世一と結
「私は、神としてのお勤めがありまして……」
結は、まるで言い訳をするように、震える声で語り始めた。
「毎日毎日、下々の者の頼みや、大神様の命を聞いて……あっ、熱っ!ありがとうございます!」
彼女は、時折、世一が落とした煙草の灰に触れ、小さく呻きながらも、すぐに感謝の言葉を口にした。
「あれをお願いします、これをお願いしますと、願いを叶える日々で、私は疲れ果ててしまっていて……」
結は、疲れたように目を伏せた。
「ふと、その時、外界を見渡せる池の下を見ていたら、偶然、貴方様を見つけまして……熱っ!ありがとうございます!」
彼女は、目を輝かせ、まるで恋する乙女のように、世一を見つめた。
「たった一人で、何十人もの男共を倒していて……なんて、なんて自由で凄いお方だと、おもおも……思って……」
結は、頬を赤らめ、言葉を詰まらせた。
「そ、それから、暇を見ては、貴方様をずっと見ていて……」
結の言葉に、世一は眉をひそめた。
「気持ち悪い奴だな」
「も、申し訳ありません!」
結は、慌てて頭を下げた。
「あっ、熱っ!ありがとうございます!」
彼女は、再び灰に触れ、感謝の言葉を口にした。
「どっちなんだよ」
世一は、呆れたように呟いた。