は」
「なんだと?」
「やめておけリョウマ。今日は部外者も居るだろう」
「・・・分かりましたよ、紫藤さん」
「ケッ! 腰抜けはどうでも良いか。しかし、綺麗な女性達だな。
なあ、そんな腰抜け共と一緒にいるより、こっちに来て話でもしようじゃないか、ボス戦がしたいなら俺達が手伝ってやるぜ?
残念ながら、この人達は私達の友人だ。チョッカイ出さないで貰おうか。
おいおい、今の状況が分かって言ってるのか紫藤? 何時もならまだしも、今はお前達だけなんだろ?
俺達は、そこの綺麗な女性達と話がしたいって言ってるだけだぜ。それとも大事な友達に迷惑が掛かっても良いのかよ?」
「グッ・・・」
「クカカ! しっかし、みんな美人だし、胸もデッケーしよ。最高だな」
ピキッ!
「フフフ、今日はラッキーだよな。さあこっちへ来いよ、デカパイちゃん♪ まさか嫌とは言わねえよな~」
ピキピキッ!
「あ~ 照れてるんだろ? しゃーねえな、連れて行ってやるよ」
一人の男が僕の隣に居た、ツドイさんの胸に手を伸ばそうとしたので、蠅を払う様に手で払いのけてやった。
「バッチィィ!」
「イッテエ・・・なにしやがるガキが」
「僕のパーティメンバーに汚い手で触ろうとするな、クズ共が」
「・・・死んだぞ。クソガキ!」
僕は僕の愛するパーティメンバーに汚い言葉を投げかけてきた、この男達にブチ切れた。
「どうせ口で言っても低脳共には分からないんだろ? 相手してやるから掛かって来いよクズ共」
「クカカ! 威勢の良いクソガキだな。おぃぃ、嬲り殺してやんよ」
アヤメさん達が臨戦態勢になっていたが僕は手で制止し、任せてくれるよう目で訴えると皆、分かってくれたようだ。
「クククッ! 無理しねーで、助けて貰った方が良いんじゃねえか?」
「なんだ6人だけか? 無理しないで3パーティ全員で掛かってきた方が良いぞ?」
「本当にムカつくガキだな・・・もう、泣いても許してやらねえからな」
「それ、良いですね。僕も泣いても許してやらない事にします」
「あ~ もう無理だわ、死ねええええええええええぇ! クソガキ」
頭の悪そうな男達は少し言い返しただけで、顔を真っ赤にして6人同時に武器で攻撃してきた。
僕にとっては欠伸が出そうなぐらいスローな攻撃だ。
攻撃が僕に届くまで暇だなと思っていたら、良い事を思いついたので実行に移すことにした。
「なっ! なんだとおおおおおおおおおおおーーーーーー」
僕は襲い掛かって来た6人を捕まえてから、ほぼ同時に上空に放り投げてやった。
「あはは、やっぱり脳ミソが足りない分軽いのかな、思ったより良く飛んだな~♪ おーい、受け身取らないと、死んじゃいますよー」
6人の男達は洞窟の天井に当たりそうな上空15メートルぐらいの所から、落下しながら喚き散らし、ジタバタしてるのが滑稽で笑えた♪
ドンドン地面が迫ってきているのに、パニックになっているのか誰も受け身すら取ろうとしない。
慌てまくっている表情を見ていると、先程までの怒りがスッと引いて行く。
「「「「「「ドガッ!!!」」」」」」
「グギャ!」
「グハッ!」
「ムゴォ!」
「ゴフッ!」
「ゲハッ!」
「ギャアアアアア!」
「あーあ、バカですね~ 自分で持っていた剣で足を切っちゃいましたか。放せば良いのに頭悪いですね」
「グッ! グゥゥ!」
「お空の散歩は楽しかったですか? 大サービスでもう一度飛ばして上げますね」
「ゴフッ! ま、待て、なにしや・・・」
「待ちませーん♪」
「「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」」」」
僕は聞く耳も持たずに、倒れている男達を掴み、上空へ放り投げてやった。
先程のダメージが残っているのか、慌てまくった表情ではなく、悲壮感が漂って来る。
う~ん、さっきの方が笑えたなと思いながら、落ちて来るのを眺めている。
「「「「「「ドガァ!!!」」」」」」
結局全員受け身も取れずに地面に叩きつけられ、何人か痙攣しているが全員生きているようだ。
多少なりともステータスを上げてるようなので<返還>スキルを使いSPオーブとスキルを根こそぎ回収していく、こいつらには勿体ないしね。
「うわ~ ゴキブリ並みにしぶといですね。じゃ、3回目行って見ましょうか」
「ウゥゥ、タ、タジュケテ・・・」
「あはは、何言ってるのか分かりませんよ? 泣いても許してやらないって言いましたよね?」
「み、三日月君、もうそれぐらいで、許してやったらどうだ?」
「はぁ?」
ゾクッ!
