大神
神殿の奥深く、大神は玉座の影に身を隠し、震えていた。世一は、その姿を冷たい眼差しで見下ろした。
「さて、何処に逃げる気だ、ジジイ?」
大神は、縋るような声で結に助けを求めた。
「ひ、ヒィ……天照よ、天の子よ。その悍ましい物を退治せぬか!」
結は、大神の言葉に毅然と反論した。
「!わ、私の名前は結です。世一様の侮辱は許しません!」
大神は、なおも懇願する。
「の、望みはなんだ?財宝か?力か?女か?望むもの全てやろう」
世一は、大神の言葉を遮るように言い放った。
「だまれ」
大神は、悲鳴を上げた。
「ヒィっ」
世一は、大神を見据え、静かに語り始めた。
「この世界は最悪だ。何にもしなくても貴様らに媚びてれば餌を与えられ、何もかも得られる」
大神は、反論する。
「そ、それが何が悪いのじゃ!我ら神は外界の望み全て叶え、何の不満もない世界に……」
世一は、大神の言葉を嘲笑した。
「ばーか。そんなものは生きてるとは言わない。飯は自分で探して食べる方が旨いんだよ」
大神は、理解できないというように首を傾げた。
「???」
世一は、大神の胸元にある宝玉を見据えた。
「よし、これか。この宝玉があるから、結は苦しむ」
大神は、慌てて宝玉を庇った。
「!?よ、よせ!それを壊すと我も貴様も天照も世界が無くなるのだぞ?」
結は、驚愕の表情で息を呑んだ。
「!?」
世一は、大神を見据え、冷酷に言い放った。
「貴様ら神は死なない。なら壊すしかないだろ。神がいない世界に。何もない世界にするしか」
結は、世一の名を叫んだ。
「世一様!」
世一は、結に視線を送り、静かに告げた。
「結……ヤニ美味かったぜ……またな」
結は、涙を浮かべながら叫んだ。
「わ、私、必ず貴方に会いに行きます!何千、何万回生まれ変わっても必ず世一様を見つけます!それが私の願いだから!だ、だから……ありがとう……」
世一は、大神の制止を無視し、宝玉に手を伸ばした。
「ふっ!!」
大神は、悲鳴を上げた。
「やめろおおおー!!」
世一は、宝玉を握りつぶし、世界は光に包まれた。