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第101話 弱い犬ほど良く吠えるのは本当ですね


「失礼、少し時間をいただいても良いですか?」


「はい、良いですよ」


「ありがとう、私は北海道から来ました荻田おぎた 雄大ゆうだいと言います」


「僕は大阪から来ました三日月陽です。よろしくです」


「フフ、私は新人冒険者と言っても年を取ってますが、三日月さんは新人らしくお若いですね」


「あはは、童顔なのは自覚してますけど、これでもちゃんと18才なんですよ」


「では、高校を卒業して直ぐに冒険者になったのですね、羨ましいです」


「冒険者になるのが目標だったんですよ、荻田さんは脱サラってやつですか?」


「ハハハ、そうなりますね。どうしても冒険者になり、手に入れたい物がありましてね」


「へええ~ スキルか何かですか?」


「いえ、単刀直入に言いますとエリクサーです」


「・・・なるほど、どうして僕に声を掛けてくれたのか分かりましたけど、僕みたいな新人には何も分かりませんよ?」


「はい、私も簡単に情報が手に入るとは思っていませんが、現状大阪のオークションでしか手に入らないのも事実ですので、失礼なのは承知ですが大阪の冒険者に伝手を取りたいと思い、声を掛けさせていただきました」


「そうですか、余程大事な方が病気か怪我をされたのですね」


「はい、私にとって命より大事な妻が交通事故にあい、もう2年昏睡状態が続いております。方々の病院を当たりましたが、今の医学では回復は難しいそうなのです」


「分かりました。少しでも情報が分かれば連絡しますね。連絡先を交換しましょうか」


「ありがとうございます。私にはオークションで購入するお金はとてもありませんが、私の出来る限りのお礼は致しますので、どんな小さな情報でも結構ですので教えていただければ助かります」