僕は激高していたため気付かなかったが、紫藤さん達が酷く怯えた表情をしている。
こんな奴等なんて死んでも良いと思っていたけど、紫藤さん達の前ではやりすぎたようだ。
僕は少し反省して、落ち着いて話をすることにした。
「ああ、すみません紫藤さん。少し怒っていたものですから。でも、こんな奴等助ける価値はありませんよ?」
「し、しかし、もう十分だろう?」
「今後、このクズ共が人に迷惑を掛けるような事をしたら、紫藤さんのせいになりますよ?」
「ヨウ君、流石にあれだけで殺したら拙いよ?」
「そうですか? アヤメさん達に汚い言葉を投げかけられたんで、僕としては100回ぐらい殺したいぐらいなんですが」
「んふふ、ありがとヨウ君。でも、あれだけやってくれたら私達も気が晴れたから、もう良いわよ」
「分かりました。あっ! そう言えば、まだ仲間も残ってましたね。あっちも片付けちゃいますね」
僕はボス部屋の前で待機していた2パーティの所へ、ゆっくりと歩いて行く。
怒りが冷めやらぬままだったせいか。皆、怯えた様な表情をしている。
「ま、待ってくれ! 俺達は彼奴等の仲間では無い、ボス戦を無理やり手伝わされていたんだ」
「本当よ、お願い信じて! 脅されて連れて来られたのよ」
「ん~ でも、それが本当かどうか僕には分かりませんし?」
「た、頼む信じてくれ、本当なんだ。頼む」
「三日月君。彼奴等6人は嫌われ者だから、その人達が言ってる事は本当だと思う」
「そ、そうよ、彼奴等の仲間なんて見た事ないもの」
「もし、仲間だったらどうします、紫藤さん?」
「その時は、私を好きなようにすれば良い」
「そんな、紫藤さん」
僕は紫藤さんを見つめると、明らかに恐怖を感じているようだ。大量の汗を掻いている。
それでも、この者達を守ろうとしているのは大した人だと思い、溜飲を下げることにした。
「分かりました。そこまで紫藤さんが言ってくれるなら信じる事にします」
「フゥ~ ありがとう紫藤さん、助かったよ」
「た、助かった~ ありがとう紫藤さん。生きた心地がしなかったわ」
「良いのよ。でも、この事は他言無用でお願いしますね。もし言えば、私でも庇えませんよ?」
「あ、ああ、もちろんだ。約束しよう」
「私達も絶対、誰にも言わないから絶対よ」
「さあ、もう行った方が良いわ」
「分かった。本当にありがとう」
「この借りは忘れないわ、ありがとう」
「あっ! ちょっと待って下さい。次に此奴等と一緒に居る所を見たら仲間だと判断しますからね? その時は、紫藤さんにも迷惑が掛かると思ってください」
「わ、分かった。もう2度と奴等とは関わらないと誓う」
そう言い残すと、ボス部屋前で待機していた2パーティは逃げるように帰って行った。
「さて、邪魔が入りましたけど、気を取り直してボス戦しましょうか」
「あれっ? どうしたんですか?」
「どうしたって、彼奴等を、あのまま放置しといて良いのか?」
「フフ、御心配なく。最低限の回復をしておきましたので、死ぬことは無いかと思います」
「あー、すみません。リラさん」
「フゥ~ しかし、見掛けによらずとんでもなく強いんだな。彼奴等ひょっとしたら俺達より強いかもしれないのに勝負にもならないなんてよ・・・」
「強いなんてもんじゃない、私でさえ彼奴等をどうやって投げたのか全然見えなかった」
「だから言ったでしょ? ヨウ君を怒らすなんて自殺するのと同じよ」
「そんな見た目で、おっそろしい奴だな。だが、その強さには尊敬するよ三日月さん」
「どうして「さん」付けなんですか? リョウマさん」
「俺は自分より強い者には尊敬する事にしてるんだ」
「あはは、体育会系なのね。でも、その気持ちは分かるわ♪」
僕は玄関の扉を開くように、平然とボス部屋の扉を開いていく。
「待って! 本当に2パーティで上級ダンジョンのボスに挑もうって言うの?」
「ん~ すみません。僕、まだちょっと怒りが収まりきってないんで、任せて貰って良いですか」
「任せてって・・・言ってる意味が分からないのですが?」
「まー、見てたら分かると思うよ、さっ行こう」
まだ釈然としない紫藤さん達を連れてボス部屋に入ると、大きなライオンのような魔物が鎮座している。
「なっ! キメラだと?」
「クッ! だから言ったんだ・・・寄りにも寄って希少種を引くなんて」
「あああ、こ、怖いよ」
「じゃ、行ってきますね~」
「お、おい」
「あ~ 近寄っちゃ駄目よ? 巻き込まれたら死んじゃうわ」
僕はミナミさんに作って貰ったアダマンタイトの双剣を左右に握り、スキルを解放していく。
<身体強化><敏捷強化><腕力強化><追加攻撃><HP吸収><精密動作><超振動>次々とスキルを解放していき、<氷属性魔法>で双剣に氷を纏わせていく。
双剣はピキピキと音を立てながら氷に覆われ、淡く青い光を放ち半透明になっていく。
「<縮地>!」
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
「キンッ!」
キメラは僕が双剣を鞘に納めると同時に、まるで積み上げたサイコロを崩すかのように地面へ落ちていき、やがて光の粒子となって消えて行った。
「・・・・・・・・・・」×全員
「ふぅぅ~ あーっ、スッキリした♪」
「も~ ヨウ君。オーバーキルも良い所よ? 珍しく全力でやったの?」
「いえいえ、全然ですよ半分ぐらいかな?」
「ひゃ~ 私達ではヨウ君の実力は計れないのよね、一体どれだけ強いんだか」
ドロップしたスキルオーブや宝箱は<隠蔽>スキルで隠しておいた。
紫藤さん達に分からないように回収し、素材だけは見える様に拾い集めた。
紫藤さん達を確認してみると、どうやら驚くと言うよりも、僕に恐怖しているのか大量の汗を掻いている。




