結の願い
世一は深く煙を吐き出し、結の瞳を射抜くように見つめた。
「フーッ……結、正直に話せ。何故俺を見に、お前は何がしたい?」
結は、まるで罪を告白するかのように、震える声で語り始めた。
「……わ、私は下々の願いを叶える神……だ、誰も……誰も誰も!力ばかり求めて!誰も私の事を見てくれない!力は私じゃない!」
結の瞳からは、大粒の涙が溢れ出した。
「誰もじゃ嫌なんです!私は、私を見てくれる人に!好きな人の為に力を使いたい!!」
結は、必死に言葉を紡ぐ。
「私は……世一様の自由爽快に生きる姿が羨ましく……世一様なら、こんな、こんな世界を壊してくれると……」
結の言葉に、世一は再び煙を吐き出した。
「フーッ……」
結は、世一に近づき、懇願するように言った。
「私の力を世一様が使えば、世一様は絶大な力を得て大神をも凌ぎ、大神が持つ宝玉を手に入れれば世一様は絶対神になられます」
世一は、結の言葉を遮るように、静かに言った。
「結」
結は、期待に満ちた瞳で世一を見つめた。
「此度の世一様の地獄行きは納得出来ず!私の身命を掛けて世一様をお助けいたします!」
再び、世一は結の名を呼んだ。
「結」
結は、両手を差し出し、懇願する。
「さぁ私の手をお繋ぎ下さい、世一様の絶対神の道を私が叶えます!」
世一は、結の差し出した手を無視し、冷たい声で言い放った。
「だまれ」
結は、まるで氷水を浴びせられたかのように、体を震わせた。
「ひっ……」
結の瞳から、再び涙が溢れ出した。
「私は……私は……」
結は、言葉を失い、ただ泣き崩れるしかなかった。世一は、そんな結を冷たい瞳で見つめながら、静かに煙を吐き出した。
「フーッ……」
世一の煙が、薄暗い牢獄に立ち込めた。