「いえいえ、北海道のダンジョンで何か有益な情報を回していただければ、僕も嬉しいので、お互い様ですよ」


「嬉しいですね、エリクサーに関する情報に見合う物は難しいかもしれませんが、私も情報を集めておきます」


「荻田さん、心中御察ししますが冒険者は危険な仕事ですから、お互い気を付けましょう」


「ありがとう三日月さん。貴方が優しい方で良かった。では、またお会いしましょう」


「はい」



「感じの良い人だったわね」


「フフ、ヨウ様。一つ用事が増えたみたいですね」


「そうですね、僕みたいな若造に対して、あれだけ礼を尽くしてくれたら力になって上げたくなりますよね?」


「にひひ、そう言うと思ったわ♪」



 ようやくアヤメさん達に寄って来る人達も少なくなって来たかと思ったら、今度は藤堂院さんが話掛けて来る。



「ウフフ、貴方達は人気者のようですね」


「フフ、そう言う藤堂院さんも私達に何か聞きたそうですけど?」


「私とした事が顔に出ていましたか・・・そうですね、色々と興味深い所ですがアヤメさんが使ったアレは一体何だったのでしょうか?」


「あれっ? 魔法に見えなかったのかしら?」


「そんな筈ないわ、だって・・・」


「だって? 何かしら?」


「・・・・・」


「フフ、貴女の<鑑定>スキルで見ても、私達が魔法を所持してなかったからでしょう?」


「お見通しでしたか・・・しかし、何故? 一体どうやって」


「フフ、以前にも忠告しましたが、世の中には知らなくても良い事があるんですよ?」


「それに<鑑定>スキルを頼り過ぎると、見えるものも見えなくなりますよ?」


「貴方達は、本当に新人冒険者なのですか?」


「あらっ? 私達のリーダーである、ヨウ君を見ても信じてくれないのかしら?」


「んふふ、若く見えすぎて新人冒険者も疑われるぐらいだもんねー」


「僕を引き合いに出すのはやめて下さいよ、成長過程なんですから」


「あはは、ごめんごめん」


「でも鑑定人である東堂院さんから見ても、僕が普通の新人冒険者に見えますか?」


「ええ、残念ながら私には、そうにしか見えないわ」


「そうですか、東京に来てから結構色々とヒントを出しているのですが、誰も気付かないって事は、どうやら東京には大した冒険者は居ないのかな?」


「なんですって、貴方は一体・・・」


「あはは、もうちょっと、ヒントを増やして上げますよ。僕に気付く強者が居ると良いのですけど。そう言えば、東京にSランク冒険者が居るんですよね?」


「彼は実質、引退していると言っても良いわ」


「そうですか、それは残念ですね」


「フフ、それでは藤堂院さん。また、お会いしましょう」



 僕達は<隠蔽>スキルを使い、全てのスキルやステータスを偽造しているが、遊び心で普段押さえている魔力だけは、少し高めに開放していた。


 もし僕達が、そう言う人を見つけたら当然警戒するんだけど、東京に来てから誰にも警戒されてる様子はなかった。


 <魔力感知>スキルが無くても、実力者であれば大きな魔力なら気付くはずなんだけどね。


 僕は藤堂院さんに言ったように、少し高めにしていた魔力解放を、もう少し上げて見る事にした。



「ヨウ君にしては、珍しく挑発してたわね?」


「ちょっと言い過ぎましたか? 東京のギルドに来てから上から目線が目立つので、ちょっとした仕返しのつもりだったんですが」


「フフ、いいえ。あれぐらいが丁度良いかと思われます。きっと今頃、何も分からなくて悩んでいるでしょうから」


「んふふ、そうね。大阪ギルドのためにも、大きな口を叩けなくして上げよっか♪」


「あはは、それ良いわね」



 それからも代わる代わる、色んな人達が来て挨拶をしていたが、そろそろ終わりかと思う頃に同郷である上小路達が、来なくても良いのにやってきた。



「よお~ 貧乏人。タダ飯は旨かったか?」


「え~ 食事代にも困ってるの? 一応大阪で有望だったから此処に来れたんでしょ?」


「あ~ 周りの女性が目立つから、話題性で選ばれたんじゃない?」


「キャハハ、まあ綺麗な人達だけど、おばさんばかりじゃねー♪」



「・・・ねえ? 本当にヨウ君と同郷なの?」


「ん~ どこにでもクズっているじゃない?」


「すみません皆さん。同郷ってだけで僕とは何の関係もありませんから、無視して下さい」


「ヨウ様、御不快でしたら社会的に消す事も出来ますが、如何ですか?」


「いえ、僕にとってはどうでも良い奴等ですが、僕だけならまだしも皆さんの事まで悪く言われたら流石に我慢出来ません。僕が身の程を分からせて上げますから」


「なんだと三日月? お前みたいなチビが偉そうな事言うじゃねえか?」


「ゴミクズは黙ってろ」


「なっ!」


「今日は、何も言わないのか上小路?」


「どうせ、僕が何を言っても同じ穴のムジナなんだろ?」


