突破
大神の神殿。そこは、荘厳なまでの美しさと、張り詰めた静寂が支配する空間だった。結は、神妙な面持ちで世一に告げる。
「世一様、ここが大神のいる神殿です。この奥には、和勇牛と同等かそれ以上の鬼神が控えております。私が隙を作るので、世一様は、」
しかし、彼女の言葉は、世一の冷たい一言によって遮られた。
「だまれ」
結は、まるで氷水を浴びせられたかのように、体を震わせる。
「ひっ」
「ここからは俺一人で良い」
結は、必死に食い下がる。
「し、しかし!」
世一は、結の瞳を射抜き、静かに言った。
「結、、俺を信じろ、俺だけを見てろ、俺がお前を苦しめている物を壊す所をな」
結は、その言葉に心を奪われ、瞳を潤ませながら頷いた。
「は、はい、、結は世一様を信じます!ずっと見ています!」
世一は、軽く息を吐き、神殿の奥へと歩き出した。
「ふーっ、、ふっ、じゃあ行くか」
神殿内部。そこは、神々しい光と、圧倒的な威圧感が交錯する異質な空間だった。二体の鬼神が、世一の前に立ちはだかる。
阿吽 負吽「、、天界を汚すゴミ虫共が我等が成敗して、ガハッ」
鬼神の言葉が終わるよりも早く、世一は神速の動きで二体の間を駆け抜けた。次の瞬間、鬼神たちの巨体が、轟音と共に崩れ落ちる。彼らの胸には、一瞬の閃光が刻んだ、深い傷跡が残っていた。
世一は、倒れ伏す鬼神たちを見下ろし、吐き捨てるように言った。
「ペッ弱すぎなんだよ、今までろくに戦った事がねーのがよく分かる」
彼の言葉には、圧倒的な力を持つ者だけが持つ、絶対的な自信と、それゆえの退屈が滲んでいた。