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「フーッ、おい灰入れは?」

世一の低い声が、薄暗い牢獄に響いた。目の前には、怯えたように体を縮こませた若い女が立っている。

「は、灰……ですか?」

「あー、だからよー、このヤニの灰は何処にしまうかって聞いてんだよ」

世一は指に挟んだ煙草を軽く振り、灰を落とす場所を探している。

「は、はい! それでは私の着物に灰をお入れ下さいませ」

女は震える声でそう言い、自分の着物の裾を広げた。

「おう」

世一は遠慮なく灰を落とした。

「あ、熱っ……」

女は小さく呻いたが、何も言い返せない。

「ねーちゃん名前は?」

世一は煙を吐き出しながら、女に尋ねた。

「わわわ私は天の神の子、天照大神……」

「名前がなげーよ。そうだな、結だ。結にしとけ」

世一は勝手に女の名前を決めてしまう。

「〜〜〜はっ、ハイッ! 私は結です!」

女、結は必死に頷いた。

「でー、結、ここは何処だ?」

「ここは裁きの間で、裁きを待つものを閉じ込めておく牢屋でございます」

「フーッ、そうか。てことは俺は死んだのか」

世一は煙草を灰入れに押し付け、呟いた。

「熱っ」

結はまだ熱さが残る着物の裾を触り、顔をしかめた。

「!も、申し訳有りません!」

結は突然、世一に向かって深く頭を下げた。

「あ?」

「わ、わた、私のせいで貴方様を死なせてしまい……」

「あ? 何言ってんだ?」

世一は怪訝そうな顔で結を見下ろした。

「んっ、あっ熱っ」

結はまだ熱い灰の痕に触れ、再び顔をしかめた。

「わ、私は現世に出る時は、蜘蛛の姿に、そ、それで、あの、あの……」

「あー、ってことは、お前、あの時の蜘蛛か」

世一は煙草の煙を吐き出しながら、記憶を辿る。

「は、はい! 私は蜘蛛の姿で、あ、貴方様を見に……」

「あ?」

世一は眉をひそめた。

「涙、うっうっ」

結は突然、泣き始めた。

「おい、泣いてんじゃねーよ、ちゃんと話せ」

世一は苛立ちを隠さず言った。

「は、はい、実は……」

結は震える声で、自分が蜘蛛の姿で世一を見守っていたこと、そして自分のせいで世一が死んでしまったと思い込んでいることを話し始めた。

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