「ああ、そうだ。ようやく分かったか? お前がどんな弁解をしようとも、こんな奴等と一緒に居られるって事は、お前もゴミクズなんだよ」


「お前、いい加減にしろよ?」


「頭の悪いお前達に言葉で言っても分からないだろ? 明日模擬戦があるそうだから、それで分からせてやるよ。上小路」


「クククッ! バカか? 俺達が東京に来てから、どれだけ強くなったと思ってんだ?」


「強くだと? 僕には虫けらのようにしか見えないんだけど?」


「・・・てめえ」


「待てよ、三日月がこう言ってるんだ。明日、模擬戦をしたら分かってくれるだろう」


「そこまで言ったんだ。明日、無事に帰れると思うなよ三日月」


「あーあ、怒らせちゃってバカだね~ 明日どうなっても知~らない」


「フゥ~ もう庇えないぞ、三日月?」


「なあ、上小路。一つだけ忠告しといてやるが、お前達には冒険者は向いてないぞ?」


「さっさと荷物を纏めて田舎へ帰れ」


「・・・残念だよ、もう話すことは無い」



 結局、上小路達は僕達の実力が分からなかったようだ。


 せっかく、ヒントまで出してやっているのにな。



「哀れな奴等・・・人間なんて弱い者を蔑む生き物だけど、あそこまでいくと滑稽なんだよね」


「見た目と強さなんて何の関係も無いのにね、ヨウ様の言う通り冒険者失格だわ」


「自分より弱そうな者を馬鹿にする奴って何処にでも居ますけど、そういう奴等が本物の馬鹿だと分からないんでしょうね」


「全くその通りね、まっ! 明日少しは分かるでしょ」


「それとですね。僕の同郷にもちゃんと気の良い友達は居ますからね? あんなのばかりじゃないですよ」


「心配しなくても、分かってるわよ♪」



 僕達は多少気分を害したのでホテルへ帰って、まったり過ごす事にした。


 本当ならお酒でも飲みに銀座の高級クラブとか行って見たかったんだけど、それは明日にでも行って見る事にした。


 何故か今日も皆でお風呂に入り、同じベッドで寝る事になった。


 嫌な事なんて完全に忘れてしまうぐらい、最高の気分で朝を迎える事になる。


 そして翌朝、僕達は最終日の新人交流会に出席するため、ギルド本部に向かう事にした。


 ギルド本部に着くと、今日は武闘場のような場所に案内された。


 早速、模擬戦が開始されるようだ。



【いよいよ、新人交流会も最終日となりましたが、今日は皆さんで模擬戦を行いたいと思います。


皆さん、自由に模擬戦をやってみたいパーティに声を掛けて貰って結構です。また見学されたい方も自由です。


こちらで模擬戦用の武器も用意しておりますので、自由にお使いください。


魔法も使用して下さって結構ですが、命の危険があるような行為は禁止とさせていただきます。


念のために<回復魔法>が仕える者も待機しておりますので、御安心下さいね。


ランダムで模擬戦をしたいパーティは私に声を掛けて下さい。


マッチングさせていただきます。それでは、模擬戦を開催したいと思います】



 僕達は周りの様子を伺っていると早速、幾つかのパーティが模擬戦を始め出していた。


 そして、昨日の言葉通り、上小路達が僕達に声を掛けてきた。



「よぉ、どうやら逃げずに来たようだな、さあ武闘場に上がれよ。今更逃げられねえからな」


「どうでも良いが、お前一人でやる気なのか?」


「なんだと?」


「一人ずつだと後の奴等が逃げるかもしれないだろ? 全員武闘場へ上がれよ。逃げたくても逃げれないようにな」


「ちょっとヨウ君。一人で模擬戦する気じゃないでしょうね? 幾ら馬鹿丸出しの連中だとしても女子はやりにくいでしょ? 私達が相手するわ」


「なんですって? 誰が馬鹿丸出しなのよ」


「えっ? 貴方達に決まってるでしょ? 貴方達には腹が立ってるしね、お姉さんが少し教育して上げるわ♪」


「笑わせるんじゃないわよ。私達の実力も分からないくせに大口叩いた事、後悔させてやるわ」


「フフ、本当に度し難い馬鹿な娘ですね、少し教育してあげましょう」


「あ~ ムッカツクわね」


「フゥ~ 分かった三日月の言うようにパーティ戦にしようじゃないか、それで良いだろ?」


「ああ、その溜息を覚えておけよ上小路? 後で自分達のバカさ加減が分かるだろうからな」


「・・・もう会話は良いだろう? 始めようか」


「私からやらして、あのおばさん我慢出来ないわ」


「良いぜ、思い知らせてやれよ」



 僕の思惑通り上小路達とパーティ戦をやる事になったが、どうやら最初はナギサさんが出る様だ。


 向こうもギャーギャー煩く言っていた女子が、武闘台中央に歩み寄って来る。



「・・・何なのよ、その武器はふざけてるんじゃないわよ」


「にひひ、知らないの? ハリセンって言うんだよ♪ 貴女が相手ならこれで十分って事よ♪」



 ナギサさんの手には大阪人なら誰でも知っているハリセンが握られていた。


 良くあんなの持ってたなと感心していると、リラさんがニコニコしながら全員にハリセンを配ってくれた。


 どうやらリラさんも少し怒っているようだ。


 完全に相手をバカにしているのが、周りの連中にも分かっただろう、やはりリラさんは恐ろしい。



「お、おい、見ろよ彼奴等、ハリセンで模擬戦するみたいだぞ?」


「あはは、面白い奴等だな~ 大阪人か? 見ろよ相手側がメチャクチャ怒ってるぞ」


「うわ~ 舐め捲ってるね~ よっぽど自信があるんじゃねえか?」


「言えてるな。しかし、美人は何を持っても絵になるから不思議だよな」


「あれだけの美貌で強者だって言うのかよ? 洒落も効いてるし見学するしかないよな♪」


「おい、皆も見ろよ。面白そうな模擬戦が始まるぞ」



 周りで見ていた新人冒険者も、ハリセンが注目を集めたのか観戦者が次第に増えていった。



「んふふ、さっ、口と顔の悪いお子ちゃまさん。掛かって来なさい! お仕置きしてあ・げ・る♪」


「ふ、ふざけるな~~~」



 上小路達を<鑑定>したところ、どうやったのか分からないが全員何らかのスキルを習得していた。


 現在ナギサさんと模擬戦している女子も<敏捷強化>スキルを習得していた。


 だからと言ってもステータスも低いし、技術もない者がナギサさんに敵う訳がないんだけどね。


 案の定<敏捷強化>スキルを、全く使いこなせていない。


 次々と繰り出される攻撃は、全てナギサさんに回避されている。


 僕達にとっては、欠伸が出そうなぐらい遅い攻撃だしね。



「ねえ、早く本気出してくれないかな~ 眠たくなっちゃうよ?」


「ハァーハァー、貴女なんて躱すのが上手いだけじゃない、攻撃してみなさいよ?」


「んふふ、本当にバカなんだから。じゃ、行くわよ? 貴方、スピードに自信があるみたいだけど、上には上が居る事を覚えといた方が良いわ、よーく見てなさい♪」


「えっ?」


「パーーーーーン!!!!!!!」


「あはは、良い音鳴ったわね♪」



 初めてのナギサさんの攻撃は、まるで野球のフルスイングのように繰り出されたハリセンが相手の顔面を捉え、盛大に鼻血を撒き散らしながら吹っ飛ばされていった。


 会場中の人達は静寂に包まれ、今起こった事の異常さに固唾を飲んだ。



「わ、笑えねえ・・・なんだ、あのスピードは? 見えなかったぞ?」


「ヤベエ、マジでヤベエぞ? あの女性、絶対普通じゃねえ」


「馬鹿な。遠目で見ても見えなかったぞ、なんてスピードだ」


「いくらハリセンでも、あのスピードで繰り出されたら、たまったもんじゃねえな」


「ああ、見ろよ。相手の女は鼻が曲がって前歯まで折れて打っ倒れてるぞ、なんでハリセンなんかで人間が吹っ飛ぶんだよ?」



 僕から見たら、全く本気を出していないナギサさんの攻撃だったけど、それでも周りの人間には見えなかったらしい。



「おい、しっかりしろ。直ぐ治療班を呼べ」


「てめえ、よくもやってくれたな。もう許さねえねーぞ」


「うわ~ まだ実力差が分からないんだ? ある意味凄いわね」


「ですよね・・・まあバカは死んでも治らないらしいですから」


「ふざけるんじゃねえ。どうせ何か卑怯な事をしやがったんだろ」


「あのな~ お前は今のが卑怯に見えたのかよ? よく冒険者やってこれたな」


「煩い! 俺が相手になってやる、お前が掛かって来い。三日月」


「あはは、分かったってチビで弱い僕が相手してやるよ、お前は弱そうな者にしか相手出来ないからな」



 僕は最後のチャンスを上げようと思い、いつも抑え込んでいる魔力を全て解放する事にした。



「なあ? これでも、まだ分からないか?」


「なにを訳の分からない事言ってやがんだ、死にやがれっ」



 せっかく分かりやすく魔力全開放してやったのに、どうやら此奴は何も感じないらしい。


 <魔力感知>スキルを持ってなくても、少しは分かりそうなもんなんだが。


 狂ったように身の丈に合わない模擬戦用の大剣を振り回してくるが、こんな遅い攻撃が当たる訳がない。



「おい、どうしたんだよ、サエ。顔色が悪いし震えてるぞ?」


「うう~ リョウマ・・・こ、怖いのよ、あの子見てると背中がゾワゾワする程怖いよ、逃げ出したいくらい」


「ああ? 仮にもAランクの魔法使いのお前が怖いだって?」


「リョウマは分かんない? あの子、何か怖いよ」


「言われてみれば、何か変な違和感を感じるな」


「あっ! 藤堂院さん。それに紫藤さんじゃないですか、貴方まで新人交流会を見に来られたんですか?」


「バカ者! お前には分からないのか?」


「ひょっとして、今模擬戦している少年ですか?」


「サエには分かるようだな」


「はい、何故か分からないんですが、あの少年が怖くて・・・」


「紫藤さん、あの大阪の少年・・・いえ、三日月君がどうしたって言うの?」


「そうですね。冒険者ではない藤堂院さんには分からないかもしれませんが、あの綺麗な女性達も凄まじいですが、少年は化物クラスですよ?


恐ろしいまでの魔力を感じます。私でも先ほどから膝の震えが止まらない程に。


私の方が聞きたいですね、一体あの少年は何者ですか? 藤堂院さんなら分かるんじゃないのですか?」


「そんな馬鹿な! 私の目で見たところ、三日月君は何のスキルも持たない普通の少年なのですよ」


「あの子は間違いなく、私を遥かに上回る魔力を持っている筈です。おそらく<鑑定>スキルでも見えない何かをしているんでしょう」


「そう考える方が、私も納得出来ますが、一体どうやって?」



 狂ったように攻撃してくる馬鹿な同級生を、挑発するように何発かハリセンで頭を叩いてやった。


 それだけで、もう動きが鈍くなってきたようだ。



「おいおい、もう疲れたのか? 最初の大口はどうした? 早く掛かって来いよ」


「う、煩い、叩きのめしてやる」


「やれやれ、まだ分からないのか? 力が自慢のようだが、受け止めてやるから全力で来てみろよ」


「グゥゥ、調子に乗るな~」



 僕は上段から振り下ろされた大剣を、左手で受け止めてやった。



「バ、バカな動かねえ・・・」


「しかし、弱い犬ほど良く吠えるって言うけど、本当に口だけだなクズ野郎?」



 そのまま掴んでいた木製の大剣を握り潰し粉々にしてやると、ようやく実力の違いが分かったのか青い顔になっていく。



「馬鹿な・・・」


「頭が悪いと理解が遅くて大変だな? さて、叩きのめしてやるから覚悟しろよ」


「ま、待て」


「あはは、待つかよ」


「パパパパパパパパパンッ! パーーーーーーン!!!」


「うん、良い音♪」



 左右からハリセンで顔面を往復ビンタしてから、ナギサさんがやったように最後は鼻っ柱を強めに叩いてやった。


 ナギサさんより強めに叩いたせいか、武闘台から転げ落ちる程吹っ飛んでいく。


 何度も叩いてやったので顔面はパンパンに腫れ上がり、完全に意識を失っているが、大した怪我はしてないだろう。



「さあ、上小路やろうか? お前にはハリセンは失礼だよな? 木剣で殴り飛ばしてやるよ」



 上小路にも、ようやく実力差が分かったのか、仲間の介抱もせずガタガタと震えている。



「ウフフ、先に他の人片付けちゃうね~」


「ヒッ! 待って、もう分かったから、謝るから許して」


「フフ、随分と調子の良い事言ってますね、おばさん相手に怖がる事ないでしょう?」


「フフ~ リラ姉結構気にしてたんだ?」


「そ、そんな事ないです、行きますよノノ」


「は~い♪」


「ん、僕も行こっと」


「あっ! 私が行こうと思ったのに~」



 上小路以外の奴等は必死になって逃げようとしていたが、リラさん達にまるでキャッチボールのようにハリセンで吹っ飛ばされ続け、全員気絶したようだ。


 外野から見れば苛めの様にしか見えないだろうが、誰も止めに入る者はいなかった。


 皆、実に楽しそうであり、僕も見ていて少し気分が晴れた♪


 それを見た上小路は、更にガタガタと震えだし、もう顔色も蒼白になり見ていて情けなくなってきた。



「おいおい、さっきまで溜息つくほど、僕の事を弱いと思ってたんだろ? 早く掛かって来いよゴミ屑野郎」


「うっ、うぅぅ」


「たったあれだけの事で、攻撃も出来ないのか? 本当に口だけのゴミ屑野郎だよな?」



 上小路は煽ってやっても怯えきっており、全く向かって来ようとしない。


 きっと、こう言う展開になるなんて夢にも思わなかったんだろう。


 敵わないとしても先程まで強気だったんだから、少しぐらい抵抗すれば良いのに・・・心底下らない人間も居るんだと理解する。



「はぁ~ なあ上小路。お前東京で何してたんだ? なんでそんなに弱いんだよ? もう一度言うが、お前は冒険者には向いてない。田舎に帰った方が良いぞ?」


「む、無理だよ、お、俺達は借金してスキルを貰ったんだ・・・今更どうにも出来ないんだ」


「はぁ? お前本当に馬鹿な奴等だな、お前達は借金までして手に入れたスキルを何故、使い熟せていないんだ?


お前、まったくスキルの訓練してないだろ?


東京で自分達が、どれほど強くなったとか言ってたのは、なんだったんだ?


スキルを習得しただけで、強く成ったと思っていたのか?


正真正銘の馬鹿だな? 救いようのない馬鹿とは、お前達の事を言うんだろうな。


借金してまで、手に入れたスキルを全く使い熟せないなんて、絶望的に才能がないとしか思えないぞ?


まっ! 自業自得か、精々魔物に殺されないように借金地獄に苦しむんだな、もう会う事もないだろうが元気にやってくれ。


じゃーな、上小路」


「うぅぅ、うわあああん」



 上小路はやっと僕達との力の差が分かったのか情けなく泣いていたが、僕にはもうどうでも良い事だった。


 僕達は武闘台から下りて行くと、藤堂院さんと目が合った。


 隣を見てみると冒険者だろうか、明らかに僕を見て恐怖している綺麗な女性が立っている。


 どうやら、ようやく僕が解放した魔力を感じ取れる人に会えたようだ。


 <鑑定>スキルを使ってみると、やはり外国のSランク冒険者に匹敵する実力者だった。


 僕は嬉しくなり、まず藤堂院さんに声を掛ける事にした。



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